糸使いの高校生活   作:やまたむ

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お待たせ。


第11話

 エラー、エラーと神器が鳴り響く教会の中。

 僕は真面目にどうしようかと悩んでいた。

 

「おやおやぁ、そちらも戦闘する気満々だったの? いやぁ、嬉しいよ。これで、俺様も」

 

 そう言いながら神父は僕に銃口を向けてくる。

 

(あ、これヤバイ)

 

 僕は神父に背を向け、ドアに向かって駆け出す。

 

「心置きなく殺せるってもんだかんねぇ!!」

 

 発砲音もなく、気づけば僕の肩は銃弾に撃ち抜かれていた。

 僕は、振り向くことなく、撃ち抜かれた肩を押さえ、止血を試みる。

 

『error』『error』

 

 癖で神器から糸を作り、背中の方の穴を塞ごうとするが、エラー音が響くだけだ。

 

『宿主。妖力使えんじゃねぇのか?』

「むり……かも。昨日の今日で使えるものじゃないし」

『ま、細胞から力ぁ出すなんざ普通は無理だかんな』

『ですが、肺はジグのものと大差ないのでしょう?』

「つまり?」

『もしかしたら、糸を生成することができるかもしれませんね』

「えっと、それって、ジグ的に可能?」

『構造的に糸疣(しゅう)はできててもおかしくはねぇと思うぞ』

『あとは出糸管くらいですけど、体に違和感とかは?』

 

 そう言われても、そういうの平時に言われないと気づかないから!! 

 

「なんのお話かな? ちょいと俺様も混ぜてくれや」

 

 僕らがそんなやり取りをしている間に、神父は僕の脇腹を光の剣で裂く。

 

(あと少しだったのに……)

 

 僕は地面に倒れ伏し、そう思う。

 

「うーん。よわよわでぼくちんかなしい。じゃね、名も知らない訳じゃないけど、名も知らない男の子」

 

 僕に馬乗りになりながら、額に銃口を突きつけながら、神父は言う。

 

 だぁ! もう、やけっぱちだ!! 

 

 僕はなりふり構わず、神父に向けて唾を飛ばした。

 すると、唾は網状の糸に変化し、神父の目を覆うように張り付いた。

 

「うわっ、きったねぇ。ざけんなよ、クソガキが!!」

 

 神父は目を擦りながら、糸をはがした。

 

『だよな』

『ですよね』

「だと思った」

 

 僕ら三人は同じ感想を抱き、口に出していた。

 

「はぁ……萎えた。萎えるわこれ」

 

 そういいながらも、神父は僕の頭を狙った銃口を外さない。

 

「んじゃ、ばいちゃ」

 

 神父はそういいながら、引き金を引く。

 

 走馬灯なんて見る暇もないくらいに、僕の頭は撃ち抜かれる。

 

 はずだった。

 そう。はずだったのだ。

 

 僕の頭になにかが出現し、目の前には何が書いてあるのかよくわからない、魔法陣? が展開されていた。

 

『なんとか、間に合いましたね』

 

 ホーエンハイムさんの声が頭から聞こえる。

 もしかして、これ、頭のなにかから、ホーエンハイムさんが話しかけているってことだよね? 

 

『えぇ、そうですよ。ですが、間に合ってよかったです。昨日、『鍵は開けた』と伝えましたが、こんなに早く戦闘になるとは思ってもいなかったので、無理やりこじ開けさせてもらいました。まあ、無理やりやったので、あなたの寿命が二年ほど短くなりましたけど』

『おい、ゴラ!! こいつの寿命知ってて、それか? あぁん?』

『残りコンマ数秒の命を二年に引き上げたって言うだけでも儲け話では?』

『常識を知れ! 社会不適合者!!』

 

 あぁ、えっと、つまり、唯でさえ四年しか持たない命を二年削る代わりに、今死にそうだった命を保ったってことかな? 

 確かに、安い買い物かも。

 

「つまり、今、僕の神器の機能は拡張されて使いやすくなったってこと?」

『えぇ。そういうことです。先程のエラーも、拡張する機能が決まっていなかったから起きたようなもの。それなら、宝玉を嵌め込んだ時と同じように、拡張する指向性を決めてやれば、なんとかなると踏みましてね。内側から干渉しながら話してました』

「ホーエンハイムさんグッジョブ!!」

 

 僕がそんなことをいっていると、今まで律儀に僕たちの会話を、聞いていた神父が、やる気無さそう立ち上がり適当な椅子に腰かけて言った。

 

「つまり、ちみは今から本来の実力がだせるってぇことかぁ……あーぁ、萎えちゃったし、いいや。めんど。ちゃっちゃと帰って帰って」

 

 どうやら、やる気スイッチがオフになってしまったらしい。よかったぁ。命拾いした。

 

 って、そもそも、戦闘しに樹たわけじゃないんだった。

 

「そういえば、ミッテルトに話があってきたんだ。ねぇ、神父さん。ミッテルトは?」

「あ? ミッテルトの姉御? なんか、本部っつーやつに報告とかなんとかで今いないよ。はい。用事もしゅーりょー。ささ、帰って帰って」

 

 しっしと、僕をここから退散させようとする。

 うん。別に問題ないからいっか。僕は神器を消しながら教会を出ていく。

 

 正直、後ろからの奇襲を警戒していたけど、そんなこともなく、あっさりと穴蔵へと帰ってこれた。

 

「よし、それじゃあ、ホーエンハイムさん新機能の説明お願い」

 

 僕は穴蔵に入ってすぐ、神器を出す。

 すると、グローブだけではなく、ヘルメットのようなものが出てきた。

 僕はヘルメットをはずし、どんな形かを見ると、後頭部に蜘蛛の装飾が施されており、その足が頬に伸びている。前の方を見ると、バイクとかのヘルメットでよく見るような感じの、バイザーって言うんだっけ? そんなものがついていた。

 

『わかりました。まあ、それはそれとして、よく見るとダサすぎますね。これ』

『よく見ねぇでもダセェよ。それと、早速脱線してんじゃねぇ』

『失礼しました。では、まず、そのヘルメットの効果ですが、演算機能の補助です』

「演算?」

『えぇ。主に魔法関連ですね。はっきり言うとあなたには関係ないものです』

 

 ──…………

 

「使えねぇ……」

 

 僕は心底がっかりした。いや、魔法とか身に付けられれば話は変わってくるのかもしれないけど、なんで、そんな機能にした? バカかな? バカなんじゃないかな? 

 今の僕でも使える機能が普通なんじゃないの? あれかな? 機能を拡張したのが僕じゃないから、ホーエンハイムさんよりのものになっちゃったの? 

 

『いえ、私がメインで干渉できるようなものが欲しかったので、密かに組み上げていたんですよ』

「そういうの、相談してよ。趣味で能力拡張なんて、普通にして欲しくないんだけど」

『ですが、これで、攻撃方面ではジグが。防御方面では私があなたをサポートすることが可能になりました』

「えーっと、つまり?」

『一定以下の攻撃であれば、大体は防ぎますよ。さすがに中級以上になってくると、防ぐのは難しいですが、そこはあなたの努力次第です』

「僕に魔法の勉強をしろってことですか……」

『いえ。神器のオーラを高めてください。私の魔法の強さも何だかんだで神器由来ですから』

『かっはは、ようは強くなれってこったな、宿主』

 

 そういうことだよね……。がんばる。この短期間ですごい数、戦闘が勃発してるけど、がんばるよ。

 

『メインとなる機能はそんなところです。次はサブの機能ですね』

「どれだけ、このヘルメットに機能をつぎ込んだのさ……」

『三つですよ。その一つが演算補助というだけです』

『かっはは、こりゃ神滅具認定受けてもおかしくねぇぜ』

『本来、封印系神器は使い手次第で神滅具になり得ますからね。今代はそういった特徴が色濃く反映されているんだと思いますよ』

『違いねぇ』

 

 二人がなんな、僕のことで少し盛り上がっている。

 いや、正確には神器のことなのかな? 

 

『まぁ、それは、それとして、残りの二つの機能ですが、一つは本来の土蜘蛛の糸の能力と同じ糸の生成と射出、もう一つは、神器のオーラの変換です』

『ま、両方とも使える場面が限られそうだな』

「そう?」

『おめぇ、戦闘に関しちゃ、糸で立ち回るのがあってるぶん、他のことなんざできねぇだろ』

「確かに……」

『詳細を語ってないのに否定されました……』

『詳細とか、言わなくても』

「どうせ、神器のオーラをエネルギーに変換して射出口から発射する程度のものだろうしなぁ……それなら、属性糸で言い訳だし」

『それもそうですね。戦術の幅は広がっているはずなんですけど……』

『幅が広がんのと、扱えんのは話が別ってことよ。理解したか? 童貞』

『うるさいですよ、ジグ』

 

 ワイワイギャぁギャぁ言い合っているジグたちを放っておいて、僕は神器の糸を穴蔵に張り巡らせる。

 昨日の物音が今日も聞こえるかもしれないから、そのためのトラップだ。

 

「よし、それじゃあ、寝よっと」

『あぁ、寝な宿主。寝るガキは育つっつうしな』

「うん。おやすみ、ジグ」

 

 僕はベッドに横になり、目を閉じ、夢の世界へ旅立った。

 

 

※※※

 

 

 海樹が眠るのを確認し、穴蔵の側にいた少女は、帰還する。

 それを、聞き届けると、海樹の神器に宿る二人は会話を始める。

 

『帰っていきましたね』

『みてぇだな。んで、どうすんだよ。あの機能、宿主じゃ扱いきれねぇような要素しかねぇぞ』

『えぇ。わかっています。それに加えあと二年……どうしたものか……』

『人間を悪魔に変えることができるもんがあるってなぁ知ってっが、悪魔が乗ってくれるとも限らねえし、そもそも、宿主がなりてぇかどうかすらわかんねぇしな』

『仙術を本格的に学ばせてあげたいですけど』

『そんな知り合い……いたわ』

『いるんですか!?』

『ま、連絡とれないけどな』

『ダメじゃないですか。一応参考までに聞きますけど、どなたなんですか?』

『初代沙悟浄』

『有名どころじゃないですか!? なんで、その人と知り合いなのに、宿主の寿命を削り続けるような仙術を?』

『ほら、こいつの先代の宿主がよ、沙悟浄の末裔だったんだけどな』

『それは、あなたが彼にあったときの姿の?』

『そうそう。あいつ。ヤンチャして、仙術暴走させて死んだんだよ。そのときの仙術を覚えて、今の宿主に還元してたって訳だ。ま、つまるところ、俺は仙術素人なんだよ』

『危険すぎるじゃないですか。よく、彼も耐えられるものです』

『元来の性質だろ。あいつの素質はおめぇもわかってんだろ?』

『神器に目覚めて、すぐに『賢者の石(エレメント・ストーン)』を操れていましたからね。相性の問題かと思っていましたけど』

『実際、そうだろ。じゃなきゃ、普通、暴走する形体を治療なんかにあてらんねぇ』

『たしかに、そうですね。あの段階で死んでないだけ、儲けものです』

『かっはは、だからよ。マジでこれからどうするよ。おめぇのせいで失くなった二年分』

『決まっているでしょう?』

 

 ホーエンハイムの『ふふふ』という笑い声が、穴蔵に響き渡った。




今回、急な強化をしましたけど、防御力が上昇しただけです。
本人の実力次第で化けますけど、この段階だとまだまだですね。

少し前に語りたかった内容の一部をラストにいれることができたので少し満足です。

それでは、また次回、お会いしましょう。
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