ダンジョンに異世界のアイテムを持ち込むのは間違っているだろうか(本編完結) 作:にゃはっふー
彼女はとある工房でそれを作った。
真夜中だと言うのに金属音が鳴り響いても誰にも気づかれず、ただ一人、黙々と作業する。
そして作られたそれを手に取り、僅かにがっかりした作り手。
「できたけど中身が無いとホント役に立ちませんね」
せっかく作った作品にそう告げて、中身をどうするか考えながら、すぐにできないなと思い、お蔵入りする事を決めた。
それがまさかの事態を呼び、奇跡を起こすとこの時は気づかず………
◇◆◇◆◇
「たまの休みを手に入れたぞーーーーーっ!!」
スピカ、ヘスティア、リリはイエーイとテンションを高め、い、いえーいと付き合うベル。鍛冶の仕事こそ時たまにしか手伝わないが、ベルは冒険者らしくダンジョンに潜って稼いでいる。装備はヴェルフが作った軽装の鎧に、ヘスティアがヘファイストスに依頼して作ってもらった【ヘスティア・ナイフ】(ヘスティアのお小遣いから即金で払った)を使っている。
リリがサポーターとして付き合う中、Lv2にすぐになったベルは戦力としてよく働く中、全員が纏めて休める日は何時ぶりだろうかと言う状態。奇跡の休みと祭りの日が合致して、こうして祭りに繰り出していた。
「神様たちは【
「しんげつさい?」
「はい、神様たちがご降臨する前からある祝祭の日です」
「確か、月を神に見立てて、モンスターの魔の手から無事を祈る、だったかな?」
せっかくなのでベルと契約した鍛冶師であるヴェルフと共に、祭りの都市を歩く一向。タコ焼きなど買って食べながら楽しく歩く。
「段蔵さんたちも、食事ができるんですか?」
「そうですね。段蔵たちは食べたり寝たりすることで、エネルギーを増やしたりしていますので」
「おいしいわおいしいわ♪」
段蔵とナーサリーライムとも仲良くしているベル。神ヘスティアがベルを連れまわしてリリたちが呆れる中、それを見つけた。
「さあさあお立会い、遠き者は音に聞け、近き者は目にも見よ!」
「あれは、ヘルメス」
神ヘルメス。何がしたかったのか、ベルの急激な成長に興味を持ったか知らないが、妬む冒険者をけしかけてヘスティア誘拐の容疑をかけられた神だ。
スピカは半眼になり、リリも胡散臭い物を見るように見ていた。
「どうやら【槍】を引き抜けるかどうかの見世物のようですね」
「だな。選ばれし者にしか引き抜けない槍ねえ。スピカなら作れそうだな」
「ええ、丁度一本ありますよ」
「作らない作らない」
リリに止められるスピカ。ナーサリーライムと手を繋ぐスピカは悪い顔をしていた。ベルは苦笑しながら、ヘルメスが用意した舞台にある槍を見る。何とも不思議な槍だと思いながら、次々と腕自慢がその槍を引き抜こうとしていた。
「あれ?」
そうベルが気づくと、レフィーヤが引き抜こうとしてすぐにギブアップ。次の人はアイズと言う状況であった。
「アイズさん」
「むむむっ」
ヘスティアが嫉妬の目線でアイズを見る中、憧れの人が舞台に上り、興味を持つベル。レフィーヤたちもこちらに気づき、軽く手を振る。
◇◆◇◆◇
「さーて次の挑戦者は!?」
「あっ、はい僕です」
「これはこれこは、泣く子も黙るヘスティア・ファミリアで急成長している、【リトル・ルーキー】ベル・クラネルだーーーーっ?!」
ベルは舞台に立ち、頭を観客に下げながら【槍】の側へと近づく。
舞台の側でスピカはジッと睨むようにそれらを見る。別にスピカは悪いことをする気は無い。もしもこの神が変な事していたら糾弾(ズドン)してやろうと思っているだけ。ベルやヘスティアにした事を許していない。
ヘルメスの言う【槍】は結晶のようなものに刺さっていて、ベルは【槍】に手を触れる。
(この辺り、妙な細工はありませんね)
そう思い、手に触れた瞬間………
『………見つけた………』
声が響いた。ベルは驚くと結晶は砕け散り、【槍】が引き抜けた。
尻餅をつき、驚愕するベル。【槍】を手に持ち、それを間近で見る。
「【槍】?」
(そうか……運命は君を選ぶのか………)
「やったーーーベル君ーーー♪」
「素敵だわ素敵だわ♪」
嬉しそうなヘスティア、ナーサリーに抱き着かれるベル。スピカたちもおめでとうと言い、舞台の外で拍手をする。
観客も歓声を上げ、ベルの功績をたたえる中、ヘルメスが尻餅をつくベルに手を伸ばし、手を受け取るベル。
「おめでとうベル君」
「よく分かりませんね、なぜ抜けたのでしょうか?」
そう言いながら【槍】を見るスピカ。ベルも分からずに【槍】を見つめていた。
「それじゃあ、今回の旅のスポンサーのお出ましと行こう」
「あっ、神ヘルメス。ちょっとま」
実はこの催しは豪華観光ツアーが付いてくる話なのだが、スピカたちは断ろうとしている。ヘスティア・ファミリアは年中スケジュールが埋まっている。遊びに出かけている時間は無いのだ。
スピカが何かを言う前にその人物、神は姿を表した。
「アルテミス、アルテミスじゃないか♪」
ヘスティアの歓声に、ふへっとスピカはそちらを見る。青い髪をした女神がそこにいて、その美しさに魅かれるスピカ。
嬉しそうに駆け寄るヘスティア。向こうも走り出し、駆け寄ったその時、ヘスティアを通り抜け、ベルへと駆け寄るアルテミス。
「へっ?」
「見つけた♪私の【オリオン】」
ベルを抱きしめるアルテミス。それにヘスティアがなんじゃそりぁーーと叫び声を上げた。
◇◆◇◆◇
「どういうことだヘルメスっ!?これがアルテミスだって?!」
「アルテミスも下界の暮らしに染まったってことじゃないかな?」
あの場で話し合うのもあれなので、教会のホームへと移動した面々。ヘスティアはアルテミスの変わりように叫び声をあげ、ヘルメスは気にせずにそう呟く。
ヘスティア曰く、アルテミスは不純異性交遊撲滅委員長。大の恋愛アンチ。
「それがどうしてこうなったぁぁぁっ?!」
「それで、どうしてそんな人と言うか神が旅のスポンサーに?」
「実は、オラリオの外にモンスターが現れたのさ」
ヘルメスが真面目な話をし出す。曰く、オラリオの外でとあるモンスターが出現した。
アルテミス・ファミリアが発見したが、それは劣化したモンスターと違う、危険な厄災である。
「つまり観光ツアーとは名ばかりで」
「ただのモンスター退治ですか?」
「そう言うことさ」
それに呆れるスピカ。すぐにそれを口にする。
「ヘスティア・ファミリアはそんな依頼受けられません。明日のスケジュールはすでに組まれています。アイズさんたちロキ・ファミリアなんかに話を」
「それじゃダメなんだ【オリオン】」
そう言ってベルを見つめるアルテミス。そう言われてもとスピカは困った顔をする。
「【ブルーメタル】だって卸さないといけないし、信用問題に関わるんですけど。あと彼はベル・クラネル。オリオンでは無いですよ」
「いいや、あなたは【オリオン】。ずっとあなたを探していた。私の希望」
そう言い、スピカとベルは困った顔をしていた。
「どうして僕なんですか? 僕よりもアイズさんとか強い人は大勢います」
「この【槍】を使うのは強さではない。穢れを知らない純白な魂」
そう言って【槍】を手に持つアルテミス。どうも引く気が無いし、かなり厄介な問題らしいと、頭の中でスケジュールをどうするかやりくりしていた。
「ヘルメスさま、この【槍】って」
「言っただろ伝説の槍だって、ヘファイストスお墨付きの槍だぜー♪ 君は【槍】に選ばれたんだよベル君」
そんなこんなで、ヘスティア・ファミリアのホームと工房をヘファイストスに預け、ヘスティアたちは
◇◆◇◆◇
城壁ならぬ市壁の上、スピカは旅に出ると聞き、意気揚々とある物を持ってきた。
「それがこれっ♪【超スーパーカー】です」
「うわあぁぁぁっ♪」
それを見たベルは驚き、リリはまた変な物をと言う目でスピカを見る。念のためにフル装備で出たかったため、スピカはありとあらゆる準備をした。
「こいつには多くの【
「スピカ君、悪いけど行きは空路の予定なんだ。すまないがそれは」
「あっ、ついでに飛べます」
「飛べるのそれ!?」
ヘルメスも目を輝かせて、空を飛ぶ【超スーパーカー】に興味を見出す。
色々用意をしたスピカは空を飛ぶ【超スーパーカー】に乗り運転する。飛竜を連れてきたガネーシャがびっくりする中、スピカ、ヘスティア、ナーサリーライムは【超スーパーカー】に乗り、飛竜はアルテミスとベルが、リリは段蔵、ヴェルフはヘルメスを乗せて空を飛ぶ。
「マスター、これにはどんな物を乗せてるの?」
「………色々です」
スピカはナーサリーライムの眼を見ずに答え、空へと飛ぶ。
誰かに見つかる前に、スピカたちヘスティア・ファミリアは旅立つ。
ホームの前に《全てヘルメスの所為》と言う書置きを残して………
【ヘスティア・ナイフ】出典ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
ヘスティアの神血が混ざって、神聖文字が刻まれた黒いナイフ。ヘファイストスに作ってもらい、ヘスティアが自腹を出して即金で作ってもらった。
【超スーパーカー】出典ドラゴンクエスト ビルダーズ2
空を飛び、どんな悪路も進み、バリアやビームも出せるその名の通り超スーパーな車。
スピカの物は二台あり、この二台使いボーダーと合体して空を飛ぶことも可能。やりたい放題である。
さて冒険が始まりました。ベル君に待ち受ける運命は?
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