ぐれーす!   作:イッチー団長

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今回はお泊り回。
一年生編でのお泊りは苺がいなかったので、今回は彼女にも参加してもらいましょう。そして静音と志穂の二人も一緒に。
こうして六人揃うと中々賑やかでいいですねぇ。


29話 八月の終わり

「お邪魔します」

 ドアを開けると、見慣れた顔がいくつもあった。

 

「いらっしゃい百合」

「百合さん、いらっしゃい」「待ってましたよ、百合さん」「遅いぞゆりゆり!」「暑かったでしょう? 大変でしたね」

「ご、ごめん……一人ずつ喋って……」

 

 今日は8月31日、夏休み最後の日だ。加奈と理奈の提案で、この日は皆で一緒に過ごそうという話になった。

 それで思い出したのが去年のお泊りのこと。苺が丁度家族旅行中で参加できなかったので、今年こそはお泊りしたかったらしい。どうせならと静音と志穂も誘って、今の大所帯になったわけだ。

 

「いやぁ、ついに皆さんとお泊り出来るんですね! 興奮してきました!」

「そ、そんなに……」

 苺はたまにテンションがおかしくなる。だからこそ見ていて飽きないんだけど。

 

「って、苺ちゃんたまにうちに泊まるでしょ?」

「理奈さんと二人の時は、ですね。でもやっぱり皆一緒ってのは格別なんですよ」

 一理あるかも知れない。加奈と二人の時と、皆で一緒にいる時、それぞれ違った楽しさがある。

 

「友部さん、私達もお招き頂き、ありがとうございます」

「い、いえいえこちらこそ?」

 志穂の丁寧なお礼に、加奈が良く分からない返事をする。

 

「もう志穂ったらお堅いんだから。加奈っち、理奈っち、もぐもぐ……よろしくね」

 静音がお菓子を食べながら挨拶をする。

「あんたはもっとかしこまりなさい……」

 

 

 

「さて、何しますか~?」

「その前に皆、ちゃんと宿題終わってる? 明日から学校だからね」

「「「……」」」

 その問いに、約三名が黙り込んでしまった。

 

「もう、宿題はちゃんとやりなさい!」

「ごめんなさいお母さん」

「お母さんじゃないです!」

 結局わたしが加奈の、理奈が苺の、志穂が静音の宿題を手伝うことになった。

 

「うぅ……ごめん百合」

「こつこつやっておこうね?」

「ホント、面目ないです……」

 

 

 

 三時間が経った。六人が背伸びをする。やっと宿題が終わった。

「終わった~……って、もう夕方!?」

「時間を無駄にしてしまいましたね……」

 その時、部屋の扉が開いた。

 

「皆、スイカ冷えてるけど、食べる?」

 加奈のお母さんが入ってきた。相変わらずの朗らかな笑顔だ。

「おぉ、いいですねスイカ」

 

「いただきます!」

「……タネマシンガンをやりたい衝動が……」

「我慢しなさい……」

 

 部屋の中にシャクシャクと音が響く。

「夏って感じだねぇ」

「夏って言えば、あの風鈴も凄く良いですよね」

 加奈の部屋の窓際で、オレンジ色の風鈴がチリンと鳴っている。

「あれはね、百合がプレゼントしてくれたんだよ」

 皆の視線がわたしに集まる。珍しく注目されて、わたしの顔は真っ赤に染まった。

 

「ゆりゆりも粋だねぇ」

「そ、そんなことは……」

「百合、ありがとね」

「……」

 恥ずかしくて返事が出来ない。それでも、ちゃんと部屋に飾ってくれて、喜んでくれていて、こんなに嬉しいことはない。

 

 

 

「友部さん、お風呂ありがとうございました」

「良いお湯だった!」

「えへへ、どういたしまして」

 湯上がりの火照った肌が、半袖のパジャマから顔を覗かせている。

 わたしは内心ドキドキだった。この次は……

「じゃあ百合、一緒に入ろうか?」

 やっぱりそう来たか。深呼吸をして覚悟を決めた。

 

 

 

「ふぅ~……今日は特に賑やかで良いね」

 湯船に浸かって、ゆっくりと身体を伸ばす。加奈は何だかおじさんみたいな声を出した。

 

「ねぇ百合」

「ん? ひゃぁ!?」

 振り返るとピュッとお湯が飛んできた。加奈が手を水鉄砲の形にしていた。

「もう~……」

「えへへ」

 

 

 

「さぁ、今日の夜は長いですよ! 恋バナしましょう、恋バナ!」

 加奈の部屋に布団を敷き詰めると、苺のテンションはますます高くなっていた。

「え~、明日も早いし、今日は早く寝ようよ~」

「わたしも今日は早く寝たいかも」

「あれ? 盛り上がってるの私だけですか?」

 

「そもそもこの中の四人はカップルだし、今さら話すことも無いよね」

「なっ……それなら志穂さん、静音さん」

「私も特にそういうのは……」

「恋……」

 静音は顔を真っ赤にしてしまう。結局この場で恋バナを話せる人は誰もいなかった。

 

「もう~、皆さん本当に女子高生ですか?」

「女子高生だから早く寝るんです。明日から学校なの忘れてない?」

「ぐぬぬ……」

 

「それにしても、今年の夏休みは楽しかったね。ね、百合」

「うん」

 頭の中には、加奈と江ノ島に行った思い出が鮮明に甦る。

「お土産ありがとうございました」

「ううん。今度は皆でどこか行こうね」

「是非!」

 

 

 

「本当に今年の夏休みは楽しかったですね……やっぱり嫌です! まだ夏休み終わらないでぇ!」

「苺ちゃん、よしよし……」

 泣きじゃくる苺を抱き寄せて、理奈が頭を撫でた。

「あぁ……癒される……」

 そんないつも通りの茶番を見て、わたし達も笑顔になる。

 夏休みが終わって、二学期になっても。三年生になっても、ずっとずっと変わらないんだと思う。

 

 

 


 街にはまだ夏の暑さが留まっている。半袖のワイシャツから覗く白い腕が、熱い日差しに照らされる。

 

「ほら、苺ちゃん。行くよ」

「はぁい……」

 眠そうな目を擦りながら歩く苺。横を見ると加奈も同じ顔をしていた。

「加奈、眠いの?」

「だ、大丈夫……」

 

 八月は終わってしまったけれど、太陽はまだギラギラと照り付けている。早く涼しくなればいいなという思いと、もう少し夏でもいいのになという思い。矛盾した二つの思いを抱えながら、九月の空の下を歩いた。




さて、今回で二年生の夏休みが終了。三年生編も近づいてきている感じがしますね。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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