ぐれーす!   作:イッチー団長

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今回は加奈の妹、理奈の視点の話です。
しっかり者で、本作一の常識人として書いています。

≪登場人物紹介≫
名前:早川 早紀
年齢:37歳
血液型:A型
誕生日:6月12日
身長:148cm
趣味:読書、料理
家族構成:娘が二人。10年前、夫に先立たれる。両親はまだ健在。

百合のお母さんですが、よく姉妹に間違われる程幼い容姿をしている。
明るくて人に好かれやすい女性。


6話 雨の土曜日に

廊下の方からお姉ちゃんの話声が聞こえたので、部屋の外に出てみる。

「うん・・・あはは、そうなんだ~」

お姉ちゃんは電話で話をしていた。相手は百合さんだろう。

最近、お姉ちゃんの笑顔が優しくなった気がする。

やっぱり、恋人ができると変わるのかな。

勿論、それは良い変化なんだけど、私は少しだけ寂しくなる。

 

「ん、じゃあね」

プツッと電話を切る。

「お姉ちゃん、百合さんと話してたの?」

「うん。どうして分かったの?」

「だってお姉ちゃん、百合さん相手だと態度が違うもん」

「え・・・そうかな・・・?」

本人は気付いていないらしいけど、お姉ちゃんは百合さんと話す時、とても優しい顔をする。

「百合さんのこと、本当に好きなんだね」

私がそう言うと、お姉ちゃんの顔が真っ赤になる。

「も、もう・・・今更だよ・・・」

お姉ちゃんと15年も一緒に暮らしてきたけれど、ここ最近のお姉ちゃんは私の知らない表情をたくさん見せている。

「百合さん、いい人だもんね」

「うん!」

でも、そんなお姉ちゃんも素敵だと思う。

 

他にやることがないので、お姉ちゃんの部屋に行くことにした。

「それじゃあお姉ちゃん、掃除するからちょっとどいてもらっていい?」

「え~、いいよ、自分でやるから~」

ぶぅーと頬を膨らませて抗議する。

「そう言って自分でやったこと無いでしょ」

「うぅ~」

 

5月に入り、この頃は雨の日が多くなってきた。

雨の日に家でやることって、あんまりない。

私は大抵、勉強するか、掃除をするか、といったところだ。

「もう、ごみくらいちゃんと片付けてよねー」

「ごめん理奈・・・」

お姉ちゃんは少々がさつなところがある。

「百合さんの部屋、ちゃんと片付いてたでしょ? お姉ちゃんも恋人なら、見習わないと駄目だよ。じゃないと、愛想尽かされちゃうかも」

「ええっ!? それは困る!」

冗談のつもりだったけど、予想以上に反応されて、ちょっと困惑する。

「ふふっ・・・それは冗談だけど、本当に身の回りのことくらいは自分で出来た方がいいよ」

「うぅ・・・分かったよ・・・」

少ししょんぼりするお姉ちゃんが可愛い。なんだかんだ、今後も彼女の世話を焼いてしまうんだろうなと思った。

 

 

 

「理奈~、漫画貸して~」

「もう、お姉ちゃん、私の部屋に漫画置くのやめてよー」

「ごめんごめん。でも置ききれなくって」

お姉ちゃんは漫画に限らず、自分で買った色々なものを私の部屋に置く癖がある。

「お、今日もかっこいいね、ジョー・ストラマー」

壁にかかってる『ロンドンコーリング』のポスターを見てお姉ちゃんが言う。

「もー、ポール・シムノンだって言ってるでしょ」

お姉ちゃんの中ではクラッシュ=ジョーらしい。

 

「この漫画面白いよね。今度百合にも貸す約束してるの」

「ふーん、そうなんだ・・・」

何でだろう。百合さんは良い人だし、好きだけど、お姉ちゃんが百合さんの話をしてると、胸の奥がチクチクしてくる。

 

 

 

「ってわけなんだよ~」

先程までの経緯を苺ちゃんに電話で話す。最近、苺ちゃんと話すのが最大の癒しになってる。

『そうですか。クラッシュが・・・』

「いや、クラッシュは別にいいんだけど」

『で、理奈さんは寂しくなってしまったと』

苺ちゃんに図星を突かれてしまう。

「寂しいというか・・・う~ん、そうなのかも」

ずっと、お姉ちゃんと一番仲が良いのは私だったから。嫉妬なのかも知れない。

『でも、相手が百合さんなのは良かったですよね。悪い人に引っかかったら大変ですからねぇ』

「ホントだね~」

 

『ところで理奈さん・・・その・・・理奈さんは好きな人とか、いらっしゃらないんですか?』

苺ちゃんが唐突にそんな話を始めた。

「どうしたの? いきなり」

『いやぁ、ちょっと聞いてみたくて』

何か意味ありげに言い淀む。

「別にいないかな」

『ふむ、それじゃあ今まで恋人は?』

「いないよ~。いると思う?」

仲が良い人は何人かいたけど、そういう関係になった人はいない。これ、って決め手がなかったからだと思う。

『・・・そうですか』

「うん?」

『あ、いえ。それじゃあ、理奈さん、明後日学校で』

そう言って電話が終わる。

「苺ちゃん、どうしたんだろう?」

 

最近、私の身の回りは目まぐるしく変化している。

百合さんや苺ちゃんに出会ったこと。

そして、お姉ちゃんが百合さんと付き合ったこと。

変わっていくことは避けられないことだし、喜ぶべきことだ。

少しだけ寂しいけれど、受け入れていかなければ。

 

窓の外ではまだ雨が降り続いている。

薄暗い空を見上げて、私はそっと微笑んだ。




今回の主役、理奈ですが、いつか苺との関係も書いていきたいですね。彼女たち二人もとても仲良しなので。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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