糸使いの高校生活   作:やまたむ

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第13話

 赤い糸を切り、目を開ける感覚を覚えると、僕の顔を覗き込むジグの姿があった。

 兎尾姉ちゃんと同じ容姿だが、なんとなくジグの気配がした。

 

「おはよ。ジグ」

『かっはは、よく俺だって、わかったな。さっきまで二人っきりの世界に入り浸ってたくせによ』

「付き合いの長さ、かな? 僕からしてみたら、兎尾姉ちゃんのマイペースさがなかったから」

『兎尾姉ちゃん?』

「うん。精神世界でそう呼ぶように言われたから」

「ほんとはお姉ちゃんがよかったんだけど、妥協してそうなっちゃった。ま、海樹くんが生きられるなら……って、そうだ。土蜘蛛! あんた、よくも私の甥の寿命を縮めるような真似をしてくれたわね!!」

『おいおい、確かに強化案として妖人化を勧めたなぁ俺だが、それを使うって決めたのは、こいつだぜ?』

「それでも、止めれるところはあったし、逃がすってことだってできたでしょ?」

『人間と異形のスペックを一緒くたに考えんのは、やめとけよ。それこそ、こいつが死ぬことになる』

「わかってるけど……」

『じゃあ、この話はしめぇだ』

 

 いまだ納得してない様子の兎尾姉ちゃんだったが、ジグがもう聞く耳をもとうとしないことを確信し、僕の方を向いてなにかを訴えかけてくる。

 

「……海樹くんはそれでいいの? あと長くても二年しか寿命がないっていうのに……」

「あ、それは、なんとも。今なんで生きているのかわからないので、気にしてなんていられないですよ」

「そう。そっか。それなら、いい加減私も一肌脱がないとね」

 

 覚悟を決めたのか、パンッと自身の頬をたたくと、兎尾姉ちゃんは怨念のたまった部屋をなんらかの結界で塞ぐと、僕に向き直ると、どや顔をかましてくる。

 

『おい、どや顔してねぇで、さっさと始めやがれ』

「うるさい土蜘蛛。海樹くん、どう? お姉ちゃん凄い?」

『ジグ、どうやら、この方にはあなたと私は見えていないようですよ』

『せめてもの抵抗ってやつか?』

『でしょうね。彼女マイペースなところがありますから』

『かっはは、そりゃ、おめぇら全員に言えることだろ』

『ははは、ジグがそれを言いますか』

「そも、僕たちみんなマイペースだもんね」

「『『それはない!!』』」

 

 なにか、掛け合いをやっていたので、僕も混ざってみたら、なぜかみんなに否定された。

 だけど、どうやら、全員がマイペースではないと言う意味だととらえられる返答だ。

 そう、つまり、僕はマイペースじゃないと言うこと。僕は周りをみられるということに。

 

『おめぇが一番マイペースだろ』

「ホーエンハイムさんか兎尾姉ちゃんじゃない?」

『こうやって話をそらして、本題に入らないあたり、マイペースさが伺えますよ。二人とも』

「それじゃあ、本題に移ろう。兎尾姉ちゃん。これからすることってなに?」

「あなたの修行。簡単な仙術講座をするの。一番はお師匠様に教えてもらうことなんだけど、ここに呼べないし、向かうにしても、飛行機代とかだせないでしょうから、基礎をあたしが教えるの」

「へぇー。そういえば、兎尾姉ちゃんたまに一人称変わってるけどどうして?」

『おめぇ、やっぱ、マイペースだな、おい』

 

 え? だって、気になるじゃん。ちょくちょく、『私』って使ってるんだよ? 

 気になるでしょ? 

 

「あ、それ? うーん。正直、昔の癖が抜けてないだけだと思うよ。小学生まで『私』っていってたから」

「あ、深い理由とかないんだ」

「あはは、ごめんね。変な勘違いさせちゃったね。よし、それじゃあ、話を戻して、仙術について話していこうか」

 

 兎尾姉ちゃんはそういうと、張り切った顔で、どこからか現れたホワイトボードと黒いマーカーをもち、メガネをかけ、僕を椅子に座らせた。

 

 この空間は確かに精神世界みたいなものらしいから、こういう風になるのもわからなくはないけど、僕の意思関係なくできるものなのだろうか? 

 

 そんな疑問にかられながら、僕は兎尾姉ちゃんの講座を聞き流しながら聞いた。

 

 

※※※

 

 

 仙術講座が終わり、目を覚ました僕は、兎尾姉ちゃんに睨まれていた。

 ジグは笑をこらえているのか、肩が細かく上下していることがわかる。

 

「ねぇ、海樹くん。あたしの授業、つまらなかった?」

 

 僕の瞳を覗き込む兎尾姉ちゃんはなんとなく怖く、また、その問いかけは僕の良心がめちゃくちゃ痛んだ。

 この人、僕より早く生まれて、僕より先に亡くなっちゃったせいで、僕より年下の容姿をしている。

 まあ、要するに、年下に上目使いで、さらに瞳に涙を浮かべられ、問いかけられている。

 そして、本音を言うとつまらなかった……というより、関心がわかなかった。

 確かに僕が扱うべき技能の話なのはわかる。だけど、そういった細かいことは大体ジグに丸投げして、僕は体を動かしている方が性にあってしまっているのだ。

 

 まあ、とどのつまり、僕よりジグが理解してくれていれば問題ないということなのである。

 

「ねぇ、そんなに、お姉ちゃん。ダメ? ダメな子だった? ごめんね。海樹くん。今度はもっと興味を持てるようにちゃんと話すから、見捨てないで?」

 

 なにか、こう、禍々しいオーラが兎尾姉ちゃんの周りを蠢いており、兎尾姉ちゃんの表情も物凄く暗く、落ち込んでいるのがわかる。

 僕はジグに目配せすると、ジグからは首肯が返ってきた。

 

「ね、姉ちゃん。さっきは、僕が悪かったから、気にしないで。そういった、技術とかはジグにやらせてたから、よくわからなかっただけなんだよ」

「そっか。私の説明全然わからなかったんだね。ごめんね。今度はちゃんと、ちゃんとやるから」

 

 僕の返答に更に暗くなっていく兎尾姉ちゃんの表情。

 やばい、地雷踏み抜いた? やばい、どうしよう。こういうときの対処法とか知らないよ。僕。

 

「え、えっと、姉ちゃんの説明が悪かったわけじゃないと思うんだ。僕はこう、習うより慣れろってタイプだから、あんまり、勉強が得意じゃないだよ。だから、ほら、姉ちゃんが手取り足取り教えてくれると、僕、嬉しい……なぁ」

 

 そういうと、パァと暗かった表情が晴れ、周りを蠢いて腰の高さまで来ていた禍々しいオーラもなくなった。

 

「そっか。そういうことだったのね。それなら、今から教えてあげるね。ちょっと、そこに胡座をかいて」

「う、うん。わかった」

 

 僕は地面に腰を下ろし、胡座をかく。

 

「よし、それじゃあ、目をつぶって空気の流れを掴む意識を向けようか」

 

 そういわれ、僕は目をつむり、空気の流れとか言う不確かなものを掴むよう意識を傾ける。

 

『おい、おめぇら、盛り上がってッとこわりぃが、こかぁ、神器ん中だってことぉ忘れてねぇか?』

 

 あ、それ、今の兎尾姉ちゃんには……

 

「そっか。そうだったね。ごめんね。役立たずのお姉ちゃんで」

 

 ズンッと落ち込む兎尾姉ちゃん。

 これは、ジグが悪いよ、ジグが。

 僕はジグを睨み付ける。

 

『お、俺かよ』

『やる気が出たタイミングで出端をくじいたのは、あなたですからね』

「ってことで、ジグたちはちょっと黙っててね?」

 

 僕はなんとなく次はホーエンハイムさんがやらかしそうなので、牽制球を放っておく。

 

「ほら、姉ちゃん。ジグのことは気にしなくてもいいから。ジグだってこっちから、仙術使ってくれてたんだから、ここからでもちゃんとできるから、ね?」

「うん。ごめんね。海樹くん」

「いいよいいよ。僕、兎尾姉ちゃんがこうやって教えてくれるだけでも嬉しいんだから、ね?」

「うん。うじうじしない。土蜘蛛の言うことも気にしない。海樹くんの言うことだけ聞くから」

「あ……うん。わかった」

 

 ジグが『こいつの怨念晴らすの早すぎたか?』と、若干後悔している節が見受けられる。

 わからなくもないけど、声に出すとまた落ち込んで、あのオーラに包まれそうなので、声に出さない。

 

「それじゃあ、僕は神器の外に出るから、兎尾姉ちゃんはこっちから、指示だして」

「うん。任せて。海樹くんがうまく仙術を扱えるようになるまで、ずっと一緒にいるから」

「わかった。それじゃあ、任せたよ兎尾姉ちゃん」

 

 僕は意識を神器の外に出し、自分の精神世界から現実の穴蔵に戻る。

 

「っつぅ……」

『大丈夫ですか? まだ、完全になおりきっていたわけではないみたいですね……』

『やっぱ、学校は休みだな』

『そうね。海樹くん。今日はゆっくり休みましょう。変に修行して傷が開いたらお姉ちゃん悲しくて怨念になっちゃいそう』

 

 洒落にならんこと言わんでください。あなた、軽く失敗しただけでも怨念になりかけてたのに……。

 

「大丈夫、大丈夫。もう平気。ちゃんと深呼吸して整えたから」

『普通は病院案件なんだけどな』

「そんなことより、仙術の修行でしょ? そっちの方が重要だよ」

『そうなのね。じゃぁ、まずさっきみたいに胡座をかいてもらいたいけど、その傷だと危ないからね。そのまま、楽な姿勢でいいから、深呼吸を繰り返して。うっかり寝ちゃわないように注意して』

 

 僕は指示通り、胡座をかいて深呼吸を繰り返す。

 あ、確かに眠い。このまま寝れそうなくらいには眠くなってきた。

 僕は眠くなる頭をこらえながら、兎尾姉ちゃんの声を聞く。

 結構、いい声だから更に眠くなるけど、我慢我慢。

 

『次は、周りの気を纏うイメージ。ここは土に囲まれてるから、その土から力をもらい受ける感じね』

 

 そのイメージはよくわからないけど、気を纏えばいいんだよね。纏う……纏うか……。

 

 よくわからないから、服を着るような感じでいいかな? 僕にはこっちの方が分かりやすいし。

 そうすると、なにかが薄い膜をつくり僕の全身を包み込むような感覚がしてきた。

 

(『頭と手、下半身以外に気が集中してる……このまま続けるのは危ないかも……』)

『はい! そこまで。海樹くん。お疲れ様。それが仙術の基本、気を纏うというものね。仙人クラスはそれを当然のように日常的に纏っているから、隠れていてもすぐに見つかるし、探してもすぐ見つからないの』

『気を纏って、自身の生命力を刺激し続けっから、アホみてぇに長寿だったりすんだぜ?』

「それじゃあ、これに妖力を混ぜれば……」

『ダメ。それはまだ早いの。あなたの実力だと少なくとも寿命を縮めるし、それをやってしまうとあなたは死ぬ。それを許容することはあたしには無理。ほぼ百パーセント、あなたの体を使って世界を滅ぼすように動いちゃう』

「わかった。やらない。とりあえず、仙術を扱いきれるようになるまでは、妖力を混ぜることはしないよ」

『お姉ちゃんとの約束よ? それと、気を纏うのも終了』

 

 パンッと手を叩く音が神器から聞こえ、纏っていた気が散った。

 すると、ドッと疲れが僕を襲い、ベッドに倒れた。

 

『それじゃあ、お休みなさい。明日はもう少し先のことをやるから、しっかり休むのよ』

『保護者様は、よくやるねぇ……』

 

 僕は神器から聞こえてくるそんなやり取りを聞き流しながら、グースカ眠ってしまった。

 そういえば、ご飯……食べてないなぁ。




兎尾お姉ちゃんによる仙術講座……は、海樹が眠ったことにより全カットされました。
あと、兎尾が何回か闇落ちっぽいことになりましたが、魂がむき出しになってしまっているため、感情のコントロールができないからですね。

いまだに一巻の内容が終わってないのに、主人公強くしても問題ないかな?と思われるかもしれませんが、正直、残り数年しかない命を長く保たせるためには、こうした技能を持ったキャラクターに教えてもらうというのが手っ取り早いと判断したからですね。そのために、封印系の神器にしましたし。

まあ、まだ、初代沙悟浄が出てくることはないですし、ミッテルト生存ルートをどうしてやるかが、今のところネックなんですよね。たぶん、20話近くやってようやく一巻の内容が完結すると思います。

え?そうなったら、他の原作の内容はどうなるのか?だって?めちゃくちゃ長くなるに決まってるじゃないですかぁ、やだぁ。はぁ……。
まあ、たぶん、四巻の戦闘、五巻、そしてどこかで暴走させるときが確実に長くなると思います。

それでは、また、次回、お会いしましょう。
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