ダンジョンに異世界のアイテムを持ち込むのは間違っているだろうか(本編完結)   作:にゃはっふー

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オマケの初めはロキ・ファミリア。


オマケ・ベルとアイズの物語に関わる星
ロキ・ファミリア


 ベル・クラネルが入団する少し前。

 

 お城のような館、ロキ・ファミリアのホームである黄昏の館で、フィンは部下の報告を聞いていた。それはスピカの警護に関わる話。

 

「また彼女の父親の居場所を突き止めようとしたエルフがいたのか……」

 

「はい、どういう理由であれ、碌な事じゃないと思います」

 

 彼女はエルフにしてはかなりフレンドリーと言うか、考え無しと言うか、その辺は無頓着だ。エルフが見れば卒倒しそうな事を平気でしたりする。

 

 一人称が俺であったり、お酒をぐびぐび飲んだりすると言う報告もあった。後半のは年齢的にグレーだから、ヘスティアに任せるしかない。だがハイエルフを神のように見る者からすれば、我が目を疑うレベルらしい。

 

 こと酒に関してはガレスと意気投合し、他の飲兵衛とも仲良くしていたりするし、ロキと同じように綺麗な女の子の話で盛り上がるなど様々だ。

 

 提携関係にあるからか、時にはロキ・ファミリアに、ドワーフの育て親に抗議しようと言う謎のクレームが入り込むが、これも警護の仕事の一環として対処していた。

 

 彼らに掛かる火の粉は代わりに振り払う。限度はあるだろうが、いまのところ恩や借りが多いのはこちらなので、文句を言わず対処するのが筋だとフィンは思っている。

 

 そんなフィンの思いとは裏腹に、エルフで無い団員の中にはスピカを軽く見る者もいて、フィンの頭痛と溜め息を増加させる要因となっている。中には自分たちが名前を貸しているのだから武器の提供ぐらい当たり前だと宣う団員も居て、彼らに言い聞かせたり思い違いを(物理で)糺したりと、フィンは自派閥内部への対応にも四苦八苦している。

 

 リヴェリアもリヴェリアで、エルフたちの暴走に目を光らせている。エルフ族にとって彼女は古から続くリュミエール家、それも白と黒の王家双方の血を継ぐエルフの姫であり、しかも精霊から祝福された子供だ。そのせいで王家を崇拝するエルフのみならず、精霊を神聖視する者まで湧いて出る始末。そうした謂わば狂信者を払いのけたり、彼女宛ての手紙や縁談話など、本人の代わりに捌いている。

 

「ふう、書類仕事は多いが、まあ仕方ないことだね」

 

「団長、紅茶です」

 

「ありがとう。ただどこから入ってきたんだいティオネ?」

 

「反省と愛の結果です♪」

 

 それに苦笑しながら紅茶を飲む。できればスピカに自分の部屋を改造してもらいたいが、それを我慢して彼女関係の書類と他の書類、それらを片付ける為にひたすらに手を動かす。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「はあ」

 

 重いため息をつくリヴェリアに、ガレスが何が起きたのか気になって尋ねてみた。

 

「スピカの事でな。この前の事件、アルテナがリュミエール家を抱きこもうとしたのを機に、見合い話まで舞い込むようになって来てな」

 

 ギルドに届く、スピカ宛ての手紙を見ながらため息を吐くリヴェリア。世の中にはそんなバカがいるのかと呆れるガレス。

 

「………ご苦労さんだの。さすがにそっちの手伝いはできんぞ」

 

「ああ分かっているさ。しかしこうも見合い話が舞い込むとはな。当の本人も王位も貴族籍も無用と言っているのに、まるで求めている事を前提に話を持ち込まれるのは、少し堪える」

 

「どいつもこいつも、あの娘っ子が権力欲しさに自家の者と結婚したがると?その気になればオラリオの大多数の派閥よりも金も権力も容易く得られる様なあの破天荒娘がか?」

 

「だからこそ、あの娘を欲しがるのだろうな。しかも彼女が零細派閥だから付け入る隙があるに違いない、と言う意思が見え見えだ。旨い話を持ち込めばほいほい来るとでも思っているのだろうな」

 

 リヴェリアはため息をつき、ガレスも少しばかり憂鬱になる。

 

「あの娘っ子は成長方針的に、伸び伸びやらせた方が良いじゃろう。まぁ少しオーバーワーク気味と思うが、まるで気にせず喜々として仕事しておるしのう」

 

「その通りさ。好奇心旺盛な子供がしたい事を全力で取り組める様に、面倒ごとは全て我々大人が始末する。せめてそれ位の防波堤として事に臨まなければ、先達としての最低限の面目も立てられないからな」

 

 まあ好き勝手にやり過ぎて、娯楽に飢えた神々が狂喜しそうな物を作るのだけは、やめてほしいと思うリヴェリア。それもいまさらじゃろうと、苦笑するガレスであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「お二人とも、そろそろ休憩入れるっす」

 

「はい分かりました」

 

「はーい♪」

 

 加藤段蔵は律儀に頷き、ナーサリーライムは子供のように微笑む。ラウルとアキの二人は、彼女たちの経験値稼ぎの為、こうしてサポーターとして随伴していた。

 

「やはりいまの段蔵では、ミノタウロスの肉質は断てませんね」

 

「さすがにスピカさんの刃物でも、そうやすやすとLv差は覆せないっすね」

 

「私の魔法なら花火のように吹き飛ばせるわよ♪」

 

「だからって油断しちゃダメよ」

 

「はい。〝護衛〟いつもありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

 段蔵ならここから離れた位置で他の仲間が警護している事に気づいていそうだ、と思いながらそれとなく段蔵を見るアナキティ。

 

 段蔵たちは神々から見たら極上のオモチャだ。欲しがる神は数知れず。あまつさえ時々後を尾けてくる冒険者までがいる。この二人は早急に成長しなければ危険だろう。

 

 それまでは、こうしてばらけて護衛して見守る必要はある。彼女たちも成長するのには積極的だし筋は良い。人形だからだろうか、Lv1にしては動ける方なので、早い段階でランクがあがると思われる。

 

 こうして大勢の冒険者に護衛をしてもらいながら経験を積む段蔵とナーサリーライム。それに時々リリも混じり、彼らは成長するのであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「いつもありがとうございますね」

 

「ううん、これがあたしたちの仕事だからね~」

 

 ティオナはそう言い、リリはバイトの子たちに指示をしながら、ギルドに卸す品物を渡していた。

 

(それに基本あたしいるだけの仕事だからね)

 

 現在のところ、ティオナがいる状態で絡んできたのはソーマ・ファミリアだけだが、他のファミリアも裏で何するか分からない。

 

 影で護衛する団員はそこそこいる。量によっては時々品物運びも手伝うほどだ。

 

(それでも数が減らないから大変なんだけどね~)

 

 護衛が目に見えてあちこちにいるのに、何かしらの接触を計ろうとする者は後を絶たない。商人のように商談ならまだマシな方で、中には運搬要員が自分より弱いサポーターだから盗もうとする者もいる。そうした手合は稀だが、必ずいる。

 

 そう言う時こそ自分たちの仕事であり、これまでの武具アイテムのお礼をする番だと、ティオナは張り切ってぶっ飛ばすことにしていた。

 

「はい、給金は振り込みと、分割で分けますので、ちゃんと確認してギルドに報告してください」

 

 直接渡すとその後に襲われる。それはさすがにまずいので、金銭の受け渡しは複雑化している。ティオナはそちらを覚えるのに苦労した。

 

 多くが冒険者をやれないサポーターの人たちだが、きちんと仕事をするのだから守られるべき仲間だ。きちんと受け渡しをしながら、ティオナもきちんと仕事しようと、軽く意気込んだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「これが新しい装備か」

 

「スピカ様が用意した、後衛の装備らしいです」

 

 ロキ・ファミリアの一室でリーネ、エルフィ、アリシアが話し合っていた。装備を見ながら、そう言えばとエルフィは思う。

 

「そう言えばいくつかサイズぴったりだけど、どうしてだろう?」

 

「それはな」

 

 突然現れたロキが、それに答える。

 

「うちがきっちり団員たちのサイズ、教えているからやで」

 

 それにえっと言う顔をするが、まあと付け加えるロキ。

 

「スピカたんからは、『女の人いるんですから、細かいのはいいです』って言われてるけどな」

 

「ああさすがスピカ様、ご配慮ありがとうございます」

 

「『男は別にいいでしょう』とも言ってたで」

 

 苦笑するリーネとエルフィ。確かに嫌がりそうな男性は思いつかない、男はその辺は無頓着だろう。

 

 エルフィは礼装を持ち上げて、これにしようか悩んでいる。

 

「装備で火を防いだりするのは、精霊の護符とかで分かるけど、魔法も使えるのが凄いよね」

 

「はい、テストもかねているからと言う話ですけど、かなり融通してくれて助かりますね」

 

「これはなんとしてもご期待に応えなければ」

 

「水着とかで同じ効果の礼装もあるらしいでアリシア」

 

「……エルフィ、リーネ」

 

「わ、私たちが着るの!?」

 

「水辺ならまだ分かりますが、さすがにダンジョンアタックの中で着るのは少し」

 

 アリシアは自分で着て行くか悩む中、さすがにこれのデータ取りはいいかとお蔵入りしている事を、ロキはあえて言わなかった。

 

 リヴェリアを守るフェアリー・フォースは、少しずつスピカも巻きこみ始めていた。スピカは果たしてお世話されて喜ぶかどうか………

 

(なにげに思考がうちよりだから、喜びそうやな)

 

 と考えながら、その場を去って行った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 適当にアニソンを鼻歌で歌うスピカ。今日も元気に畑の世話をしている。

 

「よくフィンさんから仕事のし過ぎとは言われますが、時間を作れるんですよねこれが」

 

 そう思いながらロキ・ファミリアに感謝をする。面倒な話はリヴェリアが片付けてくれているし、他にも問題になるものを片付けてくれる。

 

 後は少ない人員をカバーしてくれて、スピカは感謝している。そのお礼に装備を渡したりしているが、実際は置き場所に困ったり、通用するか分からない物だ。

 

「少し悪い気もしますが、それが派閥の関係なら仕方ないですね」

 

 そう思いながら、今日ものんびり好き勝手に物作り。スピカは過ごす。

 

 ただ、いずれロキと結託して、あることをしようと考えている。

 

「エルフィさんはとある中学生のコスが似合いそうですよね」

 

 ぼそりと呟いた言葉は、見目美しい、可愛い団員たちを思い出す。

 

 その内、声とかに合わせたりと服を着てもらおう。ロキと相談して着させようと思う。アイズはアルトリアが似合いそうだと、物作り、前世の技術を使ったものを使用しようとしていた。

 

 これはいつかロキ・ファミリアを巻きこんだコスプレ大会を画策する、スピカの一日であった。




ダイジェストで一気に18階層の話まで持って行くけど、最初映画版がいいかな?

ウォーゲーム、映画辺りは短くても前中後編でやろうと思っているのでお待ちくださいね。

それではお読みいただきありがとうございます。

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