ダンジョンに異世界のアイテムを持ち込むのは間違っているだろうか(本編完結) 作:にゃはっふー
魔獣【アンタレス】を討ち滅ぼし、人々が歓声を上げる中で、飛翔する【つばさの勇車】で彼女は英雄に頭を下げた。
「あなたのおかげで助かりました。聖杯が手に入らないのに、よく来てくれましたね」
「全くだ、って言うか俺が聖杯になるの込みの召喚だなんて、二度とごめんだ」
狩人は黄金の粒子になりながらスピカに文句を言い、スピカはそれでも来てくれた事に感謝しながら、黄金の輝きを宿す杯を手に取る。
「………そいつでどうにかなるのか?」
神妙な顔でスピカを見る。英霊がいま一体、座に帰還するエネルギーを貯め込む。スピカは静かに真実を告げた。
「どうにかします、それがあなたとした契約です」
スピカの真剣な面持ちに、そうかと満足そうに笑い消えて行く英雄。
その英雄を形作る魔力を貯めた聖杯を手に、スピカは仲間の下に走り出す。
◇◆◇◆◇
カプセルの中にいるアルテミス。すでに槍に宿るアルテミスは姿を消している。
「どうなってるんだい?」
「いま私が作った【天使の聖杯】や【せかいじゅの葉】でうまくごまかしています。そろそろ限界ですのでこの【聖杯】を使って、彼女を蘇生させ、かつ地上降臨状態へと変えます」
「もしもできなかったら」
「アルテミス様は下界のルールによって天界行きです」
「スピカ君、アルテミスはこれからなんだ。例え生き残っても、地上とお別れなんてダメだ。後は頼む」
「分かりました」
聖杯を使うだけでは足りない。やはり【アルテミスの矢】を使用しよう。矢と聖杯、二つの聖遺物を使用して
そして下界のルール、それを聖杯の力で覆す。事実、アルテミスは
矢の召喚をカウントされてしまえばそれまでだが、それも【アンタレス】として誤魔化して世界を欺く。聖杯ならそれくらいできるが、英霊一人分でどこまでやれるか分からない。
だがオリオンは冠位英霊の資格を有するアーチャーだ。一体のエネルギーは遥かに超えているはず。
自分が呼び出した者の凄さにおののくのは後だ。スピカは全集中して魔力を操作して、因果を誤魔化す。
聖杯が砕け散り、運命は決定する………
◇◆◇◆◇
『やはり私は』
暗闇の中でうつむくアルテミスに、一条の光が話しかける。
――それでいいの? もう地上には降りられないのよ?
『私は下界のルールを破っている。それは間違いないんだ』
――それでも、あなたは納得できる?
『………私は』
――いいじゃない、神様なんて自分勝手なんだから。いまは他の神の子だけど、地上にいればまた出会える。そしてそこから始まる物語があるのよ。
『………本当にいいのだろうか?』
――それを決めるのは私じゃない。ただ一つ言えるのは、私のダーリンはあなたを救うために燃料になったし、あなたは別世界の私。オリオンを離しちゃダメ。
『羨ましいな、オリオンのいるあなたは』
――うふふ、駄目よ。ダーリンは私のオリオン。貴方のオリオンは、いまあなたの目覚めを待っている。
『………私は』
――そう決めた子たちはいる、それを願い、必死になる人たちがいる。なら、あなたのするべきことはなに?
その言葉にアルテミスは光の中に飛び込み、月女神はアルテミスに微笑んだ。
◇◆◇◆◇
「なあギルドや他の神には言わないから、君が最後に使った物はなんだいスピカ君? 気になって夜も眠れないよ」
ヘルメスはそうにこにこしながら話しかけて来る。胡散臭いその笑顔に、聖杯の事は決して言えないとスピカは思い、ヘスティアたちも追及する事はしない。
アルテミスは【アンタレス】に取り込まれたが〝運よく〟助け出され、これまた〝運よく〟下界に留まっている。
傍にいた神々はそれでいいと納得して、眷属たちもそういうものかと納得させた。ヘルメス・ファミリアはいま、スピカから譲ってもらった【
ここまで来ると【つばさの勇車】はアルテミスに渡してしまおうと、リリと相談したスピカ。当たり前だがバレると面倒なので【スーパーキラーマシン】や乗り込み式【ゴーレム】はアルテミスに渡すことにする。
「今回はすまなかったオリオン、私の為に」
「い、いえ、僕がしたことは些細な事です」
「些細な事か」
微笑むアルテミス。いま【つばさの勇車】の扱いなど教えてもらいながら、ベルたちは帰還の準備に入る。
ベルと話し合うアルテミスは微笑み、そしてヘスティア含めたヘスティア・ファミリアに感謝した。
「ありがとうヘスティア、ありがとう神友の眷属たち。私はここから、また一からやり直すよ」
「はい、アルテミス様もお元気で」
「ああ、そうだベル」
最後にベルを優しく抱きしめるアルテミス。ヘスティアが憤慨するがスピカとリリが抑える。
「来世では私に恋を教えてほしい」
「へっ?」
頬を赤く染めて耳元で囁くアルテミス。そのまま頬に口づけを交わして、頬を赤く染めて【つばさの勇車】に乗り、飛翔していく。
ヘスティアがわんわん泣きわめくが、結局最後に笑顔になり、彼女に手を振った。
◇◆◇◆◇
帰ってきたスピカたちは、すぐに貯まった仕事を片付け初める。ヘルメス? 彼奴は良い神だったよ、アスフィは良い眷属だから問題ない。その中でリリはスピカに問いかけた。
「スピカ様、結局聖杯? はこのままでいいんですか?」
「作った時、中身が無くて断念したけど、あれは作らない方が良い物だと、今回理解したよ。さすがにもう一個、作る気は起きないな」
「それはよかった。リリは失ったからまた聖杯を作るスピカ様を幻視してしまいました」
「もうリリったら、俺の事をよく理解してくれて嬉しい♪」
「寝言は寝てから言ってください」
笑顔の言葉を笑顔で返すリリ。いけずとスピカは残念がる。ちなみにヘスティアも側で聞く耳立てていたので、この言葉に嘘は無いと後でリリに報告する。
もう一個、聖杯を作る気は無い。それは正しい、スピカはもう聖杯を作らない。
「神様リリ団長ッ! ガネーシャ・ファミリアが倉庫含めて家探しするようですよ」
「大丈夫、危ないのは隠してあるから」
「隠すもんがあるのかお前」
ベルがエイナから言われた言葉を言いに来て、笑顔で答えるスピカ。ヴェルフは呆れ、ヘスティアとリリはジト目でスピカを見る。
段蔵は苦笑して、ナーサリーライムは笑顔で微笑む。
またやってきた日々に満足して、今日もヘスティア・ファミリアは元気である。
◇◆◇◆◇
とある地下施設、そこはどこかにあり、明確な場所は記されてはいけない。
スピカはそこにいて、静かに何かをしている。それは新しいやばい物、弓を隠しに来たのだ。
「やっべええ、仕方ないとは言え【宝具】レベルのもん作っちゃったからな。隠しておかないと」
グランドアーチャーしか使えないが、だからと言ってギルドにバレると面倒だと、ここに隠しに来た。ここはヘスティア様やリリすら知らない。スピカヤベーもんシリーズが隠してある場所だ。
「聖杯も役に立ったし、中身あれば役に立つなこれ」
そう言って【聖杯】を手に取るスピカ。
もう一個作る気は無い。すでにあるのだからたくさん。
嘘は言っていないため、追及されていないし、直前でしていたグランドサーヴァント召喚陣も封印されている。
「オリンポス、アトランティスまでしていてよかった。まさか呪式が存在すると知っているから、俺のスキルで製作できるって反則だよな」
行き当たりばったりで考えた作戦だが、うまく行ってよかった。最後にはハッピーエンドになったのだからそれでいいとスピカは聖杯を仕舞い、その場を後にしようとする。
その時、ふと、考えた。
「ここ特異点扱いとかにならないよね?」
フラグな気がしたが、サーヴァントはいないのだから問題ない。そう考えてここから離れていく。
【聖杯】出典Fate/
願望機、結果を省き、答えにたどり着く道具。スピカの場合、七騎の英霊を燃料にしなければいけない。今回はグランド・アーチャーを燃料にした。
【天使の聖杯】出典聖剣伝説
蘇生アイテム。スピカが念のために作っているが、世に出る事は無い。
【せかいじゅの葉】出典ドラゴンクエスト
蘇生アイテム。スピカが作る大樹の葉。これで人を蘇生できるか分からない。
スピカの英霊召喚、しかも冠位はオリオンだからできました。後は縁ですね。
特異点化は無しですね。さすがに。
それでは次は戦争遊戯です。お読みいただきありがとうございます。