私服に着替える前に、風呂に入りながらボーッとする。
「あー、なんだろ。久しぶりに風呂に入った気がする……」
どうやら、いつ僕が起きてもいいようにと、あらかじめお風呂を沸かしており、ちょくちょく温度の調整をしていたのか温かい湯船に浸かりながら、僕はそんなことを呟いた。
よくよく考えたら、公園穴蔵ホームレス生活が始まってから、五右衛門風呂以外入ってなかったような気がする……。
「そういえば」
僕は神器を右手に出して、ボーッと神器を眺める。
よくよく見てもよくわからないけど、とりあえず宝玉を叩いてみた。硬いコンッという反応が帰ってきただけで、特に面白いものなんておきない。
ジグと話せるようになって数年。僕にとってもしかしたらジグといなかった日なんてないのかもしれないなぁ。
浴槽に腕をブラつかせ、天井を眺めたあと、立ち上がり浴槽から出てから、脱衣所へと移る。体を拭き、服を着て、そこから、頭をおおうようにタオルを巻き、リビングへと向かう。
「みんな今ごろ学校なんだっけ?」
この慣れない時間に耐えられず、テレビをつけて呟いた。
未だに八時に家にいる違和感がぬぐえず、結果、僕はテレビを消し、家から出ようとした。
その時、なにか魔法陣が作動したかと思うと、僕はベッドの上にいた。
(いつの間に……)
どうやら、塔城さんと木場先輩が、学校に行く前に何かしていたようで、僕を家に縛り付けるようにトラップを設置していたようだ。
「仕方ない……」
僕は、服屋にいけない悲しみにくれながら、神器の中へと潜っていった。
※※※
僕が神器の中に入って、最初に感じた違和感。それは、僕もまともにやったことないけど、存在だけは知っているボードゲームのチェスの駒。それも、僕の身長なんて比じゃないくらいに大きく、三十メートル位はあるんじゃないだろうか?
「なにこれ……」
『戦車の悪魔の駒っつーもんだ。宿主』
「ジグ!!」
『うっせぇ』
「海樹くーん。あたしもいるよー」
『まさか、三人仲良く封印されるとは思いませんでした。そちらは大丈夫でしたか?』
なんか、数時間くらいあってないだけなのに、懐かしさを覚える三人の声。
僕は三人のもとにかけより、その駒の内部をよくよく観察する。
「なんで、三人とも駒のなかにいるの?」
「そうなの! 聞いて!! 海樹くんが死にかけたあと、この土蜘蛛、海樹くんを転生させる代わりに、外界への干渉を封印させろって、あの『リアス・グレモリー』に要求したの!!」
『はっ! 成長させるなら、俺がサポートしなくても戦えるようになれば問題ねぇだろ。魔力も使える今なら、糸だって俺が使わねぇでも、ちゃんと扱えるだろうしよ』
『とまあ、ジグもジグなりに考えていたんですよ。あ、それと、私からの宿題ですが、属性糸の扱いを強化しておいてください』
「あたしからも、ちゃんと気を練って、纏えるようになること。それと、応用で糸に纏わせる練習も平行して行ってね」
『俺からぁなんもねぇよ。好きにしな』
『とまあ、こんなことをいっていますが、一番あなたを心配していたのがジグなので、安心して言葉がでなくなっているだけですよ』
『んなわけねぇだろぅが!!』
「そうよ! 一番心配してたのはあたしなんだから!!」
「二人とも、ありがと。うん。なんか、三人の顔見たら安心しちゃった」
わいわいと駒のなかで騒ぐ三人がおかしく僕は笑ってしまう。
駒を背もたれにし、全体重を預けながら、神器の空をあおぐ。
「よし、それじゃあ、三人の顔も見たし、外で修行するよ。気を練って、属性糸のコントロール。ちゃんとできてるか、そっちでも見ててよ」
『残念だが、俺たちは外の様子は見れねぇよ』
「え……?」
『実は、外の様子を見てしまっては、私たちなら自力でこの封印をこじ開けかねないので……』
「それだと、元も子もないよねってことで、外の様子を見れないようにしてもらったの。だから、強くなったかは、海樹くんのオーラから判断しないといけないんだ」
『とまあ、こういうこった。おめぇの変なことに付き合う必要がなくなった分、久しぶりの休暇満喫させてもらうぜ』
「わかった。すぐに封印を解けるようになるから、待ってて」
『かっははは、その封印はリアス・グレモリーが頃合いを見計らってちゃんと解除すっから、気にすんなよ。それと、リアス・グレモリーに伝えといてくれ。『封印がざる過ぎ』ってな』
「それ、煽ってない?」
『かっはは』
「否定しなよ……あ、そう言えば!! なんで、さっきからリアス先輩の名前が出てきてるの?」
僕の質問に三人はコメディ長のこけかたをした。
さらっと、流してたけど、気になっていたんだから、仕方がない。
『おめぇを転生させた張本人だからだよ。もう少し頭ぁ使えっての』
「あはは、申し訳ない」
『そんじゃ、ちゃっちゃと、出ていきな。放課後に姫島のやつが来るが、気にすんじゃねぇぞ』
「待ってそっちの方が大切!!」
『あん? こっちゃあ、寝みぃんだ。さっさと出てけ』
「ひどい……久しぶりの再会だって言うのに……!」
『あぁん? まだ、封印されて一日もたってねぇぞ。日本語不自由なんじゃねぇか?』
「それくらい寂しかったの!!」
「お姉ちゃんも寂しかったよぉぉ!!」
『こいつらテンションが狂ってやがる……』
ジグのあきれた声が神器ないで響く。うん。いや、だって、頼っても出てこなかった時の寂しさを実感したことないから、そんなことが言えるんだよ。
『てか、おめぇさっき帰ろうとしてたろうが』
「うん。じゃあ、また今夜来るよ」
『かまってちゃんかよ……』
僕はそう言うと、現実世界へと帰還する。
うーん、よし、それじゃあ、朝食としますかね。
僕は靴を持ち、窓から外に出ようとした。
「あれ? 冷蔵庫あるんだから、そこに食料あるんじゃ?」
そうだった。穴蔵生活をはじめてから、食料を密猟してたから忘れてたけど、普通に冷蔵庫あるじゃん。そこに食料があってもおかしくないじゃん。
うっかりうっかりじゃん。
僕は玄関に靴をおき、手を洗い冷蔵庫をあける。
「食い物ないじゃんよ……」
僕は絶望した。なぜ、そこに食料があると幻想したのかと……。せめて日持ちする食い物はあると錯覚していたのか、と。
「買い物とかもお金がないから無理だしなぁ……」
僕はなんの気もなしにリビングに置かれたテーブルを見た。
なぜ先程気づかなかったのだろうか、日本語で書かれた書き置きらしき紙があった。
厚さ一ミリにも満たない紙には、『机のなかに1,000,000のほど入れておいたから、ご飯はそれで買いなさい』
と書いてあった。
規模が違うなぁ……これじゃあ、一生食って暮らせるよ……。
僕は部屋に戻りそっと机の中から一万円ほど取りだし、買い出しに出かける。近くのスーパーで十分かな?
メニューとかは適当に決めればいいし、ガッツリ食べられるものを、買うのもありかも?
「うーん、夢がひろがルぅ」
「なにいってだって話っすけどね」
「うわっ! なに? え?」
僕は、声の主を探す。
キョロキョロと探し、上を向くと、街灯の上に腰を下ろし、ぶらぶらと足を揺らし、チラチラと黒い下着を見せつけてくる、金髪つり目のわりかしかわいらしい見た目をした少女がいた。
「ミッテルト、そんなところで何してるの?」
「相変わらず、思春期かってほどに無反応っすね。折角の美少女のパンチらが嬉しくないんすか?」
「ミッテルトだしそんなの、今さらないよ」
「うわ、なんすか? その反応。もううちは俺のものなんだから変な気は起こさないってやつっすか? キモいっす」
「違うんだけど!?」
「冗談っすよ。それで、こんなとこで海樹はなにしてんすか?」
街灯から飛び降りながら、そんなことを尋ねてくる。
「買い出しだよ。冷蔵庫に食料がなかったから」
「か、海樹が……買い出し? 狩りだしの間違いじゃないっすか?」
「立派な買い物だよ。ミッテルトもよかったら一緒に来る?」
ミッテルトは「うーん」と唸りはじめ、なにか考え始める。
(海樹……明らかに悪魔になったっすよね。これ、付き合っても問題発生する可能性……? ゼロじゃないっすよね。なら)
「返事ないし、一緒に行こー!」
「はぁ!? ちょっ、待てっす!」
なんか、ミッテルトがうじうじ悩んでいたので、僕は手を引き、スーパーへと歩く。うん。僕も家に一人でいるのは耐えられないからね。一緒に遊んだ方が僕の気も紛れるというものよぉ!
ん? 塔城さんから禁止されてたって? 塔城さんは『部長』という僕の知らない人からの伝言だし、問題ないでしょ。ふーははは、上司が直々に部下に出ん礼しないのが悪いのだー!
「あーもう、どうにでもなれっすぅぅぅぅ!!」
ミッテルトの断末魔が響く住宅街を二人仲良く突っ切ってスーパーへ向かった。
※※※
「で、どういうことか説明してもらおうかしら?」
そして、僕とミッテルトは僕の新居にて、紅髪のお姉さまに正座をさせられました。
どうやら、自分、ミッテルトが出る回に限り書くペースが上昇することがわかりました。
15話なんて、結構開けて千文字しかかけなかったのに……。