特に毒にも薬にもならない日常系です。
主要な登場人物は全員低身長で、カヅホ先生の「キルミーベイベー」くらいの頭身をイメージして頂きたいです。主に私の趣味ですが・・・
まずはざっくりとした紹介とか設定を。
≪主要登場人物≫
わたし(早川百合)・・・本作の主人公。黒いショートヘアの少女。人見知りで控えめな性格。学業は至って優秀。浅い付き合いよりも、深い繋がりの友人を求めるタイプ。
友部加奈・・・百合の親友。肩に付くくらいの茶色の髪をツインテにまとめている。気さくな性格で友人は多いが、意外と寂しがりな面も・・・?
友部理奈・・・加奈の双子の妹。加奈よりも少し長い茶色の髪をポニーテールにしている。優しくおっとりとした性格で誰からも好かれるタイプ。他人の(特に姉の)世話を焼くのが好き。
森田苺・・・百合たちの友達で、特に理奈と仲が良い。赤髪のふわふわツインテ。声が小さくぼそぼそ喋る。常に眠たそうな目をしていて、周りからは小動物のように愛されている。
≪舞台≫
百合の住む街・・・百合が生まれ育った街。特に都会でも田舎でもなく住みやすい。加奈・理奈姉妹の住む街とは隣接している。
桜花高校・・・百合たちが通う学校。その名の通り、春には桜がたくさん咲く。そこそこの進学校。古い学校で、制服も昔ながらの紺一色のブレザーと膝丈スカート(男子は学ラン)。
1話 春の空気
暗いわたしの部屋のカーテンが揺れて、その隙間から明かりが漏れ出す。今日もまた新しい日が始まった。
新しい制服に袖を通す。なんだか恥ずかしくなる。
朝の身支度は大抵すぐ終わる。女の子なのにおかしいねって、よくお母さんは言ってる。でも鏡なんてあまり見たくないし・・・
今日から高校生だ。電車で通学するのは初めてで、なんだか緊張する。でも二駅だけだし、そんなに混むわけでもないから大丈夫、だと思う。
電車がガタンゴトンと揺れる。窓の外に見える景色はいつの間にか鮮やかになっていて、周りの空気もどこか浮ついているように感じる。わたしは何だか取り残されたみたいで、俯いたまま身を縮こませている。
学校に着くと、わたしと同じ制服を着た人が、昇降口にたくさん群がっている。クラス名簿が貼ってあるみたいだ。わたしは背が小さくて全然見えないし、だからといって人混みに入りたくもないから、人が少なくなるのを待つことにした。
しばらくすると、後ろから人が近づいてくる気配がした。チラッと目をやると、わたしと同じくらいの身長の二人組が居た。
「ねぇ理奈、私達同じクラスかな?」
二つ結びの娘が、掲示板を見ようと目を凝らしたり、ぴょんぴょん跳ねたりしながらそう言った。
「こらお姉ちゃん、あんまりはしゃがないの。うーん、姉妹だし同じクラスってことはないんじゃないかな?」
ポニーテールの娘が落ち着いた様子でそう答えた。会話の内容から、二人は姉妹らしいけど、顔以外はあまり似てない。
「あたっ、ご、ごめんね!」
二つ結びの、姉の方がわたしにぶつかってきた。
「お姉ちゃん、だから言ったでしょ。ごめんね、痛かった?」
「あ、ううん、全然・・・軽くぶつかっただけだし・・・」
見ず知らずの人に話しかけられるとは思ってなかったから、おどおどしてしまう。ちゃんと話せているかな。
「あなたも一年生? 何組なの?」
「まだ見てなくて・・・」
「あっ、そろそろ人少なくなってきたよ」
そう言うと姉の方は掲示板へ駆け寄った。
「と・・・と・・・あった! 私一組だよ!」
「私二組だ・・・やっぱりお姉ちゃんとは別になっちゃったね」
「あ、わたし一組だ・・・」
ということは、この元気な姉の方と同じクラスということになる。
「本当? 煩い姉ですが、お姉ちゃんをお願いします」
妹の方が深々とお辞儀をしてきた。
「煩いは余計だよ! よろしくね・・・えっと」
「早川です。早川百合」
「百合! よろしくね百合。私は友部加奈だよ」
「加奈の双子の妹の理奈です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします・・・」
言葉ではそう言うが、春の空気のように陽気な二人と、陰気なわたしとでは住む世界が違うというか・・・きっとそう話す機会もないだろう。卑屈かも知れないけど、そう思った。
「ふーん、それじゃあ家も近いんだ。一緒に遊ぶ時とか便利だね」
教室に着くまで話しながら歩いている。どうやら友部姉妹とは自宅が隣町どうしのようだ。しかし、この姉は図々しいというか何というか・・・
「えへへ・・・」
でも、この人懐っこい笑顔を見ると何だか許せてしまう。不思議な人だなと思う。
『百合って全然笑わないよね。何考えてるのか分かんないよ』
・・・やっぱりこの人とわたしでは何もかもが違う。あまり仲良くならない方がいいだろう。
教室に入り自分の席に座ると、加奈はさっそく周りの席の人と話し始めていた。わたしはといえば、相変わらずの人見知りで、彼女のように上手く周りに溶け込むことができないでいた。
今日は特に授業もなく、今後のスケジュールの説明などで終わった。
文具を鞄に詰めて帰ろうとすると、また加奈が話しかけてきた。
「あ、待って百合。駅まで一緒に行こう」
「え、でも・・・」
加奈はどうしてわたしに声を掛けてきたんだろう。他に仲が良くなった娘もいるはずなのに。
「嫌・・・かな・・・」
彼女に子犬のような瞳で見つめられると断れなくなり、結局一緒に帰ることになった。
「あ、お姉ちゃん。百合さんも」
妹の理奈ともう一人、わたしたちよりも小さな女の子が立っていた。
「理奈・・・とそっちの娘は?」
「どうも、森田苺って言います。理奈さんとはクラスメイトです。変な名前だけど変な人間じゃないと思います。たぶん」
苺と名乗る少女は、眠たそうな目でそう自己紹介した。
「よ、よろしく。私は理奈のお姉ちゃんの加奈」
「・・・早川百合です。よろしく」
「理奈ちゃんと百合ちゃん、よろしくです。いきなり友達がたくさん増えて、私の脳が悲鳴をあげてます。もちろんうれしい悲鳴ですが」
無表情で口調の抑揚もないため、冗談なのか本気なのか良く分からない。とらえどころのない人だなと思った。
「席が近くて仲良くなったんだよ。苺ちゃん、かわいいでしょ」
「ま、まあ可愛い娘だよね」
加奈が困惑してる。そしてわたしに耳打ちで
「理奈ってちょっと変わった娘が好きだからさ・・・」
と言ってくる。
「あら、そちらさんも仲良しのようで」
「おっと、ごめん。それじゃあそろそろ帰ろうか。苺も駅まででいいの?」
「はい。私の家結構遠いんで、電車通学です」
四人で他愛の無い話をしながら駅まで歩いた。中学では人とこんなに話したことはなかったから、少し疲れる。
「うーん、次の電車まで少し時間あるね」
駅のホームで時間を確認した加奈が呟く。
「じゃあ私パシられて来ます。飲み物とか要ります?」
「あ、自販機なら私も行く」
というわけで理奈と苺はとんとんと居なくなり、加奈とわたしの二人だけになった。
「ねぇ百合・・・無理やり連れてきちゃったけど、迷惑じゃなかった?」
思いつめたように加奈が聞いてくる。
「・・・迷惑じゃないよ。ごめんね、わたしが不愛想だから・・・」
「ううん、違うの。百合は一人の方が好きなのかなって。もしそうなら悪いなって思って」
加奈もこう見えてわたしに気を使ってくれてたんだ・・・
「でも友部さん、他にも色んな人と仲良さそうにしてたのに、どうしてわたしだけ誘ってくれたの?」
一番疑問に思っていたことを聞いてしまった。
「えっとね・・・なんというか、百合は信用できる人だなって。今日会ったばかりでおかしいけど、百合とはもっと仲良くしたいなって思ったの」
いつの間にか当たりは夕焼けに包まれていた。加奈の頬も夕日に照らされて赤くなっている。
「信用・・・どこが・・・?」
信用なんて言葉は簡単に口に出して欲しくない。でも、加奈の子供のように真っ直ぐな瞳を見ていると、少なくとも彼女はわたしを陥れるために言ってるんじゃない、本気で言ってるんだってことが分かる。
「百合の空気感というか・・・上手く言えないんだけど」
彼女がわたしを信じてくれるんなら、こんなに嬉しいことはない。本当は・・・わたしも加奈とは仲良くなれるかも知れないと思った。やっぱり言葉で言い表せるものではないんだけれど・・・
「友部さん・・・あのね、わたしもあなたと仲良くしたい。友達に・・・なりたいと思う」
「本当!」
突然加奈が元気を取り戻す。
「じゃあ、じゃあ、まずは友部さんじゃなくて加奈って呼んで! 理奈だって友部さんだもん」
いつものわたしなら、こんなに陽気な人は煩わしく思うはずなのに、加奈にはその感じが無い。やっぱりこの人は不思議だ。
誰かと仲良くなることは、正直今のわたしにはとても怖い。でも加奈には・・・少しだけ勇気を出してみよう。そう思った。
帰りの電車から見える街は夕焼けに包まれていた。それは朝に見た景色よりも優しく感じた。
オリジナルSSを書くのは初めてなので、どうか暖かい目で見てやってください。
一話なので長くなってしまいましたが、各話1000文字ちょっとくらいの、サクッと読めるSSを書いていきたいと思います。
フラワーナイトガールの二次創作と並行して作るので、更新は遅くなると思います。ご容赦下さい。