糸使いの高校生活   作:やまたむ

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第3話

 姫島先輩から魔力の扱い方を学び、やりたかったことが現実味を帯びてくる。

 

「そういえば、海樹くんの試したいことってどういうものなんですか?」

「あー、えっと、糸を群れと見立てて、制御するってやつです。もともとは妖力でやってたんですけど、千本制御するのが限界で、もっと多くしておきたいなって」

「なるほど。たしかに、海樹くんの魔力量なら可能ですわね。ただ、問題があるとするなら……」

「威力ですよね? わかってますよ」

「海樹くんの神器の特性上、高い威力の攻撃には向いていませんわね。必要最低限の力で敵を制圧するという戦法が得意なようですし」

「まあ、そうですね。最近は仙術も身に付いてきましたし、より『破壊力』は必要なくなってきましたし」

「気を乱すことが得意なんでしたわよね?」

「まあ、仙術の基本ですからね。『乱す』『集める』『纏う』の三つはここ何週間かで叩き込まれました」

 

 僕がそう答えると、姫島先輩は少し考えこむ。何を思案しているのかわからないけど、流れ的に仙術と魔力の使い方を考えているのだろう。

 

「あの、一応他にもやってみたいこととかもあるんで」

「すみません。私も海樹くんの力になれると思ったんですけれど、ダメそうですわね……」

「あ、いや、そんなことは……でも、やっぱり、そこはー……ほら。僕、新人悪魔ですしわからないところもありますから」

 

 そうフォローしようとしていると、クスクスと風を揺らす声が聞こえてくる。まさか、この人……! 

 

「からかったんですか!?」

「ごめんなさい。小猫ちゃんから聞いていた『他人のことを気にしないマイペース』な子と違いすぎてて」

 

 そういいながらも、ふふふと、笑い続ける姫島先輩に、少しいらっときた。

 

「やっぱり、僕、姫島先輩嫌いです」

「あら、はっきり言うんですのね?」

「だって、隠したって仕方ないじゃないですか。できるだけ、ギスギスしたのはやめろって、リアス先輩からも言われてますし」

「私は、あなたのこと好きになりましたわ。屈服させ甲斐があって」

「クソやろうですね」

「女性に向かって『やろう』はないのではないですか?」

「クソの方はいいんですね」

「うふふ」

 

 明らかに笑顔なのに、目の笑ってない感じ、ちょっと怒ってそうかな。この人、すごく上品に振る舞うから、どんな人かわからなくて、困るんだよなぁ……。

 

「それより、よろしいのですか? まだ、魔力については基礎くらいしか教えていないのですが」

「大丈夫ですよ。仙術とかのと似たようなところありますし、そういったエネルギー操作にはなれてますから」

「妖力で戦ってきたんですものね」

「ジグからの供給でしたけどね」

「暴走したらキチンと退治して差し上げますので、安心して暴走してください」

「『姫島』に殺されたら母さんたちから怒られそうなので、遠慮しておきます」

「あらあら、残念ですこと」

「えぇ、一生残念がっといてください」

 

 べぇーっと、舌を出し煽ってみると、うふふと微笑みつつも、こめかみをピクピクと揺らしていた。

 

「あらあら、これは、一度、格の違いというものを実感させておいた方がよろしいようですね」

「僕相手に一対一で勝てると?」

「あなたこそ、相性が悪い相手に勝てるとでも?」

 

 僕と姫島先輩は、互いに臨戦態勢をとる。

 

「名目は練習試合でいいですよね?」

「えぇ。殺傷能力の高い技はなし。それ以外は何でもありで」

「わかりました。じゃあ、本気でいきますね」

 

 僕は大量の糸を作り出し、魔力を込め排出口から、出していく。

 元々は妖力でやっていたこともあり、そんなに難しくはなかったが、感覚的に何か違うなぁー程度の認識が生まれてしまう。

 

 まあ、それは、それとして、

 

「うふふ。その威勢、どれ程続くか見物ですわ」

 

 そう言うと同時、僕の目の前に巨大な雷が迫ってくる。

 僕は咄嗟に糸を操り、雷を防ぐように展開し、気を集め仙術を扱える状態へ変化し、姫島先輩の気を探り、反撃した。

 糸の制御も兼ねているため、視界がほぼ埋まり、姫島先輩の姿も見えなくなる。まあ、そうなるから、気を集めて仙術を扱えるようにして、姫島先輩の位置を探っているわけだけど……。

 

「善の気の方が変な感じするんだよなぁ……」

 

 とは言うものの、普段集めてる悪い気よりは、数段まともな感じはある。暴走させようとして来なかったり、精神を汚染させようとしてこなかったり……それが慣れなくて変な感じがするってかんじだ。

 

 姫島先輩から放たれる牽制用の雷を、糸で受け流しながら、反撃をしてを繰り返す。

 僕の糸の数は大体五千から一万。平均三十センチくらいのものの集合体ゆえに、少し物足りなさを感じるものの、反撃には十分足りている。

 まあ、姫島先輩の攻撃を受け止めているため、焦げて使い物にならなくなった糸の補充、反撃分で魔力の共有が甘くなり減少した糸の補充……そんなことの繰り返しにより、糸で操る群はどんどん縮小傾向へと進んでいく。

 

 実力差……いや、相性の悪さが露骨に出ているような感じがする。僕のやろうとしていること、たぶん、接近戦メインの人とかにやる術の類いっぽいなぁ……。

 

「どうしました? さっきまでの勢いが落ちているようですが」

 

 僕の放つ糸の群を空中で飛び回って避けながら、姫島先輩は尋ねてくる。

 

「余裕ですね……」

「えぇ。私の土俵で挑んでくるんですもの。余裕もできますわ」

「じゃあ次は、僕の土俵にも上がってもらいますね」

「なにを……」

 

 僕は九千近くの糸を使いひとつの柱を編み上げ、残った糸で棒を編み、それを、両手で構える。

 すると、柱の方も連動して動いて、棒の向きと合わせる。

 

「僕のやってみたかったことの二つ目……うまくいきそうでよかった」

「なるほど。糸で作った柱と自分の杖。それを連動させて攻撃する……屋内においては使い勝手が悪そうですが、周りを気にしなくていい環境では、最適かもしれませんね」

「さっきのは、屋内想定でしたから。じゃあ、いきますよ」

 

 僕は縦に棒を振る。それに呼応するように柱も一緒に振るわれた。

 姫島先輩は横に大きく移動することで、その柱を回避し、僕にむかって雷を放つ。

 一つ一つが大降りのため、とっさの行動が僕には出来ない。けれど、僕自身も全く策がないわけではない。

 

「なっ……!」

 

 姫島先輩の驚いた声が耳にはいる。

 そうだろう。僕はほとんど慣れない魔力の操作を行っている。だからといって、僕本来の能力や力が使えなくなったわけではない。

 まあ、つまり、僕は仙術を使い、地面を隆起させ雷を防いだだけである。

 

「気の操作を怠っていた訳ではないのですね」

「ほとんど無意識でも扱えるようにしないと、実戦投入できませんから」

「なるほど。では……」

 

 そんなやり取りのあと、夕方になりご飯の時間が来るまで、僕と姫島先輩の練習試合は終わらなかった。

 

 

※※※

 

 

 姫島先輩との模擬試合も終わり、夕飯の鹿鍋を食べたあと、お風呂で疲れをとったあと、部屋でポチポチとスマホをいじり、電話をかける。

 

『いきなり電話かけてくるなんて何かあったんすか?』

「いやー、今日一日疲れたから、ミッテルトの声でも聞こうかなって」

『彼氏面キモいっすよ。そんで、調子はどうなんすか? あんまり慣れてないことやって、筋肉痛になりそうとか、そんな感じっすか?』

「あははー、バレてた? まあ、そこは仙術で騙し騙しやるから問題ないよ。あ、それより、ミッテルト」

『なんすか?』

「散らかしてないよね?」

『わざわざ、電話で聞くことっすか、それ!?』

 

 だって、ミッテルトだし。前も自室汚くしてたし。

 

「まあ、散らかしてないならいいよ。十日間、きれいに維持できると思ってもないから、たまには、ドーナシークさんたちに頼んできれいにしてもらうんだよ。あと、小袖のおっちゃんに『皮衣』の納品お願いしておいて」

『は? 『皮衣』? なにいってるんすか?』

「大体それで伝わるから。えーっと……オカケン人数分ね」

『いや、だから、その皮衣ってやつの詳細を……』

 

 僕はミッテルトの話を聞き終わる前に、通話を切る。要件自体は話し終わったし、今日はゆっくり休もう。

 そう思い、布団にくるまると、僕は眠りに落ちた。

 

 

※※※

 

 

 翌日、昨日と同じ様に姫島先輩との模擬試合を済ませ、イッセー先輩が乗りに乗った魔力操作で剥いたジャガイモを使った料理を頬張りながら、リアス先輩とイッセー先輩の会話を聞く。

 

「それで、イッセー。昨日と今日、どう感じたかしら?」

「俺が一番弱かったです……」

 

 真剣な声色に、茶々をいれることなくご飯を食べる。

 いや、まあ、関心がない訳じゃないんだけど、イッセー先輩が弱いことに変わりないわけだし、なんとも言えない。

 

「そうね。たしかに、あなたが一番弱いわ。でも、あなたには、赤龍帝の籠手がある。祐斗にも小猫にも海樹にも出せない火力が、あなたの力。だから、力がたまるまでの間、逃げる力を身に付けなさい」

「逃げる力?」

「えぇ。逃げるって言っても、簡単なことじゃないの。ただ、背中を見せて逃げたって的になるだけ。そうならないように、技術を身に付けることも必要なの」

「はあ……」

 

『よくわからない』という風な雰囲気を出すイッセー先輩。まあ、逃げるのに技術がいるって言ってもわからないもんね。

 僕だって、最初の頃は必死になって逃げて、何度も背中に火傷とか負ってたし。あー、思い出すだけで背中がいたくなってきた……

 

「まあ、あれですよ。失敗したら背中燃やされたり、刻まれたり、打撲したりするんで、選択ミスらないことは超大事です」

「お、おう。なんか、実感こもってるな」

「経験したことですからね」

 

 事実だから仕方ないね。小学生のころからだし、今も結構傷跡が残ってたりする。昨日のお風呂のときも、イッセー先輩たちと時間をずらして入ったし、先輩たちは知らないことだと思うけど。

 まあ、そんな感じで、ちょっと暗い雰囲気のまま、食事は終わり、各人の部屋へと帰っていく。

 

「カーキ。後で、私の部屋に来て」

 

 そんな中、僕は、塔城さんからのご指名で、呼び出しを食らうことになった。

 うーん、なんなんだろ? まあ、でも、断る理由もないしいっか。

 そう思い、塔城さんの誘いに乗り、僕は部屋へと帰っていった。

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