ぐれーす!   作:イッチー団長

18 / 30
クリスマス回です。

恋人と過ごすクリスマス、私は経験したことがないのですが、どんなに素敵なんでしょうか。
本当に想像だけで書いてますが、そんな幸福感・高揚感が表現できればと思っています。


18話 クリスマス

 街はキラキラと輝いている。今日は特別な夜、クリスマスだから。

 

 クリスマスには良い思い出がない。いつも寂しいだけだった。

 自分の心と裏腹に、綺麗に飾り付けられた街を見ると、胸が締め付けられるように感じた。

 

 でも今年は少し違う。好きな人と一緒に過ごせるから。

「百合!」

 加奈がイルミネーションの向こうからやって来る。

 マフラーがひらひらと揺れている。

 

「おまたせ」

「ううん」

 手袋越しに彼女と手を握る。頬が赤くなってしまったのは霜焼けのせいかな。

 

「今日は二人きりだね。クリスマスっていつも家族と一緒だったから、ちょっと新鮮」

 加奈の顔も赤くなる。

 お互いに初めて過ごす恋人とのクリスマスだ。それが何だか嬉しく感じる。

 

 

 

 イルミネーションの煌めく夜の中、街は恋人たちで溢れている。わたし達も身を寄せ合いながら歩いて行く。

 すれ違う人々の顔は幸せで満ちている。昔なら妬んでいた人の幸せを素直に受け取れるようになったのは、きっと加奈に出会ってから。

 彼女の顔を見ていると、向こうもわたしの視線に気付いたようだった。

「どうしたの、百合? キスする?」

「ここではまだ……ってそうじゃないけど……」

 そうして見つめ合って頬を赤らめる。

 今日はいつもより恥ずかしい気がする。

 

 

 

 今日のクリスマスデートは、加奈が計画を立ててくれた。まずは映画を見たいらしい。

「で、今日は何見るの?」

 人でごった返した映画館の中、加奈に飲み物を手渡しながら尋ねてみる。

「う~んとね、苺がオススメしてくれたフランス映画。静かで素敵な映画なんだって」

「へぇ~」

 

 映画館なんて久しぶりだ。特に恋愛ものなんて中々縁が無かったし、ちゃんと楽しめるかな。

 

 照明が消されて、スクリーンに映像が浮かび上がる。

 隣に座る加奈の手にそっと触れて、映画が始まった。

 

 

 

「うぅ……」

「百合、そんなに恥ずかしかった?」

 映画館から出てきたわたしの顔は、火が出てるんじゃないかってくらい熱くなっていた。

「濡れ場あるとか、聞いてないよぉ……」

「ごめん、事前に調べておけばよかったね」

「あ、いや。加奈は悪くないよ。何だかんだで、映画は面白かったし」

 素敵な映画だったのは間違いない。キスシーンのところなんて、横の加奈を見ながらドキドキしてしまった。

 それでも濡れ場は……濡れ場は苦手なんだ。

 

「まあ、私もあんまり得意ではないんだけど……」

 加奈の顔もほんのり赤くなっているのが分かる。二人で羞恥心を感じながら、火照ってしまった身体を寄せ合わせた。

 

 

 

「こんにちは、けいちゃんさん」

「こんにちは、二人とも」

 駅前の、わたしが良く行っている喫茶店にやってきた。

 クリスマス気分でいっぱいの街の風景とは違って、喫茶店の中は飽くまでいつも通りのままだった。

 そんなところが、わたしも気に入ってるのかも知れない。

 

「良かったんですか、折角のクリスマスにうちみたいな店で」

「いいんです。私達にはそんな煌びやかな世界は似合わないんです。ね?」

 加奈が振り返って同意を求めてきたので、わたしも微笑みながら頷く。けいちゃんも髭もじゃの顔で優しく笑ってくれた。

 

 他のお客さん達も、飽くまで普通だった。一人で本を読んだり、何かを書いたりしている人が多い。

「いいよね、こういう雰囲気」

「うん」

 いつも通りの落ち着ける空気。ただ一つ違うのは、クリスマスソングが流れていることだ。

 

電話のベルが鳴って 驚き目覚める

目覚ましの音だと知って またまどろむ

いつからか僕は 君のことを

何故だか懐かしく思ってしまう

サニーデイ・サービス「Christmas of Love」

 

 

 

 「また来るよ」と言って店を後にした。

 肌に伝わる冷たい空気がわたし達を現実に引き戻す。

 

「じゃあ、これから私の家行こうか? 今日は誰もいないから、二人きりだよ?」

 二人きり。いつもなら何てことない言葉だけど、今日は何だか恥ずかしく思えてしまう。

 手を握って、頬を赤くしながら彼女の家へ向かった。

 

 

 

 家へ着くや否や、加奈は私にキスをせがむ。目を閉じて、真っ赤になった顔がとても愛おしく感じた。

 その唇にそっとキスをして、冷たくなった身体を抱きしめる。

「百合……」

 わたしを見つめる瞳の中に、わたしの姿が映っていた。そんな自分の姿を見つめながら、再びのキスを交わした。彼女の身体の温もりだけをずっと感じていた。




これからってところでお話は終了。
二人がこの先どうなったかは、皆さんのご想像にお任せします(笑)

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。