《書き直し中》天才少女と元プロのおじさん   作:碧河 蒼空

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13話 私は愛人ポジションになる訳か

 埼玉県営大宮公園野球場。現在ここに埼玉中(さいたまじゅう)の高校女子硬式野球部が集まっている。

 

 新越谷高校野球部も部員揃ってやって来たのだが、正美は飲み物を買いに一時別行動をとっていた。

 

「ここーの売店にはーチェーリオーがあるー♪っと」

 

 正美が手にしているのは、彼女が好んで飲んでいる炭酸飲料。夏期の晴天の元、彼女は冷たく炭酸の弾ける喉越しを味わいながら歩いていた。これこそ最高の贅沢の一つと、正美は信じて疑わない。

 

「およ?」

 

 新越谷高校野球部の元に戻ると、珠姫が見慣れぬユニフォームを着た少女と話していた。見慣れぬユニフォームと表したが、正美は彼女の事を知っている。2回戦で当たる可能性のある梁幽館の二本手ピッチャー、ガールズで珠姫とバッテリーを組んでいた吉川和美である。

 

――おっ、ヨミちゃん達も戻ってきた。

 

 詠深、希、息吹は正美が飲み物を会いに行くのと同時にお花摘みへと出掛けていた。

 

 詠深が吉川に対してジェラシーを燃やしていた。珠姫が吉川のデータを集めて学校に持ってきた時は拗ねてしまった程に。故に、この場面を目撃した詠深は······。

 

――あー······ヨミちゃんの表情が抜け落ちてく。

 

 当然、嫉妬心を露にした。

 

 詠深と吉川は珠姫自慢の勝負を始める。

 

「試合後はいつも反省会とか言って引っ付いてくるのがかわいかったなぁ」

 

 と吉川が言えば。

 

「私は試合後に限らずいつもなんですよ」

 

 と詠深も負けじと言い返した。珠姫いわく、どちらも捏造らしいが。

 

「まぁ、珠姫がいなかったら今の私はなかったから感謝してるよ」

「私もです。タマちゃんがいなかったら私ここにいなかったし」

 

 二人の言葉に顔を赤くして照れる珠姫の後ろから正美が近付く。

 

「あはっ。キャッチャー冥利に尽きるねー」

「······別に。そんなんじゃないよ」

「またまたー」

 

 政美は素直じゃない珠姫を面白そうに頬を突っついた。

 

「それにしても、今カノ対元カノって感じだね」

 

 そう言うと、正美は腕を組んで考える仕草をし、言葉を続ける。

 

「······控えピッチャーでもある私は愛人ポジションになる訳か」

「······本当にもう良いから」

 

 正美の呟きに珠姫はげんなりして答えた。

 

 詠深と吉川の珠姫自慢は更に続き、その珠姫は呆れ果てて溜め息を吐く。

 

 その後、梁幽館のキャッチャーが現れた事で珠姫自慢合戦は幕を閉じた。梁幽館のキャッチャーは吉川を連れて戻っていく。

 

 珠姫はさっきのお返しと言って詠深の腕をつねるのだった。

 

 

 

 

 開会式はテレビ中継されており、後日、録画した映像を部室にてみんなで見ていた。

 

 新越谷高校の入場行進は皆足を高く上げ、手を大きく振り胸を張って歩いている。そんな姿に芳乃は御満悦だ。

 

「やっぱ十人だと目立つなぁ。手足が同時に出てる奴!」

 

 稜の指摘に白菊は顔を両手で被い、息吹は涙した。

 

「まあまあ。これはこれで初々しくて良いじゃん」

 

 正美は二人をフォローする。

 

「二人の結婚式にこれ流すね」

 

 勿論、弄るのも忘れない。

 

『やめてくれ(ください)!』

 

 息吹と白菊の抗議の声が部室に響いた。




 チェリオ、恐らくハチナイに出てくるチュリオの元になったであろう炭酸飲料。
 大宮公園に売ってるかどうかは分かりません。私ゃ行ったこと無いですから。


 さて、次はようやく公式戦に入れます。
 ヒロインが控え選手なので、どう書けば良いのか、いまだに悩んでおります······。

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