百合たち書くのも楽しいんですけどね。
今回は志穂のプロフィール紹介しておきます。
名前:三上志穂
身長:145cm
誕生日:12月18日
髪型:背中まで伸びた黒髪ロング
趣味:音楽、特にパンクロックを愛している。初めて買ったCDはセックスピストルズの「勝手にしやがれ」
皆から頼られる学級委員長。真面目で誰にでも礼儀正しいが、幼馴染の静音は例外。むしろ彼女に対する態度こそが本来の志穂の姿。
窓の外には5月の曇り空。今日も雨だ。
別に雨は嫌いじゃないけど、連日続くとうんざりしてくる。
こんな日でも学校には行くしかない。青い傘と長靴を持って家を出る。
水だまりの上を歩くとパシャパシャと音が鳴る。
自動車たちが水をはね上げて走っていく。
そんな街の音の中で、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ゆりゆり~~~!」
「静音さん?」
振り返ると静音が走ってきていた。何故か傘を持たずに。
「どうしたの、傘は?」
「ちょっとね……。それより入れてくれない? お願い!」
「別にいいけど……」
両手を合わせて頭を下げられたら断るわけにもいかなかった。
傘の中に入れると、静音は可愛らしい八重歯を覗かせて笑う。
「ありがと、ゆりゆり。やっぱり君は優しいね」
「べ、別に……」
そう直球で言われると恥ずかしくなってしまう。と同時に罪悪感が芽生える。別に善意で入れてあげたわけでもないのに。
傘に入れたのはいい。わたしがいいって言ったんだし。問題はその後だ。
ここまで話込まれるとは思わなかった。
「志穂がさぁ~。ゆりゆりはどう思う?」
「う、うん? そうだなぁ……」
よく話題が尽きないものだなと感心してしまう。と、その時背後からこれまた聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「静音!」
「げぇっ、志穂!?」
「『げぇっ』じゃないの。全く、早川さんに迷惑掛けちゃダメでしょ。ほら、こっちおいで」
三上さんが手招きをして自分の傘の中に静音を入れる。去り際、静音の「ごめんね、ありがとう」という声が聞こえた。
「あっ、早川さんおはようございます。静音がごめんなさいね」
「おはよう。ううん、大丈夫だよ」
「ゆりゆりは優しいもんね~」
「だからって甘えないの」
三上さんが静音の頬をつねる。何だかこの光景も見慣れてきたような気がする。
「へ~、朝からそんなことが……」
加奈たちに朝のことを話してみた。
「いいな~、百合と相合傘。私も帰りにやっていい?」
「もう加奈ったら……」
笑い合うわたしと加奈をよそに、苺はどこか怪訝そうな顔をしている。
「あの、静音さんはどうして傘を持ってなかったんでしょう。朝から雨でしたし忘れたってことはないと思うんですが」
「そう言えば……傘が壊れる程強風でもなかったしね」
四人でう~んとうなる。その時、
「やっほー! どしたの四人とも、うんうんうなっちゃって」
「あ、ご本人登場」
「傘を持ってなかった理由か……えっと……」
「い、言い辛いんなら言わなくてもいいんだよ?」
わたしだって他人に隠したいことがたくさんあるし、静音にもきっとあるんだろう。
「あ、そんな深い理由じゃないんだよ。じゃあ四人とも帰りにちょこっと寄り道してかない?」
「?」
「ようこそわが家へ!」
「寄り道って静音さんの家だったんですか」
静かな住宅街の中にある白くて綺麗な一軒家。庭には小さな花壇があって、色鮮やかな花が顔を出していた。
「おかえり静音。って友達連れてくるんなら言ってよ~」
玄関を開けると静音そっくりの女性がいた。違うのは髪を後ろで結んでいることくらいかな。
「ごめんお母さん。それで、今朝の……」
「えぇ、大丈夫。今は落ち着いて寝てるから」
静音の部屋に案内される。意外……と言ったら失礼かも知れないけど、ちゃんと整理されている。その中できちんと座らされているぬいぐるみ達が可愛らしい。
「あれ、猫ちゃん飼ってるんだ」
部屋の中でタオルケットに包まれて眠る二匹の子猫。一匹は真っ白な猫で、もう一匹は黒ぶち模様だ。
「飼ってるというか、飼い始めたというか……」
「え?」
「傘はね、この猫達に貸してたの。登校中に、段ボールの中に入ってるこの子達を見つけて……」
きっと捨て猫だったんだろう。それを見た静音が、居たたまれなくなって拾ったってことだと思う。
「この雨の中でしょ。寒いだろうし、せめてこれ以上濡れないようにと思って」
静音がいつになく真剣な顔になる。
「本当はすぐにでも連れて帰りたかったんだけど、学校もあるし」
「それで、私に電話してきたってこと」
いつから聞いていたのか、振り返ると静音のお母さんが立っていた。
「お母さん、本当にありがとね」
「いいのいいの。それより、飼うんならちゃんと責任持ちなさいよね」
そう言って静音のお母さんは、静音と同じ八重歯を見せて笑った。
「静音~、キャットフード買ってきたよ。って、早川さん達!? き、来てたんですか……」
わたし達を見て驚いた様子の三上さん。彼女と静音の間には、幼馴染なりの空気感があるんだろうなと思う。それは例えばわたしと加奈、理奈と苺みたいな。
「サンキュー、志穂」
「三上さんは猫のこと知ってたの?」
「えぇ、まぁ……朝に静音から話してくれて」
わたし達ではなく三上さんだけに話したのも、やっぱり静音にとって彼女が特別だからだろう。
「それじゃあまたね、静音」
「うん。今度はもっとゆっくりしていってよ」
そう言いながら猫を自分の顔の前に抱き上げて、
『わしも待っておるぞ』
声色を変えながら腹話術であいさつしてきた。
「子猫じゃないんですか? 随分渋い話し方ですね」
苺のその言葉を皮切りに、6人は声をあげて笑い合った。
「静音、ああいう優しすぎるところがあるから心配なんです」
静音の姿が見えなくなると、三上さんはポツリポツリと話し始めた。
「三上さん、静音さんのことが大好きなんだね」
「す、好きって……どうなんだろう……」
「百合、百合」
加奈がこそこそと耳打ちしてくる。
「どうしたの?」
「三上さんってもしかしたら静音さんのこと、特別に好きなんじゃない?」
そう言われて三上さんの顔を見ると、耳まで真っ赤に染まっているのが分かった。
「……そうなのかも」
雨が振り続ける街の中、色とりどりの傘が五つ、あじさいのように並んでいる。
「もしそうだとしたら、二人にもちゃんと結ばれて欲しいな」
「そうだね」
加奈との秘密の会話は雨の音にかき消されて聞こえなくなったけれど、三上さんの心にいつか届けばいいなと思った。
静音と志穂にも結ばれて欲しいですね。
幼馴染っていいですよね。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。