まぁ現実は秋ですが。
久しぶりのプロフィール紹介
名前:早川春奈
身長:162cm
趣味:アクセサリー作り、料理
血液型:A型
誕生日:8月8日
家族構成:妹が一人(百合)と母(早紀)、父は既に他界。
東京の大学に通っている、現在は一人暮らし。
明るくて誰にでも好かれやすい。
結構抜けている所があって、百合に世話を焼かれることもしばしば。
電車の窓から差し込む朝日。
眩しくて目がくらむ。
今日は加奈の家に泊まる予定だ。
胸が高鳴る。友達の家に泊まるなんて初めてだ。
電車のドアが開くと、蒸し暑い空気が流れ込んでくる。
長いスカートがひらひらと舞った。
「お邪魔します」
「百合さん、いらっしゃい」
出迎えてくれたのは理奈。
「あれ、加奈は?」
「お姉ちゃんは今掃除中……もう、だから普段からやっておけって言ってるのに……」
理奈がぶつくさと文句を言っている。何だか加奈らしいなと思っておかしくなる。
「あら、あなたが百合さん? いつもお話は聞いています。加奈と理奈の母、朝美と言います」
「は、初めまして。早川百合です。今日はお世話になります」
ひょっこりと顔を出したのは加奈たちのお母さん。
黒髪を後ろでまとめていて、何だか色っぽい人だなぁと思ってしまう。身長はわたしの母とそんなに変わらないけど、随分と印象は違うように感じる。
三人で話していると、二階の方からどたばたと音がして、加奈が階段から降りてきた。
「ごめん百合! 遅くなった!」
「ううん。掃除は終わったの?」
「うん!」
「うん、じゃないの。普段から掃除はちゃんとやっておきなさい」
小言を言うのが何だか理奈に似てる。
説教なのに、何だか優しく感じるところもそっくりだ。
加奈の部屋に入る。
意外と、と言ったら失礼かも知れないけど、綺麗な部屋だ。
「あっ、百合、押し入れは開けないでよ」
「あ、うん……」
「お母さん、綺麗な人だったね」
「そうかな……百合のお母さんの方が綺麗だと思うけど」
「そんなことないよ」
身内が褒められるのは何だかこそばゆい。加奈も同じなのかも。
「でも似てないでしょ、私とお母さん。理奈は似てるって言われるんだけどねぇ」
「あぁ、確かに理奈さんの方が似てるかも」
「うん、私はお父さん似。百合はお母さん似だよね」
「あ、私もお父さん似らしいよ。お父さんの顔、いまいち覚えてないんだけど」
父は幼少期に亡くなった。
思えば幼少期の記憶ってほとんど無いなって思う。
「お互い父似かぁ……私たちも似たもの同士だね!」
「うん」
二人で目を見て微笑み合う。
似たもの同士……加奈とわたしがそうなら、少し嬉しいな。
「二人とも何話してるの?」
ドアが開いて理奈が顔を出す。
「あ、ううん。理奈さんはお母さんに似てるねって話」
「え~何それ~恥ずかしいよ」
理奈の手を見ると、緑色のカバーがついた本を持っている。
「これね、私達の小さい頃のアルバム。定番でしょ?」
「ふふっ」
加奈がわたしの家に来た時と一緒だ。やっぱり姉妹なんだなと感心してしまう。
「これが幼稚園の頃。こっちは小学校」
「二人とも小さくてかわいい」
「まあ小さいのは今でもだけどね……」
「二人はどんな子供だったの?」
わたしが知らない昔の話。特に好きな人なら知りたい。
「う~ん、結構今と同じ感じだったよ? ね?」
「うん。強いて言えばお姉ちゃんは今より人見知りだったかな?」
「そうかな……? 今でもちょっと苦手だけどね」
加奈のこういうところ、好きだなぁって思う。
弱いところを見せても、弱く見えない。それどころか魅力的に見えるところ。
わたしにはとても無理だ。自分の駄目な部分はあまり見せられないし、見せても卑屈に思われてしまう。
「百合さん、何か苦手な食べ物とかある?」
「ううん、特にないよ」
「そっか。取り敢えず今日はカレーにしようと思うんだけど」
「理奈さんが作るの?」
「うん。って言ってもお母さんの手伝いだけど」
「じゃあわたしも手伝うよ」
料理は少しならできる。
いつか一人で暮らすことになるし、勉強しておこうと思ってるから。
「いいんだよ、百合。お客さんなんだから気を使わないで」
「そうそう。お姉ちゃんみたいに、客人じゃないのに食べるだけの人もいるんだから」
「うっ!」
理奈は案外加奈に容赦ないところがある。
でも二人は仲良し。
きっと双子なりの距離の取り方、傷付けない方法があるんだろう。
単純に二人とも優しいから、っていう理由もありそうだけど。
「ぐあぁぁ! 百合強い!」
「そうかなぁ……」
理奈の言葉に甘えて、加奈と一緒にゲームをして遊ぶことにした。
今思えば理奈が気を使って、加奈と二人にしてくれたのかも知れない。
「もう一戦! 今度はこっち」
加奈の家にあるゲームで、わたしはやったこともないのに、何故か加奈に勝ってしまう。
「百合強すぎるよぉ……もしかしてプロ?」
「違います」
そうやってまったり過ごしていると、カレーの良い匂いが運ばれてくる。
「二人とも、カレーできたよ」
理奈が部屋に呼びにきた。
「はぁい。理奈、百合ゲーム強いんだよ! 私一度も勝てなかった」
「というかお姉ちゃんが弱いんでしょ。私にも勝ったこと無いし」
「うっ……それもそうだった」
「ふふっ」
こういう空気の中に自分がいれることが、何だか嬉しい。
もし加奈と一緒に暮らしたら、ずっとこんな感じなのかも知れない。
「ご馳走様でした。お母さん、理奈さん、おいしかったです」
加奈のお母さんを『お母さん』と呼んでいいのか、いまいち分からない。他の人はどう呼んでるんだろう。
「ええ、お粗末様でした。それじゃあ百合さん、先にお風呂入ってきて」
お母さんからそう促される。客人に気を使ったんだろうけど、この場合一番風呂は遠慮した方がいいのかな?
「よし、行こう百合!」
「ち、ちょっと待って。一緒に入るの?」
「うん。嫌だった?」
「嫌ではないけど……」
水着の試着の時とか、ほぼ裸みたいな状況を見せたことはあったけど、さすがにお風呂に二人で入るのは恥ずかしい。
「う~ん。それなら仕方ないか……」
でも……。
「や、やっぱり一緒に入ろうかな? 入ってもいい?」
「うん! もちろんだよ!」
ちゅぽんと水の音が響く。
さすがに対面は恥ずかしいので、背中合わせで入ってもらうことにした。
「百合の肌すべすべだねぇ」
何だかいつもよりも早くのぼせそう。
顔も体も紅潮している。
「それじゃあ、先に身体洗うね」
「うん」
失礼かなと思いながらも、視界の端で加奈を見る。
小さくて丸っこい、子供のような身体が可愛らしかった。
シャワーの音が鳴り止む。
加奈が再び湯舟に入ってくる。
「百合も洗っちゃえば? それとも私が洗おうか?」
冗談なんだろうけど、わたしの胸はドキドキしっぱなしだった。
「百合が髪まとめてるの新鮮! 可愛い!」
「そ、そうかな……」
わたしはお風呂あがりには、いつも軽く髪をまとめている。
自分の家とは違うシャンプーの匂いがして、少し不思議。
「加奈、パジャマかわいいね」
「そういう百合もかわいいよ」
いつもは制服姿ばかり見ているけど、こういう格好の加奈も素敵。
でも、自分のパジャマ姿を誰かに見せるのは何だか恥ずかしい。
「ふふ……百合、夜はまだまだこれからだよ」
「何かするの?」
「じゃーん! 花火!」
加奈が取り出したのは、コンビニとかで売ってる花火セット。
そう言えば友達と花火をした記憶がない。
「理奈がお風呂から出たら一緒にやろうね」
楽しそうに笑う加奈を見ていると、わたしも楽しくなってくる。
何だか子供に戻ったみたいに。
今年の夏は夜でも暑い。
ジトッとした空気がわたしを包む。
庭に出て、花火の準備をする。
加奈はずっとワクワクしている。わたしも同じ気持ちになる。
「よし、まずはこれ!」
手持ちの花火に火が点いて、黄色い炎がパチパチとはじける。
三人の顔が火に照らされて、暗闇の中にぼんやりと浮かんでいる。
「綺麗だね」
やがて火は消えて、辺りは再び真っ暗になる。
「よし、次!」
さっきまで綺麗だった花火は、バケツの中でシュウシュウと音を立てて消えた。
花が咲いては消えるように、花火も綺麗なのは一瞬だけ。
だからこそ素敵なのかも知れない。
わたしはどうだろう。綺麗に咲けているのかな。
花火に照らされた加奈の顔を見ながら、そんなことを思った。
「最後はやっぱりこれかな」
加奈が取り出したのは線香花火。
「この最後のポトンって落ちるのが好きなんだよね」
「わかる」
先端に火が付くと、パチパチと音を立てて小さな火花が散っていく。
だんだんと短くなっていく花火を見ていると、少し切なくなってくる。
最後にちょっとだけ勢いが増して、そして火は落ちていく。
「終わっちゃったか……」
「ねぇ加奈、理奈さん。わたし花火ってあんまりやったことなかったけど、少し好きになったかも。また来年も一緒にしよう」
線香花火で寂しくなって、少しだけ素直になってしまう。
「うん」
「それじゃあ、私そろそろ寝るね。二人ともお休み」
理奈が自分の部屋に戻っていく。
そうか、二人きりか……。
そう思うと心臓が大きく脈打った。
「私たちもそろそろ寝る?」
「うん……」
「百合、ベッド使っていいよ。お客さんだし」
「え、いいよ……加奈が使って」
「いいって、いいって」
こうなると譲り合いになってしまう。
「それじゃあ、一緒に寝る?」
加奈を驚かせようと思って、そう言った。
予想通り、加奈は顔を真っ赤に染めて驚いた。
でも、その返事だけは予想できなかった。
「うん……」
加奈の吐息が静かに響く。
加奈にもわたしの息の音、聞こえてるのかな。
「私、家族以外の誰かと一緒に寝るのなんて初めてだよ」
「う、うん……わたしも」
枕を横に並べて、加奈はわたしに微笑む。
恥ずかしいし、緊張するけど、こんなに幸せなことってあるんだろうか。
加奈の髪からは、さっきの線香花火の匂いが微かにしている。
「今日眠れるかな? 百合が隣にいると、緊張しちゃって」
そうか、緊張しているのはわたしだけじゃなかったんだ。
「眠れなかったら、ずっとおしゃべりしてよう? 加奈に話してないこと、話したいこととか、たくさんあるから」
「うん、それもそうだね。私も百合に伝えたいこと、まだまだたくさんあるんだよ?」
最後に、「こんなにおしゃべりなのにね」と付け加えた。
その夜は、加奈の体温を傍にずっと感じていた。
寝苦しい熱帯夜だったけど、何故か自然と眠っていたらしい。
朝目覚めた時、隣に加奈が居るのが、何よりも嬉しかった。
≪余談≫
『昨日、そんなことが……どうして私はそこにいないんでしょう』
「親戚と旅行中だからでしょ?」
『うぅ~、こんなことならお留守番してれば良かった~』
「いやいや、家族付き合いも大事にしてね?」
『次のお泊りには必ず行きますからね。誘ってくださいね』
「うん、勿論」
というわけで、お泊り&花火回でした。
線香花火って好きなんですが、最近十年以上やってないですね。
一緒にやる人がいませんからね。百合から見た加奈みたいな。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。