糸使いの高校生活   作:やまたむ

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第12話

 今日、僕は目を覚ますことができた。

 

「そういえば……」

『肩とお腹の傷は昨日のアドレナリンが過剰分泌中に縫合しておきましたよ。血液がほとんど失われていたので、今日は学校をお休みしてください』

「なんで、失血死してないのか疑問でならないんだけど」

『そりゃ、おめぇ、生命維持のために可能な限り生かそうとしたからじゃねぇか?』

「ジグが?」

『はっ! だーれが、おめぇの心配すっかよ』

『神器は宿主を可能な限り生かしますから、ジグが生かそうとしたというのも間違いないのでは?』

「神器と封印された妖怪の意思って違うものなの?」

『私とジグ、神器そのもの、ジグに恨みや世界に対するやるせなさ等の合わさった怨念の四種類があなたに宿っていますから、別物でしょうね。神器の方はシステムが大きく関わっているとは思いますけどね』

「システム?」

『あなたの気にする必要のないことですよ。私が言いたかっただけです』

 

 自己中心的な……。

 

「でも、学校にはいくよ。お腹が裂かれた程度で休めるほど、僕も暇じゃないからね」

『普通は病院にいくから休めるはずですけどね』

『こいつに病院に行けるような金はねぇし、ホーエンハイムは医者だろ? 診てやれよ』

『魂だけの存在に無茶言わないでください。そもそも、私の専門は医化学と錬金術ですからね?』

「ほへぇー」

『思考を停止しましたね』

『思考停止したな。おい、宿主。ちょっと、用事あっから、こっちこい』

 

 僕は、ボーッとしたまま目をつむり、神器へと意識を傾ける。

 グゥーっと神器に飲み込まれるような感覚に包まれ、その感覚が晴れ、目を開けると、金髪の女の子の姿をとったジグがいた。

 

「で、なにか用?」

『かっはは、ちょっと、ついてこいよ。おめぇに紹介してぇやつがいてな』

「へぇー。どんな人なの?」

『この姿のおめぇの先代だよ』

 

 ──………………

 

「えええええええええええええええ!!!!!!?????」

 

『んだよ。るっせぇな。てめぇの先代に会わせてやるっつってんだよ。おめぇに縁もゆかりもねぇやつじゃねぇしな』

「どゆこと?」

『おめぇの親戚に当たるやつだからな』

 

 ジグのその言葉に僕は今日二度目となる叫び声をあげた。

 まさか、親戚に同じ宿主がいたなんて……。

 ジグに案内され、その人物がいるらしい部屋に入ると、禍々しいオーラに襲われた。

 

「じ、ジグ。これなに?」

『かっはは、経験すんのは初だったな。こいつぁ、おめぇも知っての通り、先代までの怨念が詰まってんぜ』

 

 オーラの波に呑まれそうになるものの、なんとか意地だけで耐える。

 

『やっぱ、おめぇはそんな感じか』

「どういうこと?」

『こっちは、あの童貞じゃ干渉できない領域だかんな。相応の精神防御がねぇと、呑まれっかんな』

「あはは、なんか、このオーラっていうか、この感じが妖人化に似ているからかも?」

『かっはは、割りと今までの経験がいきたってとこか』

「そうかも。それで、どこにいる人がジグの紹介したい人?」

『この姿を想像すれば、相手から近づいてくっぞ』

「え? そういうもの?」

『ま、俺の姿形のモデルを呼びてぇだけだし、神器のなかっつっても、精神世界みたいなもんだしな。距離も空間もおめぇの想像次第ってもんだ』

「そういうもなの?」

『そういうもんだ』

 

 僕はジグに言われるがまま、ジグの姿の女の子を想像する。なんとなく手を前にかざしてみた。

 すると、なにかスベスベした感触が手に触れる。

 

「え?」

 

 僕の手を握りジグの容姿と同じ女の子が目の前に現れる。

 

『宿主……おめぇの、そういうとこ、やっぱ童貞だわ』

「いや、なんとなくの思い付きだし、中学生感覚が抜けなかっただけなんだって」

『わーってるって、ほら、穴蔵部屋までつれてこい』

「え、それ、僕の仕事?」

『おう、めんどいしな』

 

 だと思った。

 僕は少女を背負い、この部屋に来る前の穴蔵に行く。

 

「そういえば、あの、オーラの満ちた部屋から漏れ出てたのが、僕の妖仙化の悪影響与えてたやつ?」

『そうだよ。世界中からとか、なんもねぇ空間から悪気なんざ、得られねぇよ。むしろ、あの空間なら悪気なんざ、とることんが難しいっつの』

「あぁ、なるほど……だから、妖仙化しようって話になったとき、めちゃくちゃ反対してたんだ」

『……んなんじゃねぇよ。ほら、さっさと、そこに寝かせな』

 

 そういわれ、僕は少女を寝かせ、バタンと背中から地面に倒れる。

 

「つ"ーか"ーれ"ーた"ー」

『おら、次の作業だ。糸だせ糸』

「なんか、今日のジグスパルタじゃない? ちょっと休ませてよ」

 

 僕は文句を言いながらだけど、適当な長さの糸を作る。

 

『あぁ、こっちじゃねぇ、赤いんだ赤』

「わかったよ」

 

 僕はジグに言われるがままに赤色の糸を作り、ジグに伸ばす。

 するとジグは、糸を少女の左手の薬指に巻き付ける。

 

『よし。おい、童貞野郎。こっちの準備は整ったぜ!』

『わかりました。一気に同機させます!』

 

 ホーエンハイムさんの声が聞こえたと思ったら、僕は穴蔵から平原にたっていた。

 

 

※※※

 

 

「こ……こは?」

「あたしの世界みたいなもんでしょ。たぶん。あたしが生きてたら叔母になるのかな? 笹川(ささがわ)兎尾《とび》っていうの」

 

 平原にたつジグと同じ容姿をした少女は、そんなことをいう。

 

「あぁ、ごめんなさいね。怨霊になってから十数年もたってしまっているから、なかなか、ふつうをというのがわからないの。でも、そうよね。親戚が自分に宿っているって不思議な感覚よね。ふふ。こうして甥のお世話ができるというのも不思議ね。だって、あたしは死んでいるはずだもの」

 

 理解が追い付かず困惑するが、少女はお構いなしに、しゃべり続ける。

 

「そういえば、ここがどこかおしえていなかったね。ここは、あたしの精神世界。あのお節介二人があたしの精神と、あなたの精神をあなたの糸を通じてリンクさせた場所なの」

「ちょっと待って。話に追い付けない」

「ん? ごめんごめん。あたしだけがしゃべってるものね。ちょっと、黙っておくから聞きたいこと聞いて」

 

 そういうと、じーぃっと僕を見つめてくる。

 瞳を覗かれる感覚が、なかなか慣れず、思考もまとまらない。

 

「…………」

「…………」

 

 僕は最終的に限界を迎え、兎尾さんから目をそらした。

 

「どうして目をそらすの? ほら、叔母さん怖くない怖くない」

「いや、そうじゃないから。それに、その容姿で叔母さん言われても理解できないし、そもそも、僕の親戚は……」

「全員死んでるんでしょ? 知ってるよ。あなたの母方の方はあたしの存在を知るために、あなたの父方の方はあなたを探すために殺されたのだから。ま、そんなことより、現世での姉さんはどうだった? 大人になってきれいになってた? どことなく姉さんの雰囲気も持ってるから、あなたが、神器のなかに来たときにすぐにわかったよ。怨念が表に出てたから、声をかけれなかったけれど、こうしてあなたと会えて嬉しいの」

 

 凄い勢いで話すので、僕は若干気圧されていた。

 

「あ、あの。僕も親族に会えて嬉しいんですけど……」

「そうだよね。こんな偶然……あ、そもそも、土蜘蛛の糸って結構珍しい部類の神器なんだった。たしか、宿主の関係者に宿りやすい傾向にあるって。だから、基本ランダムに決定される神器の宿主が、この性質のせいで、あたしの死んだとしに産まれたあなたに宿ったのね。なるほどぉ」

「勝手に納得しないで……それとちゃんと僕にもわかるように説明して」

「えっと、そういわれても、そのまんまなの。あたしに宿っていたときに、すでにあなたは胎児で、あたしが死んだときにあなたが産まれた。だから、糸が縁を結んだってこと」

 

 意味がわかるようなわからないような、そんな感じの説明を受ける。

 

「ま、そういうことはどうでもいいの。あたしの役割とか、よくわからないけど……って、ちょっとまって、なんであなた、生命力がそんなことになってるの!?」

 

 兎尾は驚きながらも、僕をじっと観察する。

 

「そう。そういうことだったのね。だから、私が……土蜘蛛も錬金術師も、私の甥に何て無茶を……」

「えっと、兎尾……さん?」

「あ、そうね。あたしのことを何て呼べばいいのかわからないものね。普通にお姉ちゃんでいいよ。それと、タメ語でオッケー。甥に敬語を使われたらお姉ちゃん悲しくて泣いちゃう」 

「いや、あなた見た目十四歳じゃ……」

「怨念になった理由も、あなたに会えなかったことが原因だし、もう、表層状態のあたしも、今の状態になってると思うの。だから、プリーズコールミー。お姉ちゃん」

 

 なんか、ぐいぐいこられて困る。助けてジグぅー!! 

 

 僕の心の声に普段なら反応するはずのジグは、なにも返してこない。

 そんなことを思っていても、状況は進まず、いまだに兎尾は僕に『お姉ちゃん』呼びを強要してくる。

 

「兎尾……」

「ノンノン、お姉ちゃん」

「兎尾叔母さん」

「ぶっとばすよ? お姉ちゃん」

「兎尾姉ちゃん」

「ぶっきらぼうだけどそれはそれでいいわ!! そう! これ! これなのよ!! お姉ちゃんが十六で身ごもったときから、ずっと夢だったの!! 姉さんから聞いてない? 姉さんできちゃった婚だったっていうこと」

 

 兎尾姉ちゃんから衝撃の事実が飛び出し、僕の理解力は低下し、なぜか疲れが増加した。

 

「夢にまで見た甥っ子に会えた。あぁ、成仏しそう。でも、あたしの役割はこれだけじゃないのよね……。わかってる。わかってるの」

「兎尾姉ちゃん?」

「どうしたのー、海樹くん。お姉ちゃんがなでなでしてあげよっか?」

「いや。それはいいんですけど、どうやったら、精神世界内精神世界から出られるんですか?」

「あ、そう。そっち……。もっと、お姉ちゃんと一緒にいたいのかと思っちゃった。まぁ、やり方は簡単よ。気づいてる? あたしの薬指とあなたの薬指に赤い糸があるでしょ? それを切ればいいの」

 

 そういわれ、自分の左手を見てみると、確かに薬指に赤い糸が巻き付いて、糸の先には兎尾姉ちゃんの左手の薬指に赤い糸が巻き付いている。

 

「えっと、切るってもしかして手で?」

「どんな方法でもいいのよ? その糸があたしの精神世界にあなたを繋ぐ中継機みたいな役割をしているだけだから、それを切れば電話みたいにぷっつり切れるの。あ、帰りたくないならずっとそのままでもいいけど、実際に神器の外との時間経過もおんなじだから、気を付けてね?」

「え? もしかして……」

「学校遅刻確定ね。まあ、けど、今日は土蜘蛛たちと同じで登校は反対かな。安静にしないと」

 

 うぐっ、さすがに三人に同じことを言われて、かつ遅刻も決定してしまっている。

 た、ただ、連絡手段が……。

 

「うーん。ま、それは仕方ないということで割りきって」

「…………」

「そんなかおされちゃうと、撫でたくなっちゃうじゃない。よしよーし」

 

 不満だと意思表示したら、なぜか撫でられた。

 そして、満足したのか、ふーっと、大きくため息をつき、地面にストンと座る。

 

「それじゃあ、今日はここまで。一日目は顔合わせって決まってるから。海樹くんと二人きりの空間じゃなくなるのは悲しいけど、土蜘蛛たちのところのあたしの怨念は晴れてると思うから、表でもよろしくね」

 

 僕はコクりと頷くと、糸をブチッと千切った。




新キャラ登場!叔母さんだぞ。
オネショタ?見た目は中学生だから、ロリオニが正解だぞ。
産まれた年がロリの方が早いだけで。

一人称は使い分けるタイプの子です。基本は見た目通りの髪染め系金髪中学生ギャルママロリですけど、本質はまあ、作品が進めばってことで。
それでは、また、次回お会いしましょう。
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