糸使いの高校生活   作:やまたむ

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第15話

 油の染み込んだ糸に火がつき、火の海と化した。

 各家庭の火災報知器も鳴っていないのはまだ煙が屋内に侵入していないからだろう。

 

「面倒なッ」

「派手にやるねぇ。サツに捕まっても知らないよ?」

「そういう意味じゃヤバイかもね。けど、身を守るためだし、問題ない」

『問題しかないよ!!』

『結界を組んで、この場に火の手をとどめます。ジグと海樹さんは敵の足止めを』

『こんのバカ宿主!!』

 

 神器組からめちゃくちゃ責められました……。うん、だよね。

 

 僕はホーエンハイムさんの結界が組み終わるまでの間、三人組の相手を再度しないといけない。

 ホーエンハイムさんが、術式とかを組んでいる間は、銃弾を受け止める術式を使えないので、また、弾丸を避けないといけないけど、あれ、仙術を使ってたから、なんとかなったんだよね。

 今の僕じゃ、避けられるとは思えない。

 

 僕は、鉄糸で組んだ槍を投げる。

 それは呆気なくかわされたけど、妖力を使い、穂先からほどいて、針のようにすると、三人に向けて勢いよく飛び散らせる。

 さすがに、これは予想できなかったのか、三人とも避けきれず、何本か命中した。

 タランと垂れる糸が血を吸い、だんだん赤黒く染まっている。

 

 そんな状況にも関わらず、神父は僕に向けて数発の弾丸を放ってきて、僕は顔を庇うように腕で覆う。その隙を逃さないと、ドーナシークと女の堕天使が槍を使い、昨日、神父にやられた脇腹と肩、それに加え、顔を庇う両腕を貫かれる。

 そこからドバドバと血が流れ、足元が僕の血で染まる。

 また、火中のため煙を吸い込んだり、酸素が薄くなったりしているせいか、呼吸がしづらい。

 

 膝をつく僕に三人は近づいてきて、『今度こそ確実に仕留める』という雰囲気を醸し出しており、ドーナシークの槍は僕の首を貫かんと、真っ直ぐつき出される。

 

 今度こそ、僕は死ぬんだなと思った矢先、赤黒い塊が、槍を襲う。

 すると、ドーナシークは驚いた表情をして、数歩分を一気に下がると、言った。

 

「フリード、カラワーナ、一旦引くぞ」

「対策を立てるよう、レイナーレ様に報告だな」

「上司がそういうなら仕方ないっすね。んじゃ、バイビー。子羊くん」

 

 そう言うと、カラワーナは神父を俵抱きにし、三人は空へ飛び上がり、去っていく。

 火が立ち込める道路に倒れる僕は、肩で呼吸をしながら、腹に手をあて、その手をみる。

 手は赤く染まり、腹から流れ出る血液は休むことなく溢れ出る。

 

 やっぱり、もう限界かな? 

 

 朦朧とする視界の中、僕はそう思った。

 

「は、ハハ」

 

 自然と笑いが漏れる。

 約十五年、今年で十六年目か……周りに不幸をばらまくだけばらまいて、こんな感じで死んでいくのかと思うと、なぜか笑いが出てしまう。

 ジグや、知らない人の声も聞こえてくるが、どうでもよくなっていく。

 

 そして、ちらっと、見えた兵藤先輩に向けて、

 

「約束、守ってくれたんですね……」

 

 僕はそういって意識を手放した。

 

 

※※※

 

 

 目を開けると、最初に目に入ったのは、真っ白な天井だった。

 

「どこだ? ここ」

 

 僕はそんなことを呟きながら周囲を見渡すと、真っ白な髪の小学校高学年くらいの身長の女の子と、金髪のまるで後輩から『きゅんぱい』と呼ばれてそうな男の人を通過し、僕の制服が目に入る。

 

「ん? あれ? え?」

「起きたみたいだね。体に異常とかあるかい?」

「あ、いえ」

 

 いや、体よりこの状況が異常事態です。助けてジグえもーん。

 

 

 

 

 ………………

 

 

 

 

 え? あれ? じ、ジグ? 起きてる? 起きてるよね? 起きてるっていってよぉぉぉぉ!! 

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 おかしい。普段なら、これくらいふざければ『うっせぇ、バカ宿主!!』って出てくるのに……。

 

「あ、あの、ちょっと、失礼しますね」

「うん。ゆっくりしていって」

 

 僕は木場先輩にそういい、部屋からでる。

 廊下にたち、周囲を見渡す。右に真っ直ぐ行けば玄関が、左手側にリビングと思われるところに通じる大きな扉が見える。

 とりあえず、僕の家に帰って……。

 

「トイレなら玄関を右に曲がったらある」

「あ、うん。ありがと……」

 

 って

 

「なんで、塔城さんもいるの?」

「引っ越しの手伝い」

「引っ越し? 誰の?」

「カーキ」

「僕の?」

 

 コクりと塔城さんは頷く。

 

 つまり、つまり……だ。

 

「僕お金ないんだけど!?」

 

 金欠ルート不可避ということである。

 

「カーキは最初から金欠じゃなかった?」

 

 塔城さんの鋭いツッコミが僕を刺す。

 いや、そうだけど、それ以上に

 

「ここ、それなりに高そうなの、気のせい?」

 

 三流鑑定士の僕から言わせてもらうと、ざっと月五、六万はするはずだ。

 苦学生たる僕には高すぎる額だと予想する。

 

「部長からはほんの二、三十万だって聞いた」

「えッ……むり。僕、穴蔵に帰ります。荷物も……」

「カーキの分は出世払い」

「よし、何年契約だい? 契約書持ってきて」

「ないけど」

「え"っ"……やっぱり、この話はなかったことに」

「冗談。これがそれ」

 

 そういうと、塔城さんの手元に魔法陣が出現し、数枚の紙束が現れた。

 なるほどなるほど。何枚か読めないものがあったけど、おそらく翻訳版がこの用紙なんだろう。つたない日本語が書かれた書類がある。

 内容は至って普通の契約書で、どうやら、『リアス・グレモリーの眷属悪魔として働いた分の稼ぎ』の何割かを、ここの家賃に当てるよっていうものだった。

 

「で、この眷属悪魔っていうのは?」

「上級悪魔の直属の部下って認識でいい」

「なるほどなるほど。でも、僕人間だよ?」

「昨日、悪魔になったから、カーキも悪魔」

「その契約を交わした記憶がない!! つまり、僕はまだ人間である!!」

 

 僕がそういうと、塔城さんは少し考えたあと、こういった。

 

「カーキ、服脱いで」

「エッチ!」

 

 ズドンと腹を本気で殴られた。痛いです、塔城さん。

 僕は、指示通り服を脱ぐ。切り傷や火傷、手術後のような傷跡が刻まれた肌を露出することになり、塔城さんは罰が悪そうな表情になる。

 

「気にしないでいいよ。ずっと前にできた傷だし」

「うん。それじゃあ、肩甲骨辺りから羽が生えるようなイメージをして」

 

 なにそれ。まあ、いいや。試してみよう。

 僕は指示通り背中から翼を生やすイメージをする。すると、バサッと一対の黒い羽が生えた。

 

「はい、悪魔の証明」

「それは科学で使われるやつでは?」

「悪魔になった証し」

「言い換えた」

 

 ニギニギと拳を見せつけてくる塔城さん。はい。黙ります。

 なるほど。つまりは僕もついに異形の仲間入りということか……。うーん、どうなんだろう。ミッテルトもいないから、堕天使側での僕の現状がわからないし、これはセーフなのか、アウトなのか……。

 

「話は戻すけど、カーキが悪魔になったから、これからは堕天使と会うのは部長から許可とらないとダメ」

 

 そんな僕の心情を知ってか知らずか、塔城さんは話を続ける。

 なるほどなるほど。あれ? これ、本格的に大丈夫なの? 僕出歩いた瞬間、堕天使と遭遇して状況次第で、その堕天使殺しに来ない? 

 

「さすがに堕天使も、正式な悪魔の眷属に手を出すってことはしないと思う。それこそ、『はぐれ悪魔』以外は」

「なるほどなるほど。つまり、僕の身の安全は保証されたってこと?」

「一応は」

「一応?」

 

 僕の疑問に、塔城さんは頷いて続ける。

 

「小競り合いが絶えない訳じゃないから、それで死者が出るときもあるらしい」

「うーん、まあ、それくらいなら……気にするレベルじゃないのか……?」

 

 ダメだ。ジグからの反応がないから、確信が持てない……。まあ、塔城さんがいってるし問題ないでしょ。

 

「それじゃあ、放課後朱乃さんと一緒に来るから、今日の学校は休んで、体力回復に努めて」

「昨日もやすんだから今日は行きたいんだけど」

「ダメ。あと、外に出るのも禁止。歩いてトラブルに巻き込まれてるから、私が来るまでここで生活。ゲームとかテレビはあるから、暇潰しにはなるでしょ?」

「うーん、まあなんとか、今日一日部屋から出ないようにするよ」

「一応言うけど、明日も休んでもらうからね?」

「なんで!?」

「カーキの体、ボロボロだったから、悪魔に転生させたものの、そのまま崩壊するかもってことで、結構封印とか施してからしてるから」

「……マジで?」

「マジ」

 

 もしかして、ジグたちの声が聞こえないのも、その影響? いや、でも、寿命削って肉体の強化していたから、悪魔って種族がどれだけの寿命なのかは知らないけど、それでも残り二年くらいも生きられることには代わりないのかも知れないけど。

 

「それと、修行するなら神器の中に入ってきてからだって。入ればわかるっていってたけど」

「わかった。あとでいくよ。それじゃあ、塔城さんいってらっしゃい」

「うん。いってきます」

「それじゃあ、僕もいってくるよ」

「木場先輩もいってらっしゃいです」

 

 しれっと、制服姿の木場先輩が僕の隣を横切り、靴を履く。いや、あなた、タイミング見てましたね? 

 

「あ、それと、丹芽くん、翼を納めて服着た方がいいよ」

「それを先にいってください!!」

 

 僕は慌てて服を着る。羽が邪魔だったけど、肩甲骨に収まるようなイメージをしたらすぐに消えた。

 どういう仕組みなんだろ、これ? 

 

「それじゃあ、あらためて、二人ともいってらっしゃい」

 

 僕がそういうと、二人は「いってきます」といって学校へ向かっていった。

 さて、僕も服屋にいくとするか。




お待たせしました。
いやぁ、期間が長引くとヤバイっすね。ヒロイン二人制限がわりとつらい。
なんか、ライバルキャラとか、考えていかにヒロインではないけど、ヒロインっぽいロールをするキャラが出来上がっていました。

まあ、この作品、一巻の内容が二十話を越す予定なので、めちゃくちゃ先としか言えないんですけどね。

それで、海樹くんをね、色々考えてたら、ソーナ側にも何らかのオリキャラを追加しないとと感じ、ゼノヴィアとかアーシアの扱いをどうしようかとか、色んな問題があるんですよね。
ちなみに、一番問題なのは、ドーナシーク、カラワーナ、ミッテルトの三人ですね。この作品だと、ミッテルトが、一巻で退場(本部へゴー)しているので、生存確定、ドーナシークどうしよ……って感じです。

とりあえず、五巻にはソーナ眷属作って間に合わせます。(海樹くん特効の女性キャラ作ろ)
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