第1話
あれから数週間後、僕はミッテルトたちの、たくらんでいたことを知った。
それを聞いてとりあえず、四人ともに糸で作った拳に気を纏わせ、振り下ろしたおいた。
それから、ミッテルトについては、僕が面倒を見ることになった。本人たっての希望だったみたいで、ミッテルトを使用人みたいに扱ってもいいこともあり、僕も嫌じゃないし引き受けることにした。
レイナーレさんはリアス先輩共にイッセー先輩のところに向かうことになったらしい。本人としてはとても不服らしいが、敗者ゆえに言うことを聞くしかないことも理解しているからか、反抗しようとはしてなかった。
ドーナシークさんやカラワーナさんはもう一人の管理者のところに行く事になったらしい。
二人とも執事やメイドとして頑張っている(意訳)とリアス先輩から聞いた。
そういったことが色々解決し、この生活にもなれて来はじめたある日のことだ。
「リアス先輩が処女を奪ってほしいってイッセー先輩に迫った?」
「らしいっすよ」
僕はミッテルトともに学校で昼食をとりながら、話をしていた。
「詳しい話は知らないっすけど、貴族様も色々あるんすかねぇ?」
「じゃない? で、ところでミッテルト」
「なんすか?」
「ショジョってなに? アニメ?」
「んなわけないっす。知ってても知らなくても困らないっすから、そのときが来たら童貞とセットで教えてやるっす」
「ふーん。それよりミッテルト」
「なんすか?」
「その尻尾と耳、様になってきたね」
「うがぁー!! なんなんすか!! 人がせっかく忘れてたことをいちいち蒸し返して!!」
「え? 忘れる?」
僕はミッテルトの頭と腰を見る。頭についた耳に変化はなかったが、腰に巻いてあるベルトから天を突くように尻尾を逆立てている。
「自分でいっていることに気づいたのか、ミッテルトはハッとした表情で僕をにらんでくる」
「なに、ナレーションしてるんすか」
「だって、クラスでミッテルトだけ浮くのはかわいそうだし」
「浮いてねーっす! てか、そもそも、うちがここに通えること自体異常事態って認識しろっす!」
あのあと、リアス先輩やミッテルトから聞いた話だが、もともと、天使、堕天使、悪魔という種族は対立関係にあり、現在は冷戦状態で、ちょっとした火種で戦争になりかねない状態とのこと。
だから、ミッテルトたちがなにかを企てていたとしても、対応が遅れぎみになるし、静観しないといけないこともあるらしい。
とはいえ、こうしてミッテルトと一緒に学校に通えるのは、リアス先輩たちが、堕天使側に話を持っていった際、ミッテルトたちの上司から『そいつら、追放することになったから、煮るなり焼くなり好きにしろ(意訳)』ということになったからだ。
なんというか、堕天使のこう何て言うのだろうか、非情とかそんな感じが見受けられてしまう。
もっと部下を思いやってやれんのか!! とか聞いたときは思ったけど、それが堕天使と思うことで納得しようと思う。だって、僕は、四人しか堕天使を知らないわけだし。
「それよりも、こんな話、教室でするもんでもないっすよ。まあ、多少結界張ってうちらの会話の内容をあやふやにはしてるっすけど」
「まあね。それよりも、なんとかなってよかった。あのまま神器を消せれなかったら学校休学しないといけないところだったよ……」
「ほんと、そうっすよ。神器の誤作動とか初めてみたっす」
「そうなの?」
「神器が誤作動を起こすって相当な異常事態っすから。神器と魂は超密接な関係にあるっす。だから、抜き取られたら死ぬし、魂そのものに異常が起きると神器側にも影響が出るっす」
そうそう、それでたしか……
「僕が仙術使って『悪い気』をためすぎちゃったことで魂に負荷をかけちゃったからって話だっけ?」
「そうっす。うちの腹に風穴空いたことがあってよかったっすね。あれなかったら、海樹の仙術のこととか、知らなかったから、神器が戻せないまま過ごすことになってたかもしれないっすよ?」
「おぉう……僕の高校生活死ぬところだった。ありがとうミッテルト。愛してる」
「はいはい。そういうことは気楽に言わない。勘違い女子を発生させる原因になるんすから」
僕の軽口に、尻尾をたてながら小声で「ま、性格に難ありだから、勘違いもクソもないっすけど」と呟くミッテルト。
へぇー、ふーん。
「ねぇ、ミッテルト」
「なんすか?」
「尻尾たってるよ?」
顔を赤く染め、慌てて尻尾を隠そうとしているミッテルトに、ニヤニヤとイヤらしい笑みが浮かんでしまう。
「へぇー、ミッテルト嬉しかったんだ。へぇー」
「ち、違うっすよ! 変な勘違いすんなっす、うちはただ、変なやつに勘違いされないようにアドバイスをしてやろうと思った……そう! 親心みたいなもんっす!!」
「ハイハイわかってるよー」
「頭撫でるなっすー!! ついでに、左手を顎に伸ばそうとするのもやめるっす!!」
「はいはーい」
「やめてないじゃないっすかー!!」
とはいいつつも、手をどけようとしないミッテルトを、セクハラにならない程度に撫でまわす。尻尾が大きくゆっさゆっさと揺らしていることから、気持ちいいことはよくわかる。
うーん、やっぱり、リアス先輩に尻尾やらつけるのを提言してよかったー。
僕がそんなことをしていると、頭に手刀が下ろされた。
「なにするのさ、コーチン」
「コーチン言うな。授業が始まるからさっさと夫婦ごっこやめとけっていいに来ただけだ」
「あ、そう? ありがと」
「夫婦じゃねぇっす」
「はいはい。そういうのはわかってたことだから。それより、丹芽はよかったのか? 塔城は『部長に呼ばれたから』って部室に向かったみたいだけど」
「え? そんなこと言われた?」
「うちは聞いてな……あっ! 海樹に伝えてほしいって言われてて忘れてたっす!」
うん、ミッテルトも大概いい加減だよね。僕が言うのもあれだけど、けど、言伝てを忘れるって……
「これは、今日は被服部で着せ替え人形の刑に処した方がいいのか……?」
「い、いやっす。なんすか、あの部。頭おかしいっすよ。海樹がいてもお構いなしに服脱ぐし、海樹もそこら辺ガバガバだし、海樹に採寸とかさせてるし、全員着せ替え人形になっても怒らないし……なんなんすか、あの部!?」
「被服部だよ。あ、塔城さん、帰ってきたみたい。オーイ塔城さーん」
僕の声に反応こそしたが、時間を気にしてか、塔城さんは自身の席に着く。
「なにかしたんすか?」
「いや、なにも? それより、授業始まるし、席つきなよ」
「わかってるっすよー」
そういって、ミッテルトは自分の席に戻っていく。
僕はそれを見送ると、腕を枕にして眠ろうとした。
「寝るな、バカ」
そして、シレッと地脈から力を受けた手刀を、僕の頭に振り下ろしてくるコーチン。
僕はそれを気をまとい受け止める。
「痛い」
「寝ようとするからだ。バカ。ちゃんと受けろ」
「あーい」
僕の返事を受け、コーチンは自身の席に戻っていった。ジーッと塔城さんの視線が刺さるけど、気にしないようにしよう。
そんなことを思いながら、僕は昼の授業のほとんどを寝て過ごしていた。
※※※
放課後、僕とミッテルトはオカルト研究部の部室へと足を運んでいた。
被服部へミッテルトを連行したかったのだけど、木場先輩とイッセー先輩が誘ってきたので、そちらを優先することにしたわけだ。
「それで、これからなんの話をするとか聞いてるんですか?」
「いや、なにも。ただ、部長も貴族だから、色々なしがらみがあるんだと思うよ」
「そうなんですね。ミッテルトは連れていってもよかったんですか?」
「問題はないんじゃないかな? 扱いとしては捕虜ってことになってるし、後ろの方でじっとなにもしなければ、誰も気にしないと思うよ」
木場先輩の言葉でほっと胸を撫で下ろした。
「ところで、イッセー先輩」
「どうした?」
「レイナーレさん。馴染んできました?」
「あー……まあ、一応。母さんと父さん、アーシアは、すぐに受け入れてたな……」
「そうですよね……すみません、僕のわがままで……」
「いやいや。気にするなよ。後輩のわがままくらい許容できなきゃ、ハーレム王なんて夢のまた夢ってやつだ」
どこか無理してそうな雰囲気でそう答えるイッセー先輩が不安になり、僕はミッテルトや木場先輩の方を見る。
ミッテルトはあきれぎみに、僕の脇腹をこづいてきて、木場先輩は愛想笑いを浮かべていた。
「一応いっとくっすけど、きつくなったらさっさとリアスに『やっぱり無理』って言う方が良いっすよ。レイナーレ様があんたんちに住んでんのは半分が海樹のわがままの結果なんすから」
「わかってる……けど、ひどい目に遭ったアーシアが許すっていってるし、父さんも母さんも新しい娘ができたって感じで喜んでるからさ……」
そうなんだ。それはよかった……。
「ていっ!」
僕が安堵していると、ミッテルトが手刀をおとしてきた。
さすがにムカッとしたので、睨みつけたが、ミッテルトは大きなため息をついて、僕の胸に指を突きつけてくる。
「どうせ海樹のことっすから、『仲良くできそうでよかった』とか思ってると思うっすけど、はっきりいうと、うちらがこうやってグレモリーと関わっていること事態、悪魔にとっては裏切り行為なんすよ。海樹のわがままのせいで、リアスは政治的に発言権が落ちてるといっても過言じゃないくらいなんす。それに加えて、イッセーのメンタル的にも、無意識下で大きなストレスを与えてることだって考えられるんすよ。もっと、自分がなにしでかしたか感がえろっす。まあ、うちが言えた義理じゃないっすけど」
「いや、俺は大丈夫だよ。それより、部長だ。なんか、すごい切羽詰まってたけど、木場たちはなにか知ってるのか?」
「僕はなにも」
「僕もー」
「うちも特には知らないっす。朱乃あたりなら知ってるんじゃないっすか?」
そういわれながら旧校舎が見えてきたとき、感じた覚えのない気を感じる。
気にせず、そのまま向かっていると、部室の前で木場先輩とミッテルトの体が強ばっていた。
「ここまで来ないと気づかないなんて……」
木場先輩はそう漏らし、少し悔しそうにしていた。
「まあ、そんなもんじゃないっすか……明らかに上級……それも、相当なやり手っすよ、これ」
「あ、そうなんだ。それじゃあ、おじゃましまー……ぁす?」
僕の後ろから大きくため息をはく音が聞こえてきて、何となく察した。
あ、これ、結構緊迫してる空気感なのね……と。