戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
「未来。それまだかかりそう?」
ある日の放課後、未来が日誌を書いていると響がそわそわしながら聞いてくる。
「そっか。今日だったね。翼さんのCD」
なぜ響が急かすのかわかった未来は日誌に目を落とす。
「もう少しかかりそうだから響は先帰っていいよ?」
落ち着きなくうろうろする親友を待たせるのは悪いと思った未来はそう促す。
「本当? いやでも未来を置いて帰るのは申し訳ないっていうか」
響はどうするべきか唸っている。
「でも今時CDなんて珍しいね」
「初回特典が違うのだよ」
なぜか自慢げに話す響に、未来は呆れながらももう一度促す。
「借りたい本もあるから図書館に寄りたいし、今日は別々でもいいんじゃないかな? それに早く行かないと売り切れちゃうかもよ?」
その言葉に更に慌てだす響。
「それはまずい。ごめんね未来。また後で」
そう言うと同時くらいに走り出す響を見つめ、1つ溜息を溢し、窓に映る空を眺める。
「やっぱりわたしも行けばよかったかな」
そう呟きながら、日誌の続きに取り掛かる。
「いやぁ最後の1枚が残ってるなんてついてる」
お目当ての物を手に入れ、ご機嫌で歩く響。
「未来に悪いことしたから、フラワーのお好み焼きでも持って帰ろうかな」
学院の近くにある絶品と学生の間で有名なお好み焼き屋を思い出したからか、響のお腹が大きく鳴る。誰かに聞かれたわけではないが、顔を真っ赤にしながら目的の場所へ走る。
目的地まであと少しのところで、警報音が鳴り響く。
「まさかノイズ?」
この警報はノイズやデスアーミー、この2つが融合したアーミーノイズの出現のときに鳴るものだ。最近ではアーミーノイズの出現はほとんどなく、ノイズの出現ばかりである。
「早く避難しなきゃ」
シェルターを目指そうとした響の目に泣きながら母親を探す女の子がいた。
「お母さん。どこぉ?」
すぐそこまでノイズが迫っていることはわかっていたが、響は迷うことなく女の子の手を引いて走り出す。
女の子を連れて逃げ回る響。そんな響たちに狙いをつけたのか、執拗にノイズに囲まれていた。
「もう無理だよ」
女の子が泣きそうに呟く。
「お姉ちゃんが絶対助けるから」
そう言うが既に四方を囲まれている。逃げ場などないように見える。
「おい、そこのこっちだ」
ビルの隙間から白銀の髪をした少女が声をかける。迷う暇などなく響は女の子を抱えてそこへ飛び込んだ。
「全く、こうも多くちゃらちがあかねぇ。ここはあたしがなんとかするからお前はその子を連れて逃げろ」
それに対して響はすぐに一緒に逃げようと伝えようとして固まる。
【Killter Ichaival tron】
少女の姿があの日、ライブ会場で薄れる意識の中で見た姿と重なったからだ。
「こちらクリス。まだ避難しきれてねぇ民間人を発見した。すぐに確保してやってくれ」
通信機で本部と連絡を取る『イチイバル』のシンフォギアを纏った少女、雪音クリス。
『現在、翼がそちらに向かっている。それまでなんとしても耐えてくれ』
本部からの返事を聞くと広場に飛び出し両手、腰、背中にそれぞれある銃やミサイルなどをノイズにぶっ放した。
「ここは危険だ。さっさと離れろ」
未だ動かない響にクリスは声をかける。
(って言ってもノイズがあちこちにいやがる。先輩が来るまであたしが一緒にいるほうが安全か)
再びビルの隙間に戻ると今度は広場とは反対へ走り出す。
「おい、とりあえず安全な場所まであたしが一緒にいてやる。ついてこれるな?」
クリスの方へ視線を移した響は驚く。ノイズがその手を振り上げ、クリスを攻撃しようとしていたのだ。クリスはこちらに振り返っていて気付いていない様子だ。
(胸が熱い。歌……歌が聞こえる)
【Balwisyall Nescell gungnir tron】
そのまま無意識にクリスを攻撃しようとしていたノイズを殴り飛ばしていた。
「ノイズ観測地点よりアウフヴァッヘン波形確認。『イチイバル』、クリスちゃんとこれは……」
本部で情報を伝えていた友里は思わず言葉が詰まる。イチイバルの少し後に感知された波形のせいで。
「ガングニールだとぉ?」
風鳴司令の驚いた声が木霊する。でもそう、これは本来なら有り得ないはずなのだ。ガングニールの装者はすでにいないのだから。
それを通信で聞いていた翼の動揺は他の誰よりも大きなものだった。
「とにかくクリスくんからの要請だ。救護班を直ちに現場に向かわせろ。それとガングニールの波形の元の確保もだ」
アウフヴァッヘン波形が観測された。それは誰かがガングニールのシンフォギアを起動させたことを意味していた。その真意を確かめる必要があるのだ。