それでは、本編どうぞ
手始めに神器オーラって言うのを使おうと思った僕は、神器から溢れるオーラを感知しようとした。
結果は、
「ジグ、神器からオーラ感じないんだけど?」
全く感じられなかった。
それに、ジグは大きな声で笑い、息を整えてから言う。
『そりゃぁ、おめぇ。自分で自分のオーラを探すような真似だ。まあ、今回は俺が神器の能力だったりを扱ってやっから、時間があるときんでも、
「わかった。それじゃ、お願い」
僕はジグに神器を操ってもらい、この山一体に糸を張り巡らせてもらった。
時間換算で数秒。ジグは自身で仙術を扱えることもあってか、山をいちいち駆けなくても、糸を張り巡らせることは可能らしい。
できるだけ、僕もそういうことができるようになりたいけど、仙術の修行なんてどうやってすれば良いのかわからないため、諦めていた。
僕は川に戻ると、ミッテルトが沸騰しある程度食べられるようになってきた山菜を、鉄糸で作られた皿に移しながら、大きなため息をついていた。
「どうかした? 元気無さそうだけど」
「あぁ、海樹っすか、終わったんすね」
ミッテルトの声から活力が感じられない。
本当にどうかしたのだろうか?
「うち、なんで、こんなことしてるのかなぁって。監視につく前は普通のご飯を食ってたはずなんすけどね」
「ごめんね。当分はこの生活が続くと思って。限界迎えそうなら兵藤先輩の家にでもいってご飯もらってくるけど……」
僕がそう言うとミッテルトは『兵藤』という単語に反応した。
ねぇ、ジグ。
(『わかってんよ。こいつぁ、あの変態関連の任務だな。けど、おめぇもさすがにわかってんだろ?』)
そうだよね。僕は契約の関係上、手は出せない。放置しかないわけだもんね。
「うん。もうそろそろ良いかも。適度に灰汁抜きとかしてあるし、ミッテルト料理とかしたことあったの?」
「多少はっすけど。めんどいときはレトルトっす。あぁ、今日からの三日、山菜生活か……」
あ、また、目が遠くなった。
ご飯が食べられるだけありがたいとはおもわないのかな?
「サバイバルしてるみたいで楽しくない? 現代日本だと早々体験できないよ?」
「する必要がないっすからね! あんた……が、どういう生活をしてきたかうちには想像できないっすけど!!」
ミッテルトの口調に違和感を覚える。
まあ、そんなことより朝食だと。ほどよく湯がかれた山菜をお湯ごと水の張ったボウルの上にあるザルに移し、そのザルを取り出し、水を切り、皿にざっと移す。
「んじゃ、いただきます」
僕は手を合わせ、適当に編んだ椅子に座って、手掴みで食べる。
ミッテルトは僕の食べ方に、まるで信じられないものを見たかのような表情で僕と自身の前の皿を見比べる。
「食べないの?」
「なんで、海樹は平気で手掴みなんすか。人間としての尊厳は……って、昨日もこんなやり取りしたっすね」
「ない訳じゃないよ。でも、いきるために必要だから」
「なら、バイトをしろっす!!」
「履歴書かう金がないの」
『バイト代わりっつっちゃぁ、なんだが、生地関連は収集しやすい環境にいるがな』
「それ集めて転売すればいいじゃないっすか!」
「フリマ開かれないと売ることもままならないんだよ。今の時代、『連絡できる環境』が整ってない人は生きにくいの」
『中古を扱う家具、呉服屋で売って、よくて五万、悪くて三千なんてざらだぜ? 服なんざ作れねぇこたぁねぇが、一日一着作ろうと思えば、時間が足りねぇ。ソファー作って、うまく売ってなんとか学費を稼ぐのが限度ってやつよ』
「親戚とかそういうのはどうしたんすか?」
親戚……親戚かぁ……。ジグ、これっていっていいことなのかな?
(『好きにしな。俺ぁ、おめぇの意思に従うぜ?』)
わかった。
「親戚は五大宗家が僕を見つけるためだけに殺したよ。だから、本当に身寄りがないんだ。小、中学生時代にいろんな面でお世話になった人も、僕を裏切ってどこかいっちゃったし」
「……そうなんすね。変なこと聞いて悪かったっす」
「あはは、ごめんね。僕もくらい話して……って、ジグ。今何時? 学校間に合うかな?」
『かっはは、八時前だぜ? こりゃ飛ばさねぇと遅刻だな』
「ごめん、ミッテルト。先学校に行くね!」
僕はミッテルトのワンピースに一本の糸絡ませると、行きのと気と同様の円盤にのり、ジグの運転に身を任せ、学校まで飛んだ。
行きよりも帰りの速度の方が出ていたが、気にしない。気にしていられない。
「ジグ、旧校舎でおろして!」
『あいよ』
僕はジグに旧校舎付近で円盤を下ろしてもらい、下駄箱まで駆ける。
息を整えながら上履きにはきかえると、教室に向かって再度走り出した。
教室の前につき、ドアを開けて室内へ入ると、クラスメイトが一斉に僕の方を向いた。
「ま、間に合った……?」
「ギリギリの到着ですね。丹芽くん」
「ちょっと、朝御飯に手間取ってしまって」
「なんでもいいです。とりあえず席についてください」
僕は自分の席に座ると、大きくため息をついた。
ちなみに、僕の出席番号は一番なので、ドア側の一番前の席だ。
そこから、数分後、連絡事項を聞くホームルームが終わって塔城さんとコーチンが僕のもとによってきた。
「遅刻ギリギリだったな。何やってたんだ?」
「朝飯だよ。軽い山菜摘み」
「なかなか見つからなくて困ったのか?」
「うん。まあ、そんなところ。野草山菜、毒キノコ、食べれるものに食べられないものの見分けなら任せてよ」
「そんなのまで身につけてたのかよ」
「意外と多芸」
「多芸に手芸なんつって」
すると、塔城さんとコーチンはこそこそと何かを話し、
「
と審議結果を下した。
「それじゃぁ、僕が滑ったみたいになるだろ!」
「実際、滑ってんだよ。バカ」
「ひど!? 塔城さんはそう思わないよね? ね?」
「普通の親父ギャグよりまし」
「こっちも辛辣!?」
僕の反応が教室に響き渡り、周りから、なにやってんだ? みたいな目が一瞬向けられる。
「もう、二人のせいだ……」
「そうか、ドンマイ」
「仕方がない」
「僕に対する扱いが悪すぎる……」
僕はゲンナリしたまま今日の始まりの授業を聞き流した。
※※※
そして、お昼休み。
僕は兵藤先輩に連れられ、兵藤先輩のクラスにやって来た。
「どうしたんですか? 僕、まだお昼の調達終わってないんですけど」
「それなら、母さんがお前の分の弁当作ってくれたから安心しろよ」
「また、何か採集したときとか、服とか作ってお返ししないとなぁ……」
「母さんも母さんだけど、お前もお前だよな」
「お礼とかはちゃんとしないといけませんからね」
僕がそういうと、『そうだな』と兵藤先輩も納得した。
「そういえば、兵藤先輩。あのあと、どうしたんですか?」
「剣道部にぼこぼこにされたよ……追いかけてきて、お前もぼこぼこにやられたんだろ? ごめんな。巻き込んで」
「え?」
「え?」
僕の認識と兵藤先輩の認識はどこかずれていたようで、互いに疑問符を浮かべた。
どうやら、兵藤先輩は僕が気絶してからのことを尋ねられたと思っているようで、僕が聞きたかった『告白の返事をどうしたのか』という風に解釈できなかったようだ。
僕はそのことを改めてうかがうと、兵藤先輩はスマホの待受画面を向けてくる。
そこに写っていたのは、日本ならこんな感じの女性はたくさんいるだろうなという感じの女の子だった。
「俺の彼女だ。悪いね。先を越して」
「いえ、それについてはどうでも。そんなことより、兵藤先輩、変なことしてふられるようなことはなしにしてくださいよ。たぶん一生得られない経験なんですから」
「失礼だな、この後輩」
兵藤先輩はそう言って僕の首をホールドするとこめかみをグリグリと拳でねじってくる。
「いたい、痛いです、先輩」
「これは、俺をバカにした分の仕返しだ」
僕らは笑いながらそんなやり取りをした。
そして、松田、元浜先輩のもとにつくと、兵藤先輩は二人にも昨日できた彼女の報告をしていた。
どうやら、明日、兵藤先輩と『天野夕麻』さんはデートするらしい。
僕はなんとなく、二人のデートが心配になったので、兵藤先輩がどや顔を決めているうちに、三人で尾行しようということにした。
(「それじゃぁ、明日の駅前、イッセーが来る前に」)
(「了解」)
(「わかりました。へましないように」)
「おい、お前ら、どうしたんだよ? そんなに俺のパーフェクトなデートプランを覗きみたいのかな? いいだろういいだろう。特別に参考にさせてあげるよ」
う、うぜぇ……
僕たち三人の心の声が重なった気がした。
よし、これは、デートが失敗したら、本気で慰めてあげよう。
僕はそう決心し、松田、元浜先輩と目をあわせて、頷きあった。
※※※
そして、兵藤先輩と彼女さんのデート当日。
「ミッテルト。僕用事あるから出掛けるから、戸締まりよろしくね」
「閉める戸なんてないのに戸締まりとかあるんすか? まあ、うちもこれからドーナシークたちと用事があるんで一緒に出るっすよ」
「あ、そうなの? それで、どこで待ち合わせ?」
「駅前のカフェっすね」
「奇遇だね。僕も駅前にいくんだ。それじゃあ、一緒にいこうか?」
「それもそうっすね」
僕たちは一緒に穴蔵を出ると、駅前に向かっていった。
駅につくと、松田先輩と元浜先輩はすでに到着してたみたいで、「遅いぞ、カイキ!」と叱られた。
そして、ミッテルトと来せいか、二人に「あのかわいいこはお前の彼女なのか!? お前も裏切り者なのか!!」
みたいに言われたので、ただの友達と言ってごまかす。
「なんだ。ただの友達か。それなら、俺たちにも、紹介してくれないか?」
「いやです。ミッテルト傷つけ……られるタイプじゃないから問題なさそうですけど、やっぱり、本人に確認してからじゃないとダメです」
「お、紹介はしてくれるのか!?」
驚いた様子の元浜先輩に、「ミッテルトがいいって言ったらですよ」と釘を指しておく。
そんな会話をしているうちに兵藤先輩が到着してたみたいで、落ち着かない様子で、彼女さんの到着を待っていた。
兵藤先輩がふられたら、今度からイッセー先輩と呼ぼう。
読んでくれてありがとう。
今回は、特に変化のない日常回を意識して書きました。
前回、妖人化のリスクについて話したので、わかっていると思いますが、あの形態をとるためには寿命を戻すとかしないといけません。
とりあえず、ようやく原作一巻のプロローグが終わりそうなので、次回の描写が終われば、本当の意味で本編に入れますね。
準備期間が長すぎた……。
それでは、また次回、お会いしましょう。