善と悪の協奏曲   作:ミクス

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駆逐艦の暮らしが始まるそうです

翌日、翌日と言っていいのかわかりませんが私の意識が戻りました。

目の痛みは無くなっていますが何も見えません。

暗闇が広がっているだけです。

そうだ、霞はどこでしょう?

 

「霞?どこ?」

 

何も見えないため、自分で探すこともできません。

なので声で呼びかけます。

「うっ…。ねえ…さん…?」

「霞!どこにいるの?」

「姉さん…?姉さん!」

 

肩に手がかけられました。

恐らくこれが霞の手でしょう。

 

「姉さん、目が…!」

「何も見えないの…。」

「姉さん、顔にも傷がついてるわ…。」

「あいつら絶対に許さない…!」

「落ち着いて霞。」

「でも…!」

「いい?絶対に人間を憎んじゃダメよ。」

「でも!あいつらは姉さんを傷つけたのよ!」

「それでも、よ。私との約束。」

「………わかったわ。」

「いい子ね。」

「……姉さんそっちじゃないわ。こっちよ。」

 

霞を撫でようとしたら見当違いの方に手を伸ばしていたようです。

「だから霞も私が人間を憎んだりした時は今みたいに止めてちょうだい。約束よ。」

「わかったわ姉さん。」

 

この時の私はどうしてこんな言葉を言ったのかわかりませんでした。

無意識のうちに発言した言葉だったのです。

 

「私達、これからどうなるのかしら…。」

「きっと助けが来るわ。今頃、横須賀鎮守府では私たちがいないことに気づいてるはずよ。」

「そうよね!高山司令官ならきっと来てくれるわよね!」

 

きっと高山司令官は助けに来てくれる。

だから今は耐えよう。

そう思った時でした。

ガチャンッと部屋の扉が開く音が聞こえてきました。

 

「おい、起きてるな?」

「なによ!今度は何をするつもりなの!」

「ふんっ、今日は血を取りに来たんだよ。さっさとお前の姉をよこせ。」

「あんた達にやる血なんか残ってないわよ!それに昨日あれだけたくさん血が流れていたでしょうが!」

 

霞と男の言い合いが聞こえてきました。

どうやら男は私の血が欲しいそうです。

 

「……私の血を使って何をするのですか?」

「あ゛ァ?研究成果をださねぇといけねぇんだよ。それまで遊びはなしだ。わかったらさっさとよこせ艦娘もどきが。」

「だから姉さんには血が残ってないって言って…!」

「大丈夫よ、霞。多分高速修復材をかけられているから血は戻っているはずよ。」

「へぇ…。お前、目を失った割には元気そうだな。」

「早く私の血をとって行ってください。」

「ふんっ!言われずともわかってらぁ。」

 

腕にチクっとした痛みが発生しました。

恐らく注射器で私の血をとっているのでしょう。

 

「よし、じゃあな。」

 

ガチャンと大きな音が響き男の気配が遠ざかっていきました。

 

「……行った?」

「ええ、行ったわ。」

 

目が見えなくなってから聴覚が鋭くなったような気がします。

 

バチッ

 

「カヒッ!?」

「姉さん!?」

 

またもや首から電気が流れ痛みと痺れが襲ってきました。

突然のことだったので思わず倒れてしまいました。

 

「だい…じょうぶ…よ。少し…シビ…れるだ…け…。」

「姉さんは横になってて。」

 

そう言われ頭を持ち上げられふにふにしたものに乗せられました。

それからも定期的に電気が流れ痛みと痺れが私を襲い続けました。

 

男が来てから数時間が経過したと思います。

コツコツと誰かが歩いてくる音が聞こえました。

その足音は私達に部屋の前で止まりました。

 

「霞、誰か来たわ。」

「うん…?」

 

どうやら霞はウトウトしていたようです。

ガチャンと大きな音が響きました。

 

「誰?」

 

霞が誰と聞いたということは昨日会った男性2人ではないのでしょう。

 

「……俺は駒瀬。この研究所で雑用として働いてるものだ。」

「……何の用なのよ。」

「飯を持ってきたんだ。といってもレーションなんだけどな。」

 

ははは…と乾いた笑いを出す男性。

 

「ありがとうございます。」

「……礼は言っておくわ…。」

「君の眼は…あいつらにやられたのかい?」

「あいつら…?」

「ほら、デブとメガネ。」

「ええ、そのお二人ですね。」

「そうか…。この研究所はもともと艦娘について調べる研究所だったんだがな…。俺がこの研究所に来た時からこの有様さ。艦娘に暴力を振るうし、研究のためならなんでもやる。そういう研究所だ。」

 

やはりあの人たちが研究成果を提出した後は私達も暴力を振るわれるのでしょうね…。

なんとしても霞だけは守りたいです。

 

「だったらなんで大本営に報告しないのよ?違法なんでしょ?」

「その通りだ。俺もすぐさま大本営に報告しようとしたんだが、報告する前に奴らに捕まってな…。それからはずっと地下暮らしよ。」

 

地下?

 

「ここは地下にあるんですか?」

「ここに来る時階段を降りただろう?」

「いえ、気を失っていたので…。」

「そうか…。もしかして君達は横須賀鎮守府から来たのかい?」

「え?どうしてそれを?」

「やっぱりか。横須賀鎮守府から売られてくる子達はみんな気絶させられてくるんだよ。」

「うっ売られた?私達は売られたの!?」

「そうだ。」

 

売られた…?誰に…?

いやそんなものは分かりきっている。

五味渕提督だ。

初めてあったときに嫌な感じがしたことはちゃんと覚えている。

 

「君たちが誰に売られたか書類を見ればわかるけど知りたいかい?」

「………お願いします。」

「わかった。それじゃあ次にここにくる時までに確認しておこう。安心してくれ。俺は君たちの味方だ。」

「ええ。」

「そうだ、最後に君たちの名前を教えてくれ。」

「霞よ。」

「朝潮です。」

「そうか。朝潮、霞、助けが必要な時は頼ってくれ。俺に出来る限りのことは尽くそうと思う。」

「何から何までありがとうございます。」

 

ペコリと頭を下げます。

やはり人間の中にもこう言った優しい人たちは存在するのですね。

 

「姉さんそっちじゃないわ。こっちよ。」

 

また別の方向に頭を下げていたようです。

 

「それじゃまたな。」

 

ガチャンと大きな音が響き駒瀬さんは去って行きました。

 

「優しい人だったわ。」

「そうね。」

「レーション食べましょうか。私が姉さんに食べさせてあげるわ!」

「いつもありがとう、霞。」

 

レーションは、まずかったです…。




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