ぐれーす!   作:イッチー団長

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なんやかんやで久しぶりに更新しました。
作中の季節も冬に。

個人的には女の子の服装は冬服で露出が少ない方が好みです。


17話 寒いけれど

 かじかんでしまった手に息を吹きかける。

 冷たい風が吹いてきて、裸の木々を揺らしている。

 

 寒いのは嫌いだ。

 心の中まで冷たくなったような、そんな気持ちになる。

 

 

 

「百合~寒い~」

 ブルブルと震えながら加奈が近づいてきて、そのままギュッとわたしを抱きしめる。

 冷たくなったわたしの頬が、ほんのりと温かくなる。

「本当に寒いね。加奈もほっぺた、真っ赤だよ」

 手袋越しに彼女の頬に触る。柔らかくて可愛らしい。

 

「おはようございます~」

 弱々しい声が聞こえてきたので振り返る。そこにいたのはマフラーに手袋に、毛糸の帽子で完全防寒した苺だった。

「おはよう……そんなに寒い?」

「寒いの苦手なんですよ~」

 鼻の頭が真っ赤になって、鼻水が出そうになっている。

「苺ちゃん、鼻、鼻!」

 理奈がティッシュを持って駆けつけてくる。

「ありがとうございます」

「理奈、何だかお母さんみたい」

「もう、からかわないの……」

 こんなやりとりを見ていると、寒い日でも楽しくなってくる。

 

 

 

「でもさ、他の娘の見てるとスカート短いよねぇ……寒くないのかな?」

「おしゃれは我慢っていいますし」

 確かに通学路を歩く学生たちは、膝よりもずっと上の丈のスカートを履いている。

 寒いのもそうだけど、恥ずかしくないのかなと思う。わたしが露出苦手だからそう思うんだけど……。

 

「その点、私達は長いスカートで寒さもへっちゃら……じゃないけど、少しはマシだよね?」

「おしゃれを捨てて暖を取る……うら若き乙女としては珍しいかも知れないですね」

「そもそも短いスカートっておしゃれなの……?」

 

 

 

「百合ー、お昼ご飯どこで食べよう? もう外では食べたくないよ……」

「寒いもんね。空き教室とか無かったかな?」

 お弁当箱を片手に辺りをキョロキョロ探し始める。

 

「そう言えば、教室とか食堂で食べたこと無いよね?」

 ふとした疑問を聞いてみる。

「あ~、私が苦手なんだよね、人が多い所。できるだけ人が少ない場所に居たいというか……特に食べるときはね」

「そうなんだ……わたしも同じだよ」

 人で溢れた場所で食べるのは、小さい時から苦手だ。食べるのは自分をさらけ出す行為だから。本当に心を許した人じゃないと一緒に食事は出来ない。

 そういう意味じゃ、わたしと加奈はお互いに信頼し合ってるんだなと思って、少し嬉しかった。

 

「私だけじゃなくて、うちは皆そうなの。だから外食とかもほとんどしないし」

「そうなんだ……」

「でもさ、他人から隠れて食べるのって何か、動物みたいだね」

「ふふっ……」

 加奈が冗談めいてそう言う。わたしの冷たい頬も緩んだ。

 

 

 

 空き教室を見つけたので、四人で一緒に昼食を摂ることにした。

「穴場ですね、ここ。やっぱりご飯は仲の良い人と静かに食べたいですから」

「本当にね」

 苺と理奈もそう言っている。結構皆思うことなのかな。

 

「ところで、今日のお弁当、理奈さんが手作りしてくれたんですよ。いやぁ嬉しかったです」

「あ、今朝忙しそうだったのはそういうことか」

「あの……苺ちゃんの家、おじいちゃんとおばあちゃんしかいないし、私も何か手伝おうかなと思って」

「優しいんだね、理奈さん」

 ついついそんな言葉が出てしまう。

「そ、そんなことないけど……」

 わたしが褒めると、理奈は顔を真っ赤にした。

 

「そっか、お弁当か……う~ん……」

「どうしたの百合?」

「加奈のお弁当もたまにはわたしが作ろうかなって……」

 少し勇気を出して言ってみる。

 わたしの言葉を聞いて、加奈は目を丸くした。

「嬉しいけど、百合料理出来るの?」

 料理はあまりやったことがない。やろうと思ったこともなかった。だけど好きな人に喜ばれるんなら、頑張ってみようかなと思った。今までのわたしじゃ、こんなことは考えなかったんだろうけど。

 

「これからお母さんに色々教えてもらうよ。だからちょっと待ってて」

「うん! えへへ……嬉しい」

 子供みたいに無邪気に笑う加奈がとても愛おしくて、勇気を出して言って良かったなと思った。

 

「じゃあ、ついでにお姉ちゃんも料理勉強しよっか?」

 理奈がにっこりと笑いながらそう告げる。

「うぇっ!? ど、どうしてそうなるの……?」

「ふふ……」

 

 

 

「百合、帰ろ?」

「うん」

 加奈がマフラーを巻いてコートを着る。冬特有の、もこもこしたシルエットの加奈も可愛いなと思う。

「う~、寒くて帰るの嫌だよ~」

「ふふ、ほら我慢しないと」

 彼女の頬をそっと撫でる。赤く染まっていく頬が愛らしい。

 

 

 

 灰色の寒空の下、恋人と一緒に歩く。

 冷たくなった髪と頬。

 こんなに寒い日でも、加奈たちと一緒なら心までは冷たくならずに済むのかな。

 皆と過ごす初めての冬は、いつもよりも暖かければいいなと思った。




次回はクリスマス回書こうかなと思っています。
ただ花騎士の方も書かないとですし、ちょっと忙しくなりそうですねぇ。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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