バン!
「姉さん!」
扉を思いっきり開けて工廠に入ってきたのは、3人の駆逐艦でした。
そして私はその3人を知っています。だって妹たちなのですから。
一番最初に入ってきたのは朝潮型駆逐艦10番艦の霞でした。
私を見るや否や飛びついてきました。
「霞ちゃん、朝潮姉さんが困っていますよ!ですが、大潮も朝潮姉さんに会えて嬉しいです!」
次に入ってきたのは2番艦の大潮。
そしてーー
「ちょっとあんた達ハシャギ過ぎよ。」
最後に入ってきたのが満潮。
「そう言う満潮君だってずっと待っていたみたいだけどね。」
「ばっ、ばっかじゃないの!別に私は…。」
なかなかに賑やかな姉妹達です。
「いや〜満潮君と霞君は僕が建造した時の最初の言葉は忘れられないね〜。」
「「ちょっ!司令官!何言ってくれてんの(よ)!」」
みんな笑顔で楽しそうなところでした。
私はここでならうまくやれると思いました。
「司令官!これからよろしくお願いします!」
「ああ、こちらこそよろしくね。」
「朝潮姉さん!アゲアゲでいきましょう〜!」
「いやーこれからもっと賑やかになりそうですねぇ〜。」
「そうだね。この笑顔を僕は守るよ。」
「頑張ってくださいね高山提督。はい朝潮ちゃん。艤装はお返ししますね。」
「ありがとうございます。」
そう言われて艤装を受け取りました。
「うん…?朝潮、あんた艤装なんてもらってどこか行くの?もしかして今から水上訓練?」
「ううん。私は少し特殊らしくてね。こうやって艤装を自分の意思で出し入れできるのよ。」
そう言って私は艤装をしまいました。
この光景を見ていた妹達は目を丸くしています。
まぁ、無理もありませんね。私は少し特殊な艦娘みたいですし。
「ああ、そうだ朝潮君。これからこの鎮守府の提督のところに行こう。僕も報告することがあるし、君のことも説明しないといけないからね。」
「わかりました。」
☆
それからまず、私はこれから住まう部屋に案内されました。
部屋は4人部屋で妹達と一緒の部屋です。
部屋を確認した後はこの鎮守府(横須賀鎮守府というらしい。)の執務室に高山司令官と向かいます。
コンコン
「入れ。」
「失礼します、高山です。建造に成功したので報告に上がりました。」
「失礼します。」
中に入ると眼鏡をかけた女性とふくよかな体型の男性が机に向かっていました。
高山司令官に促され私の挨拶です。
「駆逐艦、朝潮です。よろしくお願いします。」
「ふむ、朝潮か。わしは五味渕 浩二(ごみぶち こうじ)だ。階級は大佐だ。高山研修員、別に建造成功の報告はしなくていいと言っただろう?」
「はい、確かにそう言われておりましたが、これは報告しないといけないと思いまして。」
「うん?何か問題でもあったか?」
「この朝潮は自分の意思で艤装を出し入れできます。」
「ほう。」
そう言って五味渕司令官はこちらをみてきました。
その時でした。五味渕司令官が私を見たとき嫌な予感がしました。
ですがそれも一瞬ですぐにその嫌な予感も消えてしまいました。
「わかった。わしの方で報告書を送っておこう。大淀、明石を呼んでおけ。」
「了解しました。」
眼鏡をかけた女性は大淀さんというらしい。
大淀さんは明石さんを呼ぶために部屋から出て行きます。
「お前達はもう戻っていいぞ。」
「「失礼しました。」」
誰もいなくなった執務室で五味渕は不敵に笑っていた。
☆
「この後は夕飯だから姉妹と4人でおいで。」
「わかりました。」
高山司令官とは別れ、私は自分の部屋へと行きました。
部屋に戻ると妹達が待っていました。
「朝潮姉さん!お帰りなさいです!」
「帰ってきて早々だけど、食堂行くわよ。あんたをまっててお腹ペッコペコなのよ。」
「姉さん行きましょう!」
3人に引っ張られてついた場所は食堂。
食堂には沢山の艦娘がいて、みんな楽しく談笑しながらご飯を食べていました。
それから香ばしい匂いも感じます。
「姉さんこっち!」
「あら、今日はカレーね。」
「カレーですか!大潮はカレーは大好きです!」
私達はカウンターへと向かいました。ここで注文するそうです。
「間宮さん、カレーを4人分お願い。」
「はーい!」
注文したカレートレーに乗せてはすぐに渡された。トレーを持って空いている席を探します。
「おーい、朝潮君達!こっちこっち!」
席を探していると高山司令官を見つけました。どうやら高山司令官が2つ分のテーブル席を確保していてくれたらしいです。
さらによく見ると高山司令官の他にも4人の艦娘がいました。
私達は高山司令官の向かいに座りました。
「それじゃあみんな揃ったことだし、朝潮君の歓迎会を始めようか。まずは自己紹介からね。」
「こんにちは、白露型駆逐艦「夕立」よ。よろしくね!」
「ちょっ、ちょっと夕立。お姉さん達から挨拶しないと…。」
「いいんですよ、時雨ちゃん。先に挨拶してくださいね。」
「…うん。ありがとう高雄さん。改めて、僕は白露型駆逐艦、「時雨」。これからよろしくね。」
金髪の艦娘が夕立さん、そしてアホ毛が付いている方が時雨さんというそうです。
お二人とも姉妹なんですね。
「こんにちは。高雄です。」
「私は愛宕よ〜。よろしくね〜。」
大きいお姉さん方が高雄さんに愛宕さん。
というか愛宕さんの胸部装甲はなんなんですか。わたしにも分けてください。
「駆逐艦、朝潮です。これからよろしくお願いします。」
「ということで、これからよろしくね。 それじゃあかんぱーい!」
「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」
夕立さんがガツガツと勢いよく食べ始めた。
口についたカレーを時雨さんにふいてもらっている。
高雄さんと愛宕さんはお上品に食べています。
「美味しいです!」
「相変わらず間宮さんのカレーは美味しいわね。」
私にとって初めての食事。
それではいただきます。
パクっ
「あっ…美味しい!」
カレーはとても美味しくいくらでも食べれそうです。
それに……
「あれ?姉さん?どうしたの?」
霞の一言によりみんなの注目が私に集まりました。
何かおかしいところでもあったのでしょうか?
「朝潮君?大丈夫かい?」
「朝潮、泣いてるっぽい〜。」
「ちょっと夕立…。」
え?泣いている?
自分の顔に手を持っていくと目から涙が出ていました。
なるほど、確かにみんなが心配するような表情をするわけです。
「うーん、一応保健室に行っておくかい?」
「いえ…大丈夫です。なんだか、このカレーを食べたらとても懐かしいような感じがしたので…。」
「懐かしい?」
言葉に表せない感じです。
どうしてこんなことを思い出すのでしょう?
私にとってこのカレーは初めての筈なのに…。
「あっ…すみません。変なことを言いました。」
「今日はもう早めに休むといい。生まれたばかりで少々混乱しているのだろう。」
「はい…。そうします…。」
カレーを食べ終わった後、私は大潮達と部屋に戻り早めの就寝としました。
☆
朝潮達が部屋に戻ったあと、高山達は先ほどの朝潮の発言について考えていた。
「朝潮ちゃん、大丈夫なのかしら?」
「わからない。自分の部下に言うのもなんだが、正直朝潮君は少し異常だ。艤装の出し入れに、先ほどの発言。」
「なんか不思議な感じもするっぽーい。」
「うん、なんて言えばいいかわからないけど、確かに朝潮には不思議な感じがするよ。」
「うーん、私も不思議な感じがしたわぁ。それに、艤装の出し入れなんて深海棲艦見たいよねぇ。」
「愛宕君、それは違うよ。彼女はれっきとした艦娘だ。」
「わかってはいるのよぉ〜。ただそんな感じがしただけなの。」
「朝潮君については置いておこう。もう仲間なのだからみんなで支えてあげてくれ。」
「ええ、もちろんよ。」
そうして、朝潮の小さな歓迎会は幕を閉じた。