戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
ノイズやデスアーミーの全滅を確認した後、それぞれの場所にいた者たちは本部へと集まる。今回の被害は想定を遥かに超えるもので、ほとんどの者が表情が暗い。
「いやぁ。ガンダムの戦闘は初めて見ましたが、あれは素晴らしい。『シンフォギアシステム』と同じく誰が残したかわからない、搭乗者の動きとリンクさせて巨大兵器を動かす『モビルトーレスシステム』。搭乗者の状態をあれほど再現するとは驚きました」
1人愉快そうに語るウェル。ほとんどの者が不快な表情を向けるが、本人は気にしていないようだ。
「シンフォギアを纏ってガンダムに乗る。その発想は僕も思いつかない。話には聞いていましたが、この目で見るまでは半信半疑でした。この2つの理論は同じ人物が残した物かもしれませんね。なにせシンフォギアを纏ってガンダムに乗っているとフォニックゲインが更に高まるようですから。それにガンダムがガングニールの槍で戦ったことも驚きですよ。ガンダムでシンフォギアの力を使えるなんてね」
どんどん語るウェルの言葉に何人かは拳を握りしめる。奪われてしまったが、彼がいなければネフシュタンの起動実験は行われていなかったのだから誰も言えずにいるのかもしれない。
「絶唱。フォニックゲインを最大まで高め、シンフォギアのバックファイアを外へ放出する。もちろん使用者には相当の負担があるわけですが、あれもガンダムに乗っていたからあれほどの威力を出せたのかも」
ウェルの頬にマリアの拳が突き刺さり、続く言葉を遮る。
「いい加減にしろ! 奏はあの時、自分の適合係数が落ちていることはわかっていた。それで絶唱を使えばどうなるかも。そんな奏の覚悟が、見守るしかなかったみんなの気持ちがわからないわけではないでしょ?」
怒り浸透のマリア比べて、何故殴られたのかわからないという顔を浮かべるウェル。
「ネフシュタンを守りきれなかった。いえ、纏うシンフォギアを持たないあなたに言われる覚えはありませんよ」
殴られた拍子に倒れた体をゆっくり起こしながら、続ける。
「おやおや。他の皆さんも彼女と同じですか」
ここに翼がいなくてよかった。それがこの場にいる全員の気持ちだった。もし翼がいたなら今頃、ウェルは斬り捨てられていただろうと思うからだ。
「まぁ僕としては、得る物も多かったのでよしとしましょう」
そう言い残し、部屋を後にする。
(ガンダムとシンフォギア。両方に共通するのは発動に同じ適合係数がいること。そして、同じく聖遺物を介してその力を扱うこと。そのため、ガンダムの搭乗者と装者を別々に用意することは出来なかった。これは今回のノイズとデスアーミーの融合を見据えたもののような気がしますね。いったいどこの誰がこんなことを想定していたのでしょう)
1人廊下を歩きながら、思考を巡らす。
(シンフォギアとガンダム。いずれ僕が解明してみますよ。そのためにも、計画を早めることにしますかね)
ウェルが怪しく微笑む。
風鳴翼は未だ1人で会場にいた。溢れる涙を止める術を知らずに。
「私がガンダムに乗れていれば、奏を」
天に向かい呟く。誰に言うわけでもなく。
ようやく戻った翼に誰も声をかけることは出来ないでいた。
「翼……」
血濡れたステージ衣装のままの姿に心配になる。
「マリア」
そんな翼がポツリと呟く。
「すまないが、ユニットの話は白紙に戻してほしい。私には奏以外の誰かと歌うことは出来そうにないから」
仕方のないこと。言われたマリアもそう思っていた。
「ええ、それはそうでしょうけど。でもね翼。歌うのは辞めないで」
今はいい。でもいつかはこの歌姫と並んで歌ってみたいとマリアも思っている。だから今回のことで翼が歌を辞めてしまわないか心配なのだ。
「しかし私にはもう」
「それでも歌うのよ。奏の分まで」
翼はこの言葉で俯いていた顔を上げ、マリアを見る。
「なにがわかる! 私の気持ちなど」
「わかるわよ。そう私にはね」
この言葉で翼は自分の言葉を後悔する。マリアにもいたのだと思い出したからだ。
まだ幼い頃、暴走した完全聖遺物を止めるため命を燃やした少女のことを。
「別に誰かのためじゃなくていい。自分のためでいいから歌いなさい。忘れないためにも」
マリアの言葉になにも返せず、再び俯く翼。
「♪♪♪」
突然歌い出したマリアに誰もが驚く。
「歌っているとね。思い出すの。あの日のことをいえ、これからは今日のこともでしょうね」
奏を失って辛いのはマリアも一緒だ。翼ほど一緒にいたわけではないが、これまで何度か交流もあり、友人として付き合ってきていたのだ。