ぐれーす!   作:イッチー団長

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現実では大分涼しくなってきましたが、作中は夏まっさかりです。

今回は百合のお姉ちゃんが登場。
陽気なキャラにしたいのですが、自分が陰気なのでいまいち書き方が分からない!

それとお姉ちゃんは異性愛者です。彼氏とか出すつもりはありませんが、気になる方は注意。


11話 夏

「ただいま、百合~」

大学生の姉、春菜は開口一番にわたしに抱き付いてきた。

「お、おかえりお姉ちゃん」

蒸し返すような暑さの中、姉の体温、汗の匂いを感じた。

 

「あ、おかえり春菜」

「お母さんもただいま~」

そう言って今度は母に抱き付く。

本当にこの姉はスキンシップが好きだなと思う。

そんな所が人から好かれるのかも知れないけれど。

 

「聞いてよ二人とも~。最近彼氏と別れちゃってさ・・・」

重い荷物を置いてソファに座ると、いきなりその話題を振ってきた。

「あら、それはお気の毒に」

「そうなんだ・・・」

正直あまり好きな話題では無かったので適当に相槌を打っておく。

 

「そういえば百合はそろそろ彼氏できた?」

「あ、えっと・・・」

加奈との関係を言っていいのか、わたしには分からなかった。

「百合にはまだ早いか・・・でも恋は良いよ~」

「あ、うん・・・」

姉と母が理解してくれない、とは言わないけれど、やはりどこか言いにくさを感じてしまう。

家族相手に、自分をさらけ出すことが難しい。

わたしは弱虫なんだと思う。

 

 

 

「ん~この部屋も久しぶり~」

大きく背伸びをして、自分の部屋を見回す姉。

「百合も、掃除手伝ってくれてありがとね」

「ううん」

姉の部屋はわたしの隣。

姉もそんなにうるさい人間ではないのだけれど、生活音は気になる。

特に恋人と電話している声などは、嫌でも耳に入ってくる。

 

わたしは、姉が隣にいるときはなるべく音を立てないようにしてきた。

別に何か文句を言われるわけではないけれど。

自分の音を聞かれるのが、怖いのかも知れない。

そのせいか、外でも音を立てるのが怖い時がある。

 

「あ、ちょっとごめん。もしもし」

電話が掛かってきたようなので、わたしはそっと部屋を出る。

ドアの向こうには姉の楽しそうな声が聞こえてきた。

 

 

 

「百合、おはよ~」

「おはよう、加奈」

暑い日差しを浴びながらあいさつを交わす。

白い肌が朝日に照らされてキラキラと眩しく光っている。

「お姉さん、もう来たの?」

「うん」

「そっか・・・ねえ、私も会っていい?」

一瞬加奈の言っている言葉の意味が分からなかった。

「お姉ちゃんに?」

「うん。ほら、恋人だしさ、挨拶しておいた方がいいんじゃないかなと思って」

「いいよそんな。わたしだって加奈のお母さんに会ったことないし」

「でも・・・」

加奈が言いたいことは分かる。

わたしがお姉ちゃんに引け目を感じていること。加奈はそれを気にしてくれているんだ。

 

「加奈、そんなに気を使わなくていいよ。この前加奈が言ってくれたこと、とっても嬉しかったから、わたしはそれだけで充分」

「百合・・・よし決めた! 百合の家行きたい。できれば今日!」

「今日・・・まあ遊びに来るのは嬉しいけど、本当に気を使わなくていいからね」

「ううん、私が好きでやってることだから」

加奈の優しさがわたしを包む。

あんまりにも嬉しかったものだから、わたしの顔は真っ赤に染まっていた。

「加奈、ありがとね」

その体温を伝えるように、わたしは加奈を抱きしめて、その頬にキスをした。

太陽に焦がされた彼女の頬は、暑くてほんのり塩の匂いがした。

 

 

 

「じゃあ二人とも、今日は私百合と一緒に降りるから」

いつもの駅のホーム。

いつもと違うのは、加奈と一緒に居ること。

「百合さん、お姉ちゃんが迷惑かけるね」

「ううん、むしろ嬉しい。理奈さんと苺さんも、気が向いたらまた遊びに来てね」

「うん。百合さんもそのうち、私達の家に遊びに来てよ」

「私の家でもいいんですよ。まだ理奈さんしか呼んだことありませんからね」

「うん、ありがとう」

 

「じゃあ行こっか、百合」

「うん」

汗ばんだ手を握る。

まだ青い空の下に二人がいる。

わたしは何だかとても安心していた。

 

 

 

「ただいまお母さん」

「おかえり~。って、加奈ちゃんも一緒だったの?」

「お邪魔します」

ペコッとお辞儀をする加奈。

同時に二階から足音が聞こえてきた。

 

「おかえり百合。あれ? お友達?」

階段からひょっこりと顔を出した姉は、そのままわたしたちの所まで駆け寄ってきた。

「あ、えっと・・・」

加奈は友達じゃない。恋人だ。

そう言おうと思ったけれど、中々言葉が出てこない。

そんなわたしを見て、加奈はにっこりと笑って言った。

「いえ、恋人です。百合さんの恋人の友部加奈って言います」

 

「恋人って・・・もう、面白い子だね、ふふ・・・」

冗談として受け止められてしまったらしい。

仕方がないことだ。

姉は異性しか好きになったことが無いんだろうし。

それでも、加奈との関係を仕方ないでは済ませたくなかった。

「本当だよ。加奈はわたしの恋人」

二人で目を合わせて笑う。

加奈の細めた目がとても愛おしく感じた。

 

 

 

「も~びっくりしたな~。百合が女の子と付き合ってるなんて・・・しかもこんな可愛い子と」

姉は加奈のほっぺたをぷにぷにしている。

「言ってくれれば良かったのに~」

「うん、ごめんね」

「それで~・・・馴れ初めは何だったの? 加奈ちゃんは百合のどんなところが好きなの?」

矢継ぎ早に質問してくる。

姉は本当にこの手の話題が大好きなんだなと思った。

 

「お姉ちゃん、加奈が困ってるからまた今度に、ね?」

「はーい。それじゃまたね」

嵐のように去っていった姉。

加奈とわたしは、顔を合わせて微笑んだ。

 

「お姉さん、面白い人だね」

「うん、でもちょっと疲れるというか・・・」

「あはは・・・」

 

「百合~、アルバムとか無いの?」

「無いことはないけど、見たいの?」

「うん! やっぱり定番だし」

「えーと、確か・・・」

本棚を漁る。

正直、加奈に昔のわたしを見せるのは恥ずかしいけど。

 

「あった。これが小学生の頃、これは幼稚園かな?」

「おお~、百合可愛い」

「か、可愛くなんてないよ・・・捻くれた子供でさ」

写真に写っているのは、いつもむすっとしていた子供の頃のわたし。

別に怒っている訳ではないけれど、上手く笑えなかったんだと思う。

 

「子供の頃の百合可愛いな~。あ、勿論今も可愛いけど」

ページをぺらぺら捲りながら笑う加奈。

そんな彼女を見ていると、わたしまで笑顔になってくる。

わたしもあの頃より成長しているのかも知れない。

少し、嬉しい。

 

 

 

夏の日も沈むころ、二人はまた別れる。

熱いアスファルトの上を黒い影が伸びていく。

「加奈、今日はありがとう」

「ううん、今日は楽しかったよ百合」

加奈を抱きしめる。

柔らかい身体から熱を感じる。

「加奈、キス、していい?」

「うん・・・」

夏の熱を帯びた頬に手を添える。

少しかさついた唇に唇を重ねる。

「んっ・・・」

 

華奢な肩に手を回す。

蝉の声が延々とこだましている。

ずっと、ずっとこうしていられればいいのになと思う。

「加奈、好き・・・」

わたしがそう言うと、加奈の手にぎゅっと力が入る。

 

街はいつの間にか夕日に染まっていた。

「百合、何か懐かしいね。百合が初めて告白してくれたのも夕日の中だったよね」

「うん。でももう少し薄暗かったかな?」

夕暮れ時は何だか寂しくなる。

だからわたしも加奈を求めたのかな。

悲しいぐらいに。

 

 

 

同じ屋根の下で暮らせないのなら

同じ空の下で求め合いたい

寝てもすぐ目が覚め

起きても夢を見る

哀しみは抜けない

涙ボロボロ

早川義夫「嵐のキッス」

 

 

 

「それじゃあ、またね加奈」

「うん、それじゃあ」

手を振るあの子。

長い影。

わたしも自分の家に帰ろう。

今日の夜はきっと暑くて寝苦しいだろうけど。




今回は私も大ファンの早川義夫さんの歌詞を引用させて頂きました。
畏れ多いですが、主人公・早川百合の苗字も彼から頂いていたりします。

最近、もっともっと優しい作品を書きたいと思うんです。
(例えば私のような)気が弱い人、かっこ悪い人に対して、少しでも寄り添った作品にしたいなと思うんです。
私の技量でどこまで書けるかは分かりませんが・・・

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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