糸使いの高校生活   作:やまたむ

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昨日は投稿できなかったから、今日投下。
まあ、完成次第ポンポン投稿するんで、気長にお待ちください。


第4話

 僕の放った鉄球は、軽く振るわれた光の槍にあっけなくおとされる。

 

「ミッテルト。帰ってくるのが遅いと思ったらこんなところにいたか」

「ドーナシーク! 助かったっす。こいつ、『総督』からの討伐令が出てた例のあいつっす」

「なるほど。その類いか……」

 

 そういうと、ドーナシークと呼ばれた男は光の槍を僕に向かって放つ。

 

「くそっ! タイミング悪すぎでしょう……がっ……!!」

 

 僕はその槍を糸で絡めとり、適当なところに放り投げる。

 

『そりゃ、おめぇの運がねぇだけだ。ま、んなこたぁ、俺を産まれたときに宿してんだから、運が良いわけねぇんだからよ』

 

 そうだった。僕にお前が宿ってる段階で、運が良いわけないか。

 まあ、そんなことは今、どうだって良いんだ。こういうときに使うのが、人質ってやつでしょ。

 

『かっはは。そりゃそうだ。さぁ、やっちまえ宿主』

 

 僕はミッテルトを持ち上げ、首筋に神器の爪部分を突きつけ、ドーナシークに向かっていった。

 

「み、ミッテルトの命が惜しかった……ら、さささ、さっさと回れ右して帰れ!!」

 

 いっ、いった。言えたよ! ジグ!! 

 

『な、情けねぇ。こんな宿主、情け無さすぎて涙が出そうだぜぇ……』

 

 う、うん。わかってる。慣れないことってするべきじゃないよね。うん。

 さすがに僕の口調から本気だったけど、情けなさの方が大きかったのか、ドーナシークもミッテルトも、かわいそうな子を見るような視線で僕を見る。

 

「命を奪うと言う覚悟がないくせに、人質をとる。慣れないことをするべきじゃない。そして、私にその脅しは──」

 

 そういうと、ドーナシークは光の槍を構え、

 

「──通用しない」

 

 ミッテルトごと、僕を貫いた。

 

 ぐっ、うぅ。ヤバい、ジグ……最終形態お願い。

 

『良いのか? 暴走するかもだぜ?』

 

 ──関係ない。だって、

 

「なん……で……すか? ……ドーナシーク」

 

 僕が変なことして、命の危機になってる子、見捨てるわけにはいかないっしょ? 

 

『自業自得だな。大バカ野郎』

 

 その通りだよ。だから、お願い。

 

『あいよ。ちゃんと意識保てよ』

 

 今の僕はそういう意味だと絶好調かも。

 

 すると、僕は妖怪のオーラに包まれる。そして、それに加え、この世の悪の集約したかのような怨念が僕に流れこんでくる。

 

『妖人化最終形態。妖仙化。持続時間はいつも通りだ。俺は平気だがおめぇはちげぇかんな』

 

 オーケー。何とかする。

 

 僕は今にも暴れまわりたくなる意識を必死で押さえ込み、腹に空いた穴を糸で繋ぎ会わせ、そこに仙力を流し込んで、生命力を増強させる。

 僕に流れ込んでくる所謂悪意とか、そういったものを何とか受け止め、すべてを善性の形に変換、仙力に再編、そこから傷口の修復。

 なんとか、僕の方に空いた風穴は塞ぐと、今度はミッテルトに空いた風穴を神器の糸である程度止血をする。

 

「こういうの、うまく扱えないから、接触したらジグに任せる」

『わーってるよ。誰が普段からおめぇに妖力調整してやってると思ってやがる』

「それもそうだね」

 

 そうすると僕は、ミッテルトの唇に、僕の唇を重ね、舌をいれる。

 

『んじゃ、糸の方は任せんぞ』

「……ん」

 

 ジグは僕の生命力を、次から次へと、ミッテルトに送っていく。

 気づけばドーナシークはいなかったが、関係ない。今は人命優先。ただでさえ僕がバカなことをしたんだ。それくらいの責任はとらなければならない。

 

 それから、どれくらいの時間が経過しただろうか。僕は、縫合したミッテルトのお腹の傷あとが消えたのを確認し、唇を離した。

 

 一応、呼吸をしなおしたりするために数回離したけど、何回も何回も、唇を重ね続けたのと、相当な生命力を消費し、気がつけば妖仙化も解けている。

 ジグが気を回して、危険だと判断したところで勝手に解いたのだろう。

 あれで、憎めないやつだ。

 

 僕は噴水のまえで、バタリと仰向けに倒れこみ、隣で意識を失っているものの、寝息をたてて眠るミッテルトを見て、安堵のため息をついた。

 

「よかった。ちゃんと助けれた」

『はんっ! 別に放置してもよかったんだぜ?』

「いや、それはジグにはできないよ」

 

 絶対。

 と、僕は声には出さなかったけど、そう思った。なんだかんだで、六年近くの付き合いがあるんだ。ジグがどんなやつかなんて、わかりきっている。

 

『いってろ。ま、これでおめぇの寿命も減って残り四年ってとこか?』

「あ、まだそんなに残ってたんだ。てっきり一日とかまで減らしたのかと思ってたよ」

『……そのレベルは、覇龍とか、その類いじゃなきゃ起きねぇよ。ま、妖仙化で寿命の大半を消費しているのは間違いねぇけどな』

「まぁ、結構な無理をかけるからね、あれって」

 

 そこまで言うと僕はあることが思い浮かんだ。

 

「もしかして……」

『あぁ、これからは妖仙化した時点でおめぇは死ぬぞ。第二形態がこれからの最終形態だな』

「マ?」

『マジだ。かっははは。まさか、俺を宿して、寿命削って自業自得の人命救助する大バカがいるたぁ、神様も思わなかっただろうぜ』

 

 そういって、ジグは笑う。

 

「笑い事じゃないよ!? 僕これからも命狙われ続けるってのに、妖仙化抜きで戦うのって結構きついよ!?」

『しゃぁねぇよな。おめぇの自業自得なんだからよ』

「わかってるよ。ごめん、ミッテルト」

 

 僕はミッテルトの頭をゆっくりと撫でる。

 きれいに手入れされた髪の毛は、僕の手を拒むことはなかった。

 

『そりゃそうだろ。意識ねぇんだから』

「ムード台無しだよ、ジグ」

『ムードもへったくれもねぇだろうが、最初っからよ』

「それもそうだね。とりあえず、ミッテルトが起きるまで待とうか」

『好きにしな』

 

 僕はミッテルトを抱き上げ、ベンチへ向かった。

 

「さてっと。これからどうしようか?」

『おめぇの好きなようにすればいいだろ。ま、鉄糸の布巻三十巻き、作らねぇといけねぇしな』

 

 あっ……。

 僕は、絶望した。一巻きも完成していないことに。

 

 僕は神器を右手に出すと、ミッテルトの頭を膝の上にのせ、鉄糸の布巻を作っていく。

 ひたすら無心で、神器のオーラすら使い果たすレベルでガンガン作っていく。

 地味に『火鼠の皮衣』よりも難易度が高い状態になってしまったので、体に残る倦怠感がさらに大きくなる。

 

 たぶん、万全な状態なら、三時間足らずで完遂しただろうが、今の僕だと二十時間かけたらようやくと言う具合である。

 

 そんなことをしながらミッテルトの目が覚めるまで物思いに耽っていると、ガサゴソと膝の上の頭が左右に揺れた。

 

「ん、うぅ……ん」

「起きた?」

 

 僕は寝ぼけ眼のミッテルトに声をかける。

 なんか、こうやってじっと見てみると意外とミッテルトって、美少女なんだな。今までは命のやり取りがメインだったから、全く気づかなかったけど。

 

「あぁ、そっか。うち、ドーナシークに腹ぶち抜かれたんすよね……って、おかしくないっすか? うち堕天使だから、死んだら意識なんてないはずなんすけど!?」

「まあ、僕のせいで死にかけたんだし、責任とって命は繋げたよ」

「そうっすよ! なんで、うちを人質にできると思ったんすか!! バカでしょ! バカなんでしょ!!」

『かっははは、そうだそうだ。言え言え、堕天使の小娘』

「ジグが敵にまわった!?」

「大体、人質をとられて動揺するような御人好しの方がこの業界珍しいんすよ!! うちの命を軽率に扱って。うちは人間とは違って死んだらそこで終わりなんすから、もっと慎重に扱えっす!!」

「本当に悪かったと思ってるよ」

『お、宿主がしおらしくなってやがる』

 

 うるさい。これでも本当に反省しているんだよ。

 やっぱり、他人を巻き込むとろくなことにならない。

 

『かっははは、そりゃそうだろうな。不幸な人間ってぇのは、意図せず周りを不幸にするんが基礎なんだからよ』

「ほんと、なんで、こんなことになるんだか……で、どうする? 今から、あっちに戻るのなんて無理なんじゃない?」

 

 僕はミッテルトに尋ねる。

 

「そうなんすよねぇ……今さらレイナーレ様の元に帰っても、今までみたいに……って訳にはいかないっすし、ドーナシークも『人質にとられたから殺しました』程度の報告はしてもおかしくないっすし」

「うーん、でも、どうなんだろう? ジグ。あの時ドーナシークって何やってたの?」

『あぁん? あぁ、あの堕天使か……たしか、おめぇらの腹ぁ貫いたあとにちゃっちゃと飛んでどっかいってたぜぃ』

 

 つまり、死亡確認はしてないわけか。まあ、してたら、僕らは生きてない訳だし、そうなるか。

 と、なるとあれかな? 僕らがいなくなって、騒ぎにもなってないってなると、相手側も不信に思うかな? 

 

「とりあえず、うちは《神の子を見張るもの(グリゴリ)》に早いところ戻る……訳にもいかないっすかねぇ」

「なんで?」

「あぁ、まあ、うちらがここにいるのは任務なんでその報告はレイナーレ様がやってるんすよ。だから、うちが報告すると、指示系統がごっちゃになるんす。だから、うちが勝手に上に報告するわけにはいかないってことっすね」

 

 なるほどぉ……よくわかんないけど、わかった。

 

『宿主……』

「ほんとに、わかってるっすか? なんか、わかってないっぽい雰囲気しか伝わってこないんすけど」

 

 ものすごく失礼なことを言われている

 

「僕はずっと一人だったしね。組織の報告とか経験したことないし」

「だと思ったっす。まあ、あんたには関係ない話っすしね。あーぁ、ほんと、どうすれば良いんだか……」

(ねぇ、ジグ。ちょっと思ったんだけどさ)

 

 僕は、声に出さずジグに尋ねる。

 

(僕がミッテルトの面倒をみるのって問題かな?)

『さあ、知らね。昔の俺の宿主なら知ってっかも知れねぇけど』

「え、なにそれ、初耳」

 

 僕は、ジグの言葉に、反応してしまう。

 それを不信に思ったミッテルトに疑いの目を向けられた。

 

「何やってんすか? うち抜いて、こそこそなに話してたんすか?」

 

 ものすごい不機嫌、と言うより、警戒されているような気がする……。

 

『そりゃそうだろ。ついさっきまで仲間だと思ってたやつに腹に風穴空けられて、人質にしたやつに助けられてんだ。意味わからなさすぎて笑い話にしかなんねぇよこんなん』

 

 笑い話にもならないよ!! 不謹慎にもほどがある!! 

 

 はぁ、本当にどうしよう。

 




とりあえず、あとは海樹が男気を見せれば話がまとまる。そして、ミッテルトがヒロインになる。

ほんとに、気づけばキャラがラブコメしてるってあるんだなぁ……。
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