バイトやらがっこうやら、疲れやらで続きがあまり書けなかったのでごわす。
僕は兵藤先輩をつけ始め、お昼御飯を松田先輩と元浜先輩におごってもらい、もう残り一ヶ所くらいしかいけない時間となったとき、僕の家のある公園のベンチに兵藤先輩と天野夕麻さんは腰を掛けていた。
二人の会話は聞こえなかったけど、いい感じの雰囲気なっている。
「よかった。てっきりラブホとか連れていくんじゃないかって心配してたから……」
「さすがのイッセーも初彼女と初デートでラブホは選ばなかったか」
「イッセー……お前ってやつは……」
完全に親目線状態の松田先輩はしきりにシャッターを切る。
この一瞬が、奇跡のような場面だと認識しているのか、きちんとカメラに納めようとしているのだ。
そんなとき、松田先輩の微かなカメラのシャッター音が途切れる。
「悪いっすけど、ここまでっす」
僕は聞きなれた声を聞いた瞬間には、意識を失っていた。
※※※
月曜日、僕はだるい体にむち打ちながら、学校に登校すると、校門で待っていたのか、兵藤先輩と遭遇した。
「海樹! お、お前は覚えてるよな! 俺に彼女ができたこと!!」
僕はその発言を聞いて疑問に思う。
「兵藤先輩に彼女? 夢かなにかじゃないですか?」
僕の発言に、兵藤先輩の表情は、あからさまに変わっていき、一抹の希望を失ったかのようなものになった。
(ねぇ、ジグ。兵藤先輩に彼女っていたっけ?)
『…………』
ジグはなにも応えない。沈黙は肯定と捉えるべきか、どうなのか……。
(『おい、宿主』)
そんなことを考えていると、ジグの方から話しかけてくる。
(なに?)
(『こいつから、悪魔のオーラを感じる』)
(え? どういうこと?)
(『人間じゃなくなってるってこった。にしても、不可思議な現象があるもんだな。この変態に彼女ができたなんて世紀の大事件が起きるなんてな』)
(だよね。にしてもなんで、悪魔のオーラが?)
僕はジグの発言にあった悪魔のオーラというものに疑問を覚え尋ねた。
(『俺も知らねぇ。ま、用は俺らんとこと似たような背景を持ったってことだろ』)
(ふーん)
「いや、なんでもない。変なこと聞いて悪かったな」
僕とジグが話していると、明らか落胆している兵藤先輩が、とぼとぼと校舎に向かっていく。
「ねぇ、ジグ」
『んだ? 宿主』
「ちょっと、調べてみようか」
『んぁ? なんで、んなこと』
「さすがに、あの状態の兵藤先輩は見ていられないから……さ……」
『はんっ! んなこったろうと思ったぜ。とりま、学校終わったら『
「わかった」
僕らは話しながら、教室へ向かう。
一応周りの人から不審がられないように、ブルートゥースイヤホンをしているかのような行動をとりながらだけど。
僕が、教室へと足を踏み込むと、塔城さんがこっちを向いた。じっと、僕を見たあと、また、クラスメイトとの雑談に興じ始める。
なんだったんだろ? 普段なら、こっちに来るか、感心なさげにクラスメイトと雑談し続けているはずなのに。
(ジグのことも知ってるはずだしね)
(『てなっと、また、別の話なんだろうな。おめぇは、異形業界の基本ってやつぉ知らねぇわけだしな』)
(どういうこと?)
(『五大宗家から、おめぇのたまぁ狙われんのは、俺を宿してっからってのと、同じようにあの嬢ちゃんにも、なんか事情があんだろうよ。ま、それが、気になんなら軽くオカルト研究部なり、生徒会なりにいきな。もとめるもんがあるかぁしんねぇが、それなりのもんがわかっかもな』)
ふーん。僕は席につきながら、ジグと話す。
さすがに、教室でまで、声を出しながら話すという訳にはいかないので、神器を通じての念話っぽいなにかだけど。
(そういえばさ。僕まだ一回も聞いてなかったけど、悪魔って、どんな存在なの?)
(『そうだな。俺も悪魔に殺された宿主は見たこたぁねぇが、特性上人間ってやつと親密になりやすいってぐらいか』)
(善であれ、悪であれってかんじ?)
(『んなもんだ。悪魔ってのぁな、基本じこちゅーなんだよ。それでも、一応あいつらにもプライドっちゅーもんがあんのか、契約にたいしてはそれなりに忠実だ。まぁ、おめぇが信用ならねぇってんならそれでもいいんだけどな』)
(僕が変な契約しないか心配なの?)
(『だーれが、おめぇの心配なんかすっかよ』)
(わかってるわかってるって)
僕は素直になれなれない相棒に心のなかで笑ってやった。
※※※
そして、放課後、僕は家(穴蔵)に帰り、神器を右手に出し、意識を神器に傾ける。
あれ? そういえば、神器のなかに来いって言われてたけどやり方あってる? なんとなく神器に意識を傾ければできるっぽいって感覚でやってるけど。
『あってんぜ、宿主。おっと、やべ、このタイミングで関わっちまったから……』
『ジグ。あなたって人は……本当に……』
『かっ……はっ……ま…………ぜ。…………ハイム』
あ、あれ? じ、ジグ?
僕は突然ジグに声をかけられたかと思うと、別の声が割り込んできたと思ったら、今度はジグの声が途切れて聞こえ始めた。
な、なに? 何が起きてるの?
僕は不安を覚えながら、目を開けると、研究室のような場所にいた。
目の前には白衣を着て、椅子に腰を掛けた藍色の髪で、右手には僕と同じ神器を持っている異国の男性が僕をじっと見ている。
「ここは?」
『あなたの神器、土蜘蛛の糸の宝玉の中です。もっとも、本来なら神器の方に繋がるはずがジグが妨害したせいで、こっちに移ってしまっただけですけどね』
その人の声は、ジグのように、なにかをはさんだ感じの声がした。電話とかそういう感じの声だ。
『こんにちは、丹芽海樹くん。私の名前ですが、パラケルスス、もしくはホーエンハイムとでもとでも呼んでください』
「は、はぁ」
『困惑しているようですね。少し、待っていただけますか?』
ホーエンハイムと名乗った男性は、実験器具と神器を操り、緑茶を作り出した。
「
『この宝玉は私がつくって、この神器に嵌め込んだものですから。あなたも鉄の糸何て言うものを作れているでしょう?』
「あれも、この宝玉が?」
『えぇ。そうです。正確には、この宝玉を通じて私がジグのサポートをしているから可能なんですよ? 普通の糸以外はすべてそうですけどね』
す、すげぇ……。
『ふふ。さて、もうそろそろ、ジグが怒りそうですね。そのお茶を飲んでから、ジグのもとにいってください。あそこの怨念は、あなたの精神を砕く可能性もありますから』
「は、はい」
僕は、出されているお茶を飲み干す。
「それで、あの。どうやって、ここから神器の方に向かえば?」
『底の扉を潜っていけばいいですよ』
「底?」
僕が首をかしげていると、ホーエンハイムさんは足下をちょんちょんと指差す。
どこにも扉とかないんですけど?
『そこに扉をイメージしてください。あぁ、穴でもいいですよ』
「扉にします」
僕は引き戸をイメージする。
すると、僕の足下に木の引き戸が出現した。
『それでは、少し失礼して』
そう言うとホーエンハイムさんは、僕の胸に手をあて、なにかを流し込んできた。
『鍵を開かせてもらいました。あとは、あなたの思い次第です』
そういって、ホーエンハイムさんは、僕の足下の引き戸を糸を使って勝手に開けた。
「あ、あんた、何してくれてるの!?」
僕は落とし穴に落ちるような錯覚を覚えながら、神器のなかに進んでいく。
あぁ、僕、死ぬんだ。死因とかよくわからないまま死んでいくんだ……。
背中から落ちていくような感覚に絶望していると、なにか柔らかいものに包まれる感覚がした。
『遅かったじゃねぇか、宿主』
この声は……
「……ジグゥ……」
僕はその声の主の方を見た。すると、そこには、柄の悪そうなヤンキーっぽい感じの肩ぐらいまである茶髪を金色に染めた十四歳くらいの女の子がいた。
え、なにこれ? ずっと僕ジグのこと男だと思ってたけど、ジグってもしかして……
「女の子だったの?」
『あぁん?』
僕の疑問にガンを飛ばすジグ。
『あぁ、この姿のことか。世の中、蜘蛛はきめぇっつーやつがいっからよ。折角だから昔の宿主の体に変化してんだ。まあ、もっとも、ゴッツイむさいおっさんにもなれねぇことはねぇがな』
「うっわ、全く可愛げがないね」
『かっははは、そりゃそうだろ。俺だぜ?』
ニヒルに口角をあげるジグ。
確かに。どんな姿をとってたってジグはジグだ。女の子の精神を持ち合わせてるはずがない。
『一応いうが、俺は雌雄同体だぜ? 男でもあり女だ。神武のやろうと聖書の神のせいで、こうなっただけだしな』
「ん? どういうこと?」
『気にすんな。んで、それより、ホーエンハイムから、預かりもんとかねぇのか?』
「お茶と、使い方くらいしかもらってないよ?」
『んだよ。かしおりの一つくらい持たせてもいいだろうがよ。あのクソ童貞』
あの、その言葉僕にも刺さるんですが?
『おっと、そうだった。わりぃわりぃ。宿主も童貞だったな。忘れてたわ。かっははは』
「うわぁ、美少女の容姿のはずなのに、全くかわいくない」
『おいおい、おめぇは、俺を美少女キャラにしてぇのか? バカか? バカなのか? 俺ぁ蜘蛛だぜ?』
「それもそっか。で、僕なんのために、ここに来たんだっけ?」
『兵藤一誠の彼女の捜索の手がかり探しに来たんだろ?』
「そうだそうだ。あ、それも大事なんだけどさ。なんで、僕神器のなかに入る方法知ってたの?」
『それも含めて今からわかんよ』
そういって、ジグは、口から糸をはいてスクリーンにした。
なんか、神器系の思念さんたちちょっと糸の操りかたうますぎない?
『かっはは、そりゃ俺は二千年を越える時間、ホーエンハイムはこの神器に宝玉をつけてからの間、扱い続けたわけだしな。生まれて十数年の若造に扱いの差で負けるわけにゃいかねぇのよ』
「あ、ただのプライドなのね」
僕は適当なところに座って気づいた。
「あれ? これ、蜘蛛の糸?」
『あぁ、そうか。ホーエンハイムの方だと実験室だったが、こっちじゃぁ、俺の住処だかんな。クモの巣になんのは当然だろ?』
「どうせなら広野とか高原とかがよかったなー」
『高望みすんな。地蜘蛛の生態調べてから出直すこった』
そんなことをいいながらも、何かの作業をするジグ。
プロジェクターっぽいものを糸で編まれた机におき、僕のとなりに座った。
『あぁ、それと宿主。今でこそ平気そうだが、気ぃつけろよ。ここのさらに奥にゃ、怨念の集合地帯があってな。そっから、こっちまで、漏れ出てるからよ』
「心配してくれてる? ジグにもかわいいとこあるんだねぇ……」
『そこにぶち落とすぞ』
「やめて? なんか、本能的にやめて?」
『かっははは、さすがに、それは覚えてっか』
なんか、よくわからないこといってるけど、とりあえず、なんかここから落とされるのは、なんか本能的にヤバイ気がするから、やめてほしい。
そんなことを思っていると、スクリーンにきれいな金色の髪を大きめの黒いリボンを使い頭の上で二つ結びにしたゴスロリの女の子が槍を構えて写っていた。
今回、新キャラ出ましたけど、実は予定通りです。
以前、神器辺りの設定をいじっていたっていう以前から、ホーエンハイムには神器にいてもらう予定でしたし、宝玉もホーエンハイムがつけたという設定にしてました。
そして、土蜘蛛の糸の本来の能力は封印系で最弱といっても過言じゃないです。
だって、ただただ、糸を作るだけですから。
射出機能も実は何らかの特殊能力がないと使えません。まあ、神器のオーラを使うことができれば簡単にクリアできるんですけどね。
さすがに、火の糸とかのいわゆるそれ、糸じゃねぇよ!みたいなのも、説明するために今回のような話をしました。
ちなみに、これ、時系列的に一誠のデート前にしようと思ってたんですけど、デート後にしたのは、単純にミッテルトとの思い出を消されるので、覚えてないなぁと判断したからです。
まあ、あと、ホーエンハイムの手が入るところがわりとシビアだったからっていうのもありますね。
あと、ミッテルトの描写を細かくしたのは、記憶を封印されているからですね。
ちなみに、消すではなく封印にした理由はまだ内緒です。
それでは、また次回お会いしましょう