真・恋姫†夢想 三国志的中華飯伝 ~特級厨師流琉~ 作:北郷ぱすた
「私は典韋といいます。この村の料理人です!」
典韋と名乗るこの少女の言葉を聞いた一刀は口をぽっかり空けながら、
「て、典韋・・・さん・・・ですか?」
「はい、たしかに私は典韋です」
自信満々にそう言う典韋(?)に一刀は思わず暫しの間考えこくってしまう。
(この子たしかに典韋って言ったよな・・・まじか?)
(典韋って三国志でしか聞いたことないぞ。見たところ何かのコスプレや、まして嘘を言ってるにも見えないし・・・そもそも三国志の武将が女の子なわけないだろ)
(そうだ、典韋ってたしか兗州の生まれだったよな。冗談半分で試してみるか・・・)
「あの、ちょっと聞きたいんですけど、ここってなんて地名ですか?」
それを聞いた典韋(?)はなぜそんな事を聞くのか皆目見当もつかないような顔をしながら、
「ここは兗州の陳留郡、己吾県です。それがどうかしましたか?」
その返答に一刀は驚いた。そういえばそうだ。目が覚めてからというもの、瓦礫に埋もれ、典韋と名乗る少女に助けてもらい、自分がひとまず生きてるという事だけで安心してしまったせいか"ここ"がどこかを見落としていた。
ひとまずあたりを見渡すとそこには歴史資料館どころか聖フランチェスカ学園もない。目の前に広がるのは少なくとも現代とは、そして日本とは思えない。それどころか時代錯誤な版築工法の民家と田畑、それから遠景にはカルスト地形の岩山が見える.
(うそだろ・・・?)
一刀は徐々に自分の置かれた状況を理解し始める。認めるしかない現実を。
(俺、三国志の世界にいるのか・・・?)
「て、典韋さん。落ち着いて聞いてほしいんですけど」
「まずはお兄さんが落ち着くべきかと・・・」
大きく息を吸って一度深呼吸をしたのち、一刀は、
「俺、たぶんこの村の人じゃないです。もっと言えばこの大陸の人じゃないです。この大陸から海で隔たれた東の国、日本という国から来たみたいで」
一刀の突飛な話にも典韋は思ったほど驚くことなく、
「日本?聞いたことないですね。でもお兄さんが言うことも納得できます。お兄さんの服、このあたりでは見たことありません。それに私が台所で鍛錬をしているときに急にものすごい音が聞こえたので裏手に回るとお兄さんが小屋に埋もれていました。こうでも言われないと納得できませんよ」
「でもお兄さんが空から降ってきたってことはその『日本』って天の国なんでしょうか。伝承にもそんな国、聞いたことはありませんが・・・」
あまりに互いの常識が異なると考えた一刀はこれ以上の混乱をうんではならないと踏んで、自分はひとまず「天の国の人」だという典韋の認識を弁解することはしなかった。
ため息ひとつつてみれば、ようやく自分の置かれた状況に納得し始めた一刀。
「そういえば典韋さんは『私は料理人です!』って言ってたけど、武将じゃないんですか?それとも今言ってた台所での鍛錬と関係あるのかな」
「何を言ってるんですかお兄さん。武術なんかじゃありませんよ。私はまぎれもなくただの料理人です」
一刀はようやっと自分が女の子版三国志ともいえよう世界に飛んでしまったことに納得したところだったが、ここでも新たな疑問が生まれてしまう。
(なんで三国武将の典韋が料理人なんだ?)
「あの、変な質問かもしれないけど、この大陸って戈や戟で戦ったりしないの?」
その質問に典韋は、
「昔は武力によって治世が行われたと聞きます。それでも今は料理こそが戦いです。この大陸で覇を唱えるなら料理ができなければ話になりません」
あまりに自分の知っている三国志とかけ離れた現実にまたも困惑を隠しきれない一刀。
「もう少し詳しく聞かせてもらってもいいか?」
こうして一刀は典韋からこの世界の理を聞かされることとなった。
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「ひとまずお兄さんはお金も身寄りもないでしょうから今夜は私の家に泊まってください。両親はもうこの家にはいませんのでおかまいなく」
一通りの話を聞かされたあと、ようやく頭の整理がついたと同時に典韋はそう言う。
「え、いいんですか?でもひとつ屋根に男女ふたりきりって」
「もう、そんなことはいいんですよ!どのみちこのままじゃ寝床もないじゃないですか。それに私は別の部屋で寝るので問題ありません」
典韋は笑ってそう答える。はじめ会ったときのまじめな雰囲気から一転、こうも女の子は表情豊かなのかと面食らった。
その笑顔に一刀は不思議と肩の力を抜いてしまう。
(あぁ、なんて優しい人だろう。この人がいればこの世界でもなんとかやっていけそうだ)
結局、この日は身の回りすべてを典韋にしてもらい、床に就く。
その晩、一刀は自分の置かれた状況に納得しつつもなぜ三国志の世界に飛ばされたのか?なぜ三国武将が女の子なのか?なぜ戦が料理対決なのか?様々な疑問が湧き出ては消える。
また、そんな右も左も分からない自分の面倒を見てくれる典韋、今日初めて会ったひとりの女の子に感謝しつつ、慣れ親しまぬ叉灰塗りの壁に囲まれた寝室で一人、泥煉瓦の天井を眺めながら眠りに落ちた。
・・・・
こんにちは、ぱすたです。
月一更新を目指すといいながら2話を書いてしまいました。
まだまだ序章で舞台説明が多く単調冗長ですね、申し訳ありません。
流琉が真名を明かすのも兄様呼びになるのももう少し後になる予定です。
それではまたm(__)m