戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
「それでドクター。目的地への到着予定時刻は?」
ヘリで移動中。サンジェルマンがウェルに問う。
「今夜はもう遅いですからね。どこかで休息する予定です」
「あーしたちはお尋ね者ってわかってる?」
現在、ヘリにはマリアとウェル。サンジェルマンにカリオストロ。プレラーティとナスターシャ。それと医療用スタッフと操縦士が乗っている。それだけの人数が乗れるだけの大きなヘリで移動しているが、各国ともこれを捕捉出来ていなかった。
「そこはもう。なのでこのヘリで休んでもらうことになりますね。顔の割れていないスタッフに買い出しはお願いすることになりますが」
「操縦士もずっとは疲れるでしょうからね。問題ないわ」
ウェルの説明にマリアが答えそれで話は纏まる。
「現在、神獣鏡の力でレーダーなどを反射していますが、いつ捕獲されるかわかりません。休息は順番でお願いしますよ?」
ナスターシャの言葉に全員が頷き、しばらくは静かな時間が流れる。
(皆と戦う必要がある。私は上手く戦えるのかしら? 翼ならなんの躊躇もなく戦うのでしょうね)
ヘリから外を見つめマリアは黄昏れる。これから戦うかもしれない相手を思って。
(調と切歌は元気でやっているかしら。あの2人のことだから上手くやっているとは思うけど)
考えるのは、元の仲間たちのことばかり。そんな自分に気付いて苦笑する。
(それでも引き返せないところまで来てしまったのよ。日本に着けば必ずぶつかる。もう迷っている暇なんてないのはわかっているのだけど)
自らに言い聞かせるようにそう呟く。
「迷っているのか?」
黄昏れるマリアに近寄るサンジェルマン。なにか文句を言われると思ったマリアは身構える。
「そのままでいい。かつての仲間と戦うというのは、葛藤とも戦うことなのだから。しかし、それでも進む道を間違えないことよ。戻ることは出来ないのだから」
そう言って離れるサンジェルマンの背中を見つめ、マリアの顔からは笑みが溢れていた。
夜になって、プレラーティを除いたメンバーは休息のため眠りへとつく。特に問題もなく夜が明けていくことで油断があったのかもしれない。朝日が登り始めた頃、休息のためヘリを隠した廃工場の周辺は武装した集団によって囲まれていた。
「起きなさい。敵襲ですよ」
ナスターシャの呼びかけでマリアが目を覚ますと、サンジェルマンとプレラーティ。カリオストロにウェルはすでに待機している。
「ようやくお目覚めかしら?」
「囲まれている。おそらく米国の軍隊だろう」
これまでノイズやオートスコアラーたちとの戦闘経験はあっても人。それも錬金術師でも装者でもないただの人を相手にしたことのないマリアはわかりやすいほど、戸惑っていた。
「血に汚れることを恐れないで」
「わかっているわ。でも……」
ナスターシャの言葉にもマリアは、落ち着けないでいた。
「出発しようにも奴らが邪魔なワケダ」
「邪魔者は排除しないとね」
錬金術師たちは、これまでにも何度もこのような経験はしているためか、すんなりと戦闘態勢に入っている。いや、覚悟の決まらないマリア以外は出来ていた。
「ドクターはどちらへ?」
ナスターシャの言葉で辺りを見渡すが、ウェルの姿は見当たらない。
「まさか逃げたんじゃないでしょうね?」
逃げるとしてもどこへ? 誰もがそう思ったときだった。
『ノイズだ!』
『うわあぁ!』
外からそんな声が聞こえてくる。慌てるようにヘリを飛び出すマリア。
「これは?」
「おや? 遅かったですね」
ソロモンの杖を手に持つウェルがそこにいた。辺りにはノイズの仕業と思われる炭が残っていた。
「どうしてここまで……」
呟くマリアを無視するように、工場の外へと歩き出すウェル。
「どこに行くの?」
「まだ残りがいないか確認するだけですよ」
ウェルに続くようにマリアも外へ出ると、部活に行く途中だったのだろうか。中学生らしき少年たちと目が合う。
「おやぁ?」
少年たちを見つけるとソロモンの杖を振りかざすウェル。
「待って! その子たちは関係ない!」
マリアの悲痛な叫びも虚しく、炭となった少年たちが視界に入る。
「終わりましたね。行きましょうか」
「ええ。そうね」
目に浮かぶ涙を拭い、立ち上がるマリア。その光景を目に焼きつけるように見つめ、ゆっくりと踵を返しヘリに歩きだす。
「さてここからは、S.O.N.Gの装者たちを別々の場所へ誘導する必要がある。『ガングニール』は本当に出撃しないのだな?」
「ええ。間違いなく。彼女の融合症例は僕の予想以上の速さで進んでいますからね」
ウェルの答えにマリアは再び複雑そうな表情を浮かべる。
「なら問題はないわね。『アメノハバキリ』も負傷した傷が癒えていないと聞く。『イチイバル』に『イガリマ』、『シュルシャガナ』を私とカリオストロ、プレラーティでそれぞれを相手にする。目的のモノはお前たちでどうにかなるな?」
「ええ。マリアには万が一を考えて備えてもらいますが、問題はないでしょう」
ナスターシャの言葉を聞いてサンジェルマンたちは頷くとそれぞれ別々の場所へテレポートジャムを使い移動する。