作中の季節も冬に。
個人的には女の子の服装は冬服で露出が少ない方が好みです。
かじかんでしまった手に息を吹きかける。
冷たい風が吹いてきて、裸の木々を揺らしている。
寒いのは嫌いだ。
心の中まで冷たくなったような、そんな気持ちになる。
「百合~寒い~」
ブルブルと震えながら加奈が近づいてきて、そのままギュッとわたしを抱きしめる。
冷たくなったわたしの頬が、ほんのりと温かくなる。
「本当に寒いね。加奈もほっぺた、真っ赤だよ」
手袋越しに彼女の頬に触る。柔らかくて可愛らしい。
「おはようございます~」
弱々しい声が聞こえてきたので振り返る。そこにいたのはマフラーに手袋に、毛糸の帽子で完全防寒した苺だった。
「おはよう……そんなに寒い?」
「寒いの苦手なんですよ~」
鼻の頭が真っ赤になって、鼻水が出そうになっている。
「苺ちゃん、鼻、鼻!」
理奈がティッシュを持って駆けつけてくる。
「ありがとうございます」
「理奈、何だかお母さんみたい」
「もう、からかわないの……」
こんなやりとりを見ていると、寒い日でも楽しくなってくる。
「でもさ、他の娘の見てるとスカート短いよねぇ……寒くないのかな?」
「おしゃれは我慢っていいますし」
確かに通学路を歩く学生たちは、膝よりもずっと上の丈のスカートを履いている。
寒いのもそうだけど、恥ずかしくないのかなと思う。わたしが露出苦手だからそう思うんだけど……。
「その点、私達は長いスカートで寒さもへっちゃら……じゃないけど、少しはマシだよね?」
「おしゃれを捨てて暖を取る……うら若き乙女としては珍しいかも知れないですね」
「そもそも短いスカートっておしゃれなの……?」
「百合ー、お昼ご飯どこで食べよう? もう外では食べたくないよ……」
「寒いもんね。空き教室とか無かったかな?」
お弁当箱を片手に辺りをキョロキョロ探し始める。
「そう言えば、教室とか食堂で食べたこと無いよね?」
ふとした疑問を聞いてみる。
「あ~、私が苦手なんだよね、人が多い所。できるだけ人が少ない場所に居たいというか……特に食べるときはね」
「そうなんだ……わたしも同じだよ」
人で溢れた場所で食べるのは、小さい時から苦手だ。食べるのは自分をさらけ出す行為だから。本当に心を許した人じゃないと一緒に食事は出来ない。
そういう意味じゃ、わたしと加奈はお互いに信頼し合ってるんだなと思って、少し嬉しかった。
「私だけじゃなくて、うちは皆そうなの。だから外食とかもほとんどしないし」
「そうなんだ……」
「でもさ、他人から隠れて食べるのって何か、動物みたいだね」
「ふふっ……」
加奈が冗談めいてそう言う。わたしの冷たい頬も緩んだ。
空き教室を見つけたので、四人で一緒に昼食を摂ることにした。
「穴場ですね、ここ。やっぱりご飯は仲の良い人と静かに食べたいですから」
「本当にね」
苺と理奈もそう言っている。結構皆思うことなのかな。
「ところで、今日のお弁当、理奈さんが手作りしてくれたんですよ。いやぁ嬉しかったです」
「あ、今朝忙しそうだったのはそういうことか」
「あの……苺ちゃんの家、おじいちゃんとおばあちゃんしかいないし、私も何か手伝おうかなと思って」
「優しいんだね、理奈さん」
ついついそんな言葉が出てしまう。
「そ、そんなことないけど……」
わたしが褒めると、理奈は顔を真っ赤にした。
「そっか、お弁当か……う~ん……」
「どうしたの百合?」
「加奈のお弁当もたまにはわたしが作ろうかなって……」
少し勇気を出して言ってみる。
わたしの言葉を聞いて、加奈は目を丸くした。
「嬉しいけど、百合料理出来るの?」
料理はあまりやったことがない。やろうと思ったこともなかった。だけど好きな人に喜ばれるんなら、頑張ってみようかなと思った。今までのわたしじゃ、こんなことは考えなかったんだろうけど。
「これからお母さんに色々教えてもらうよ。だからちょっと待ってて」
「うん! えへへ……嬉しい」
子供みたいに無邪気に笑う加奈がとても愛おしくて、勇気を出して言って良かったなと思った。
「じゃあ、ついでにお姉ちゃんも料理勉強しよっか?」
理奈がにっこりと笑いながらそう告げる。
「うぇっ!? ど、どうしてそうなるの……?」
「ふふ……」
「百合、帰ろ?」
「うん」
加奈がマフラーを巻いてコートを着る。冬特有の、もこもこしたシルエットの加奈も可愛いなと思う。
「う~、寒くて帰るの嫌だよ~」
「ふふ、ほら我慢しないと」
彼女の頬をそっと撫でる。赤く染まっていく頬が愛らしい。
灰色の寒空の下、恋人と一緒に歩く。
冷たくなった髪と頬。
こんなに寒い日でも、加奈たちと一緒なら心までは冷たくならずに済むのかな。
皆と過ごす初めての冬は、いつもよりも暖かければいいなと思った。
次回はクリスマス回書こうかなと思っています。
ただ花騎士の方も書かないとですし、ちょっと忙しくなりそうですねぇ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。