恋人と過ごすクリスマス、私は経験したことがないのですが、どんなに素敵なんでしょうか。
本当に想像だけで書いてますが、そんな幸福感・高揚感が表現できればと思っています。
街はキラキラと輝いている。今日は特別な夜、クリスマスだから。
クリスマスには良い思い出がない。いつも寂しいだけだった。
自分の心と裏腹に、綺麗に飾り付けられた街を見ると、胸が締め付けられるように感じた。
でも今年は少し違う。好きな人と一緒に過ごせるから。
「百合!」
加奈がイルミネーションの向こうからやって来る。
マフラーがひらひらと揺れている。
「おまたせ」
「ううん」
手袋越しに彼女と手を握る。頬が赤くなってしまったのは霜焼けのせいかな。
「今日は二人きりだね。クリスマスっていつも家族と一緒だったから、ちょっと新鮮」
加奈の顔も赤くなる。
お互いに初めて過ごす恋人とのクリスマスだ。それが何だか嬉しく感じる。
イルミネーションの煌めく夜の中、街は恋人たちで溢れている。わたし達も身を寄せ合いながら歩いて行く。
すれ違う人々の顔は幸せで満ちている。昔なら妬んでいた人の幸せを素直に受け取れるようになったのは、きっと加奈に出会ってから。
彼女の顔を見ていると、向こうもわたしの視線に気付いたようだった。
「どうしたの、百合? キスする?」
「ここではまだ……ってそうじゃないけど……」
そうして見つめ合って頬を赤らめる。
今日はいつもより恥ずかしい気がする。
今日のクリスマスデートは、加奈が計画を立ててくれた。まずは映画を見たいらしい。
「で、今日は何見るの?」
人でごった返した映画館の中、加奈に飲み物を手渡しながら尋ねてみる。
「う~んとね、苺がオススメしてくれたフランス映画。静かで素敵な映画なんだって」
「へぇ~」
映画館なんて久しぶりだ。特に恋愛ものなんて中々縁が無かったし、ちゃんと楽しめるかな。
照明が消されて、スクリーンに映像が浮かび上がる。
隣に座る加奈の手にそっと触れて、映画が始まった。
「うぅ……」
「百合、そんなに恥ずかしかった?」
映画館から出てきたわたしの顔は、火が出てるんじゃないかってくらい熱くなっていた。
「濡れ場あるとか、聞いてないよぉ……」
「ごめん、事前に調べておけばよかったね」
「あ、いや。加奈は悪くないよ。何だかんだで、映画は面白かったし」
素敵な映画だったのは間違いない。キスシーンのところなんて、横の加奈を見ながらドキドキしてしまった。
それでも濡れ場は……濡れ場は苦手なんだ。
「まあ、私もあんまり得意ではないんだけど……」
加奈の顔もほんのり赤くなっているのが分かる。二人で羞恥心を感じながら、火照ってしまった身体を寄せ合わせた。
「こんにちは、けいちゃんさん」
「こんにちは、二人とも」
駅前の、わたしが良く行っている喫茶店にやってきた。
クリスマス気分でいっぱいの街の風景とは違って、喫茶店の中は飽くまでいつも通りのままだった。
そんなところが、わたしも気に入ってるのかも知れない。
「良かったんですか、折角のクリスマスにうちみたいな店で」
「いいんです。私達にはそんな煌びやかな世界は似合わないんです。ね?」
加奈が振り返って同意を求めてきたので、わたしも微笑みながら頷く。けいちゃんも髭もじゃの顔で優しく笑ってくれた。
他のお客さん達も、飽くまで普通だった。一人で本を読んだり、何かを書いたりしている人が多い。
「いいよね、こういう雰囲気」
「うん」
いつも通りの落ち着ける空気。ただ一つ違うのは、クリスマスソングが流れていることだ。
電話のベルが鳴って 驚き目覚める
目覚ましの音だと知って またまどろむ
いつからか僕は 君のことを
何故だか懐かしく思ってしまう
サニーデイ・サービス「Christmas of Love」
「また来るよ」と言って店を後にした。
肌に伝わる冷たい空気がわたし達を現実に引き戻す。
「じゃあ、これから私の家行こうか? 今日は誰もいないから、二人きりだよ?」
二人きり。いつもなら何てことない言葉だけど、今日は何だか恥ずかしく思えてしまう。
手を握って、頬を赤くしながら彼女の家へ向かった。
家へ着くや否や、加奈は私にキスをせがむ。目を閉じて、真っ赤になった顔がとても愛おしく感じた。
その唇にそっとキスをして、冷たくなった身体を抱きしめる。
「百合……」
わたしを見つめる瞳の中に、わたしの姿が映っていた。そんな自分の姿を見つめながら、再びのキスを交わした。彼女の身体の温もりだけをずっと感じていた。
これからってところでお話は終了。
二人がこの先どうなったかは、皆さんのご想像にお任せします(笑)
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。