ぐれーす!   作:イッチー団長

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理奈と苺、その関係性が変わっていくお話です。
ここら辺から四人の関係が安定してくるかな・・・といった感じです。


9話 瞬間と永遠

相変わらずの曇り空の下、加奈と並んで歩く。

それだけで気分は晴れる気がするから不思議だ。

でも今日の加奈はどこか俯きがちに見える。

何かあったのかな。

「何か最近理奈が元気なくてさ・・・」

「理奈さんが?」

「理由を聞いても答えてくれなくて・・・」

双子の間にも、秘密にしたいことがあるんだろうな。

「大丈夫だよ。理奈さんにも加奈に言えないことの一つや二つあるんだよ、きっと」

「え~そうかな~」

「例えば恋とか・・・」

「恋っ!? でもありえなくはないか・・・理奈ももう高校生だしね・・・」

そのセリフは姉というより親目線な気がする。

「ちなみに理奈さんって今まで好きな人とかいたの?」

「ううん、全然。興味もないって感じだったなぁ」

言われてみればわたしも、中学までは全然恋愛に興味なかったな、と思う。恋愛どころか他人に興味が無かったのかも知れないけれど。

 

 

 

学校の廊下で理奈を見つけたので、思い切って声を掛けてみた。

「あ、百合さん・・・」

加奈の言っていた通り、元気が無さそうだ。

「理奈さん、どうかしたの?」

「ううん、何でもないよ・・・」

「何でもなくはないでしょ? 加奈にも言えないようなこと?」

「・・・うん」

理奈が時間を掛けてこくりと頷く。

「気持ちは分かるよ。私もお姉ちゃんに言えないことたくさんあるし」

「百合さんにもお姉さんいるんだっけ?」

「いるよ。今は東京の大学に行ってる」

「へえ~、百合さんに似てる?」

「似てないよ~。わたしと違って明るくて背が高くいの」

話題は少しずれたけど、理奈の声色が明るくなったように感じて、嬉しかった。

 

 

 

「・・・百合さん。私、苺ちゃんに告白されたの・・・」

理奈がぽつりぽつりと語り始めた。

「苺ちゃんのこと、大好きだよ。でもこれが『特別』なのか分からないの・・・そんな中途半端な気持ちで答えたくなくて」

理奈の顔を見ながら、何も言わずに話を聞く。

わたしは今、理奈のことをちゃんと考えられているかな。

彼女の誠実さに答えられているのかな。

 

「理奈さん、加奈にも言えないようなこと、どうしてわたしに話してくれたの?」

「お姉ちゃんがね、百合さんに告白されたって嬉しそうに言ってたの」

加奈が、嬉しそうに、その言葉を聞いて、わたしの胸の奥がジーンと熱くなるのを感じた。

「だから百合さんなら、告白した苺ちゃんの気持ちも分かるんじゃないかなって」

「わたしが告白した時はすごく怖かったな・・・」

「怖いの?」

「うん・・・もし加奈との関係が壊れたらって思うと、不安で不安で」

あの日の夕焼けを思い出す。

長くて黒い影が、わたしの心にも伸びていた。

 

「それじゃあ苺ちゃんにもちゃんと答えないと駄目だよね」

「理奈さんは苺さんのこと、どう思ってるの?」

「・・・ずっと一緒に居たいと思ってる。それはお姉ちゃんも、百合さんもだけど。でも苺ちゃんはずっと一緒には居られないって。それでも私と恋人になりたいって言ってくれたの」

苺は永遠は無いって言いたかったんだろう。

それはわたしと加奈も一緒だ。

「どんな人でもずっと好き同士でいられることなんてないからね・・・寂しいけど・・・」

「私、そういうことあんまり考えないようにしてた。一番仲の良いお姉ちゃんと、ずっと一緒だったから・・・最近怖くなるんだ・・・苺ちゃんともいつかお別れするのかなって」

「でも別れても、一緒にいた時間ってなくなるものじゃないよね?」

そう自分にも言い聞かせる。

加奈達と別れても、きっとわたしは大丈夫。うまくやっていける。そう思うしかない。

長い人生の中で、加奈達と居られるのは一瞬だけど、その時間は永遠に残るはずだ。

瞬間と永遠。

 

「百合さん、ありがとう。私苺ちゃんに話してくるよ」

「ううん、苺さん、待ってると思うから、早く行ってあげて」

「うん!」

そう言って駆け出した理奈の笑顔はとても眩しかった。

わたしもあんなに爽やかに生きられたら。少しだけ彼女が羨ましく思った。

 

 

 

「苺ちゃん!」

「・・・理奈さん?」

「苺ちゃん・・・私、苺ちゃんとずっと一緒に居たい。いつか別れるとしても、その思いは変わらないから・・・だからその・・・苺ちゃんの特別になりたいと思うの。これが私の答え」

「理奈さん・・・嬉しいです・・・」

 

 

 

理奈と苺を心配しながら、下校の時間になった。

薄暗い空の下、理奈と苺が歩いてくる。

その頬は空の色とは対照的に、真っ赤に染まっていた。

「あれ、理奈と苺だ・・・ってなんで手繋いでるの?」

「えへへ・・・実は付き合い始めたんだよ。ね、苺ちゃん」

「はい・・・」

「え・・・それって恋人になったってこと? ついに理奈にも恋人が・・・」

「そういうこと。って言っても今までも仲良しだったし、何か変わったわけじゃないんだけどね」

そう言いながら、理奈はわたしにウィンクを送ってきた。

他人事なんだけど、わたしは何だかとても嬉しくなる。

「これからは加奈さんのこと、お義姉さんって呼びますね」

「何だか照れちゃうなぁ・・・」

冗談を言い合う二人を見て、わたしもクスっと笑った。

 

 

 

きっとこの四人の関係は、これからも変わらないんだろうなと思った。

今までのわたしだったら、そんな考えには至らなかった。

わたしも少しずつ変わっているのかな。

今までよりも、少しは前を向いていけるのかな。

だとしたら、何だか嬉しいなと思った。




というわけで、晴れて恋人になる理奈と苺。
そして百合もどんどん前向きになっていきます。

百合のお姉ちゃんですが、そろそろ作中の季節が夏になるので、そろそろ登場してもらう予定です。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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