気づくと私はいつも海の上に立っていた。
ここがどこなのかわからない。
私が誰なのかわからない。
私はどういう存在なんだろう。
視界もぼんやりとしか見えない。
微かに見えるのは何かを身につけ海に立っている人。
そして、海に沈んで行く人。
声も何を言っているのかよく聞こえない。
たとえ、聞こえたとしても途切れ途切れでよくわからない。
ここはどこだろう。
私は誰なのだろう。
私はどういう存在なんだろう。
ある日、私は仰向けに倒れていた。
倒れた時に見えた空はとても青く美しいと思った。
そして私は、沈んだ。
暗い、暗い海の底。
海の上に立っていたときよりも見えない。
目の前にあるのはただただ、闇が広がっている。
寂しいな…。
また、あの綺麗な空を見てみたい。
そしてどのくらいの時間が経ったのだろうか。
ふと目を開けると光が見えた。
呼ばれている気がする…。
そう思い私は僅かにしか動かない身体で光の方を目指し始めた。
自分の身体が重い。
あれ?そういえば私、海の上ではどうやって体を動かしていたっけ…?
そんな疑問を抱きつつ、光の方へ向けて進んで行く。
もうすぐ光に触れる、そんな時だった。
『オ前ニ私ノチカラヲ与エヨウ…。私ハ疲レタヨ…。』
光に触れると私の意識は何かに引っ張られるかのようにーーー
☆
「ん…。」
「……督、今ちょ………た……すよ。」
「おっ……よかった……だな。」
「…れで…督の艦娘は……です。だい…ましたね。」
「ああ…まっもうすぐ研修期間も終わるから、次に会えるのは少し先になるだろうけどね。」
声が、聞こえる。
どうやら私はカプセルの様なものに横になっていたみたいです。
身体を起こして直ぐに見えたのは2人の男女です。
男性の方は軍服を着ている事から、司令官でしょう。
そしてピンク髪の女性。彼女からは何やら私と同じような力を感じる事から、艦娘であると判断してもいいでしょう。まぁ、私の先輩に当たる方なので失礼のない様にしないといけませんね。
更に見回すと周りには装備品がたくさんありました。
「立てるかい?」
そう言って手を差し伸べてくる軍服の男性。
まだ身体に力が入らないのでそれに甘えさせてもらいます。
「あっ、ありがとうございます。」
なんとか支えてもらいながら立つことができました。
「さて、それじゃあ君の名前を教えてもらおうかな。」
「駆逐艦、朝潮です。勝負ならいつでも受けて立つ覚悟です。」
名前はスラスラということができました。
私たちの様に、海の上に立って戦う人のことを艦娘というそうです。
これは基本的な知識として頭の中に入っていました。
「僕は高山朋(こうやま とも)。朝潮君は僕のところに配属されるよ。よろしくね。」
「よろしくお願いします、司令官。」
やはり軍服の男性が司令官だった様です。
「あぁ、僕はまだ研修中の身だから、そんなにかしこまらないでいいよ。」
「研修中…ですか?」
「そう、研修中。まだ提督になっていないのさ。」
なるほど、司令官はまだ司令官じゃないということですね。でも私にとっては司令官です。
自分でも何言ってるかわかりませんね。
司令官の自己紹介が終わったところで次は、ピンク髪の女性が口を開きました。
「私は工作艦明石です!艤装のメンテはお任せを!っと言いたいところなのですが……。朝潮ちゃんは艤装を持ってきてないっぽいんですよね〜。」
「え?」
明石さんというのですね。明石さんも司令官の艦娘なのでしょうか?
いえ、今はそれよりも気になることを言っていました。
「えっと、明石さん。今、私が艤装を持っていないと聞こえましたが、間違いありませんか?」
「はい!そう言いましたよ!」
「明石君、ちょっと飛躍しすぎだよ。まだ朝潮君は目覚めたばかりなんだから。」
「あっ、そうでした。ごめんなさい朝潮ちゃん。」
ぺこりと頭を下げる明石さん。
でも明石さんが頭を下げる必要はないんです。
私が言いたいのはそういうことじゃないんです。
「朝潮君、僕の方から説明させてもらうね。まず朝潮君は「あの!司令官!」うん?どうしたんだい?」
「艤装なら…その…ありますよ?」
「「え?」」
司令官と明石さんがポカーンと口を開けてしまった。
「すまない、朝潮君。もう一度行ってくれるかい?」
「艤装ならあります!」
「え?ええ?あり得ないですよ!建造もドロップもみんな艤装をつけてくるんですよ?」
「それじゃあ今から艤装を出しますね。」
「え?出す?」
「あっ朝潮君、ここじゃなくてそっちの方で出してくれないかい?」
「わかりました。」
指示を出された場所は少し広い場所でした。ここなら確かに邪魔になりにくそうですね。
「では、出しますね。【展開】」
私がそう口にした直後、背中にランドセル型の艤装が現れました。
更に手には12.7cm連装砲と61cm四連装魚雷が装備されました。
「ええ!?艤装が現れた!?」
「これは驚いたね。」
司令官も明石さんも本当に驚いていました。どうしてでしょう?
「朝潮君は今どうしてこんなに驚いているんだろう、と考えているね。通常、建造やドロップで来た娘達は艤装は身につけてくるし、今朝潮君がやった様に自分の意思で出し入れすることはできないんだよ。」
「それじゃあ私は普通じゃない…?」
「まぁ、少し他の娘達と違うかもしれないけど、それは君の個性というものだ。だからむしろ誇っていい事だよ。」
私の個性…ですか。
司令官は優しいお方ですね。
「とりあえず朝潮ちゃんの艤装を見せてもらってもいい?」
「あっはい。」
艤装を取り外して明石さんに渡しました。
艤装は自分の命といっても過言ではありませんですが、明石さんなら問題ないでしょう。
「ありがとうございます。一通り点検をしたらお返ししますね。」
「よろしくお願いします。」
おや?少し廊下の方が騒がしくなってきましたね。何があるのでしょう?
「あはは。どうやら待ちきれない様だね。」
司令官は扉の向こうにいる人がわかっているのでしょう。笑顔を浮かべています。
暇があれば書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします