準備、ととのいました‼
ーーよろしい。
では、発動だ。
最大級の、原作ブレイカーを。
この話には、いたるところにオリジナル、
改変があります。
賛否両論あるかもしれませんが、
どうぞ!
〈Side リッカ〉
あれは、今から少し昔になるわね。
まだ、魔法使いにカテゴリーというものが
存在していなかったわ。
でも、その当時から、孤高のカトレアとは
呼ばれていたわね。
その時に私は世界中を旅して周ってたわ。
その当時の私には親友がいてね。
ーージル•ハサウェイ。
ちょっとうっかりな娘だったけど、ただ
1人の親友と呼べる人よ。
時々、一緒に旅もしたりなんかして、
本当に楽しかったわ。
ーーーーーーーーーーーーーー
「ま、待ってよ〜リッカ〜」
「遅いわよジル。置いてっちゃうわよ?」
「そんなこと言って、出発の日に寝坊して、
一日延期したのは、誰のせいだっけ?」
「あ、あれは仕方ないでしょ⁉ちょっと
夜更かししちゃったんだから…」
「リッカって、時々すごく抜けてるから
なぁ…これで、孤高のカトレア、なんて
呼ばれてるんだもん。」
「な、なによもう…ジルのイジワル…」
「あはは、ごめんごめん。」
「もう……こうなったら、あの丘まで
競争よ。負けたら、晩御飯おごりね?」
そう言って、私は走りだす。
慌ててジルが追いかけてくる。
本当に楽しい、夢のような日々。
でもね、夢はいつかは醒めてしまう。
だから、私は今を全力で、生きよう。
強く、そう思った。
私は、数年間、ジルと一緒に旅をした。
一旦、ジルが故郷に戻ることになったけど、
私たちの友情は変わってない。
ーーそんなある日、ジルから手紙がきた。
『リッカへ。
突然故郷に戻ることになって、ごめんね?
ほんとは、まだまだ旅を続けたいけど、
もう続けられません。
でも、リッカとの旅が嫌になったとかじゃ
ないよ。本当に楽しかった。
リッカとは、死ぬまで、いや、死んでも
友達だよ。
あのね、わたし、大切な人ができたんだ。
その人と結婚するつもりなの。
だから、ごめんなさい、リッカ。
勝手だよね。わかってる。
それでも、リッカには、解ってほしい
から、手紙を書きました。
結婚式は、二ヶ月後に挙げる予定です。
リッカにも来てほしい。
待ってるね。
ジル•ハサウェイ』
心の底から、嬉しかった。
そりゃそうだ。親友が、幸せになるのだ
から。
式には絶対にいかなくちゃね。
そして、二ヶ月後、私はジルの結婚式
に来ている。
昨日は、ジルにひたすら謝られて、
泣かれて、コッチまで涙がでてきてしまう
ほどだった。
「ジル、おめでとう‼」
「ありがとう、リッカ。」
「はぁ…ジルに先を越されるとはね…」
「あはは、リッカもいい人が…見つかると
いいね。」
「な、なによ。勝者の余裕?」
「さあ、どうだろうね。」
「はぁ…幸せになりなさいよ?親友。」
「うん…ありがとう、リッカ。」
私たちは、式の後、2人だけで酒場で
語らっている。
「リッカはさ、気になってる人とか
いないの?」
「うーん…いないわね。
ほら、私の名前って、ある程度有名に
なってるじゃない?
それで、逆によってくる人がいないと
いうか…」
「あ〜なるほど。
つまり、自分と釣り合うような人が
見当たらないと?」
「偉そうに言えばそうね。」
「まあ、リッカ綺麗だし、魔法も上手く
使えるし…」
「褒めても何も出ないわよ。
でも、実際そうなのよね…私に話かけて
くる魔法使いは、ただ私に媚を売りたい
だけ。それ以外は下心丸出しよ。
露骨に私の身体目当ての奴とかいたし。
…まあ、少し痛い目にあってもらった
けど。」
「あ、あはは…」
「あ、でも最近、気になる噂があってね。」
「噂?」
「ある魔法使いらしいんだけど、どんな
怪我や病気も治してしまうらしくて、
天使って呼ばれてるらしいの。」
「ふーん…リッカは、会ったこと
あるの?」
「無いわ。でも、容姿は、一度見たら
忘れられないほど綺麗らしいわ。」
「え?男の人、なんだよね?」
「そこなのよね。気になるわ。それに、
治癒の魔法のスペシャリストらしい
からね。あってみたいって思ってるとこ。」
「リッカ、一目惚れしちゃったりしてね。」
「そんなことあるわけないでしょ?
これでも、男を見る目はあるつもりよ?」
「わからないよ〜?そんなこと言ってる
人が1番危ないんだから。」
「はいはい、肝に命じておきます。」
「もう…で、リッカは、これからどう
するの?まだ旅を続けるの?」
「そうね。出来るだけ、魔法を世の中
に広めるつもりよ。それに、
最近、魔女狩りもでてきたって聞いたから、
知り合いが無事かどうか、確かめて
みるつもり。
その途中で、天使って人を探してみようか
なって。」
「魔女狩りかあ。最近増えてきてるらし
いね。リッカ、気をつけてね?」
「ジルこそ。結婚するってことは、
魔法を捨てるんでしょ?」
「うん、まあ…そうなるね。」
私たち魔法使いは、結婚をすると、
何故か徐々に魔法が使えなくなって
いく。特に女性は、子供が生まれると
そのスピードが早まると聞く。
ジルに、何もないといいんだけど。
「とにかく、ジルに何かあったら、必ず
助けにくるから。」
「もう、心配しすぎだよ〜」
「それぐらいでいいのよ。
そろそろ行かないと。」
「…そっか。また、会えるよね。」
「あたりまえでしょ?何年たっても、
会いにくるわよ。
ジルがジルおばあちゃんになっても
会いにきてあげるんだから。」
「あはは、約束だよ?」
「ええ。じゃ、またね、ジル。」
「うん、またね、リッカ。」
そして、私はジルと別れた。
それから、暫く私は旅を続けた。
が、今回の旅は、悲しいことが多すぎる。
ジルも心配していたことだが、魔女狩りの
数が異常に多い。
なかには、普通の人も、女性というだけで
火炙りにされたりしている。
そのなかで、知り合いの魔法使いが
死んだという知らせが、何件も届いて
くる。いっそのこと、
私の全力を解放して、魔女狩りの
首謀者達を街ごと吹き飛ばしてやろうかと
思ったりもしたが、ジルがいれば
とめるだろうと思い、私は普通の女性
のふりをして旅を続けた。
その道中、ある村に立ち寄った。
この村はまだ魔女狩りが行われていなく、
比較的安全であると言える。
ーー今思えば、少し休みたかったのかも
しれない。大切な人の死の報せがどんどん
入ってくるなかで、
神経が摩耗し、憔悴しきっていたの
だと思う。
この村に入った時点で気づくべきだった。
魔女狩りが行われていないということは、
言い換えれば起こる可能性が最も高いと
いうこと。
私は、宿で休んでいたところを集団
で襲われたらしい。
そして、私が魔女であるということが
何故かばれていた。
通常、私や、他の魔法使いは、縄でしば
られようが、頑丈な檻に閉じ込められ
ようが、基本的に大丈夫である。
いずれも、壊せばいいだけである。
しかし、ある条件下で、魔法が使えなく
なることがある。
それは、魔法に意識を割けない時。
絶えず体を針などで刺されようものなら
その痛みの感覚にしか意識が向かなく
なり、魔法の使用が困難になる。
が、ふつうなら、そんな状況になる
前に、私なら元凶を潰すし、最悪、
魔法使いなら、逃げ切ることくらい
簡単だろう。
しかし、それでも知り合いが、魔女狩りで
死んでしまった訳を、私は知ることに
なる。
襲われた私は、鳩尾をなぐられ、気絶した。
そして、気づいた時には、
「ーーーーッ‼ーーーッ‼‼」
私は声にならない悲鳴をあげていた。
両の手のひらが、杭のようなもので
撃ち抜かれていた。
さらに、私は十字架に磔にされ、もう足元
には、炎が迫っていた。
「魔女に死を‼
我らの土地を穢したものを火炙りに‼」
誰かが叫んでいる。
魔女狩りのリーダーだろうか。
もう、何かを考える余裕も無い。
迫ってくる炎で、目を開けていることすら
辛い。
あぁ、私、ここで死ぬんだ。…ジル、
どうしてるかなぁ。
私が力尽きて目を閉じようとした時、
「死ぬなよ。」
そんな声が聞こえた気がして、
私を焼く炎が、嘘みたいに弾け飛んで、
私は誰かに抱きかかえられて、
空を舞っていた。
手の痛みで、意識がはっきりしないのか、
その誰かの言葉や、姿がはっきりとは
見えない。
それでも薄っすらと…
その人には、青白く輝く翼があった。
ーーーー天使?ってことは、私、
死んだのかしら?
「大丈夫、今は応急手当しかできないけど
すぐに良くなるから、少し待ってね。」
天使がそう言った後、私を淡いブルーの
光が包んだ。
痛みがすっと和らいで、意識が少しだけ
クリアになった。
その誰かは、私を抱えたままで、
空を舞って、
「この娘は、僕が攫います。
魔女狩りの皆さん、残念でしたね。」
「な⁉誰だ貴様は⁉」
「僕がだれかなど、どうでもいい。人を
殺そうとしたんだ。
それなりの覚悟はあってのことなん
だろうな。」
天使が、言葉に怒気を滲ませて問う。
「何を言うか‼その女は魔女だぞ?
見たところ、貴様も同類のようだが…
悪魔の使いを始末して、何が悪い‼
貴様も同じだ‼今すぐ始末してやるから、
降りてこい‼」
すると天使は、
「救いはない、か…
命の対価は存在しない。
あてがうものは、また命のみ。」
そう呟いて、唄い始めた。
『望むなら、叶えよう。
僕が望む、僕の願いを。
願うなら、叶えよう。
僕が願う、僕の望みを。
僕は願う、改変を。僕は望む、変革を。
響け声よ。世界を変革し、叶えよ。
僕の望む、世界の姿へ。』
天使が唄い終わると、目の前の景色が、
青い光の粒子となって、溶けていった。
魔女狩りを行っていた人も、私を磔にした
十字架も、果ては村そのものが
空気に溶けるように消えていき、
いつの間にかその場には木々が茂り、
まるで、最初からなかったように、
ただ森が広がるのみだった。
「あ、あなたは、いったい…」
「ん?あ、気がついた?でも、酷い怪我
だったんだから、
もう少しだけ休みなよ。」
そう言って天使は、私の目を手で覆った。
すると、私の意識は急速に呑まれていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
目を覚ますと、見知らぬ天井、フカフカの
ベットで、私は寝ていた。
「わた、し、は…
‼そうよ、魔女狩りに捕まって、
殺されそうになって…」
飛び起きたわたしは、思わずよろけて
しまう。
その時、部屋の戸があいて、見知らぬ
男の人が入ってきた。
私は思わず身構えた。
「あ、やっと起きたんだ。
でもいきなり動いちゃだめだよ?」
「あ、あなたは誰?それと私は
どうしてここに?
確か私、殺されかけて…」
そこまで言って、思い出す。
私が天使に助けられたことに。
「そんなに警戒しなくてもいいよ?
恩をきせるつもりはないけど、
君を助けたの、僕なんだけど?」
「え⁉じゃあ、あなたがあの天使なの⁉」
「あはは、まあね。」
「そうなのね…あ、助けてくれて
ありがとう。私はリッカ•グリーンウッド。
あなたは?」
「僕は、アリア•スカイルーラ。アリアで
いいよ?
にしても、君が孤高のカトレア、か。
噂以上に綺麗な人だったんだ。」
「ふふ、ありがとう。
…それから私、あなたに幾つか聞いたい
ことがあるんだけど。」
「いいよ。答えられる範囲で。」
そう言って彼、アリアは微笑む。
気を抜いたら、見惚れてしまうほど
綺麗な笑顔だ。
目にかかるほどの黒髪に、切れ長の目。
すっと通った顔立ちで、
ゾッとするほど綺麗な男性である。
これは一度見たら、忘れられないだろう。
「あなたって、最近噂の天使って呼ばれてる
魔法使いなのよね?」
「噂かどうかはしらないけど、確かに
僕は天使と名乗っているからね。」
「そう…噂は、本当?
とてつもない治癒の魔法を使える
らしいけど。」
「怪我を治したりすることでしょ?
僕の本質は違うけど、治癒の魔法はかなり
得意だね。君の怪我も、もう完全に
治ってるでしょ?」
「リッカでいいわ。私もアリアって呼ぶ
から。
えっと、その怪我のことも含めてだけど、
どうして私をたすけたの?」
「声が聞こえたから。」
「…え?」
「いや、リッカさ、死ぬかもしれない
って思って、誰かに会いたいって
強く思ったでしょ?
その想いが、偶然近くにいた僕に届いたっ
ていうわけ。
それにさ、そもそも誰かを助けるのに理由、
いらないでしょ?」
「…そうなの?」
「そうだよ?あぁ、それに、助けて
みてびっくり、こんな美少女だったから
ね。役得ってやつさ。
あ、それとここなんだけど、君が襲われた
ところからはかなり離れた街だよ。
それなりにいい宿に泊まってる。」
彼の言葉に思わず顔が朱くなる。
「そ、そう。とにかく、お礼をしなきゃ
いけないわね。
助けてくれて、ありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして。
あ、これからも旅を続けるつもりなの?」
「そうよ?それがどうかした?」
「うん、泊まるなら、大きな街がいいよ。
街が大きいと、魔女狩りの心配はない
からね。」
「そうなの?何からなにまで、悪いわね。
…それと、私が襲われた村だけど、
どうなったの?」
「あ…あの村はね、もう存在しないよ。
地図にも。」
「え⁉どういうこと⁉」
「僕はあの時、唄を唄った。
…本当はこれ、誰にも教えないんだけど。
リッカも、他の人にいわないでね?
ーーあの時僕は一つの魔法を行使した。
禁呪、〝改変の唄″。僕が創り出した
魔法のひとつで、使えるのは僕だけ。
あの魔法を行使すると、世界をかえる
ことができる。
その気になれば、文明を滅ぼすことさえ
可能だろう。
あの村はね、最初から存在していなかった
ということになってる。
地図には、もう載ってない。
僕とリッカ以外の記憶からも、じきに
消えていくだろう。」
「あなたは…何者?」
「天使、だよ。天使はさ、人々を癒し
もするし、報いを与えたりもする。
ただ、それだけさ。
と言っても、あの時消し去った人の顔は
生涯わすれないよ。
ずっと、背負ってくからね。」
私は、そう語る彼が、とても苦しそうに
見えた。絶大な力を持ちながら、人々を
癒し続ける彼の背負っているものが、
ほんの少し、垣間見えた気がする。
「ねえ、アリア、あなたはこれから
どうするの?」
「僕?ぼくはね、困ってる人を探す、かな。
僕の力で救えるなら、救ってあげたい。
それが、僕の使命だと思ってる。」
私が、少しでも彼の力になれるなら…
「ねえ、アリア、もしよかったら私と…」
「ストップ‼僕の旅に君は巻き込めないよ。
これは、僕だけの道さ。」
「…そう。なら…」
私は、少しだけ勇気を出してみた。
「私があなたを巻き込むわ‼それなら
問題ないでしょ?」
「…君がさ、僕に一緒にいてほしいって
思うのはさ、あの時が危機的であって、
僕が少しよく見えただけだよ。」
「そんなことないわ。私、これでも男を
見る目は持ってるつもりよ?
その私がいいって言ってるの。
…ダメかしら?」
そう言って、ワザと上目遣いで見つめる。
「はあ…リッカって、以外と強かなんだね」
「ん?何か言った?」
「わかった。
ただし、二ヶ月の間だけだよ。僕も
行くところがあるからね。」
そう言ってもらえた私はその時が、
最高に嬉しかったのだと思う。
つり橋効果、みたいなものもあったとは
思うけど、結局は私の一目惚れね。
それから、暫くアリアと旅をすることに
なった。
その間は本当に楽しかったわ。
…でも、2人で宿をふた部屋取ると
もったいないので、結局は2人で一部屋
だった。
「んじゃ、僕は椅子の上で寝るから、
リッカはベットをつかいなよ。」
「そんな、アリアに悪いわ。
…私は構わないから、2人でベットを使えば
いいじゃない。」
「…僕が構うんだけど…」
「いや、なの?」
「グッ…OKわかったわかりましたよ。」
こんな感じで、いつも2人で寝ていた。
アリアの近くにいると安心できる。
…アリアが私に手を出してくる
ことはなかったのだけど。
そんなこんなで、二ヶ月なんてあっと
いうまだった。
そしてついに、アリアと別れる日がきた。
「…本当に行っちゃうの?」
「うん。今日も、催促の手紙が届いた
からね。」
「ねえアリア、私、あなたのことが…」
好き、と伝えようとした時、彼が
人差し指を私の唇に当てて、
「リッカ。その先は、言わないで。
僕と君は、まだまだやることがある。
これから先、魔法使いを保護し、
育てるためにも、僕たちは
役目があるだろ?
それに、きっとまた会えるさ。
もう君の魔力のオーラは覚えたからね。
辿ればいつでも会いにいける。
その時に、もう一度君の気持ちを
聞かせてよ。」
「…アリアってさ、やっぱりズルいわ。
私の気持ちをわかっててそんなこと
言うんでしょ?」
「ま、まあね。」
「はあ…じゃあ、一つ約束を
しましょ?
アリアの、今の仕事が終わったら、
真っ先に私に会いにくること。いい?」
「そうだね、そうしよう。
じゃ、リッカ、ちょっと近くに寄って
くれる?」
私が近くによると、アリアは
私のおでこに、ちゅっ、と、口づけた。
とたんに、私の顔が朱くなる。
「な⁉いきなり何を…」
「魔法だよ。また会えるようにって。
じゃあ、またね、
リッカ•グリーンウッド。」
そう言って、彼は旅立っていった。
「全く、こんなことされたら、
忘れようにも忘れられないじゃない。
ーーバカ。」
そこで、いったん私は彼と別れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
そして数ヶ月たった。
私は今、全力で走っている。
旅の道中、嫌な噂を耳にした。
ジルの故郷、そこで魔女狩りが行われる
というものだ。
無事でいてね、ジル。
急ぎに急いで、ジルの故郷に到着した
私は…
あまりの光景に暫く立ち尽くしてしまった。
家が、ジルの住んでいた家が燃えている。
「ジル⁉ジル、どこなの⁉」
しばらくして、瓦礫の下敷きになっている
ジルを見つける。
「ジル⁉しっかりして⁉」
慌てて瓦礫を吹き飛ばして、ジルを
助け出す。
「ジル⁉ジル⁉待ってて、今、治癒の
魔法を…」
「う…リッカ……?」
「しゃべらないで‼
…私の治癒の魔法じゃ弱すぎる。
医者にみせないと‼」
「リッカ……もう、いいんだよ。」
「何を言ってるの⁉」
ジルの言葉に込められた響きに、私は
悟った。
悟ってしまった。
ジルはもう、死を覚悟していることを。
「私の愛する人も……もう……
死んじゃった……でもね……リッカ…
私たちを……苦しめた……人間のひとを…
恨まないで……ね?……人間はね……
弱い…生き物なんだよ……だから……」
私は涙を流しながらジルの言葉に
耳を傾ける。
「リッカが……復讐に生きると…わたし、
……悲しいよ……だから……
私の夢を……託すね……魔法使いが……
安心して……暮らせる…世の中に……
世界中を…花でいっぱいに……して…」
私の手の中で、一つの命が
尽きようとしている。
私はただ涙を流すことしかできない。
その時、私達のすぐそばに、誰かが
空から降りてきた。
「リッカ‼大丈夫⁉」
その声は、私が唯一頼ることができる、
アリアのものだった。
「アリア…ジルが…ジルが…」
アリアは、すぐさま駆け寄り、ジルに魔法
をかける。
ジルを淡いブルーの光が包む。
ーーーーが、その光が収まっても、
ジルの状態は変わらない。
「どうして⁉何も変わらないの⁉」
「リッカ、僕の今の魔法は治癒する
ものではあるけど、限りなく死に近いと
多分効果がない。」
「じゃあ、他に方法は⁉私、何でも
するわ‼だからジルを助けて‼」
すると、ジルが弱々しくつぶやく。
「リッカ……もういいんだよ……
私はもう…ここで……」
「ジル…ジル……」
私はただ涙を流すことしかできず、
ジルの手を握ることしかできなかった。
その時、アリアの声が響いた。
「お前、死ぬの?ここで?」
「アリアっ‼」
「仕方…ない、よ……私が選んだんだ
から………」
「だが、お前が死ぬことで、リッカは
そのことに責任を感じ続けるよ?
大切な人の死は、残された人の心に
呪いを遺すんだ。
それだけは許さない。僕の前で
人に呪いをあたえるなど、何があっても
許さない。
お前が死ぬことで、リッカの中のお前
も死ぬんだよ?
リッカをずっと、縛るつもりなの?」
「ッッッ‼‼」
私はそのあまりの言葉に、アリアの
頬を叩いた。
ーーーーパンッ、と乾いた音が響く。
しかし、アリアは顔色ひとつ変えない。
「でも……それでも……どうしようも
ないじゃない‼」
ジルが血を口に滲ませながら叫ぶ。
私にはそれが、命を燃やして叫んで
いるように見え、
悲しみや怒りがぐちゃぐちゃになって、
どうしたらいいかわからないでいた。
さらに、アリアが言う。
「お前に、あと3分だけ時間をあげる。
僕の魔法で、その時間だけは、
まだここにとどまっていられる。
その間に決めろ。
ーーーーお前の望みを。」
「望み?」
「そうだよ。今、お前の目の前にいるのは、
天使であり、悪魔でもある、
アリア•スカイルーラだ。
対価を差し出せば、望みを叶えてあげる。
たとえそれが、どんな望みであっても。」
そう言ってアリアを青白い光が包む。
アリアは、その背中に蒼く光り輝く翼を
はためかせ、私達の目の前に浮かんだ。
「アリア⁉いったいどういうつもりよ⁉
いきなり現れて、勝手なことばかり‼
「リッカ•グリーンウッド。君の友人に
残された時間は少ない。
ーー別れを済ますといいよ。」
アリアはそのゾッとするほど
美しい顔を少しも変えず、私に
そう言って、それっきり
何も話さなくなった。
ジルは、さっきまで息もたえだえだったのが
嘘のように、しっかりと言葉を口にしている。
「リッカ、あの人は…?」
「天使って呼ばれてる魔法使いよ。
私が魔女狩りに襲われて、殺されそうに
なってるところを助けてくれたの。
信用していいとおもうわ。」
「そっかあ…リッカにも大事な人ができた
みたいだね。
ーー不思議な気分だな。
私、もう死んじゃうってわかってるのに、
覚悟してたはずなのに、
何でこんなにも悲しいんだろうね。
ーーーー
ねえ、リッカ、私、望んでもいいのかな?
まだ、生きていたい。
大切な人たちと、まだ、生きていたい。
リッカと、また旅行もしたいよ。」
ジルが、ポロポロと涙をこぼしながら
私にそう口にする。
「私もよ…ジル。
また、ジルと一緒に、笑いながら
旅していたい。
ジルの夢も、一緒に叶えるから。
まだまだ、話したいよ…」
私も、止まらない涙をこらえ、そう口にする。
しばらく、2人で泣きながら抱き合って
いると、
ジルの体が、薄れ始めた。
「あ、時間みたい。」
「そんな⁉待ってよ、ジル‼
わたし、まだ、あなたと…」
その時、ずっと黙っていたアリアの声が
響いた。
「望みは決まった?」
ジルが、前に進み出る。
「天使さん、
私の願いは、ーーー
まだ、生きていたい。
リッカや、私の大切な人と、
まだ、一緒にいたい。
何を対価にしてもいいです。
私を、まだここにいさせてください。」
ジルが、静かに口にした。
アリアは暫く黙っていたが、不意に
顔をほころばせ、
私が見惚れた、あの笑顔を作った。
「その言葉が聞きたかったよ。命は、
すがりついてでも生き切るものだからね。
あ、さっきはごめんね?あんな厳しい
こと言って。
ああでも言わないと本音が聞けないと
思ったからね。」
「いや、もういいですよ。
それより、本当に私の願いを叶えてくれ
るんですか?」
「うん。君と、君の大切な人、君の
フィアンセかな?
を、生き返らせる。」
私は、それを聞いて衝撃を受けた。
当然だ。
どんな魔法を使っても、死者を蘇らせる
ことなど、できはしない。
それでも、アリアは続ける。
「君は、僕に願いを託した。
対価を支払うともいった。
だから、叶えてあげる。」
「ちょっとアリア⁉適当なこと
言わないで‼いくらあなたでもそんなこと
できる訳が…」
それでも、アリアは続ける。
「僕は今から、僕が使えるなかで、最高
の魔法を使う。
今から見ることは、誰にも言ったらだめ
だよ?
それに、君を助けるのは、リッカの親友
だからだ。
…特別だよ?」
そう言ってアリアは、少しだけ高く
浮かんだ。
そして、アリアが目を閉じたと
思ったら、
アリアの手から徐々に黒くて禍々しい
模様が、顔へと広がっていく。
恐らく、あれは全身に広がっているの
だろう。
暫くしてアリアが目を開き、
右手を前に出したと思ったら、
その手の上には、
天秤が浮かんでいた。
そして、暗く、激しい唄が響く。
『僕は約束しよう。
世界を操ると。
運命すらも、
この手のなかに。
僕の思い通りにならないことなど、
あってはならない。
僕の意思が、
世界の意思だ。』
アリアが唄い終わると、
天秤から、光が溢れ出し、私達と、
それから、目で見える全ての範囲を包んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
光が収まると、そこに、ジルが、
何も変わらない姿でたっていた。
ただ、さっきまで燃えていたジルの
家は跡形もなく消え、そこには
森が広がるのみ。
そして、ジルは、いつの間にか
旅装束で包まれていた。
「…何をしたの?」
あまりのことに呆然となりながらも、
私は問いかける。
「僕がやったことは、ただひとつ。
この世界と、運命に干渉した。
つまり、書き換えたんだ。
ジルがここで魔女狩りにあって、夫婦
一緒に殺されたということを、
全てなかったことにした。」
「「………はっ?」」
あまりに壮大な話に、ついていけない。
「リッカも知っての通り、どんな魔法を使っ
ても、死者を呼び戻すことはできない。
だから、世界そのものの運命を変えた。
いや、上書きしたってところかな。
とにかく、ジルは、リッカと一緒に
生まれ故郷に旅行にきたってことに
なってる。
君は今、ロンドンに小さな家を建てて、
そこで夫婦で暮らしてるよ。
もちろん、旦那さんは元気だよ。」
「そんな⁉あり得ないでしょ⁉
じゃあ何?あなたは世界そのものに
干渉したっていうの⁉」
「え?そうだけど?」
こともなげにいうアリアに、
思わず脱力した私達であった。
無茶苦茶すぎるだろ、と…
「ねえ、リッカ。私、未だに信じられない
んだけど…」
「心配しないで、私もよ。
いや、でも、私を魔女狩りから助けてくれた
ときに、一つの村をまるごと消失させてた
ような…地図からもいつの間にか消えてた
っけ…」
「と、とにかく、ありがとう。
私はジル。リッカの親友だよ。」
「初めまして、僕はアリア•スカイルーラ。
よかった、上手くいって。
どこにも問題はないみたいだね。」
「はい。
えっと、それで私は何を対価にすれば
いいんですか?」
「あ、それなら、もうもらったよ。
ジル、君はもう以前の君ではないよ。
君には名前を変えてもらった。
ジル、という名前は変わらないけど、
セカンドネームが変わってる。
君はもう対価を支払っているよ。」
「そうなんですか⁉」
「暫くは不便だろうけど、慣れると
思うよ。」
そこで私はふと思った。
「ねえ、アリア。ジルの名前を変えたのって
さっきの魔法がばれて、ジルたちが
暮らしにくくなるのを防ぐため?」
そう言うとアリアはとたんに顔を朱く
して、
「あぁ…何で言っちゃうかな…」
と呟き、うつむいた。
あ、これはヤバイ。
こんな姿を見せられたら。
ときめいて、しまった。
「なるほど…リッカを虜にしたのは
こういうところか…」
「ちょ、ちょっとジル⁉」
「安心して、リッカ。私はアリアには
手をださないよ。
ーーでも、早めに仕留めたほうが
いいかもね。
頑張ってね、リッカ。」
ジルの小声で囁かれ、私も頬が
熱くなる。
「リッカ?ジル?そろそろ行こうと
思うんだけど…
とりあえず、ジルをロンドンまで送り
届けないとね。」
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私とジル、アリアは、ロンドンまで
一緒に旅をした。
アリアの魔法は成功していて、
ジルは、フィアンセの待つ家へと
帰っていった。
そして、ロンドンに滞在中に、私達は、
リズ、エリザベスと出会って、
風見鶏設立に協力したわ。
魔法使いが、世間に受け入れられ、
また、育てることの助けになれば
いいと思ってね。
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私は、何度もアリアに告白しようと、
機会を狙ってたんだけどね。
暫くロンドンに滞在して、
風見鶏が設立したのと同時期にね、
アリアは連絡がつかなくなったの。
それこそ、ヨーロッパ中を探したわよ。
でも、結局見つからなくてね。
そうこうしてるうちに、魔法使いに
カテゴリーってものができて、
私はカテゴリー5となった。
その時、アリアの名前も見つけたのよ。
カテゴリー5のなかに、ね。
でも、結局居場所はわからなかったわ。
私はリズに頼まれて、風見鶏に入った。
そして、今に至るというわけよ。
〈Side out〉
はい‼
ジル生存‼
つい勢いでやってしまったが、
後悔はしていない(キリッ
賛否両論あるかもしれませんが、
リッカとアリアの出会いの物語を
お送りしました。
因みに、これから先も、
アリアや、リッカの魔法は登場します。
けどぶっちゃけ、アリアの魔法、チート
すぎね?
タグ追加したほうがいいかな、
と思ってる作者だったりします。
作中で、アリアがジルを生き返らせる
ために使った魔法は、
アリアが創り出した禁呪、
ラケシスの天秤、っていいます。
知ってるヒトはしってるのか、これ?
これから先の話では、
結構魔法が主体になっていきます。
魔法の解説の話を、もう少し進んだら
入れようと思ってますので、
ご期待ください。
次回では、アリアのチートさを、
清隆とリッカがそろってこき下ろしたり、
ツインテールのあの娘が登場したりします。
それでは、またの機会に。