新キャラメイン回が続きましたし、次はメイン四人のお話も書きたいですね。
「早川さん、おはようございます」
「三上さん!? お、おはよう」
学校へ向かう途中で三上さんに声をかけられた。
彼女と静音とは住んでいる街が同じで通学路も同じだから、こうして登下校中に会うことも多い。
でも三上さんにいきなり話しかけられると未だに緊張してしまう。
(やっぱり美人さんだよね……)
わたしの目の前で風に揺れる長くて綺麗な黒髪。わたしはついうっとりと見惚れてしまう。加奈、ごめん……。
「今日は久しぶりにいい天気ですね」
「そうだね」
「雨の日はいつも静音がビショビショになってはしゃいでるので、風邪引かないか心配で……」
最近三上さんとよく話すようになったけれど、彼女の話のほとんどは静音のことだ。
「ふふ、三上さんは本当に静音さんのこと好きだよね」
「ふぇっ!?」
三上さんの顔が真っ赤に染まる。きっと本人も気付いてないんだろうけど、三上さんの静音への感情はわたしの加奈への感情に近いんじゃないかと思う。
「あ、あの早川さん……ちょっと聞いてもいいですか?」
顔を赤らめたまま、三上さんがわたしをまっすぐ見つめる。珍しいな、彼女が質問してくるのは。
「えっと、早川さんはどうして友部さんと付き合おうと思ったのかなって……」
「どうしてって……」
予想外の質問にわたしの顔も赤くなる。
加奈とのことは上手く言葉にすることができない。きっとそれはあまりにも深く繊細な部分だからだと思う。
「あ、答えづらいならいいんです。ただ、恋って何だろうと思って」
「もしかして三上さん、静音さんとの関係で悩んでる?」
今まで幼馴染として友達として接してきた静音が、いつの間にかそれ以上の存在になってきた……そんな感じなんじゃないかと思う。
「うっ……はい」
三上さんは苦しそうに頷いた。
今日の三上さんは弱々しくておどおどした様子で、こういう可愛らしい一面もあるんだなと思った。
「あの、早川さん。今日の帰り家に来てくれませんか? こういう相談出来るのは早川さんくらいですから」
「う、うん! わたしでいいなら」
あの三上さんに頼られた、それだけでわたしは何だか嬉しくなる。いつも委員長として頑張ってる彼女に、わたしなりに力になってあげようと思った。
「いらっしゃい。遠慮せずにくつろいで下さい」
「うん……お邪魔します」
住宅街の中でも一際目を引く大きな白い家。庭には切り揃えられた木々が並んでいる。
「綺麗な家だね」
「い、いえそんな……どうぞこちらへ」
二階の三上さんの部屋に案内される。わたしの部屋の倍くらいある広い部屋。壁には浅川マキのポスターが貼られている。何だか意外だ。
「相談っていうのは、薄々気付いてると思いますけど、静音のことで……」
三上さんがポツリポツリと語り始める。
「静音とはずっと同じクラスで過ごしてきて、少しうるさいけど良い友達だな、くらいしか思っていなかったんです」
何も言わずに頷く。
「でも一年間別のクラスで過ごしてみると、何だか寂しくなってしまって……」
離れてみて気付く大切さってやつだろうか。わたしには幼馴染がいないから良く分からないけど、加奈と理奈の関係に近いのかなと思った。
「私は静音と一緒にいるのが一番しっくりくる気がします。他の友達だとこうはなりませんから」
「三上さんが敬語使わないの、静音さんだけだもんね」
「うっ……」
痛い所を突かれたような声をあげる。
今日は三上さんの色々な表情が見られて楽しい。
「そうなんです……つい敬語を使ってしまって……別に皆さんと距離を感じてるってわけではないんですよ?」
「誰もそんなこと思ってないから大丈夫だよ」
「それでも静音には普通に話せるんです。不思議ですね」
「分かるよ。わたしも人見知りだけど加奈とは話しやすかったし」
思えば不思議な話だ。人と話すのがあんなに苦手だったわたしが、加奈には何の気兼ねなく話せる。加奈と一緒にいることが自然に感じる。きっと理屈を超えた何かがそこにはあるのかも知れない。
「早川さんと友部さんと同じってことは、やっぱり私は静音のことが特別に好きってことなんですかね……」
わたしも未だに分からない。何が友達としての好きで、何が特別な好きなのか。
でも、きっと……。
「三上さんが静音さんと一緒にいたいなら、それだけが本当だと思う」
「一緒に……そうですね。どういう感情なのかは分かりませんけど、静音とはずっと一緒にいたいです」
そう言って三上さんはわたしに微笑みかける。その笑みは太陽のようにキラキラと輝いていた。
「早川さん、今日のことは静音には言わないで下さいね。は、恥ずかしいですから……」
「うん。でもいつか本人にも伝えてあげた方がいいと思うよ。言葉にしないと伝わらないこともあるから」
「……はい!」
夕暮れで染まる街の中、自宅へ帰るわたしの後ろ姿を三上さんが見送る。
「早川さん! その……百合さんって呼んでもいいですか?」
「うん。それじゃあわたしも志穂さんって呼んでいい?」
「勿論です、百合さん」
振り返ると志穂の笑顔が見えた。彼女の笑顔は何故か静音の笑顔と重なって見えた。
≪翌朝≫
「静音、おはよう」
「志穂~、おはよ。うぉっ!?」
静音が驚愕の声を上げる。それもそのはず、志穂が静音の手を握ってきたのだから。
「どどどど、どうしたの!?」
「別に、ただ何となく。静音は嫌だった?」
「嫌なわけないよ……むしろ……」
真っ赤に染まった二人の頬。二人を優しく見守るように、朝の光が顔を出していた。
志穂と百合を名前で呼び合わせるための話に一話使ってしまいました……。
まあ基本はマイペースに続けてる作品ですからね。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。