ぐれーす!   作:イッチー団長

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二年生編の始まりです。
そして新キャラが二人登場。といっても、出番はそこまで多くないと思います。飽くまでメインは四人ですからね。


変化、成長 ~二年生編~
20話 二人はいつも


 鏡にわたしが映ってる。寝ぼけた顔をして、寝癖の一本一本を丁寧に直していく。こんなわたしでも制服で着飾れば、少しはシャンとして見えるから不思議だ。

 

 ドアを開けると風はまだ冷たくて、わたしは肩を縮こまらせた。街の中、電車の中ですれ違う、名前も知らない見知った人々。彼らをかき分けていくと、本当に会いたかった人に会える。

 

「加奈」

「おはよう、百合」

 今日もまた、好きな人の好きな顔に出会えた。

 

 

 

「それにしても春休みって短いですよね。それなのに宿題はあるって……」

 苺がぶつくさと文句を言って、理奈が苦笑いをしている。そんなほのぼのとした様子を懐かしがりながらも、わたしはどこか上の空だった。一つ、気がかりなことがあったから。

 

 昇降口には人だまり。その中へわたし達も入っていく。クラス分けが書かれた紙が張り出してある。

「おぉ、今年も一緒ですね、理奈さん」

「うん。よろしく苺ちゃん……ってあれ?」

 理奈が何かに反応したみたいだ。わたしも恐る恐る紙を見上げる。

 

「お姉ちゃんと百合さんも一緒だ」

 一組の欄にはわたしと加奈、理奈と苺の名前が載っていた。

「うわっ、ホントだ!? ってことは今年は四人一緒?」

 加奈がわたしの手を握ってぶんぶん振り回す。

「ね、だから言ったでしょ、一緒のクラスだって。全員一緒だとは思わなかったけど」

「もう加奈ったら、調子いいんだから……」

 でもそんな彼女の笑顔を見ていると、嬉しさがこみ上げてくる。三人の顔を見回して、にっこりと微笑んだ。

 

 

 

「まさか全員一緒だとは。嬉しいですけど、もう教科書忘れても貸して貰えないですね」

「それは自分で気を付けようよ……」

 教室の中には、どこか新鮮でぎこちない空気が漂っていた。そんな中にも見知った顔がいくつか。話したことのある人はあまりいないけど……。

 

「席は……私と苺は廊下側で、百合と理奈は窓側みたいだね」

「いいですねそっちは、日当たりが良さそうで」

「ふふ……」

 教室の中でもこうして理奈や苺と話せるのが何だか新鮮で、とても嬉しい。窓から差す光は暖かくて、わたしのこころも暖かくなっていく。

 

「百合さん、何だか嬉しそう」

 理奈のポニーテールが揺れて優しい笑顔が現れる。

「うん。だって加奈はもちろんだけど、理奈さんと苺さんも一緒なんて思わなかったし」

 二人で目を合わせて笑い合う。

 

 

 

「おぉ、理奈っち! 一緒のクラスだったんだ!?」

 急に元気な声が聞こえてきた。驚いて隣を見ると、そこには短髪の快活そうな少女が立っていた。

「静音さん、今年もよろしくね」

「うんっ!」

 静音と呼ばれた少女はニカっと八重歯を煌めかせて笑った。

 

「そっちの子は?」

「あっ、早川百合です」

 こちらに目線が向いたので、慌てて自己紹介をした。

「友川静音だよっ! 静かな音って書いて静音」

 静音の元気な声が響き渡る。性格が名前と真逆だなと思ってしまう。

「性格と名前が真逆だと思うでしょ?」

「ぶっ!」

 心の声を詠まれたようで、思わず吹き出してしまった。

「いいのいいの。皆言ってるから」

 透き通るような笑顔。加奈とはまた違う意味で、元気で素敵な子だなと思った。

 

「で、ゆりゆりと理奈っちはどういう関係?」

 一瞬意味が分からなかったけれど、『ゆりゆり』というのはわたしのあだ名だと思う。いきなりあだ名で呼ばれるなんて初めての経験だ。恥ずかしいけど嫌ではなかった。

「友達だよ。一年生の時からずっと」

 改めて『友達』と言われると、何だか照れる。加奈とは勿論だけど、理奈や苺とも一年を重ねてきたんだと実感する。それは生きている時間の中ではほんの一瞬かも知れないけれど、大切な時間だったのは間違いない。

 

「そっか、それじゃああたしともよろしくね、ゆりゆり」

「うん、よろしく友川さん」

「静音でいいよ。理奈っちが友部で、あたしが友川だから、よくセンセも間違えるんだよねぇ」

 静音に目配せされた理奈が困ったように笑う。本当に間違われやすいみたいだ。

 

「そ、それじゃあよろしく、静音さん」

「うんっ! あっ、ごっちも同じクラスなんだよね。ちょっと行ってくる」

 行ってしまった。風のように。

「ごっち?」

「苺ちゃんのこと。いちごの『ご』から取ったんだって」

 何だか自由奔放な人だなと思った。でも悪い人ではなさそうだし、仲良くなれたらいいな。

 

 

 

「早川さん、今年も一緒ですね。よろしくお願いします」

 嵐のように去っていった静音に気を取られ、背中から聞こえてきた声への反応が遅れてしまった。

「み、三上さん……うん、よろしく」

 長い黒髪をなびかせた、落ち着いた雰囲気の少女、三上志穂がそこにいた。

 彼女は一年の時のクラスの委員長で、学年でも一二を争う秀才として有名だ。それでいて誰にでも優しい。人見知りのわたしでも話かけやすくて、困った時には力を貸してくれる、そんな人だ。

 

「友部さんとも一緒みたいで嬉しいです。早川さんも友部さんもいい人だから」

 例えお世辞だとしても、彼女に褒められるのは嬉しい。

 

 わたしと話していた三上さんの目線が、チラッと理奈に向く。

「ところで、そちらの方はもしかして友部さんの妹さんですか?」

「あっ、はい。加奈の妹の理奈です」

「えへへ、やっぱり。すごく良く似てるのでそうなんじゃないかなと思いましたよ」

 いつもは落ち着いた雰囲気の彼女が、子供みたいな笑顔を見せる。

 

「いつも姉がお世話になってます。お姉ちゃん、うるさくて大変だったでしょ?」

「いえいえ、すごく良くして貰いましたよ。それに友部さんは全然うるさくなんてないですよ。うるさいっていうのは……」

 三上さんの視線がわたし達から逸れて、ある方向に注がれる。その方向からは、聞き覚えのある元気な声が聞こえてきた。

「ごっちと加奈っちとも話してきた!」

 静音が席に戻ってきた。その瞬間、三上さんが静音の制服の襟をガッと掴んだ。

「こういうのを言うんですよ」

 彼女の唐突な行動に、わたし達は目を丸くしてしまった。

 

 

 

「へぇ、幼馴染なんだ」

「そう! 志穂とあたしは子供の頃から仲良しなの。腐れ縁ってやつ?」

「おかげで大分苦労させられたけどね……」

 三上さんが静音の頬をツンとつつくと、静音は「えへへ」と後ろ髪を掻いて笑う。何だか加奈と理奈みたいな関係だなと思った。

 

「静音、クラスで迷惑かけてませんでしたか?」

「ううん。むしろクラスのムードメーカーだったよ」

「そう言ってくれると助かります。今まではずっと同じクラスだったので、クラスが離れてしまうと心配で心配で」

「心配症だな~志穂は。んぐぅっ」

 三上さんが静音の頬をつねる。

「誰のせいだか、まったく……」

「んぐぐぐ……」

 そんな二人の様子を見て、わたしと理奈は顔を合わせて笑った。

 

 

 

 授業の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。新しいクラスでの一日が終わった。知らない人が多くて疲れたけれど、何とかやっていけそうだ。

「百合、理奈、帰ろう」

 加奈と苺がやってきた。二人ともどこか疲れたような様子で、やっぱり環境が変わるのは誰だって疲れるものなんだなと思った。

 

「いやぁ、疲れたよ。色んな人と話して。特に……」

 加奈の目線が、隣の席の静音に向かう。

「志穂! 帰ろうぜ!」

「もう、はしゃがないの」

 元気いっぱいの静音を見て苦笑いする加奈だった。

 

「パワフルな人ですよね、静音さん。でも今日は特に元気だったような」

「いつもああなんじゃないの?」

「いつもよちちょっとだけ元気でしたね。まあちょこっとだけですけど」

 そこで思った。静音は三上さんと同じクラスになれて嬉しかったんじゃないかなって。飽くまで想像だけど。

 

 

 

「ふぅ、何だかんだあったけど、同じクラスで良かったね」

「うん」

 最近は日も伸びてきた。夕暮れが加奈の頬をオレンジ色に染めていく。

 

「今年も一年、よろしく」

「うん、こちらこそ」

 そっと手を握る。これからもまた一年、彼女と時間を積み重ねていく。それが堪らなく嬉しい。

 長いスカートが風になびいた。新しい日々の始まりだ。




同じクラスになった四人。これからは教室でのおしゃべり描写も多くなるかなと思います。
二年生編といっても今まで通りほのぼのしたお話が続きますので、今まで通り読んで頂きたいと思います。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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