真・恋姫†夢想 三国志的中華飯伝 ~特級厨師流琉~ 作:北郷ぱすた
「出会い」
時は2020年、日本。
かのアッシジの著名なカトリック修道士である聖人フランチェスコからその名を冠した聖フランチェスカ学園。
周囲を森に囲まれた豪勢広大な敷地、礼拝堂に喫茶店などの十分すぎる施設、やれ「ですわ」やれ「ですわよ」だのと時代錯誤な言葉を飛び交わす女学生たち、そんな絵にかいたようなお嬢様学園から徒歩10数分。
敷地のはずれにあるボロ屋。ボロ屋、、、?
そうだ。決して誇張するまでもなくドヤ街の団地の方がマシに見えるこの建物。
聖フランチェスカその名の通りどこか格式高い雰囲気の漂う校舎や校庭のみてくれに反してこれがなんと男子寮なのである。
-----------------------7月19日 午前8時15分------------------------------------------
ピピピピッ‼‼‼ ピピピピッ‼‼‼
カチッ。
「う~~んっ!良く寝た。ってまずいぞこの時間は!さっさと用意して学園に行かなきゃな」
そんな男子寮を朝から漫画顔負けテンプレ的な寝坊をしでかし学園へと駆けだして行くこの男子生徒、のちに三国時代の乱世を生き、中国4000年の歴史にその名を残すことになる伝説の特級厨師、もとい今はただの聖フランチェスカ学園二年生、身長175cm、中肉中背やや筋肉質、彼女募集中、「北郷一刀」その人である。
「昨日の稽古に精を出し過ぎたか。梅雨も明けて朝から日差しが強くて最悪だ~!」
ここでの稽古とは剣道である。聖フランチェスカ学園はその名前からキリスト系の学校に思われるがその実、例えば男子寮のボロ屋のようにすべてがキリスト教感に則っているわけではない。一刀が日々鍛錬を重ねる剣道場も例外ではないのだ。
「稽古を頑張り過ぎて寝坊したとかスパルタじいちゃんにバレたらたまったもんじゃないな」
北郷一刀の家族は両親のほかに妹と祖父がいる。この祖父こそが一刀の言う「スパルタじいちゃん」である。一刀は聖フランチェスカの寮生なので家族とは長期休暇中の帰省以外で会うことはないが、このスパルタじいちゃんだけは別である。そう、スパルタじいちゃんは一刀の所属する剣道部の外部コーチでもあるのだ。
-----------------------7月19日 午前9時30分------------------------------------------
「今日の放課後は中国史の課外授業として本学の敷地内に隣接する歴史資料館に見学に行きます。放課後は忘れずに資料館入り口前に集合してくださいね」
一刀のいる教室にこだまする担任教師の声にお嬢様たちは真摯に頷きながら聞いている。
一方、一刀はうわべでは頷いて聞いているものの、心の中では今日の剣道の稽古がなくなったことを残念に思うのと同時に、敷地内にあるにもかかわらず最近はあまり足を運んだことのなかった資料館の見学という一抹の楽しみに胸を膨らませていた。
-----------------------7月19日 午後4時30分------------------------------------------
「いつぶりだろうな、ここに来たのは」
一刀は集合時間ちょうどに資料館に辿り着くと思わずそんなことを呟いていた。
一刀はもともと自分の興味に加え、スパルタじいちゃんの教えもあってか中国史とくに三国志を好いていた。
聖フランチェスカに入学してからも剣道の稽古の後にスパルタじいちゃんと資料館に行くこともあったが、最近はご無沙汰であった。
「それでは今から資料館に入って自分の好きな資料をひとつ見つけてください。見つけた人は各自解散でOKです。来週までにその資料について調べたことをA4レポート用紙3枚にまとめて提出してください。」
生徒の資料館見学の楽しみに浮ついた心を見透かしたように唐突に降ってきた課題に一刀は眉を顰めるが、お嬢様たちは「はい」と返事をするばかりである。一刀はその様子を見てため息一つ。どれだけまじめなんだうちの女子は、と。
-----------------------7月19日 午後5時50分------------------------------------------
「それではまた明日。さようなら」
「課題だりぃ」
と、ほとんどの生徒が各々の感想を口ずさみながら帰宅してゆく。
「やべ、久しぶりに来たせいか集中しすぎたな。俺もそろそろ帰るか」
一刀はちょうど春秋・戦国時代の資料室にいた。周りを見ればすでに一刀以外の生徒は一人もおらず、時計を見ればすでに閉館時間の午後6時の10分前。
「まずい、結局どの資料でレポート書くか決めてないぞ。適当に一つ決めてさっさと帰るか」
ピカッ
「ん? 何か光ったか?」
展示台の下をよく見ると、まるで巡り合わせたかのように何か光っている。
すると一刀は吸い寄せられるように近づいてはその光るものを覗き込んでみる。
「もう少し...手を伸ばせば...!よっしゃ取れた」
それは酷く錆び付いた小さな刀のようなものであった。
「なんだこれ。この資料館の展示物かな。でもこんなとこに落ちてるなんてことあるか?」
一刀は様々な疑問が浮かぶなか、もう一度その刀を凝視してみる。
「ん?何か書いてあるぞ」
一刀は錆び付いた刀の表面に刻まれた文字を懸命に読む。
『易牙之刀』、と。
「易牙ってあの易牙か?でもなんで・・・」
易牙とは春秋時代に五覇と謳われた桓公に仕えた伝説的な中華料理人である。人肉食のエピソードのほか中華料理の基礎を築いたとも言われる料理の鉄人だ。
「易牙は知ってるが、易牙の包丁なんて現存してたか?そもそも何でこんなものがうちの資料館に・・・」
刹那。
「また貴様か北郷一刀、その刀をよこせっ!!!!!!!」
突然、どこからともなく格闘技のように攻撃を繰り出してきたのは紫の瞳にベージュ色の髪をした面識のない男であった。
「あぶねっ!いきなり何すんだお前、それになんで俺の名前を知ってる!」
見たところ歳は一刀とそう変わらず見えるが、何といってもその風貌、見たこともない珍妙な装束をしている。
「さきの外史のこと、そして外史の管理者であるこの左慈のこと、忘れたとは言わせんぞ」
終始激しい感情をあらわにする左慈と名乗るその男はしきりに何かを訴えかけている。
「外史?なんのことだ?」
が、どこか話がかみ合わない。"この"一刀は金輪際「左慈」という男と面識を持った記憶がないのだ。
「どういうことだ。お前、本当に"北郷一刀"か?」
一刀からすれば何を当たり前のことを聞いているんだという気持ちだが、左慈からすればどうも納得がいかないらしい。
「もういい。その刀をよこせと言っている。それは貴様などに扱える代物ではない」
どうしてもこの刀が欲しいのか、またも一刀に襲い掛かってくる。
「やめろって!これは資料館のものだ。警備員を呼ぶぞ!」
幸い、多少の格闘戦ならスパルタじいちゃんの稽古で鍛えた体で自分を守ることは辛うじてできた。
「ちぃっ、往生際の悪い奴め。あまりことを荒立てたくはなかったんだがな」
すると、らちがあかないと決め込んだ左慈は目の色を変え、本気でいくぞと言わんばかりに独特な構えをとる。
「こうなりゃ仕方ないか!うおおお」
未だ状況も飲み込めないまま、一刀も構えをとると迅速な動きで差し迫る左慈に手を・・・
---------------------------------------ピカッ--------------------------------------
「くそっ!しまった!」
左慈との組み手の合間、左慈の進撃に反応しきれず咄嗟に易牙の包丁を持った手で攻撃を受け止めてしまったのだ。
すると、易牙の包丁が白く輝きだしたのだ。
「うわ・・・!」
眩い閃光とももに資料館や左慈の姿すら見えなくなり、一刀は気が付けば真っ白な光に包まれていた。
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時は一刀のいる現代から1800年以上遡り、舞台は古代中国の大陸へと移り変わる。
人はものを食べねば生きてはいけない。ならばその「食」を日々の楽しみとし、またより良い料理を作ろうと推敲するのは至極当然の行いである。
現代でも世界三大料理の一つに数えられる「中華料理」。中国烹飪史略でも神話の尭の時代から彭祖が作った羹が記されていたり、一刀の拾った包丁の持ち主の易牙の食人料理のエピソードが今もなお語り継がれるように、中華料理の歴史を辿ると話題が尽きない。
ある時、乱世に流れる数多の血を危惧した古来の帝が絶対的法令「大陸料理技術等級令」を制定した。それは料理人こそが大陸最高の職業であり皆が志すべき覇道であるとし、いかなる争いもより美味い料理を作ったものが勝者とする、といったものだった。その勝敗を決する方法、それが
「
料理戦は双方の合意のもとに行われ、中立的立場の審査員(人数は問わない)が双方の作った料理を味だけでなく見た目、調理法、個性、芸術点などを総合的に評価し勝敗を決める。そして多くの勝利と名声、確かな料理の腕を兼ね備えたものは、法令に定められた料理人の階級:10級~1級の初級厨師、初段~5段の中級厨師、6~9段の上級厨師、そして最高段位である特級厨師までの道を駆け上がっていくのである。
そんな料理戦の文化がすでに隅々まで浸透している霊帝の時代。後漢王朝は宦官の権力が強まり宮廷料理人の暗殺、料理戦審査員への賄賂、忖度、勝敗捏造などが横行し、権力は失われ、腐敗しきっていた。
各地で大小さまざまな反乱がもはや日常茶飯事と化していたこの時代、乱世の予感に同調し、各地ですでに名のある者や腕に自信のある豪傑(料理人)は我こそはとそれぞれの料理に対する信念のもと旗を掲げたのだ。
世はまさに幾多もの旗が軋めく大陸料理大戦時代の幕開けである・・・!
-------------------------兗州陳留郡己吾県にて------------------------------------
「うわぁぁぁぁぁああああああああああ~~~~!!!!!!!!」
バゴォォォン‼‼‼‼‼‼
雄大な自然のなかにあるこの小さな村にはあまりに場違いな爆音が鳴り響く。
「ひゃぁっ!びっくりした。今の音はなんでしょう」
一刀の落ちた場所はちょうど村の一軒の家の裏小屋であった。ちょうどその家の厨房で日々の習慣である料理の鍛錬をしていた一人の少女はあまりの騒音についに鍛錬を中断し家の裏でへと回ってみる。
「いってて。あれ、俺助かったのか・・・?」
舞っていた埃が落ち着いたころやっと思考が回り始め、自分が生きていることを知りひとまず安心していた。
「家の裏のから音がしたからきっとこのへんのはず・・・」
時を同じく少女は裏手に着くと一目で裏小屋が壊れているのを発見し、急いでその場に向かう。
「うぅ・・・裏小屋が壊れちゃいました。それにしても何が落ちてきたんでしょう」
一方、一刀は誰かがこちらへと近づいてくる足音を察知し、
「だれかいるのか?助けてくれー!」
その声を聞いた少女はたいそう驚いた。まさかあのような爆音の正体が空から降ってきた人だとでも言うのか。
「って人!?あの、生きてますか・・・?」
「どうにか生きてるみたいです。見たところ体に問題はないみたい。もしよければこの材木をどかしてもらえますか?」
それを聞いた少女は少し安心すると素早く一刀の体が埋まった材木を取り払い、
「いきなりで失礼ですが、あまりこのあたりで見ない顔ですね。それにどうやったら人が空から降ってくるんですか?」
「いちおう、俺の名前は北郷一刀。聖フランチェスカ学園の二年生だ。」
一刀はここに落ちてくるまでの自分のことを洗いざらい話すと、少女はまったくピンと来ていない様子で終始困惑していたが話を一通り聞き終わると、背筋を伸ばし、
「私は典韋といいます。この村の料理人です!」
このとき、この出会いこそが後に大陸の乱世を治めた伝説の特級厨師の双璧と語り継がれる典韋もとい流琉と北郷一刀の2人のはてしなく長い冒険と外史の始まりであった。
というわけで、こんにちは。ぱすたです。
前からこういうの書きたかったなぁという脳内妄想を書き連ねていきます。
月一くらいの更新を予定しています。
物語を書くことは初心者なので気軽なコメントから辛辣なコメントまで、送っていただけるだけでも大変嬉しいです。
終始、駄文でありますが宜しくお願いいたしますm(__)m