ここら辺から四人の関係が安定してくるかな・・・といった感じです。
相変わらずの曇り空の下、加奈と並んで歩く。
それだけで気分は晴れる気がするから不思議だ。
でも今日の加奈はどこか俯きがちに見える。
何かあったのかな。
「何か最近理奈が元気なくてさ・・・」
「理奈さんが?」
「理由を聞いても答えてくれなくて・・・」
双子の間にも、秘密にしたいことがあるんだろうな。
「大丈夫だよ。理奈さんにも加奈に言えないことの一つや二つあるんだよ、きっと」
「え~そうかな~」
「例えば恋とか・・・」
「恋っ!? でもありえなくはないか・・・理奈ももう高校生だしね・・・」
そのセリフは姉というより親目線な気がする。
「ちなみに理奈さんって今まで好きな人とかいたの?」
「ううん、全然。興味もないって感じだったなぁ」
言われてみればわたしも、中学までは全然恋愛に興味なかったな、と思う。恋愛どころか他人に興味が無かったのかも知れないけれど。
学校の廊下で理奈を見つけたので、思い切って声を掛けてみた。
「あ、百合さん・・・」
加奈の言っていた通り、元気が無さそうだ。
「理奈さん、どうかしたの?」
「ううん、何でもないよ・・・」
「何でもなくはないでしょ? 加奈にも言えないようなこと?」
「・・・うん」
理奈が時間を掛けてこくりと頷く。
「気持ちは分かるよ。私もお姉ちゃんに言えないことたくさんあるし」
「百合さんにもお姉さんいるんだっけ?」
「いるよ。今は東京の大学に行ってる」
「へえ~、百合さんに似てる?」
「似てないよ~。わたしと違って明るくて背が高くいの」
話題は少しずれたけど、理奈の声色が明るくなったように感じて、嬉しかった。
「・・・百合さん。私、苺ちゃんに告白されたの・・・」
理奈がぽつりぽつりと語り始めた。
「苺ちゃんのこと、大好きだよ。でもこれが『特別』なのか分からないの・・・そんな中途半端な気持ちで答えたくなくて」
理奈の顔を見ながら、何も言わずに話を聞く。
わたしは今、理奈のことをちゃんと考えられているかな。
彼女の誠実さに答えられているのかな。
「理奈さん、加奈にも言えないようなこと、どうしてわたしに話してくれたの?」
「お姉ちゃんがね、百合さんに告白されたって嬉しそうに言ってたの」
加奈が、嬉しそうに、その言葉を聞いて、わたしの胸の奥がジーンと熱くなるのを感じた。
「だから百合さんなら、告白した苺ちゃんの気持ちも分かるんじゃないかなって」
「わたしが告白した時はすごく怖かったな・・・」
「怖いの?」
「うん・・・もし加奈との関係が壊れたらって思うと、不安で不安で」
あの日の夕焼けを思い出す。
長くて黒い影が、わたしの心にも伸びていた。
「それじゃあ苺ちゃんにもちゃんと答えないと駄目だよね」
「理奈さんは苺さんのこと、どう思ってるの?」
「・・・ずっと一緒に居たいと思ってる。それはお姉ちゃんも、百合さんもだけど。でも苺ちゃんはずっと一緒には居られないって。それでも私と恋人になりたいって言ってくれたの」
苺は永遠は無いって言いたかったんだろう。
それはわたしと加奈も一緒だ。
「どんな人でもずっと好き同士でいられることなんてないからね・・・寂しいけど・・・」
「私、そういうことあんまり考えないようにしてた。一番仲の良いお姉ちゃんと、ずっと一緒だったから・・・最近怖くなるんだ・・・苺ちゃんともいつかお別れするのかなって」
「でも別れても、一緒にいた時間ってなくなるものじゃないよね?」
そう自分にも言い聞かせる。
加奈達と別れても、きっとわたしは大丈夫。うまくやっていける。そう思うしかない。
長い人生の中で、加奈達と居られるのは一瞬だけど、その時間は永遠に残るはずだ。
瞬間と永遠。
「百合さん、ありがとう。私苺ちゃんに話してくるよ」
「ううん、苺さん、待ってると思うから、早く行ってあげて」
「うん!」
そう言って駆け出した理奈の笑顔はとても眩しかった。
わたしもあんなに爽やかに生きられたら。少しだけ彼女が羨ましく思った。
「苺ちゃん!」
「・・・理奈さん?」
「苺ちゃん・・・私、苺ちゃんとずっと一緒に居たい。いつか別れるとしても、その思いは変わらないから・・・だからその・・・苺ちゃんの特別になりたいと思うの。これが私の答え」
「理奈さん・・・嬉しいです・・・」
理奈と苺を心配しながら、下校の時間になった。
薄暗い空の下、理奈と苺が歩いてくる。
その頬は空の色とは対照的に、真っ赤に染まっていた。
「あれ、理奈と苺だ・・・ってなんで手繋いでるの?」
「えへへ・・・実は付き合い始めたんだよ。ね、苺ちゃん」
「はい・・・」
「え・・・それって恋人になったってこと? ついに理奈にも恋人が・・・」
「そういうこと。って言っても今までも仲良しだったし、何か変わったわけじゃないんだけどね」
そう言いながら、理奈はわたしにウィンクを送ってきた。
他人事なんだけど、わたしは何だかとても嬉しくなる。
「これからは加奈さんのこと、お義姉さんって呼びますね」
「何だか照れちゃうなぁ・・・」
冗談を言い合う二人を見て、わたしもクスっと笑った。
きっとこの四人の関係は、これからも変わらないんだろうなと思った。
今までのわたしだったら、そんな考えには至らなかった。
わたしも少しずつ変わっているのかな。
今までよりも、少しは前を向いていけるのかな。
だとしたら、何だか嬉しいなと思った。
というわけで、晴れて恋人になる理奈と苺。
そして百合もどんどん前向きになっていきます。
百合のお姉ちゃんですが、そろそろ作中の季節が夏になるので、そろそろ登場してもらう予定です。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。