呪術廻戦外伝 〜共に在りし呪い〜   作:鮫縞 三季壱

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仏教信者:神よ、おぉ神よ


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2017年 春

 

 

 

 

 

 

 

「⿴⿻⿸、ほら⿴⿻⿸、起きなさい。今日は施しの日よ。私たち家族を守護してくださっている、(たいら)様からあなたを護る力を授かる儀式の日よ。あなたが寝坊じゃ意味ないじゃないの」

 

そう呼びかけられて、俺は目を覚ます。やけに頭が朦朧としている。それなのに母の言葉はすんなりと入ってくる。

「⿴⿻⿸、やっと起きたのね。早く準備しなさい」

 

母が急かしてくる。今日の平様からの施しの日。俺たち家族に悪いものが付かないようにする日らしい。父と母は以前に施しを受けて、残るは俺だけのようだ。

 

「ちょっと待ってよ、母さん、まだ寝ぼけてるんだ」

 

母は落ち着きがなく、俺の部屋を歩き回っている。

 

「早くしてよ、これで平様がお怒りなったらどうするの!」

 

母が怒鳴った。さっきから俺の話を聞かず、ヒステリックに怒鳴り続けている。

 

「わかったよ、すぐに行くから、先に広間へ向かってて」

 

そう言って、母へ部屋から出て行ってもらう。母は不服そうな顔をしたが、なるべく早く、と言葉を残し、出て行った。

 

「はぁ」

 

嵐のような母が来て、少しばかりか疲れが溜まった。

施しの日、今日行われることに父や母の表情から、少しばかりの期待と、少しの恐怖があった。

 

「悪いものってなんだろうな」

 

そんな小言を口にしながら、机に置かれた服を見る。大きな袴のような服だ。

 

「だっせぇ、今どきこんなの着るか?」

 

そう言いながらも、母が持つ平様への信頼を落とさないために、袖を通した。

 

「サイズくらい合わせておいて欲しいな。こんなサイズ、父さんでも大きいくらいだろ」

 

ぶつくさと文句を言いながら、廊下を歩く。家は無駄に広い。京都のど真ん中にこんな土地があるのかと思うくらい広い。この家も、平様からの施しのひとつのようだ。

「広間と俺の部屋との距離が1番遠いんだよな」

 

文句は止まらない。朝早く起こされ、だっせぇ服を着さされて、長い廊下を歩かされる。母はこの1日全てが施しの日と言っていた。

 

広間の扉の前に立つ。

ザワリと悪寒がした。呼吸が浅くなる。背骨をゆっくりと冷やされ、気味の悪い汗が垂れる。

 

「なんだよこれ」

 

俺は緊張しているのだ。と心で唱え、汗を床にたれた服で拭い、深呼吸をした。

扉を開ける。

 

「やっと来たのね、遅いじゃない」

 

母は柔らかな表情で俺に呼びかける。父は静かに俺を見て、何かに納得したように前を向いた。相変わらず呼吸は整わず、汗は背中を伝っている。

 

「やぁやぁやぁ、お待たせしたねぇ、⿴⿻⿸君」

 

広間に顔を出した男が、俺の名前を呼んだ。白い装束を着て、大きな札とビンを持っている。

 

「どうしたんだい?⿴⿻⿸君、今日は君への施しの日。幸せの絶頂だろう?」

そう言って、俺に声をかけてくる。この人が母が心酔する、平様らしい。

 

一言で言うと、胡散臭い。

 

「ほら、ここに寝てよ。今から施しだよぅ」

 

そう言って平様は俺を寝台へ寝かせた。寝台はひんやりして、朝からの朦朧とした感じと相まって、瞼が落ちてしまう。

 

「おやすみ。起きたら幸せだよ」

 

幸せ?よく分からない。もう眠い。

 

 

 

 

 

薄まっていく意識の中で、平様が俺に向かい、何かを突きつけようとする姿が見えた。

大ぶりの刀。

平様はそれを俺の胸にぶっ刺した。

 

「が゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

痛い!痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

 

頭が痛みしか感じない。痛みしか感じさせてくれない。

目は覚めた。どくどくと汚ぇ赤い液体が俺の胸から流れていく。これならもっと早く眠りに入ればよかった。

 

「ฅ☆⊂Σ★・●ゝ⊃´ゝゝ╬∞ỏД⊿*วڡ₩وڡ彡Ü₩∞厂灬⊃゜厂ゞ灬/⊃●●厂ゝ★:(☆¥ฅ♭วงووẅ_ÜÜ〜ỦỦÜ₩₩A∞」

 

俺から流れた液体が、平様の前に集まる。平様はビンにそれを入れていく。

必要以上に流れたもののおかげで、意識は覚醒している。

「_(/A_:★AÜ●:灬Ü゜★A_ゞ::灬〜⊃¥★:ゞ●ฅ★ゝ∞´⊂*_Σ╬´・Дو_╬╬_ووA_ڡง₩Üẅو∞∞__ゞง*A゜AوẅAÜÜゞ」

平様は気味の悪い言葉を唱え続ける。ビンの中の液体がデロリと形を変える。

「お父様、お母様、⿴⿻⿸君への施しを終わります」

 

悪寒が強くなる。平様から受けた悪寒以上のものが、俺の体を通る。

やばい。こんな体でも、恐怖は感じる。

 

 

 

「おい。血まみれ。私が見えるか?」

は?

目の前には、大きな口に、ひとつの目、人間とは全く違う見た目の化け物が俺の目の前にいた。

 

「Σ*●*∞ฅÜ_★Ü∞●灬ẅ:งД〜*彡⊃゜_★ゞ_★A∞〜ẅڡ:灬*⊃゜╬¥Ü_ฅA∞●ẅ₩灬งД灬*゜╬¥」

平様は俺の血を入れたビンによく分からない言葉を唱え続けている。

 

「ふぅむ。血人形(ちにんぎょう)か。下手くそな術式だな。」

 

化け物は言った。

 

「血まみれ。私が見えているな。今貴様は死にそうだなぁ…」

 

化け物はニヤニヤと俺の体を見回す。きめぇ。

 

「貴様の父も母も、私が見えていないようだ。こんな死地に居合わせて、我々呪いが見えないとは。余程センスが無いのだな…」

 

化け物が何か言っている。呪い?死地?センス?何言ってんだこいつ。

 

「見えているのはそこの白装束と貴様だけだ。しかし、あの白装束は弱いな。このレベルの儀式にどんな時間をかけているんだ」

 

儀式?時間?こいつは本当に何を言っている?

 

「彡:⊃〜´ง●:ง灬ฅ¥Д_●ง彡AÜΣ⊃ΣAوゝวỦ〜ゝ?ゝ…ゝ♭ỏΣ´/〜:…و⊂Ủ〜彡(★〜♭ΣỦ〜彡/Ü_´AÜ⊂♭★ΣỦ★Σ(⊃〜⊂★⊃⊂★⊂」

 

「やっとか。下手くそが」

化け物は吐き捨てるように言った。

 

踊り、壊し、喰い、創れ!我が血人形。彼の者の血肉を喰らい、顕現せよ!!

 

ビンから流れ出た血液が、ヒトのような形を作った。俺が流した血液の比じゃないほど大量の血で出来ている。

それが俺に向かって歩いてきた。

 

「時間もかかれば、完成度も低い!!本当に貴様の術式かぁ?」

 

化け物は呆れたように笑いながら、血人形と呼ばれたモノを見る。

 

「もういいだろう。私は腹が減った。」

 

化け物は自らの大きすぎる口を触った。

 

「ここは貴様ら人間にならうか」

 

 

い た だ き ま す

 

バクンッ

ベチャクチャ

グチョ

ゴクン

 

「ご馳走様」

 

俺は化け物が血人形とやらをムシャムシャと食べる様子を見るしか無かった。

 

「すまん、待たせたか?血まみれ」

 

化け物はまた俺に話しかけてきた。

 

「あ、あぁ。待ちくたびれたよ。待ちすぎて胸に穴が空いちまった。」

「ふん。くだらん冗談だな。だがまぁ、これは私の過失だ。」

 

 

化け物はえらく素直に話してくる。

 

「む。白装束はどこへ行った?

「逃げおったか。残穢は残っておらんな。逃げ足だけは速いようだ。」

 

「平様は何をする気だったんだ?」

「ぬ?あやつ平と言うのか。くははははっ!平となっ!源平の一族があそこまで下衆とはのぅ!」

 

化け物は大声で笑った。

 

母と父は放心状態のようだ。心酔していた平様が得体の知れないモノを生み出し、逃げおせたのだから。

 

そういう俺も意識がまた薄まってきた。今度こそ死ぬ。さっきは無理くり起こされたようなもんだからな。

 

「おい。血まみれ。何をしている。まだ私の目的は果たせていない。」

「目的?なんだよそれ」

「貴様らこそ、なんのために私を呼んだ?私は呼ばれたからここに来て、程よい飯もあったから食うただけだ」

「は?」

「ぬ?」

「意味わかんねぇんだけど」

「私も同じくだが」

 

 

一旦落ち着いて、目の前の化け物と向き合う。やっぱ気味の悪い見た目だ。

 

「血まみれ。私の目的は、受肉。まぁ、身体を奪うことだ。我々呪いは、呪力そのもの。身体は無く、意識のような存在であるのだ。そもそも呪力は負の感情。普段生きるには面倒なのだよ。」

「呪力。さっき平様から感じた悪寒の事か?じゃあ、あの人形も…呪い?」

「む?あれは違う。あれは術式(じゅつしき)だ。呪力を利用出来る人間には、一人ひとり違った術式が刻まれている。簡単なものから、難しいものまでな。あやつのものは難度こそは低いが、使用者が下手すぎだ。」

 

 

 

「まぁ、こんな話はよい。貴様の肉体をよこせ。」

「はぁ?!俺の身体を見ろよ…。こんなボロボロの身体貰っていいのかよ?」

「むぅ。貴様の言うことは正しいかもな。血まみれ。だか、私もこちらへ来た以上目的は達成したい。」

「だろ?俺じゃなくて、別のやつにしとけよ!五体が満足なやつをさ!」

「ならばこうしよう。私は貴様に受肉し、心臓を治す。私は肉体を得る。貴様は命が助かる。どうだ?」

「いいな。その案。って待てよ!心臓治っても、俺の身体取られるんだろ?意味ねぇじゃねぇか…!」

「ぬ。バレたか。

「ならば、貴様の視力、聴力をよこせ。その代わりに貴様の肉体を共有できるようにしてやろう」

「視力…?聴力…?本気で言ってんのか?!」

「本気だが?しかし気をつけろよ?今貴様の生死は私が決める立場にある」

「ま、待て待て!なら右目と右耳ならどうだ?!俺は左利きだし、右側なら大丈夫だろ!多分…。」

「ほぉう。いい提案だ。乗った。」

 

 

縛りは結ばれた。

 

 

胸に空いた穴は塞がり、右目から色が無くなった。耳の方ももう聞こえなくなっているだろう。

目の前の化け物はとても笑顔だ。

 

「な、なぁ。身体を奪うんじゃなかったのか?」

「だから。共有と言ったであろう?我々は貴様の体に共存するのだ。」

 

大きな口をにっこりと向けてくる。本当にきめぇ。

 

 

「で、どうすんだ?」

「む?そうだのぅ。平とやらは逃げよったし、貴様の父母は壊れてしまった。置いていけ」

「壊れた、って!平様はもうここには近づかないだろ?

父さんと母さんはもう大丈夫なんだろ?」

 

「はぁ。貴様は阿呆か。平は貴様の死を見ておらん。確認のため適当な理由をつけて、もう一度ここへ足を向けるであろうな。

「今は私達も逃げるしかないであろう」

 

 

「俺がいなくなったら、父さんと母さんはどう思うかな…」

「どうも思わんだろう。貴様の胸に刃が突かれるまで、あの白装束を信頼していたのだから。子も阿呆なら親も阿呆だ」

 

 

「なぁ、俺の代わりを用意したら、母さんたち幸せかな。」

「ふむ。最悪の事件に息子を巻き込んだが、息子は生還、五体満足。共に幸せに暮らしましたとさ。いいシナリオじゃないか

「しかし、それは貴様ではなく、貴様の名を持ったただの拾い子だ。それで良いのだな?」

 

 

この事件で父さんと母さんは心に大きな傷を残しただろう。それでも、平様のような人間にもう関わらないように、俺はあなた達のところから消えるよ。

この大きな家も、あいつのものだ。今身を包んでいるものすべてがあいつからの物だ。今までとは全く違う生活になると思うけど。今日よりは幸せだと思う。今までありがとう。父さん。母さん。

 

 

 

ガチャガチャ

バンッ!

 

「◌  さん!◌  さん!呪術高専のものです!「(まど)」から一般宅周辺での「(とばり)」発生の通報がありました!」

「中に誰かいらっしゃいますか!」

 

ドアから大きな声が響く。誰か来たようだ。

 

「む?呪術高専とな?面倒なことになりそうだ」

「おい!なんだよ呪術高専(じゅじゅつこうせん)って。さっきから何言ってんのかわかんねぇよ…」

「おい。血まみれ。とりあえず逃げるぞ。私たちがここで見つかっては、貴様の父母の幸せはないと思え。」

「父さんと母さんの幸せ…」

 

 

 

 

 

 

決心はついた。

と言うか、つけるしか無かった。

 

 

 

 

 

 

「父さん。母さん。じゃあね」

 

窓を開けて外に出る。京都に高い家は無く、うちは平屋だったから、難なく逃げることが出来た。

 

 

 

「なぁ。血まみれ。これからどこへ行く?目的なき旅は身を滅ぼすだけだぞ。」

「その血まみれってのやめてくれ。俺には名前があるんだよ!◌   ⿴⿻⿸って名前がさ!」

「ふぅむ。私には貴様の名前が聞こえなかったがな。」

「は?」

 

「父母との関係を絶つということは、目視できる最大のつながり、名を捨てるということだ。それが私との共存、呪いとの"縛り"なのだよ」

「名を捨てる。関係を絶つ…」

「そうだ。貴様に名はない。今後名を名乗ることもないだろう。貴様の名を知るのは貴様自身だけだ」

 

「名無し…」

「むぅ?なんだそれは」

「俺のこれからの名前だよ」

「くはははっ!名が無いことを名にしたか!とんちがよく利いておる!」

「何はともあれ、これから一緒だ

「お前もこの名前でいいよな?」

 

「む?私には既に『出入口(でいりぐち)』の名がある。誇り高き名がな。」

「出入口?さっきの平様…いや平が使ってた血人形とやらといい、呪いに関するものって名前がそのまんまの奴らばっかりなのか?」

「ぬ?それもそうかもな。呪いは人々の恐怖、イメージが固まり、形になったものだ。私は出入口。人々が扉の先にある恐怖を覚え、それが形になった呪い。今や扉はどこにでもあり、私は存在し続け、強化され続けるということだ」

 

「呪い…。呪いねぇ…」

「嬉しいことに貴様には術式がある。私が名前をつけてやろう。そのまんまが嫌なのだろう?」

「俺、術式あんの?!名前はかっけぇやつがいいなぁ」

「ひとまず練習からだ。貴様には私の呪力と、"縛り"による貴様自身の強化された呪力がある。後者は少し特殊なようだがな。」

「俺の呪力が特殊?」

「貴様の視力と聴力を奪ったからかなぁ…」

「かなぁ…。って…」

「実際に使ってみねばわからん。塵も積もればなんとやらだ。」

「意味全然違ぇけど…」

 

 

 

 

 

1人とひとつの呪いは京都の街を歩きながら話していた。

目指すは平様…いや、平を見つけることだ。

 

 

 

 

 

 

0話 終




初めて書きました。
鮫縞 三季壱(さめじま みきひと)と申します。
呪術廻戦が好きです。ナナミンいけめん。1番好きなのは虎杖です。黒閃いいですよね。釘崎かわいい。名言メーカー。芥見先生の言葉のセンスを真似したいです。特にバトル前の煽りあい。160㌔のキャッチボール見たいなやつ。バトル前からゾクゾクして、バトルでもゾクゾクして、バトル後の展開でもゾクゾクする。ゾクゾク止まらないんですよね。

話は変わりますが、僕が書いたこの作品の主人公は名無しです。作品内でもずっと⿴⿻⿸で書きました。意味はないです。嘘です。あります。ないですって言ったらかっこよかったと思うんですけどね。おいおい名前は出そうと思います。
0話で、名無しと出入口の出会いのきっかけとなった術師、平様なんですが、フルネームは平 片拓(たいら ひらひら)といいます。名無しの名前ほど意味は込めていません。最初の敵だし、なんかいい名前ねぇかなぁーって考えてたら、源平合戦の話がテレビでしててですね、みなもとなんちゃらって名前にすると長ぇなー。って、だから平でたいらと読んで、名前をテキトーにつけました。どうですかね?彼の術式は『血人形』(愛い物)かなぁと。洋映画で多いんですよね。子供の人形が血まみれで出てくるの。生まれた時の血のイメージかな?
原作様では術式名ってかっこいい日本語なんですけど、僕自身漢字が苦手でして、当て字等々は雰囲気で見ていただけると嬉しいですね。
お読み下さり、ありがとうございました。
次もまたよろしくお願いします。
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