「わはははは!誰が深海棲艦なぞの約束を守るって言うんだ!?守るわけねぇだろ!お前が俺たちの遊びに付き合ったその日からお前の妹は傷だらけなんだよ!」
その瞬間、私の心は完全に砕け散り闇へと堕ちた。
☆
「あれは僕でも怒るよ。」
そう言ったのはいつも夢の中で話していたもう1人の私。
ここは夢の中…?
私はどうなったんだっけ…?
「本当に少しの間だけしか話せないから短くまとめるよ。」
あれ…?
そういえばもう1人の私の声が聞き取りやすい。
いつもは片言が混じっていたりで少し聞き取りづらかったのに…。
「いいかい?君は深海棲艦になったんだ。あの男が原因でね。」
深海棲艦になった…?
「そう、まずはその事実を受け入れるんだ。それが出来なければ君はその辺にいる深海棲艦と一緒のように本能のままに襲うようになる。」
深海棲艦になった…。
「そう、今の自分を受け入れるんだ。」
受け…いれる…。
すると身体が少し軽くなったような気がした。
「次だ。君に僕の全てを捧げる。手を出して。」
言われた通りに手を出した。
その手をもう1人の私は自分の手で包み込むように胸の前で持った。
そしてもう1人の私は被っていたフードをとった。
初めて彼女の顔を見た。
今まではぼやけていたりフードのせいでよく見えなかったがついに顔を見ることができた。
「今からいろいろな知識が流れ込んでくるはずだ。少し痛いかもしれないけど我慢してほしい。」
痛い…?と思ったのもつかの間まるで鈍器で殴られたような衝撃がきた。
衝撃が来ると同時に本当に様々な知識が流れてきた。
「さぁ、終わったよ。」
時間としては数秒だったのだが私は何時間も続いていた感覚に襲われた。
「憎しみにとらわれ過ぎないで。君は1人じゃない。絶対に信頼できる仲間がいるからちゃんと守ってやるんだ。」
そして目の前がぼやけていく。
本当に短い時間しか話せなかったようだ。
☆
「あぎゃああぁぁぁぁぁあああ!!!?」
私が気付いた時全身に痛みが走っていた。
そして私の内側からドス黒い感情が溢れ出した。
憎い…。
殺せ…。
破壊しろ…。
狂いそうなほどの感情に必死に抵抗する。
必死に抑えていると声が聞こえてきた。
「はっはっはっは!ついに気でも狂ったか!?」
「ほらほら、お前の大事な妹が壊れちゃうよ〜?」
「そんな艦娘もどきには電撃をプレゼントしてやるよぉ〜!」
バチっと首元から電気が流れた。
それよりも研究員はとても大事なことを言っていた。
霞が壊れる?
ユルサナイ!
私の意思に反応し私の手の中に1つの艤装が出現した。
それはもう1人の私が死神と呼ばれることになった原因の1つ。
本に出てくる死神が持つような大きな鎌。
私の身長よりも大きく約2メートルほどもある真っ黒で大きな鎌だ。
「「は?」」
私はしっかりと研究員を見据えて鎌を振るった。
大鎌は寸分違わず2人の研究員を真っ二つにした。
そう、前に夢の中で言っていた深海棲艦になるメリットの1つ。
それは身体の傷が全て治ること。
深海棲艦の身体へと書き換わったため失っていた眼を取り戻したのだ。
しかも深海棲艦の眼になったことで暗闇の中でもかなり見えるようになっている。
「なっ…!?なんだそれは!?」
「シネェ!!」
横に鎌を振るうが霞を捕まえていた男は霞を放り出して逃げ出した。
しかし霞を傷つけた輩を逃がす私ではない。
突如私の両隣の何もない空間から2つの主砲が出現した。
どちらも46㎝三連装砲だった。
狙いは逃げ出した男。
出現した次の瞬間にはもう撃っていた。
撃ち出された弾は狙い違わず男にあたり爆発四散した。
さらに撃った弾は研究所の一部を破壊しこの地下から出られる穴が作られた。
私は霞の方を向くと霞はガタガタと震えていた。
「ねえ…さん…?」
「……そうよ。」
私は怖かった。
深海棲艦になった私はもう受け入れられないんじゃないか。
「あり…が…とう…ねえ…さん…。」
「あっ……。まだ私を姉と呼んでくれるの…?深海棲艦になった私を…。」
「わ…たしの…ねえ…さんは…ねえ…さん…だ…け……。」
そう言うと霞は気絶してしまった。
限界だったのだろう。
今まで私は霞には手を出されていないと思っていたが違った。
霞の身体にはいくつもの切り傷や青あざがあった。
ずっとこれを私に隠していたのだ。
私を心配させないようにと。
さっきまで鎮まっていたドス黒い感情がまた湧いてきた。
私は大鎌で斬った研究員の懐を弄ると試験管に入れられた高速修復材を発見した。
それを霞の傷がひどい場所にかけていき霞をおぶった。
私は自分が開けた穴を抜けるとエントランスにいた。
私は入口の方に主砲を向けると発砲した。
着弾した弾は大爆発を起こし玄関口を破壊してくれた。
久しぶりの外はちょうど夜のようで真っ暗だった。
それでも深海棲艦の眼では昼間のように見ることができた。
さぁ、なるべく人に見つからないようにして海に出よう。
そういえば私の服が夢の私と同じ服になっていた。
レインコートの様な服装なのだがところどころ肌が露出している。
しかし気恥ずかしさなどは一切なかった。
これが私の服装。
私はフードを被ると破壊した入口から外に出た。
外には10人ほどの人間がいるようだ。
なんのためにいるかは知らないがさっさと突っ切ってしまおう。
霞をおぶったまま気配を消して走り出す。
「あぁ?大淀。」
「仕事を増やさないでください。」
サッと私に手を伸ばしてきた。
しかし私はそれを綺麗に避けて走り去った。
「チッ!追うぞ!高山は永瀬と共に研究所へ行け!」
「はい!」
もうだいぶ走ったのだがまだ追ってくる。
逃げ出した私達を始末するつもり…?
走り続けているとようやく海が見えた。
だいたい2キロほど走ったところだ。
「おい!待て!」
海は道路の向こう側にあった。
夜なので車は来ていない。
そのまま道路を横切ってガードレールを飛び越えた。
少し高さがあったが無事着水できた。
約1ヶ月半の久しぶりの海だった…。