糸使いの高校生活   作:やまたむ

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第4話

 お風呂から上がり、髪を雑に乾かしてから、部屋に戻ると、塔城さんの部屋へ行くための準備を整える。

 えっと、必要そうなのは……携帯ゲーム機、トランプ。あー、あと、花札とかかな? 

 

「よし、大体こんなものかな?」

 

 僕は適当に作った手さげ袋に、ボードゲームやカードゲームなどを積めていく。人の部屋でワンキャン騒ぐのは、お泊まりの定番だし、話ぐらいだったら遊びながらでもできるし、ちょうどいいと思う。

 

 ふぅーっと、僕は大きく息を吐いて、気を集める。まあ、夜中に女の子の部屋にいくわけだし、誰かに見つかったときに、言い訳するのは、さすがに面倒くさい。

 ということで、周囲の気を感じながらなら、隠れながら塔城さんの部屋に行こうということになった。

 

「あれ? イッセー先輩の気配……アーシア先輩の部屋に向かってるのかな?」

 

 鉢合わせないようにしないと……僕は、イッセー先輩の気配が遠ざかるまで、じっくりと待ち、アーシア先輩の部屋に入っていくのを感じてから、部屋を出た。

 

 

※※※

 

 

 塔城さんの部屋の前につき、僕はトントットトントンとドアをノックする。

 すると、ガチャッとドアが開かれ、僕のお腹に小さな拳が突き刺さった。

 

「塔城さん。いたい」

「平気そう。入って」

「はーい。それにしても、なんで殴ったの?」

「うるさかったから」

「ごめんなさい」

 

 僕は塔城さんに招かれるまま、部屋に入っていく。キョロキョロと見回してみるも、僕の部屋と同じ作りで、そんなに意外というか、変わっているような点はない。

 強いて言うなら、塔城さんの使い魔がくつろいでいると言う点くらいだろう。

 

「で、カーキ」

「なに?」

「その荷物、なに?」

「ボードゲームとかカードゲーム。折角だし遊ぼうと思って」

 

 適当にいくつか持って見せると、塔城さんに大きくため息をつかれた。

 

「ダメだった?」

「べつに。とりあえず、そこの机に置いて。チェスしながらでも問題ないし」

「はーい」

 

 僕は塔城さんの指示通り、少しベッドから離れたところにある机に盤を置き、駒を並べていく。

 

「それで、塔城さん。話って?」

 

 僕がそう聞くと、塔城さんは目をパチクリとさせ、兵士の駒を動かす。

 

「忘れてなかったんだ」

「話があるって言われたから来たのに……まあ、話ながらできるゲームとか、持ってこようとは思ってたけど」

「ん。それで、さ。カーキって仙術が使えるって、ほんと?」

「そうだけど。話してなかったっけ?」

「うん。聞いてない」

 

 そうだっけ? と思いつつ、過去を振り返ってみると、確かに塔城さんには話したことなかった気がしてくる。

 

「そっか。それで、それがどうかしたの?」

「えっと……カーキは怖くないの?」

「なにが?」

「……仙術」

 

 あー、うん。なるほどなるほど。そう言うことか……

 

「つまるところ、塔城さんは仙術を暴走しないように扱いたいってことか」

「違う」

「なぜ!?」

「そもそも、仙術自体才能がないと使えない」

「え? でも、塔城さんもできるでしょ? 仙術」

「…………」

 

 僕から目をそらし、コトンと駒を動かす塔城さん。ただ、今までより、強めに置かれて、触れられたくないところを、触れちゃったような感じがする。

 

「えーっと、その、聞いちゃまずかった?」

「ううん。私の心の問題だから」

「そっか。まあ、でも、あれだよ? 怖いなら使わない方がいいよ? 仙術って、精神が安定していないときに使うと、暴走したり、力に溺れちゃうみたいだから」

「うん。わかってる」

「それで、塔城さんの話って、僕が仙術怖いかそうじゃないかって話だっけ?」

「そう」

 

 うーん、そうは言われても、仙術が怖いとか考えたことはなかったんだよなぁ……いつも妖力と一緒だったから、妖怪化しすぎないように気を付けてただけだし。

 

「そうだなぁ……怖くはないよ。ジグから嫌ってほど、『仙術にしろ、妖力にしろ、リスクがあったもしても力は力だ。怖がってちゃ、その負の側面にのまれるだけだ』って言われてきたし」

「そうなんだ……」

「うん。まあ、身の丈にあった力の運用が、一番安全ともジグはいってたけどね」

「そっか……うん。ありがと」

「いえいえ、こちらこそ? でさ、塔城さん」

「なに?」

「もしかして、僕、詰み?」

「うん。チェックメイト」

 

 そういって、塔城さんは戦車の駒を動かし、僕の王の駒の逃げ道をなくした。

 うん、まあ、僕、チェスの経験少ないからね。仕方ないね。

 

「それにしても、話って仙術についてだったんだ。塔城さんも使えるから、ジグとかそっちの方かと思ってたよ」

「土蜘蛛についても気にならないことはないけど、私としては、仙術の方が気になったから」

「ほへぇー」

 

 うーん、塔城さんが仙術が気になるって、やっぱり昔に何かあったからなのかな? 使い方を教えてとかじゃなかったし、それに、普通、仙術を『怖い』って捉えないから、そこが気がかりになるのは、さすがに使い手目線でおかしいと思う。

 そもそも、あんまり自分の力を怖いって認識するのは、よくないような気がするんだよね。ほら、中二病みたいな感じするし。

 

「それじゃ、塔城さん。明日の特訓だけど、二人でやらない?」

「なんで?」

「だってさ、リアス先輩、イッセー先輩を強くすることに集中してて、連携とかあんまり考えてないじゃん?」

「イッセー先輩は弱いから」

「それは、間違いないし、方針自体が悪いとは思わないんだよ? けど、レーティングゲームにおいて重要なのって、戦術と連携だと思わない?」

 

 僕の問いに塔城さんは頷くも、表情は優れなかった。おそらく、塔城さんも塔城さんなりに、考えがあるからだろう。

 

「相手は私たちより数が多い。けど、イッセー先輩はフェニックス攻略のキーにはなるから」

「十秒毎に力が倍になるんだっけ?」

「そう。だから、私たちの役割はイッセー先輩が力をためるまでの時間稼ぎになると思う」

 

 確かに、そうなるのは必然かもしれない。僕たち二人は、戦車という特性上、筋力などが増強されて、一定の力を出すことができる。けど、それは、相手も同じこと。

 はっきり言うと、僕や塔城さんが一番役割がない。イッセー先輩は、弱いというところを気にしていたけど、それ以上に『役割』が明確にある。

 

 力を限界までためて、ライザーさんにぶちこむ。これができるだけでも、大きく戦況を変えることができるだろう。

 ただ、そうした場合、僕や塔城さんは何をしていればいいのだろうか? 

 塔城さんの結論は『時間稼ぎ』らしい。正直、僕もそれが一番いいと思う。

 

「ただ、リアス先輩だけに、全部を任せてたらいけないような気がする」

「どういうこと?」

 

 少し、塔城さんの声色が強ばる。

 

「なんていうか、大きなプレイミスをしそうな感じがあるんだよね。少なくとも、レーティングゲームって長期間やるものなんだよね?」

「ルールによる。けど、私たちがやるのは、そのイメージで問題ないと思う」

「じゃあ、たぶん、補給地点とか用意されてたりすると思うんだよ。そういったところを、短期決戦上等! みたいな感じのことをしそうなんだよね」

「そう?」

「何となくだけどね。ただ、僕としては屋内戦が一番戦いやすいし、そっちに寄せた戦い方も必要なんじゃないかな? って思う」

「うん。わかった。けど、イッセー先輩は今のままだと戦力外だから、明日の特訓が終わってからでいい?」

「全然いいよ。むしろ、僕の方からお願いしてるんだから、塔城さんに合わせるのは当然でしょ?」

「ん。それじゃあ、また明日」

 

 そういって、塔城さんは僕の持ってきた荷物をまとめ、渡してくる。部屋にもどれということだろう。

 

「うん、それじゃ、また明日」

 

 

※※※

 

 

 翌日の早朝、目を擦りながら、食堂に向かっていると、リアス先輩と遭遇した。

 

「あら、海樹。早いのね」

「リアス先輩こそ。ちゃんと寝ました?」

「当然よ。あなたは? 小猫となにか話していたみたいだけど」

「まあ、多少は寝ましたよ。はい」

「そう。なら、少しお願いがあるのだけど、いいかしら?」

 

 …………え? なんて? 

 僕の聞き間違いだろうか? リアス先輩が、僕に頼みたいことがあるとか、いっているんだけど。

 

「えっとー、内容によりますよ?」

「何を警戒しているの……あなた、逃げることと、不意を突くことが得意なのよね? イッセーに教えてあげてほしくて」

 

 あー、なるほど。昨日までの間に、塔城さんたちがやってた教師役をやって欲しいってことか。あー、なるほどなるほど。

 

「それなら、問題ないですよ。山道とか使って説明するんで、はぐれないように気を付けてくださいね?」

「大丈夫よ。それじゃあ、朝ごはんにしましょうか」

「はーい……って言っても、まずは作るところからなんですけどね……」

「そうね」

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