〈Side清隆〉
調査を始めてから、一週間がたったが
枯れない桜が枯れた日に何があったか
確たる証拠は得られないでいた。
わかったことといえば、桜が枯れる直前に
原因不明の事故が多発していたということ、
桜が咲いていたときには、理屈で
説明がつかない出来事が数多く起こっていた、
ということくらいでーーーー
「はぁ、具体的な成果はなし、か。姫乃と
さらは、何か収穫あったか?」
「これといった成果は…うぅ、
すいません、兄さん」
「そか、まぁ気にするなよ?俺も似たよう
なもんだしな。さらは?」
「ワタシもこれといっては…あ、でも、
桜の謎に直接関係があるかどうかわかりま
せんが、桜が咲いていた時代の風見学園の
学園長なんですけど、桜が枯れるのと時期を
同じくして、行方がわからなくなったそう
なんです。その人の名前、芳乃さくらって
言うそうなんですが…
センパイ、しってますか?」
「いや、親戚には、さくらなんて名前の
人はいないけど、気になるな、その人。
名前もそうだけど、桜が枯れたのと
同時期に姿を消したのがな…」
ーー芳乃さくら。聞いたことのない名前
のはずなのに、何故か懐かしいーーー
〈Side out〉
〈Side 立夏〉
調査開始から一週間、私もシャルルも葵も
なんの進展もない。有名な言い伝えだけ
あって、聞き込みをした人は、ほとんどが
天使の伝説を知っていたのだけど、私たち
が知っている以上のことは得られなかった。
当然記録になど残っているはずもなく、
開始一週間で、はやくも手詰まりである。
そんな中で一度全員で集まって、今まさに
新聞部部室で会議中なわけだがーーー
「…で、清隆達も確たる情報は得られな
かった、ってわけね?まあ、こっちも同じ
ようなもんだけど。」
「すいません、立夏さん…あ、でも枯れ
ない桜のことではないですけど、天使の
伝説のことで、姫乃が気になる話を
聞いたそうd「ホントに!?それで、何なの
それは⁉」……」
「大丈夫ですか兄さん?あ、えっとそれ
なんですけど、あくまで噂ですけど、
天使が舞い降りる日付が、4月30日だ
という話を、聞き込みをした人の何人か
が言ってました。」
「「「「「えぇっっ!?超ビッグニュース
じゃん???」」」」」
「はい、そうなんです。信憑性も
そこそこだと思います」
「なるほどね。でかしたわ、姫乃!!
えっと、4月30日といえば…
明日じゃない!?」
「ホントです!いいタイミングすぎて、
逆に疑ってしまいそうです。」
「いや、さら、そう言わずに。
立夏さん、これは確かめる価値あり、
ってやつじゃないですか?」
「清隆の言う通りよ!これはきっと、
運命なのよ!天使がまるで私たちに会おう
としてるみたいじゃない!?
では、私たち公式新聞部は、明日、枯れない桜
のとこで、噂が真実かどうか確かめること!
いいわね!?」
私がそう宣言すると、全員苦笑しながらも
同意してくれるのであった。
それにしても、何故こんなに天使の伝説
が気になるのだろうか。それについての答え
を、私は既にうっすらとだが、わかってい
たりする。
ーーーー私の前世の記憶。
カテゴリー5の魔法使い。
孤高のカトレア。
世界を旅した記憶。その中に確かに存在
していた。天使のようなヒト。
だけど、大切なはずなのに、そのヒト
のことは、ぼんやりとも思い出せない。
わかるのは、確かに居たということだけ。
もう一つ気になること。
これは親しい人にしか明かしてないのだが、
私の胸ーー心臓の真上あたりーーに桜の花弁
の形をした模様がある。生まれた時からある
もので、刺青のようだが、私にその記憶は
ないし、別に嫌とも思わないのでこのまま
にしているんだけど、その模様が、最近
になって、時々熱く感じるようになった。
それも、前世のことを考えてるときだけ。
私の前世と、この模様は、何故か関係が
あるような気がしている。
「…細かい設定…」
ーーーー葵には少しおはなし(物理)
が必要みたいね?^o^
〈Side out〉
〈Side清隆〉
昨日の葵ちゃんは……うん。
まぁ犠牲は付きものだし、しょうがない
よな。「清隆さん⁉私はまだ死んでませ
んよ⁉」
時刻は夕方、俺たち六人は枯れない桜
のとこに集まっている。4月30日、くるかも
しれない天使を、みんなで待っているわけ
なんだが…
誰かが言い出したことだった。
暇つぶしに、枯れない桜が願いを叶える
という噂をみんなで試してみないか、と。
六人全員で桜に手を触れ、それぞれの
願いを思ったときーーーー
フワリと頬をなでた、甘い香り。
むせかえるほど濃くなる香り。
俺たち六人の願いを叶えるためか、
はたまたただの偶然か。
目の前の枯れない桜が満開になり、
周りにあった桜の木が、一斉に咲き始めた。
〈Side out〉
〈Side三人称〉
「えぇっ⁉桜が…」
「ちょっと清隆どうしたの?せっかく
今願い…ごと…を…」
清隆を咎めようとした立夏も、目の前の
光景に言葉を失った。
「桜が…咲いてる…」
「これって、私たちが願った、から?」
「だとしたらロマンチックですよね…」
あまりのことに言葉を失うシャルルと、
それぞれ思ったコトを口にする、
さら、姫乃、葵。
六人全員がしばらく惚けているとーー
六人の携帯にメールの着信を知らせる電子音
が、同時に鳴った。
「桜が咲いたら、約束のあの場所で、
¥@56ぜふtyw36¥/08〜 なにこれ、文字化け
してるじゃない」
「「「「「ぇっ⁉」」」」」
「あ、ゴメンゴメン、なんかイタズラみたい」
「立夏さんにもそのメールが?」
「え?清隆にも?ってことは、みんなに
も同じメールが?」
六人全員に、全く同じメールが
同時に届いた。
と、そこで、さらが一つのことに気づく。
「これ、送信日時が、1952年の4月30日
になってますよ?その時代って、まだ携帯
とかない時代ですけど…センパイは
どう思います?」
「そうだなぁ…送信した側の時間設定
が間違ってたか、もしくはイタズラk「いいえ、
違うわ!コレは正しく、過去から送られて
きた手紙なのよ!!」……くすん。」
「兄さん… あ、メールのことでしたね。
それで立夏さん、過去から送られてきた
って、どういうことですか?」
「言葉通りの意味よ。
いい?枯れていた桜が咲いた、
それと同時に私たち全員に、全く同じ
メールが送られてきた。
これって、偶然かしら?このメールを
送ってきた人が、この桜を通して何かを
伝えようとしてるんだと思わない?」
「そう考えるのが普通、ですか。
だったら、調べないと、ですね。これで
俺たちの枯れない桜の調査が少しは進むと
いいんですけどね…」
「進むといい、じゃなくて、頑張って進め
なさい、清隆。姫乃と、さらもね。」
「「「はいっっ!!」」」
和やかな雰囲気が、六人を包む。
「あら、いい返事ね。期待してるわ。」
「立夏さんこそ、天使の伝説、何かわかるよう
に頑張ってくださいよ?」
「うふふ、リッカ、タカ君の方が一枚上手
みたいだよ?」
「誰に言ってるのかしら清隆、シャルル?
私を誰だと思ってるの?
私はカテゴリー5の魔法使い、
孤高のカトレア、
「リッカ・グリーンウッド」よ!
ーーーーえ?」
立夏の名乗りに、
この場にいる誰とも違う、
澄んだ声が
ーーーーーー重なった。
〈Side out〉
〈Side立夏〉
私の声に重ねられた、誰のものか
解らない声。
私はその澄んだ声を聞いたとき、何故か
泣きたくなるほど、懐かしさをおぼえた。
六人全員で声の聞こえた方を振り向くとそこ
には、一人の青年が立っていた。
肌は雪みたいに白く。
目にかかるくらいの黒髪で。
切れ長だけれど、優しげな茶色の瞳。
すっと通った顔立ちで。
男性なのに綺麗としか形容できない青年が。
私たちと少し離れた所に佇んでいた。
ーーーーあなたはだれ?
そう聞こうとした私だが、言えなかった。
ーー目と頬が熱い。
あぁ、私、泣いてるんだ。
「え?…どうして…私…泣いて…」
「立夏さん⁉」
「リッカ⁉」
「立夏さん⁉」
「森園センパイ⁉」
「リッカさん⁉」
「あ、あはは…なんだか、涙が止まらな
くなっちゃって…」
とめどなく涙を流す私に、
フワリと、白いハンカチが添えられた。
「大丈夫?リッカ。君は相変わらず
泣き虫なんだね。」
「え?…ありがとう。
なんだか涙がとまらなくて。
…もう大丈夫よ。
それで、あなたは?どうして私の名前、
ううん、前世の名前を知ってるの?」
「あれ?僕のこと覚えてないの?
今泣いてたからてっきり覚えてるとばかり…
この様子だと、他の人もかな?
清隆、君は?」
「ぇっ⁉俺はお前と初対面…だよな?
…でもなんでだろ、懐かしいって、
すごくそう思うんだ。」
「兄さんも?」
「タカ君も?」
「センパイもですか?」
「清隆さんも?」
「あちゃー、そっか。
君たちはまだ、さくらに会ってないんだ。」
「…?どういうことだ?」
清隆が問いかけた。
それに答えるつもりがないのか、彼は、
「いやー、参ったな…全員きたから、
てっきり僕に会いにきたかと思ったのに。
まださくらに預けたままなのか。」
「ちょっとキミ!さっきから何なの⁉
ちゃんと私たちにもわかるように説明
しなさい!」
言ってすぐに私は、しまったと思った。
何故だろう、彼にこんな言葉を使ってしまった
自己嫌悪とでも言うべきか。
彼は少し驚いた後、その綺麗な顔に悲しげな
笑顔を浮かべた。
「あっ…ゴメンね。
そりゃそうか。君たちは、僕を知らない
わけだからね。
では、自己紹介を。
僕は天上アリア(てんじょうアリア)
君たち全員のことを知っているよ。」
ーーーー天上アリア。心にすっと入って
きた。
「天上アリア、ね。わかったわ。
それで、どうしてあなたは、私たちの
ことを知っているの?それに、さっきから
私たちが感じている懐かしさは、何?」
私は泣いてしまいそうになるのを必死でこら
えて、彼に問いかけた。
「…、そうだね、何から話したものかな。
う〜ん…
話してあげたいんだけど、君たちはまだ
さくらに会ってないんだよね?」
彼が清隆達の方を向いて問いかけた。
「さくら…って、人なのか?俺は会ったこ
とはないな。るる姉、姫乃、葵ちゃん、さらは
?」
「わたしもないかなぁ。」
「私もありません。」
「私もないです。」
「あの〜…天上先輩?「アリアでいいよ?」
アリア先輩、さくらって、芳乃さくらさんの
ことですか?風見学園の学園長だった。」
「そう、その人。サラは会ったことあるの⁉」
「いぇ、ないですけど、その人、20年くらい
前に行方不明になってますよ?」
「「「「「えっ⁉どういうこと⁉」」」」」
私たち全員から疑問の視線を向けられた
彼は、
「あぁー…説明してなかったな。
そのさくらが、近々帰って来るんだよ、ここ
初音島に。
てことは、全員まだ会ってないんだ。
あ、でも安心して?近いうちに必ず会えるから。
それまで、僕からは話せないかな。「なっ⁉
なんで」はいはい、リッカ、落ち着いて、
綺麗な顔が台無しだよ?
うーん、君たちがさくらに会うまで、
きっと、僕には会えないだろうね。」
「えっ⁉どうしてだ?」
「ん?みんなも知っている通り、
天使が降りてこられるのは、一日だけ
だからだよ。」
「「「「「「ッッッッ!!!」」」」」」
さも当然かのように、アリアはそう口にした。
「じゃあ、やっぱり、天使はあなたなのね?」
「そうだよ、リッカ。
いろいろと伝えられてると思うけど、
だいたいが真実なんだ。
一つ付け加えるとしたら、ここにいられるのは
あと数分が限界ってとこかな?」
「そんな⁉私は、まだ、何も聞いていないし、
思い出せないのよ⁉」
あんまりだ、と私は思った。それと同時
に、彼と離れないといけないと思うと、
また涙がこぼれた。
「泣かないで、リッカ。相変わらず泣き虫
なんだから。じゃあ、そんなリッカに、
一つ魔法をプレゼントしよう。」
そう言って彼は少しかがんで、私のおでこに
優しく口付けた。
とたんに、暖かい気持ちが広がり、涙が不思議と
とまった。私が呆然としていると、
「さあ、清隆達も僕の近くに。
あ、安心して、口付けはしないよ。」
そう言って彼が清隆達を近くによせた、
一瞬後には…
青く光り輝く翼のようなもので、
清隆達をすっぽりと包んでしまい、
気がつくと、清隆達の手には
青く輝く羽があった。
何が起こっているか全く理解できないでいる
清隆達に、彼は、
「さくらに会ったら、その羽を渡して欲しい
んだ。
そしたら、また僕に会えるよ。よろしくね、
清隆?「…はっ⁉あ、あぁ、わかった。」
じゃあ、最後に、リッカ?」
「…何?」
「あはは、そう怒らないで、
君には特別にひとつ、
この羽を受けとって欲しい。」
そう言って彼が差し出したのは、清隆達のもの
より一回り大きく、強く輝く羽だった。
「その羽には、思い出が詰まっている。哀しい
ものも、楽しいものも、全てだ。
君が本当に僕のことを思い出したいと
願えば、その羽は答えてくれるよ。
使い方はさくらに聞くといい。
あ、そろそろ時間みたいだね。」
「ちょっと待ってよ、アリア…アルッッ‼」
不意に、私は彼のことをアルと呼んだ。
「ッッ‼ あはは、やっぱりリッカだ。
君は僕のことをいつもそう呼んでいたからね。
…ありがとう、リッカ。大丈夫、またすぐに
会えるから。
あ、清隆?1番大事なことわすれてたけど、
…「なんだ?」
リッカに手、だしたら…
削るよ?「ドコを⁉」
あはは、冗談だよ。じゃあ、またね。
またすぐに会えるよ。」
彼がそう言った瞬間、
青い光りが瞬いたと思ったら、
彼はもう、そこにはいなかった。
〈Side out〉
お付き合いいただき、ありがとうございます。
今回と、後一回て、プロローグは終りです。
メインは、風見鶏の話になる予定です。
それと、主人公、やっとでました。
天上アリア。
彼がどうして天使みたいになっている
かということは、おはなしの中で
これから、明かしていこうと思います。
では、またの機会に。