そして、まだ一巻の内容です。
その日の夜、僕は目を覚まし、散歩がてら外を出歩いていた。
「ふぅー、やっぱり、穴蔵じゃ休まるものも休まらないよね」
『かっははは、おめぇよくそんなこと言えんな』
「一応言うけど、穴蔵生活は今年がはじめてだからね? 去年までは一応アパートで暮らしてたわけだし」
『それでよく、食べられる野草とか知ってましたね』
「母さんたちが、教えてくれてたから」
『あ、そっか。姉さんはレジャー系が好きだったから、自然に関連する知識は深かったっけ』
「一応、僕の家の形を一定でとどめて、酸素の供給を絶たないのも、母さんがある程度穴蔵での生活になれてたって言うのもあるらしいから」
『ちょっと、それは、初耳。なんで、姉さんそんなことしてたの? 現代社会で普通は起きないようなことでしょ、それ』
「それは、僕にもわからないけど、たぶん、秘密基地とかそう言うのを本格的に研究したからじゃないかな?」
『……そういえば、小学生の頃からそういうことしてた……。姉さんあのまま成長しちゃってたんだ……』
「そもそも、母さんでき婚……」
『あ……うん。そうだったね……考えるだけ無駄な、行動力の塊だったものね……』
僕も兎尾姉ちゃんも母さんのことを思いだし、黙ってしまった。
うん。母さんの性格上、結構アウトドアが好きみたいだし、秘密基地とかの話を枕元で嫌ってほど聞かされたし……。
僕らがそんな話をしながら町の散策をしていると、ホクホク顔の兵藤先輩が歩いていた。
兵藤先輩は、僕の存在に気づき、手を振り近づいてくる。
「おーい、海樹。こんな時間になにしてんだ?」
「あ、兵藤先輩。先輩こそ、何してるんですか?」
「松田の家でDVD観賞してからの帰りだよ。そういうお前こそ、学校休んでたのに、外であるいて大丈夫なのか?」
「お昼にいやってほど、寝ちゃったんで、眠くないんですよ。眠れないし散歩でもしようかなって」
「風邪とかで、ぶり返したら大変だろ。送ってやるから、ちゃんと休めよ」
「大丈夫ですよ」
僕は、兵藤先輩と今日の学校での覗きはどうだったとか、見たDVDで彼女すらいないことに深い悲しみをおったとか、そんな他愛のない話をしながら、公園に向かっている道中。スーツ姿の男が目の前から歩いてくる。
纏う雰囲気は、不気味そのもので、そして、このオーラを僕は知っている。
「兵藤先輩。今すぐ逃げた方がいいです」
「海樹? お前、急になにいって……」
「主の来る気配のない悪魔と指定討伐対象……。どうやら、私は運がいい。以前、仕留めきれなかった者を今一度、仕留めれるチャンスを与えてもらえたのだからな」
「狙いは僕か……」
「不穏分子がないかの見回りで偶然、貴様に当たっただけだ」
「なら、引き返しててもらって」
「そういうわけにもいかない。貴様は討伐対象。契約も満了している。ならば、私が貴様を逃がす理由がないっ」
予想通りというか、なんというか……男は光の槍を作り、僕に突きを放つ。正直、兵藤先輩の前で使いたくなかったんだけどなぁ……。
僕はそう思いながらも、神器を出し鉄糸を腕に絡ませ、堕天使の男の槍を受け止める。
「兵藤先輩。こいつの相手は僕がするので、早く逃げてください」
「で、でも……」
「でもも、なにも、あなたに戦える能力はないんですから、早く逃げて!! 足手まといなんです」
「……っ!? 絶対助け呼んでくるからな! それまで死ぬなよ!!」
そう言うと、兵藤先輩は駆け出した。
あてとかあるのだろうか? なんて、気にしていられない。
今はこの男。たしか、ドーナシークっていったっけ? を相手しないといけないからね。
「素直に逃がしてくれるんだな」
「この時間、誰が助けにはいれるでもなし、貴様を殺してから、追えば問題ない」
「言うな……」
僕はドーナシークの攻撃をさばきながら答える。
「そら、どうした? その程度か?」
ドーナシークにはずいぶん余裕があるようで、そういいながら、槍を振り下ろしてくる。
僕はそれを反らし、回し蹴りを頭めがけて放つ。
だが、僕の回りし蹴りそのものに威力がなかったのか、はたまた、なれてない行動のため、簡単にいなせれたのかはわからないけど、有効打足り得なかった。
体制を整えようとする僕に、ドーナシークは再度槍を放ってくる。
「ジグ!」
『あいよ!!』
僕はジグに手に巻き付けていた糸の操作を任せる。
すると、糸はドーナシークの腕ごと、槍を包み込み、誰の家かは知らない壁に放り投げた。
壁に激突し、大きな土煙が立ち込める。
「よしっ」
『警戒怠んな。相手が死んだと確認できてねぇんだ』
「うん。わかっ……」
僕がジグに返事をしようとすると、土煙の中から光の槍が飛んできた。
僕はそれを上へと弾き、糸を操り手に納め、土煙に向かって投げ返す。
命中したような手応えはない。
「封印された魔物と手を組み、互いでカバーをしあう。なかなかに面倒だ」
ドーナシークは土煙を払いながら姿を表す。
「だが、それは、一対一のときの話だ」
『海樹くん! 堕天使と悪魔払いがすごい速度で近い付いてきてる!!』
「なんで!? 教会とここはそこそこ距離があるはずなのに!!」
「我ら堕天使は空を飛ぶ。ようは、人間を持ち、ここまで飛んでくれば全く問題がないということ」
「人間の体はちょっとした負荷で限界を迎えるはずだけど?」
「悪魔払いになるときの訓練は相当厳しかったみたいでな。多少の無茶な行動にも耐えられる」
「それ、人間として適応してもいいもの?」
『そういうんなら、宿主もおかしいんじゃねぇか?』
そうでした。僕もジェット機レベルであればGに耐えられる肉体してました。
『それより、もうすぐ到着するけど大丈夫なの!?』
「あっ……。兎尾姉ちゃん。僕のできるレベルの仙術ってどんな感じ?」
『気配関知と気を軽く乱させるくらい。自身の気を薄くしたりはまだ無理なの。一応、軽い応用で糸に気を纏わせることは可能ね。ただし、三十秒。それ以上は暴走するリスクがあるからね』
「ありがと」
ふぅ、と、僕は息を吐き出し、糸を周囲に張り巡らす。
戦場は住宅街のため、そこら中壁があるので糸を利用して、僕に有利に動ける環境が作れる。
「なにが目的か知らんが、やらせると思うか?」
当然、自身が振りになってたまるかと、ドーナシークは槍を投げてくる。
僕の神器にある糸の排出口は、十九。張り巡らすために使っている排出口は八。
二つの穴から、槍を糸に絡ませ、残りの九の穴から鉄の槍を編み、片手にドーナシークの槍、もう片手に僕の作った槍を装備する。
「安直だな。槍を二振り持ったところで、技量がついてこなければ意味がない」
「わかってるよ。でも、あなたの武器を奪うことに意味が……」
「無意味だ」
ドーナシークはそういって、僕の持っていた光の槍を消す。離れていても操れるのね……。
だけど、糸を乱雑に張り巡らせることはできた。
僕は、後ろにある網目上の中心の糸を踏み、ドーナシーク目掛けて跳んだ。
体を地面と並行にすることにはあまりなれてないけど、糸疣が僕の口にできていたように、妖怪の力そのものが少しあるため、姿勢制御は僕自身の妖力でする。
すれ違いざまに槍で切りつけようとしたが、軽くいなされ、僕は地面に落ち、数回バウンドしたあと、立ち上がった。
そして、立ち上がり、ドーナシークを視界に納めると、昨日あった神父と、会ったことはないけど、オーラの感じから、堕天使であることのわかる女性がいた。
「ついちゃったか……」
「やっほー昨日ぶり。昨日は萎えたけど、今日は全くいいころころ日和だねぇ」
「ドーナシーク。こいつは……」
「問題ないだろう。計画に不穏分子が紛れ込むのは避けるべきだろう? 契約自体も満了している。それに加え、指定討伐対象だ。ミッテルトが何かしているようだが、我らの計画に支障が出るようならこいつを今のうちに始末しておく方がいいのとは思わないか?」
「なるほど。確かに一理ある」
全くないです。僕の都合が全く考慮されてないです。
まあ、そんなことはよくあることだし、当たり前だ。気にするだけ無駄というもの。
僕はまた、大きく息を吐き出し、呼吸を整え、敵三人を視界に納めながら、仙術を使えるよう、気を練り始める。
三十秒。僕に課された仙術を暴走せずに扱える時間制限。
あからさま僕の雰囲気が変わったことに気づいた三人は、神父が銃で、他の二人が槍を放ち、攻撃してきた。
僕は、それらを弾丸は体をそらし、槍は掴んで神父に向かって投げかえす。
神父は槍二つともを切り落とし、さらに一発放ってきた。
それに合わせるように、二人は接近してきて、槍を振るう。
僕はそれらを拳で受け流し、気を纏わせた糸を女の方に放つ。
それをまともに食らってしまった女の堕天使は、全身に一瞬だけ痺れが起きたのか、動きが止まった。
さすがに、弾丸を避けながらというのは辛いため、ドーナシークをうまい具合に使って弾除けにしているが、どのタイミングで女の堕天使が動けれるようになるかがわからない。
(『ヘルメットを出してください。私の方で防御はしますから、攻撃だけに集中してください』)
突然、頭にホーエンハイムさんの声が流れてきてビックリしたが、僕は指示通り、ヘルメットを出現させる。
すると、魔法陣が展開され、神父の放つ弾丸はその魔法陣を介して無力化される。
(『海樹くん、もうそろそろ三十秒たつわ。次の一発で最後にするように』)
(『そんな余裕ねぇだろ。冷静に考えやがれ』)
(「いや。大丈夫。それも視野にいれてたから」)
僕は仙術状態を解除しながら、回転しながら、糸を伸ばす。
遠心力の加わったワイヤーが壁に食い込み、襲いかかる。
(『もったいねぇな、おい』)
(『場所によりますけど、今回は逃げ場を塞ぐと言う意味では有効ですよ。糸の排出口自体はヘルメットにもありますから』)
ドーナシークや女の堕天使は飛んで避け、神父は波状で襲いかかるワイヤーを次々と切って、勢いを削ぐことで、攻撃を食らわないようにしていた。
地面一体に大量の糸が撒き散らかされ、逃げ場を封じていた網状の糸やそこら辺に張り巡らせていた糸もすべてが、地面に落ちている。
「ジグ。属性混合糸、土、火、水」
『数多いなこんにゃろ』
僕は簡潔にジグに用件を伝え指をしたにするように手の甲をかざす。
すると数秒後に、糸の排出口から、黒い油が噴出した。
(「ホーエンハイムさんは火除けの魔法を、ジグは火の糸をお願い」)
(『わかりました。完成次第発動します』)
すると、神父が僕の方に突っ込んできて、光の剣を横になぐ。ドーナシークと女の堕天使も同様に近づいて攻撃を仕掛けてくる。
僕は剣を避け、二人の堕天使を糸で絡めとり、口から粘性のある糸を網目状にして吐き出した。妖力も乗せているため、勢いも乗っていたが、神父により簡単に切り裂かれてしまった。
三人係と言うことも相まって、神父が切り裂いたあとにさらに二人が攻撃を仕掛けてきて、それを必死に避けていると、油まみれになった糸で足を滑らせ、転んでしまう。
「自分で仕掛けた罠に自分で引っ掛かってしまっては、本末転倒もいいところだな」
ドーナシークが僕に槍を突きつけていうと、槍を心臓目掛けてつきだしてくる。
その瞬間、ホーエンハイムさんの魔法陣が目の前に展開された。
僕は火の糸を足元に手のついた所に一番近いとこにある糸に伸ばし、引火した。
よし、色々な問題がありそうなのとネタバレになりそうなので、あとがきはぽい捨てしていこう。うん。
それではまた次回。お会いしましょう。