糸使いの高校生活   作:やまたむ

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第21話

 僕の放った縄は、あっさり電気と赤と黒の塊で消されてしまう。

 

「どういうつもり? あなたは、この三人を庇い、私たちと敵対する。そういう考えでいいのかしら?」

「どうとらえてもらっても構いません。僕は友達のために戦うだけですから」

 

 僕はリアス先輩とミッテルトたちの間にたち、糸の仕込みを始める。

 幸いにもここは、木々に囲まれた森のようなところだ。僕が二番目に得意とするフィールド。正直、もっと狭いところとか、暗いところの方が得意ではあるんだけど、市街とか、開けた公園とかよりは慣れている。

 

 糸を木に巻き付け、ひとつの『蜘蛛の巣』のような環境を整えていく。

 僕の神器は『糸を作り出す』というもので、そこに制限はない。なんなら、仙術の影響で触れれば、気を乱させ、拘束することさえ可能にしている。

 

「そう。小猫の友人と言う手前、拘束で勘弁してあげるわ」

「それは、こっちのセリフです!」

 

 僕は右手の五指をリアス先輩の方に向けながら言う。

 

『flame!』

 

 その音声と共に炎が指先から放射される。

 

「小猫から聞いていたとはいえ厄介な能力ね」

「火事ではすまないところですわ」

 

 リアス先輩たちは、冷静に魔法陣を展開し、僕の炎を防いだ。

 とはいえ、僕の炎は防がれる前提で放ったもの。僕は指先の排出口以外から左手用の籠手剣を作る。

 

「ほんと、芸達者ね」

 

 リアス先輩に接近し、左手を振り下ろした僕は、なんなく避けられたのを確認して、右手の指の付け根にある排出口から糸を地を這わせるようにだし、足を引っ掻け、転倒させた。

 

「僕の勝ちです」

 

 僕は勝ちを確信し、仙術によって強化された筋力を用い、リアス先輩を持ち上げ、『蜘蛛の巣』として構成された領域に放り投げる。

 リアス先輩は呆気なく『蜘蛛の巣』に捕まった。

 

「捕縛すると言う点において、僕の方が上だったみたいですね」

「そうね。それは、間違いないわ。けど、あなた忘れてないかしら?」

「なにをですか?」

 

 僕の疑問を聞き、リアス先輩は口元を歪ませる。

 一瞬迷う。そして、それが隙になってしまった。

 

 僕は後ろでオーラを高め、雷を作り出している『姫島』先輩の存在を忘れていた。

 普段、僕が積極的に『攻撃』を仕掛けることの方が少ないことが仇となり、『なにもしてこない』存在のことを視界から遠ざけてしまっていたわけだ。

 

 僕はとっさに円形の大盾を作り出そうとするが、それよりも先に、姫島先輩の雷を受けてしまった。

 

「私たちは二人。あなたが捕縛するべきだったのは、私一人じゃなかったのよ」

「その格好じゃ、かっこわるいですよ」

 

 僕は『蜘蛛の巣』に捕まってスカートがめくれ上がっていたリアス先輩に悪態をつき、気を失ってしまった。

 どうやら、姫島先輩が放った雷は、対魔の術を織り込まれていたものだったようだ。

 

 

※※※

 

 

 僕とミッテルト、他堕天使二人は、オカルト研究部の部室に連れていかれ、ミッテルトたちは翼から羽を一枚ずつむしられていた。

 

「それじゃあ、私はイッセーたちの様子を見てくるから、逃げようなんて思わないで」

 

 僕らにそういうと、魔法陣が展開され、リアス先輩の姿が見えなくなる。

 

「まーけーたー!! くーやーしーいー!!」

「子供っすか。っていうか、さっきまでの殺伐とした雰囲気はどこにやってんすか! バカなんすか? バカなんすよね!?」

「声を荒立てるな。耳障りだ」

「カーッ気楽でいいっすよね。あーもう、これだから男は」

 

 どういうわけか錯乱しているミッテルト。そして、それをなだめるカラワーナさん。

 あきれかえるドーナシークさんに、地団駄を踏む僕。

 カオスな光景が広がるオカケン部室を覗き込んでいる気を感知した。

 糸を作り出し、地を這わせ、その気に巻き付けると、「あうっ!」と言う声と共に、誰かがこける音がする。

 明らかに高い声だったので、女の子かと思い、扉を開くと、女子用の制服を着た男の子が倒れていた。

 

「ご、ごめん。大丈夫?」

 

 声をかけながら手をさしのべると、「ひっ」と言う声とともに、男の子が、数メートル先に『瞬間移動』しており、真っ白のパンツを見せつけながら転んでいた。

 僕は男の子の足から糸をほどき、近づいた、

 

「大丈夫? 落ち着いた?」

「あ、あなたは、誰なんですかぁ……」

「僕? 僕は丹芽海樹。君は?」

「ギャスパー・ヴラディですぅ」

 

 自信無さそうな声で答えてくれるギャスパーくん。うーん、なんだろう、すごく警戒されているような気がする……

 

「えーっと、ギャスパーくん。別に僕は怪しい人とかじゃないから、警戒しないでくれると助かるんだけど」

「ぼ、ぼぼぼぼく、契約があるので失礼しますぅ!!」

「あ、ちょっと」

 

 脱兎の如く走り去っていくギャスパーくんの背中を見送る。

 

「逃げられた……」

 

 行き場もなく宙を彷徨う手をおろし、僕はとぼとぼともといた場所へ戻る。

 

「うわっ! 海樹? いつの間にそこに?」

「いつの間にって大袈裟な……ついさっきだよ? 歩いてたの見てたじゃん」

「いや、見てないっすよ。海樹が金髪の女子のとこに行ったと思ったら、うちの近くに瞬間移動してきて、金髪の女子はいなくなってたっす」

「女子?」

 

 ギャスパーくんは男の子だし、なにか見間違えてたのかな? 

 

「女子だったじゃないっすか。海樹の糸に絡まれて怖がってた印象っすよ」

「いや、え? ギャスパーくんは男だから、違うし、誰の話してるの?」

「いやいやいや、あれは完全に女子っすよ。女の子にそんなこと言うなんて失礼っすよ?」

「だーかーらー、男の子だって。どうみたら女の子になるのさ!!」

「どこをどうみても女子でしょあれは!! 海樹の目は節穴っすかぁ?」

「いや、ミッテルトこそ、なにいってるのさ。どう見たって男の子だったよ」

「あなたたちは、何を言い合っているの……」

 

 僕らの後ろから、ため息混じりのリアス先輩の声が聞こえてくる。

 

「リアス先輩! ギャスパーくんは男の子ですよね!?」

「いやいや、あれは、女子っすよ。どう見ても」

「ギャスパーは男の子よ。それにしても、あの子が……珍しいこともあるのね」

「どうかしたんですか?」

「いえ、こっちの話よ。気にしないで。それよりも、海樹たちの処分についてだけど、その反応を見る限り、もう敵対する気はないみたいね?」

 

 リアス先輩は僕の目を見て、尋ねてくる。なんというか、すごい圧を感じるけど、僕はその目をそらしたらダメだと思い、そらさずに、答えた。

 

「はい。僕の敗けです。言うことを聞きます」

「そう。それなら、海樹については、ここまでにするわ。悪魔になってすぐの人間にはよくあることだもの」

「そうなんですか?」

「少なくとも、私の眷属にはよくあることね。それで、堕天使四人の処遇。海樹としては、『処刑』というのは、嫌なのよね?」

「そうなったら、また敵対します」

「そうでしょうね。私としても自分の眷属からはぐれ悪魔を出したくはない。だから、殺す気はない。けれど、そうなってくると、私一人で決められるものでもないの。もう一人の管理者と一緒に話し合ってから、決めさせてもらうわ。それまでの間、あなたたち四人には、捕虜としてここで生活してもらうわ」

 

 捕虜? えーっとつまり? 

 

「ようは、うちらの自由を制限させる代わりに生かしてやるって言ってるだけっす。まあ、あんなことして、生きてるだけ御の字っすけどね」

「ほへー」

「あなた、全く理解する気がないのね」

 

 リアス先輩にあきれられ、僕はたはは、と乾いた笑いをこぼす。

 いや、だって、正直、ミッテルトたちがなにしようとしていたのか知らないし、興味もなかったから、リアス先輩たちが止めにいった理由も、生きてるだけ儲けものになる理由もさっぱりなんだから。

 

「とりあえず、ミッテルトはうちから出ていくってことでいいんですか?」

「そうね。ちょっと、首輪を着けてここに住まわせることになるわ」

「首輪?」

「光力とあなたの糸を利用した『反逆防止』の服。頼んでいいかしら?」

 

 それを聞いて、ミッテルトはビクゥと体を跳ねさせる。そう言えば、ミッテルトは感情感応式のキグルミパジャマを着せたことがあったっけ? あれをイメージしているのか……なるほど。

 

「リアス先輩、尻尾かなにかで感情がわかるようにした方がいいですか?」

 

 僕の問いを受け、リアス先輩は一瞬、『なにいってるんだこいつ?』みたいな目を向けてきた。

 いや、でもさ、ほら、

 

「遊び心って大事だと思うんですよ。純粋に『こいつ反逆しようとしてます』って告げるより、『敵意むき出しの感情を持っています』って、尻尾とかから告げられた方が、かわいいと思いませんか?」

「海樹のヒトデナシ!! あれをまたうちに着せるつもりっすか!!」

「うん」

「鬼! 悪魔! ヒトデナシ!!」

「悪魔だもん。人じゃないもんねー」

「こんの……クソガキぃ……」

 

 ミッテルトの反応をみたレイナーレさん含めた三人が、ものすごく渋い表情をしている。ふむふむ。これは……

 

「ふふ。面白そうね。ついでに、使用人の様な格好をさせるのもありね。なん着くらい作れそうかしら? 急を要するけれど」

「十分あれば明日の分はすぐにでも。ミッテルトの分は既に作ってあるので、どうぞ」

「いつの間に!?」

「ミッテルトが出ていってたから、腹いせに猫耳メイド衣装を作っておいたんだ」

 

 キリッとちょっと格好をつけてみる。すると、ミッテルトはぽかぽかと、僕の肩を叩いてくる。本人としてもじゃれあいみたいな感じなのか、全く力が込められていない。

 

「それじゃあ、ミッテルトだけ先に着ていましょうか? 他三人の分は」

「採寸は終わらせてあるので、反抗しないように拘束だけしてもらっていれば、それでいいですよ」

「そう。それじゃあ、そうさせてもらうわね」

 

 リアス先輩は縄を取り出してミッテルトたち堕天使組を拘束する。ふふふ。腕がなるぞぉ……。

 僕は神器から黒と白を基調として、赤系統の色をアクセントに、耳や尻尾、アホ毛といった形のカチューシャなどを作っていく。

 

 そうすること約五分。部屋の前にギャスパーくんの気配を感じる。

 

「入ってきていいよ」

 

 僕が、声をかけると、ピャーっとドアの前から立ち去っていく。

 うーん。なにがしたいんだろ? 

 

 僕はそう思いながら、テーブルの上に衣装をならべ、それぞれの名前を記載した紙をおいていく。

 そういえば、僕のこと処罰とかしなくてもよかったのかな? 僕、結構反抗的かつ、問題行動っぽいこといってたけど……

 まあ、リアス先輩がなにもしないっていってるから、それでいいのかな? 

 そんな楽観的なことを思っていると、あることに気づいた。

 

「あ、ヤバイ。神器をしまえない……」




とりあえず、一巻分は終了です。
戦闘があっさりしていたり、死亡キャラが生存していたりと、さまざまな原作との乖離点を産み出していますが、まあ、なんとかなると思います。はい。
明日以降の俺が何とかするさね。うん。がんばります。

とりあえず、ここから、イッセーのトラウマであったり、朱乃とのからみであったりを意識しながら書いていきたいと思います。

それでは、また次回、お会いしましょう……


あ!アーシアのこと書いてなかった!!アーシアは原作通り、聖母の微笑みを持って、悪魔に転生していて、レイナーレはアーシアから抜き取った神器を没収されています!!

それでは、また次回!!
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