真・恋姫†夢想 三国志的中華飯伝 ~特級厨師流琉~   作:北郷ぱすた

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3章「東郡東阿県」
程立、相対す


黄河なくして大陸に文明なし、と誰かが言った。

太古の黄河文明に代表されるように、自然には水と緑の恵みを、人々には水路や運河として文化発展の助け舟を、この黄河は与えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

水面に映るは旅人ふたり。

 

「ようやく黄河か、かなり歩いたな」

 

一刀は流れゆく黄河の水流を眼前としていた。

移ろいゆく中華2000年の歴史を腰を据えて見てきた黄河。

はたして一刀の目にはどう映ったであろうか。

 

「はい、この黄河を越せば東郡東阿県は目と鼻の先です」

 

黄河が映したもう一人の旅人である流琉が言う。

 

陳留郡己吾県にて山賊を成敗してからひと月ほど経っていた。

 

というのも、料理戦の後に呉懿から程立との面会を進められた後、ふたりがまず最初に始めた事と言えば修行だ。

さしずめ、一刀は初めての料理戦で厨房の緊張感やら隣にいた流琉の鬼気迫る立ち振る舞いに威圧されたか刺激されたかで、料理戦の後に自ら流琉に修行を志願したくらいだ。

他方、流琉も久しぶりの料理戦で勝利を飾ったものの、その年不相応の生真面目な性格からか慢心することなく、むしろ一刀からの修行の誘いに喜んで頷いた。

 

それから二十日ほど経った頃か、修行がひと段落した頃合いに一刀は思い出したように呉懿の件が頭に浮かんできた。

 

「そういえば流琉、この前の料理戦で呉懿さんが言ってた程昱って人、どんな人なんだろう」

 

「そうですね、私が参加した前回の料理戦ではお見受けしませんでしたから、なんとも」

 

「俺、この世界に来てから流琉以外の料理人に会ったことが無いから楽しみだ」

 

ふたりが陳留から出発したのはそれからすぐのことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グキッ!!!!!!!!

 

「いってええええええええええーーーーーーーーーーーーーー!」

 

絶叫。

 

「兄様、もう少し我慢してください。こうやって伸ばすと足の疲れがよく取れるんですよ」

 

結論から言えば一刀の足は歩くことなどもう辞めにして何処ぞの足湯で労を癒したいと言わんばかりに消耗しきっていた。

陳留から東阿県までの距離を考えれば当然である。

この大陸の旅は電車や車でちょちょいのちょいなんて生ぬるいものではないのだ。

地に足をつけて歩けば、陳留から東阿県までは寝ずに歩こうともまる2日かかる。

例えば一日八刻ほど歩くのなら6日はかかる計算であり、いくら剣道で鍛えた肉体とは言えども一刀の身体が疲弊するのも無理はない。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと旅を甘く見てたみたいだ、もう少し休憩したら出発しよう」

 

???「おうおう、そんじゃひとまずこれ飲んどきな兄ちゃん」

 

「おう、ありがとな。これは?」

 

「これは鳩麦を煮立てた汁だぜ。こいつぁ足の浮腫みに効くから長旅にはもってこいだ」

 

「なるほどハトムギかぁ。って、おい。・・・・・だれですかあなた!?」

 

この時ふたつのことが同時に起きていた。

ひとつはこの謎の少女の出現で、一刀の足の柔軟運動に疲れたのか川岸まで顔を洗いに行こうとその場から立ち上がった流琉はちょうど一刀に背を向けた状態になっており、一方の一刀も地べたにうつ伏せの状態であり、ふたりからすれば黄河の地縛霊が突如降臨したかのような驚きと恐怖で這う這うの体。

ふたつめはその少女の話し方で、少女は全く口を動かすことなく、さも頭の上の珍妙な置物が話しているかのように振る舞っている。

 

 

 

 

「おう兄ちゃん、ずいぶん良いつっこみじゃねぇか。俺はホウケイ。そういう兄ちゃんは何て言うんだい?」

 

この置物、ホウケイとやらがあまりに自然に名乗り出たもので、この奇怪な状況も相まってふたりが次は自分たちの番だと気付くのに幾許かを要した。

 

「お、俺は北郷一刀。陳留から東阿県まで旅をしてる」

 

「わ、私は典韋です。陳留は己吾県の料理人です」

 

「で、あのー、つっこんだほうがいいのか迷ってたんですけどその下の方は・・・」

 

他人の頭に乗った置物に至極まじめに自己紹介するなど人生であと何回あるだろうかなどと考えていた二人は次に視線を下の少女に移した。

よく見ると身長は小柄で流琉と同じくらい、瞳は翡翠色で額を出した薄黄金色の髪は若干の撓みを持たせながら、その長さは少し屈めば地面に着きそうなほどで、全身を俯瞰すれば水色の目立つ長めの服装と相まって不思議と調和の取れた印象だ。

ともすれば額には緊箍児のような装束、右手には飴ちゃん、極めつけは頭の上のホウケイだ。

 

 

 

 

「個性的すぎる・・・」

 

 

 

 

紛れもなくこれが一刀と流琉の感じた印象であろう。

 

「こらこらホウケイ、しゃべりすぎて風が自己紹介する機会を失ってしまったのです」

 

「風は程立というのです、東阿県では県令のもとで政を学んでいます」

 

「えええええええええええええええ」×2

 

 

 

どうやらこの少女が程立であるらしい。風とはおそらく真名であろう。

 

呉懿さんから聞いていた程立の情報だけで勝手に料理の鉄人のような想像をしていた二人であったが、その程立が目の前の不思議な少女ちゃんであることに二人は驚いた。

さらに話しを聞いているうちに、どうやら出会いがしらの突飛な印象に反して、まことしやかに落ち着きがあり常識人だと分かると二人はまたも驚いた。

 

今日はいったい何回驚いたことだろう、と二人は思う。

 

(とりあえず程立さんがまともな人だと分かってよかった・・・)

 

 

 

 

「ホウケイってなんなんですか?」

 

「ホウケイは宝譿、風は風です」

 

「つまり腹話じゅ・・」

 

「おい兄ちゃん、野暮なことは言うもんじゃねえぜ」

 

 

 

 

 

いや、やっぱり変わっている。

 

これが二人の出した結論であった。

 

 

 

 

 

「いやはや呉懿さんからそんなことを。それではひとまず風の家に行きましょう。黄河の渡り船はこっちですよ、陳留の山賊狩りさん」

 

これまで経緯を話すと、程立は大変理解が速く、長旅で疲れただろうと二人を程立の家へと招き入れた。

ついでに言えば、先の山賊との料理戦で着いた通り名がしれっと知られており、この大陸の風評の広がりの早さにやや面食らった。

 

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「どうぞー」

 

程立は二人を連れて東阿県の家まで連れて行くと、いつもの飄々とした物言いで中へ案内した。

 

東阿県の街並みはというと、実のところ己吾県と大して変わり映えなく、あわよくば旅行も兼ねてと考えていた一刀は出鼻をくじかれた。

 

「そういえば程立さんと呉懿さんって面識あるんですか」

 

「かつての兗州刺史、橋瑁さん繋がりですね。今は東郡太守なのでお兄さんたちも良く知ってると思います。風は役人仕事の出先で何度か橋瑁さんとお話したことがありますから、呉懿さんと橋瑁さんが特級厨師協会であることを考えれば風を知っていてもおかしくありませんね」

 

「ところでお兄さん、飴ちゃんは好きですか」

 

突然急接近してきた程立に一刀の迎撃は間に合わず、あっさりとふところへの侵入を許し、程立の顔が一刀のパーソナルスペースを度外視した至近距離にあった。

 

「いやそれ食べかけ、いや舐めかけっ」

 

「ちょっ、ちょっと待ってください程立さん。なにしてるんですか」

 

「おやおや、ちょっと揶揄うつもりでしたがやりすぎてしまったようです」

 

戸惑いと当時に赤面した表情の一刀。してやったりの程立。

その様子を横で見ていた流琉は仮にも男女ですよと二人に念を押すと、一刀は俺は悪くないだの何の。

 

しかし一刀の話をよそに自分の胸に手を置くと、流琉のなかに何ともいえない感情が芽生えていたことを自覚したのもこの時であった。

 

(あれ、なんだろうこの気持ち。なんだかちょっと悔しいような・・・)

 

 

「あの、程立さん」

 

「はいはーい、どうしましたか典韋ちゃん」

 

 

 

もともと程立さんから料理の話を聞く予定の旅であったが、気が付けばこう言っていた。

もっと段取りというものがあったはずだ。

 

 

「私と料理戦、してくれませんか」

 

 

流琉がその気持ちの正体に気づくのは当分後のことである。




約1ヵ月ぶりです、ぱすたです。
イリヤの空やらうた∞かたやら夏色キセキやら夏のアニメを見返していたら1ヶ月も経っていました。
今回書いていて感じたのは風はホウケイと合わせてセリフを書くのが難しいということですね。
あとは地の文の表現をちょっと勉強したので色々遊んでみました。
もっとかっこいい文体で書きたいものですね。

ではまた次回('ω')ノ
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