人が立っていた。
海の上だ。
姿はよく見えない。
コノ悪魔メ!
近ズクナ!
死神!
その人の後ろにはなにかがいて、そのなにかは海の上に立っている人を口々に罵っていた。
「ズット一人ボッチダッタ。」
海の上に立っている人は突然喋りだした。
声は聞き取りにくく私は必死に聞き取った。
私の妹を返せ!
早く沈め!
「鎮守府ニイタ頃ノ君ガ羨マシイヨ。」
「誰……?」
私の声は消え入りそうな声で、海の上に立っている人には聞こえていなかった。
「マタスグニ会エルヨ。」
そういうと私のいる空間が溶け出した。
☆
「はっ!?」
何か変な夢を見ていたような…。
うぅん…。全然思い出せませんね…。
「姉さん、大丈夫?」
霞が私の手を握ってくれました。
「えぇ、大丈夫よ。」
「ほんとうに?姉さんまた魘されていたわよ。」
「……なんだか不思議な夢を見ていた気がするの…。」
「不思議な夢?」
「そう。でもよく覚えていないわ。」
「まぁ、夢なんだから覚えていないこともよくあるわよ。」
……霞の言う通りかもしれませんね。
バチッ!
「くっ…。」
また電気が走りました。
これ慣れてきたとはいえ、地味に痛いですしやめてほしいです。
「……そういえば寝ている間はなにも起きなかったわ。」
「そうなの?」
「えぇ、魘されているだけだったわ。」
「ずっと寝ていれば電気は起きないのかしら?」
「そう言うことだと思うわ。」
部屋の外からコツコツと誰かが歩いてくる音が聞こえてきました。
「あっ、駒瀬さんよ。」
駒瀬さんでしたか。
彼ならきっと大丈夫でしょう。
ガチャンと大きな音が響き人が入ってきました。
「やぁ、また来たよ。」
駒瀬さんの声が聞こえてきました。
「今日は悪い知らせ、といい知らせかもしれないし悪い知らせかもしれない知らせを持ってきたよ。」
「どういうことですか…?」
「悪い知らせから話そうか。悪い知らせは今日あいつらが研究成果を提出するんだ。だから明日から地獄のような日々が始まるよ。」
………ついにきてしまいましたか。
「それともう1つの知らせ。君たちを売った人間がわかったよ。」
「っ!誰ですか?」
「君たちが売られた時の書類にサインがしてあった。そのサインには五味渕と高山という人のサインがしてあったよ。だから君たちを売った人間は五味渕と高山っていう人だ。」
「「なっ!?」」
司令官が……私と霞を……売った…?
「嘘よ…。そんなの嘘よ!」
「嘘じゃない。これをみるといい。」
私はみることができないから霞にいったのでしょう。
そしてーーー
「あ…あぁ…うわぁああぁああ!!」
霞が泣き出してしまいました。
私は手を繋いでいた霞の手を頼りに霞を抱きしめました。
パキッ……。
小さな、小さな異変がこの時に起こっていました。
私はそれに気づくことがないまま毎日を過ごしていくことでしょう。
その日は駒瀬さんからレーションを頂き何事もなく眠りにつきました。
相変わらず電気は流れていましたが…。
☆
「やァ、マタアッたネ。今日ハ長く話セソウだヨ。」
また人が立っていた。
女の人だ。
「誰…?」
「僕は君デ君ハ僕さ。」
何を言っているのかわからない。
私は私だ。
「言イ方が悪カッタね。僕ハ君の心ノ奥深クニイルもウ1人ノ君さ。マァ、ソコマで深ク考エなクテイいヨ。」
もう1人の私…。
「ソレよリモサ、君コノママダト危なイヨ?」
「え……?」
「君ハ特別な存在ナンダ。人間を憎ンジャ駄目だ。」
特別な存在…?
私が…?
「ソウ、特別な存在ダ。ダカラ絶対に僕ノヨウニハナらナイデ。」
「貴女は一体……。」
「コレかラハコノ空間デ起こッタ出来事ハ記憶サれルハズダ。ダカラこレダケハ覚えテオイテ。ナニがアッテモ人ヲ憎マなイコト。ソレカら君ノ妹ヲ守ッテあゲテ。」
それを最後に空間が溶けた。
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