ウチのトレーナー、転生者だってよ   作:ローグ5

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思ったより好評だったこともあり、同じ世界観で書いてみました。

1話とは別のトレーナーが主役の話となっています。


まあいいかよろしくなぁ!

 ホウエン地方のミナモシティ、広大な海のすぐそばにあるこの街は巨大なデパートや地方随一の港、ポケモンコンテストの総本山を有するホウエンきっての大都市である。

 当然ながら街の人口は多く郊外には大規模なマンションが立ち並んでいるが、限られたスペースを巧みに使い散歩コースやちょっとした公園、さらにはポケモンバトル用のコートを有する住みやすそうな所だ。

 

 そんなマンションの一室(表札にはクドウとある)の中、リビングでは10歳くらいの少年、クドウ家の長男であるリョウイチがそわそわと落ち着かない様子でうろうろと行ったり来たりしていた。

 

「ああ~マジで早くしてくれぇ~。もう待ちきれねえよぉ~」

 

 そう言って自分の持ってる端末を10秒ぶり5度目に見る。

 何度見てもやっぱり父親からの返信がない。

 焦燥感のあまり、目が血走りそうだ。

 

 今自分のやっている事が無駄なのは彼にもわかるが落ちつかない。

 気を紛らわせようと端末にインストールした市販の簡易ポケモン図鑑アプリ(本物に比べると機能は少ないがそれでもポケモンについていろいろ教えてくれる優れものなのだ)で色々とポケモンについて調べなおしても落ち着けない。

 

「う゛あ゛ーっ生殺しだぁ~父さん早くしてくれぇ~」

 

 歩き回りながら頭を抱えて髪をかき回す。

 リョウイチ少年のこうそくいどうで素早さを上げるポケモンの如き有様も無理はない。

 何と言っても今日は、父親が初めてのポケモンを連れてきてくれる日なのだ。

 

 父親がリョウイチの為に連れてくる予定のポケモンはイーブイ。

 合計七種類のタイプの異なる進化先を持ち人懐っこく育てやすい、俗に言う御三家と呼ばれるケモンたちと同様に初心者向けのポケモンだ。

 

 無論イーブイに不満はない。

 ただそのイーブイがどんな性格で、どんな特性のイーブイなのかがものすっごく気がかりなのだ。

 

「流石に夢特性イーブイなわけないよなぁ。

 もしそうだったらニンフィアにしてフェアリースキンを活かしてのハイパーボイスが出来るけど……そうじゃないならシャワーズかサンダースあたりか。なら望ましい性格はシャワーズなら受けを、サンダースなら」

 

 部屋をうろうろし続けるリョウイチ少年は己の知っている知識をつぶやく。

 それは、彼が前世のゲームで学んだ知識である。

 

 実をいうとリョウイチには前世の記憶────―ポケモンが架空の存在だった世界の記憶がある。

 最初は戸惑ったものだが今は特に深く考え受け入れており、むしろこの前世由来の知識を活かして、人生を豊かにしたいと考えていた。

 

 最早うろ覚えでしかない事も多いが、ポケモンに関する豊富な知識はそれでもこの世界では有効な事は多いはずであるはずだ。

 なので折角だし強力なポケモンを育て上げポケモントレーナーとして成功して、二世帯住宅を建てられるくらい稼いでみようかと思ったのだ。

 

「あ、でも電磁波をすばやさを活かして撒くのも、いやホウエンの水ポケの長を考えると……うーん……」

 

 そんな訳でリョウイチはイーブイの性格や特性に気をもんでいる。

 特性や性格の如何でどのようにイーブイを育てていくかが全く変わるからだ。

 

 実際対戦におけるポケモンの性格と特性は非常に重要である。

 性格によってポケモンは伸びやすい能力が全く異なるし、ポケモンごとに幾つかある特性は物によって対戦に役立つか否かが激しい。

 

 例えばイーブイの特性は野生のポケモンから逃げやすくなるにげあしに、タイプ一致の技の威力が増すてきおうりょく。

 それにごく少数、相手が自分の苦手な技を持っているか分かるきけんよちである。

 

 一見するとてきおうりょくがよさそうに見えるが、きけんよちの特性は進化後に役立つ特性に変わる進化先が多いのでそれが望ましい。

 本当に特性は重要なのだ。

 

 そんな訳で一刻も早くイーブイのそれらを確認したいとリョウイチは思っていた。

 

「っ来た!」

 

 そんなリョウイチの耳にピンポーンというチャイム音が鳴る。

 たちまち玄関にダッシュすると扉を開ける。

 玄関を開けるといたのはリョウイチの父とパートナーのキノガッサ。

 キノガッサの手には小型ポケモン用の籠があった。

 

「父さん! イーブイ来た!?」

「おお、リョウイチ良く待ってたな。ほらこの子だぞ」

 

 そう言ってクドウ父はキノガッサに持たせていた籠の扉を開ける。

 開けて出てく来たのは────―元気いっぱいの茶色の毛玉、それすなわちイーブイだ。

 

「あっ……」

 

 籠から出たイーブイはリョウイチを早速自分の主人と認識したのか周りを一周すると前足を立ててじゃれつき鳴き声を上げる。

 その尻尾はフリフリと振られており、つぶらな瞳は喜びに見開かれているように見えた。

 自身のパートナーに出会えた喜びからか明るい声でイーブイはぶいーと鳴いた。

 

 本物のイーブイはめっちゃ可愛かった。

 

「どうだ本物のイーブイは? 凄い可愛いだろう」

「うん。ものすげえ可愛い」

 

 父親の言葉にうなづいたリョウイチは端末のポケモン図鑑アプリでイーブイをスキャンする。

 特性は野生のポケモンから逃げやすくなるにげあし。

 性格は特に能力的な長所がないがんばりや。

 何方もリョウイチの求める物ではない。

 

 だが、リョウイチはポケモン図鑑アプリに失着せずに閉じた。

 このイーブイの可愛さに比べればそんなもの前世由来の情報などは髪の毛一本程の価値もない。

 自分を見上げて「どうしたのー?」と言わんばかりに小首をかしげ自分を見上げるイーブイに比べれば。

 

「まあいいかよろしくなぁ!」

 

 リョウイチはイーブイに叫んだ。

 前世チートよりも大切な物ってあるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エーフィの朝は早い。

 この家に来てから半年後にはエーフィに進化した事もあり、10年間いつも日の出前には起きるようにしている。

 

 ぱちりと目を覚ましたエーフィはベッドの上のリョウイチを見てみると昨日は夜遅かったからかぐっすりと寝ている。

 傍らにある毛布を引いた籠の中で寝ているワンパチとニャスパーも起きる気配を片時も見せない。

 

「ゆっくりねー……」

 

 小声で短く呟いてエーフィは部屋の外へ出る。

 扉を器用に開けるとリビングの窓際の定位置に着く。

 ちょっと高いところにあるので太陽光が入るうえに、リョウイチがインターネットで買った夏でもひんやりしている毛布が敷いてあるので気持ちよいのだ。

 

 定位置で寝っ転がって太陽が来る時をじっと待つ。

 すると日の出がやって来た。

 

「あー気持ちいい」

 

 日の出の陽光がガラス越しにエーフィの身体を撫でていく。

 優しい光の下で優雅に伸びをする。

 

 エーフィにとって太陽の光は最高の御馳走だ。

 リョウイチのような人間の楽しみで例えるならば温泉に浸かりながら美味しい物を食べる感じだろうか。

 何はともあれエーフィは自分の家と陽光が同じくらい好きである。

 

 暫く陽光を堪能した後に暇なのでTVを付けてみる。

 流石にエーフィにも人間の文字は読めないが、それでも長年の習慣で端っこの赤いボタンを押すとTVが付くことは知っている。

 

 TVは偶然にもリョウイチとエーフィが良く見る「今日のイーブイ」の時間だった。

 この番組は全国津々浦々のイーブイやその進化系が出演する番組であり、エーフィも実をいうと一度出たことがある。

 その時は日向ぼっこしているだけだったけど、出演記念に美味しいきのみがもらえたのでまた出たいと思う事がある。

 

「アローラかー。一回行ったけどマラサダ美味しかったなぁ」

 

 今日の放送はアローラ地方というところでトレーナーの手伝いをしているシャワーズが主役だった。

 豪華そうなホテルでビーチの管理をやっているトレーナーと共におぼれている人がいないか見まわったり、毒のある水ポケモンを追い払ったりしたりと活躍するシャワーズは実に働き者だと皆から好かれているようだ。

 

(うーん、ミナモって海に面しているし僕もシャワーズになればよかったかも。いやでも僕、イーブイの頃からお日様大好きだったしなぁ)

 

 そんな自分の意をくんでリョウイチは自分をイーブイからエーフィへ進化させてくれたのである。

 しかしそれでも、なまじ進化先が色々あるからかたまーにこっちも良かったかもと思ってしまうのだ。

 

(ま、お日様気持ちいしいっか)

 

 そんな風にしてしばらく暇をつぶしていると、リョウイチの部屋から悲鳴が聞こえてきた。

 続いてニャスパーとワンパチの鳴き声も。

 

「あーあ、あいつらまたやったな。おチビ達のやつ」

 

 定位置から飛び降りてリョウイチの部屋へ行ってみると案の定起き抜けのニャスパーとワンパチがリョウイチに対してじゃれついている。

 

「ごはん、ごはん」

「遊んでー!」

「ぐえーっ! わかったわかったから! ちょっと落ち着いて!?」

 

 チビ助たちは容赦を知らぬ。

 リョウイチの上でトランポリンの様に跳ねまわり自身の要望を催促しだした。

 ああもう滅茶苦茶である。

 

 仕方がないのでワンパチとニャスパーをサイコキネシスを併用してやんわりと止めてやる。

 全く、チビ助たちは何でここまで元気が有り余っているのだろうか。

 

「よしなさい」

「おおマジ助かったわ……ちょっと準備するから待ってて」

 

 そう言ってリョウイチはさっさと着替えて自身の準備を整えるとワンパチとニャスパーを小脇に抱えてリビングへ行く。

 

 バタバタと二匹が暴れるがそれは嫌だからじゃなくて単にかまってもらって嬉しいからだ。

 やれやれ、育て屋から引き取った時から思っていたが二人ともわんぱくだと世話が大変である。

 

 そんな風にエーフィが後ろを歩いているとリョウイチがちょっと振り向いてこういった。

 

「よし、折角だし奮発してベーコンも焼こうか。エーフィも昔から好きだろ?」

「もちろんもちろん! カリカリのベーコン大好きだよ!」

 

 無論エーフィの言葉は鳴き声にしか聞こえず、そういったことはリョウイチは分からない。

 けれども大体の意味は伝わったようでよしよしとニャスパーを抱いた手でエーフィの首筋を撫でる。

 普通の一日だけど穏やかで幸せな一日の始まりだった。

 

 リョウイチもエーフィ達も、特にバトルで大成することはないけど、これでも結構幸せだった。

 

 

 




「家にもイーブイ来てほしいなぁ」なんてことを思いながら書きました。
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