真・恋姫†夢想 三国志的中華飯伝 ~特級厨師流琉~   作:北郷ぱすた

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2章「陳留郡己吾県」
はじめての料理戦(前編)


「村に賊が・・・賊が来ました」

 

 

 

 

 

流琉のその一言でこの日の朝は一刀にとって最高の目覚めから最悪の目覚めに変貌した。

 

「とりあえず賊はまだここから遠くにいるかと思います。兄様も私と一緒に来てください」

 

一刀は流琉に言われるがまま外の様子を見に行く。

 

 

 

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流琉の家から少し離れた村の入り口にて。

 

 

 

「アニキ~今回はこの村の食糧庫を襲うんすね?」

 

「ああそうだ、この俺が欲しいと言った物は何でも手に入れんだ。まずは食糧庫にある食い物をありったけかっさらえ。ついでにいい女もいたら捕まえてこい、老人と男は殺せ。わかったなチビ、デク!」

 

「わかりやした~!」

 

「わかったんだなぁ」

 

その手勢、数十人と思しき賊は首謀者の3人とみられるアニキ、チビ、デクを筆頭に村の前に陣取っていた。

 

アニキと呼ばれる賊の頭と見える男は、口ひげをちょびっと生やした目つきの悪い、如何にもな悪党面でありながら、身の丈160cmほどのお世辞にも強そうには見えない図体だ。

 

チビと呼ばれる首謀者の一人はこれまた悪だくみを顔に書いたように口元をゆがませる身の丈150cmほどの文字通りのチビである。

 

最後にデクと呼ばれる首謀者の男は身の丈180cmを超える大男だが、田舎訛りの独特な話し方に加えてどこか鈍臭く、いかにも木偶の坊といった印象だ。

 

「お前ら、いくぞ!」

 

アニキの一言を合図に賊は流琉の村に容赦なく侵入し、女と食糧庫を目当てに暴虐の限りを尽くさんとしていた。

 

 

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「なんだ、これ・・・」

 

一刀は流琉と共に村の避難所に向かっていると、見開けた道に出た。その道は村の主要な交通路であったようだが、すでに賊に荒らされており、生きているとも死んでいるとも不明な負傷者が道に横たわって居たり、民家が軒並み荒らされていた。

 

「なんで、こんな・・・」

 

一刀はあまりに凄惨な光景に言葉を発するのがやっとであり、この光景を見て初めて自分がどんな世界に来てしまったのかを思い知ったのだ。

 

(本当に・・・乱世なんだな。俺はこれからこんな世界で生きていくんだ・・・)

 

「兄様、この景色を目に焼き付けてください。兄様の居た天の国がどんなところかは知りませんが、これが今の大陸の現状です」

 

一刀は、自分の居た日本とははるかにかけ離れた現実を叩きつけられた。

人々は今日明日を生きるので精一杯なのだ。

いつ死ぬのかも分からないのだ。

世は乱れ、為政者は腐敗し、弱きものから死に絶え、強きものが生き残るのだ。

 

(これが・・・本当の三国志の世界なんだな・・・くそっ!)

 

一刀は歯を食いしばりながら流琉の後に続いて避難所に向かう。

 

「流琉、いままでこの村に賊が来たときはどうしてたんだ?」

 

「いつもはこの村の農夫や商人が力を合わせて抵抗していました。村の近辺に異変があれば食糧庫の備蓄を隠したり、子供や老人は避難所や家の中に隠れてしのいでいました」

 

「みたところ、今回は派手にやられちゃってる感じか。どうすれば賊を追い払えるんだ」

 

一刀がひとりでにそう呟くと流琉は苦虫を噛みしめたようにどもってしまう。

 

「それは・・・」

 

(言えないよ。今まで自分は逃げてたなんて。)

 

流琉の表情が苦心のそれに変わった。

 

(今までは・・・ただ隠れていただけだけど・・・力になれなかったけど・・・)

 

流琉はこれまで自分が何もできなかった後悔を思い出す。料理で大陸を幸せにしたいと言いながら、賊が来ても助けられなかった。大切な人を失った。その後悔が胸を締め付ける。

 

それと同時に、一刀の言葉が心に響き渡る。

 

(『うめえええええええ!典韋さん!俺こんなに美味いお粥食べたこと無いよ』)

 

(『わかりました。典韋さんがそこまで俺を信じてくれるなら、俺も典韋さんの思いに答えます』)

 

流琉の目が光を取り戻す。一刀の言葉に胸が高鳴る。

 

(兄様が私の背中を押してくれた。私はもう・・・一人じゃない・・・!)

 

流琉は気が付いたのだ。一刀の言葉が、流琉は一人じゃないよと。流琉は自信を持っていいんだよと、教えてくれているような気がしたのだ。

 

 

 

 

「料理戦で決着をつけましょう」

 

 

 

流琉はこれまでの自分を払拭するかのようにそう言い切ってみせる。

 

「料理戦って、まさか」

 

「はい。賊の首領と料理で戦います。もう二度と、この村の人を悲しませたりしない。もう二度と、こんなことはさせない!」

 

流琉の強い意志を感じ取った一刀もその気持ちに答えようとする。

 

「俺も何か力になれるか?」

 

「もちろんです。兄様もいっしょに料理戦に挑んでください。この世界に来たばかりで不安かもしれませんが、私がなんとかします」

 

「たしかに俺にとってははじめての料理戦かもしれないけど、この状況じゃそうも言ってられないよな、やるしかない!」

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁ!離してください!!!!!」

 

二人の決意が結ばれたと同時に、二人のもとに女性の悲鳴が。

 

「兄様、こっちです」

 

二人は性急に悲鳴の聞こえた方へ向かうと、

 

 

「なぁいいじゃねぇかよ、その身体好きにさせてくれよ。一晩中気持ちいいことしようぜ・・・?」

 

「アニキ、そんときは俺にもヤらせてくだせい」

 

「気持ちいいこと、ヤりたいんだなぁ」

 

アニキ、チビ、デクの3人に身体を拘束され、泣きながら助けを乞う村の女の子。

賊の3人は嫌がる女の子に欲情し涎を垂らしている。

 

「その子から手を離してください!」

 

流琉は怒りを露わにしながら賊に訴える。

 

「なんだぁ、お前?」

 

「これ以上好き勝手に村を荒らすのはやめろ。それにその子から今すぐ離れろ。その女の子だって嫌がってるだろ」

 

一刀も恐怖心を押し殺して強気に出る。

 

「アニキ、こいつらどうしやすか?」

 

「どこのどいつか知らねえが、男に用はねえ、殺せ。だが、横にいる女はチビだが顔は良いな。連れてけ」

 

賊のアニキの何気ない一言を流琉は聞き逃さなかった。

 

「チ、チビって言いましたね。あなたたちは絶対に許しません!」

 

「る、流琉、落ち着け」

 

流琉はチビと言われるのがよほど嫌なのか相当怒っている様子で、思わず一刀は流琉を宥める。

 

「で、お前ら二人で何ができるってんだ?あ?」

 

賊のアニキの脅しに対して流琉は全く動じずに言い放つ。

 

 

「料理戦で勝負してください」

 

 

「・・・おい、聞いたか。こいつこの俺様に料理戦を挑んできやがった」

 

「おいそこのチビ、お前このアニキが陳留山賊界の料理頭って呼ばれてるの知らねぇのか?」

 

「こっちはダテに賊なんざやってねぇんでな。俺だけじゃねぇ。チビもデクもそれなりの腕だぜ?」

 

賊の一味は料理の腕にさぞ自信があるのか流琉と一刀を完全に下に見て嘲笑っている。

 

 

「あなたも料理人なら料理で実力を示してください」

 

流琉はそう切り返すと、

 

「上等じゃねぇか。それならこの料理戦、お前が負けたらその身体、一生使い物にならなくなるまで弄んでやる。もちろん、横の男には死んでもらうぜ?」

 

「構いません。それではもしあなたたちが負けたら今まで村を襲った罪をすべて償ってください。今後一切この村に近寄らないと、賊をやめると誓ってください」

 

賊が提示したあまりに残酷な条件にも臆することのない流琉に、一刀は小声で問いかける。

 

「流琉、いくらなんでもその条件はまずいだろ。俺はともかく、流琉が・・・」

 

「だいじょうぶです、兄様。人を悲しませるような賊の作った料理に私たちが負けるはずありません」

 

交渉成立とみた賊のアニキは大声で賊たちを寄せ集める。

 

「お前ら景気づけだ!いますぐ全員ここに集めろ。俺たちの料理の力、こいつらに味わわせてやるぜ」

 

 

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一刻も経たぬうちに村の広場に料理戦の準備が整う。

 

民衆のうち立会人となった、特級厨師認定協会の同州陳留郡出身の呉懿が料理戦の説明を始める。

 

審査員は公平性を保つため村からは大老が、賊からはデクが選ばれた。

 

「アニキ、チビ、がんばるんだなぁ」

 

「ああ、典韋や。どうかこの村を救ってくれぃ・・・」

 

お題は料理人の得意料理に有利不利が出ないよう、籤引きにより決定。

食材も流琉の村の特産品を双方が使用し、審査員は完成した料理がどちらの料理か知らずに食べ、より美味しいと感じた料理の旗を掲げることとなった。

今回は料理1品の一本勝負だ。引き分けの場合は再度籤引きにより2品目で勝敗を決する。

審査員は調理の様子を見ることはできないが、調理時間や調理法に規定はない。

 

 

呉懿からの説明が終わると、向かい合った厨房に立つ一刀と流琉は戦前の名乗りの前口上を唱える。

 

「性は典、名は韋。憎き賊を打ち破らんとする料理人の名、その穢れた魂に深く刻んでおきなさい!」

 

「俺は北郷一刀。まだこの大陸は知らないことだらけだけれど、悪いやつを許す理由はない!」

 

いつもの流琉からは想像もつかない猛き口上に続き、一刀もなんとか名乗りを終えた。それに合わせて民衆からは幾多もの声援が聞こえてくる。

 

一方、賊の厨房にはアニキとチビ。正式な料理戦などやったことがないのか、礼儀作法もまるで知らない様子で。

 

「お前らガキどもに名乗る名前なんてねぇんだよ。分かったらさっさと泣いて帰りやがれ」

 

賊のあまりの野蛮さに民衆は怒りと呆れの表情。他方、賊の一味は大盛り上がりである。

 

「それでは兗州が特級厨師認定協会のこの呉懿が、この料理戦しかと見届ける!」

 

呉懿の一声に、騒がしかった会場は一気に静けさと緊張感を持ち始める。

それを合図に籤入れから呉懿は一本の竹簡を引いて見せた。

お題の料理を決めるのだ。

 

天高く上げた竹簡に目を通した呉懿は

 

 

 

 

「これよりお題は『炒飯』に決した。これより料理戦を開戦する!」

 

 

 

 

こうして一刀にとって初めての料理戦、流琉にとってはかつての自分を超えるための料理戦。

 

陳留郡己吾県の存続を賭けた戦の、その開戦の狼煙がいま上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「流琉、だいじょうぶかなぁ? でも、ボクと鍛錬で張り合ってたくらいだし心配しなくていっか」

 

 

 

 




こんにちは、ぱすたです。
料理戦がはじまりましたね。
アニキ、チビ、デクも健在です。

呉懿は割とノリで登場させました()

流琉と一刀はどんな炒飯を作るのでしょうか?

俺も楽しみだわ(まだ考えてない)←おい
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