MAGICA GEAR EDIT 作:ローランゲート・ぺろぺろ丸
ハル・エメリッヒは今回の事件において重要な人物だ。
彼の情報収集能力は、決して侮れるものではない。
一つ、彼を擁護するなら、今回は相手が悪かったと言うべきなのだろう。
ひよこでは、鶏には敵わない。
17話
1980.??.??
ベッドの上で目が覚めた。
どうやら、ここは自分の家ではないらしい。
少女はボンヤリとする意識の中で、何故見知らぬ場所にいるのかを考えていた。
確か、昨日は少女の誕生日であったはずだ。父と母に手を引かれ、素敵なプレゼントをもらった。
大好きなケーキを焼いてもらい、そこに蝋燭を突き立てる。照明を落とし蝋燭に火をつけて、ハッピーバースデイ。少し音を外して歌う父の歌声が可笑しくて、嬉しくて。
歌の終わりと共に、火を吹き消した。もしかしたら、少しフライング気味だったかもしれない。それほどにケーキが待ち遠しかったのか。
しかし、その瞬間に脳裏に映像が現れた。沢山の情報に頭を抱えながら、予想していない激痛に叫んだのか、それすら覚えていない。
薄れる意識の中、両親がパニックになっていた光景があった事を、今ベッドの中で思い出した。
それと同時に、頭痛の原因も。
目覚め、混同していた意識が纏まる。
自分が、少女自身であり異物であることも理解できた。
どうやら、少女は前世の記憶があるようだ。
記憶と意識は、今までの少女の全てを吸収して取り込み、一つの新たな意識としてここにいる。
幼い外見の少女の中には、数年間の少女の思い出を記憶している数十年生きた前世の女性の意識が宿っていた。
元々肝の座った人物だったのか、少女は取り乱す事なく冷静にこれまでの経緯を思い出す。思い出して、息が溢れた。
両親になんて説明をするべきか。少女の心境としては、今の少女の現状を説明したいところだが、そんな簡単に出来るとは思えない。
だが、両親が今まで接してきた少女は既にいないと考えてもらったほうがいいのも事実だ。
悩み、悩んで…黙って置くことにした。
本当は教えるべきだったのだろうが、それを行った際のデメリットを考えてみたのだ。
受け入れてくれる家庭など少数だろう。下手をすれば捨てられるかもしれない。正規の手続きの元施設へと預けられればありがたいが、適当な場所で捨てられても困る。
少女が住んでいたのは日本ではなかった。前世である女性は、海外へ行った経験はない。少女としての記憶も、そこまで遠くへ足を運んだ思い出は無かった。
こんな所で捨てられても、生きていける自信は彼女にはなかった。
心配する両親に笑顔で大丈夫だと説明し、すぐに退院した。よくわからないまま始まった第二の生だ。少女には申し訳ないが、堪能させてもらうとしよう。
それから数年の時が過ぎた。どうにも生まれてきた年代のせいだろうか。前世よりも以前に生まれてしまったので、望んでいる娯楽にありつけず苦労した。しかし、これはこれで味があると納得すれば、それ程苦痛では無くなっていた。
勉強もそれなりにできた。しかし、どうにも自分が知っている歴史と噛み合わない。ジョージ・シアーズなんて大統領いただろうか。よく思い出せない。
そんな事を考えていた時、両親が死んだ。
病院でのテロ事件だった。もうすぐ弟ができるのよと笑っていた母の検査入院の日だった。
いきなり全てを奪われ、涙すら出なかった。
親戚すらいなかった少女は、そのままホームレスまで転がり落ちた。
そんな生活がしたくなかったから前世の記憶を黙っていたというのに、まだ子供といえる年齢でこうなってしまうとは思わなかった。笑える話だ。
とにかく、生きなければならない。
盗みを覚えるのは早かった。幸い、足には自信があった。店を転々と変えながら忍び込めば、大体は無駄な体力を使わずに腹を満たせた。
寝床の確保は少々厄介だった。同類は徒党を組んで襲ってくるため、1人では対処のしようがなかった。
そんな事を繰り返しながら、最終的に身体を売る事を実行した。碌に食えていないヒョロヒョロの餓鬼の身体でも、好き物には堪らないらしい。この頃から、少女の倫理観は壊れていった。
今日の客は中々に上物だ。何やら軍人らしい。
幾ら子どもの体力があろうとも、鍛えた大人の男に叶うはずもなかった。いつもヘトヘトにされる。
事が終わり、人の温もりに甘えながら男の話を聞く。どうにもこの男、懐いた素振りを見せてやれば簡単に懐へと入れてくる。今じゃ、父親面で話をしてくるのだ。
妻子はいないらしいが、もしいたなら自分の子どもぐらいの年齢の少女に欲をぶつける異常者。そんな自覚すらないとは、笑わせてくれる。
だが、聞いてやればもらえる金も増える。少女にとっては、金蔓でしかなかった。
今日も、男の話を聞く。正直、目を見開くような話だった。
それは、昔の話。20世期最強の兵士と呼ばれる男の話だ。その男の事を、少女はよく知っていた。
ビッグボス。それが、その兵士の通称らしい。
少女の中身である前世の女性の記憶が蘇る。それは、有名なゲームのキャラクターの事。
この世界は、そのゲームの歴史をなぞる世界だったのだと、少女は初めて知ったのだ。
☆☆☆☆
2011.10.02
深夜。
杏子と花火が寝静まった頃、ハルとヘンリーは資料に線を引きながらパソコンを睨みつけていた。
ソファーでは、スネークが目を閉じて身体を休めている。実年齢よりも衰えた肉体は、想像以上に上手く動いてくれないらしい。
このリストの中のどれかに、ベルトラインの潜伏地がある。もちろん、メタルギアも核も一緒に。それを見つけるのが、今の彼らの仕事だった。
「…そういえば、君はCIAだったね。ヨゾラ・マツリの事は詳しいのかい?」
膨大なリストを虱潰しに探す中、気を紛らわせるつもりで、ハルが質問を投げかける。
その言葉にヘンリーの動きが止まり、少しして言葉を返した。
「…何度か、彼女と仕事したくらいです。息子の話は、その時に…。」
「ハナビの事も?」
「えぇ。ベルトラインは、元々彼女が優秀な工作員を育てるために作られた部隊でした。表向きには、私設傭兵部隊として登録されていましたがネ。」
「なら、彼女の死については…。」
「詳しくは…しかし、当時の任務のことなら覚えていますよ。」
その内容に、ハルは目を見開いた。それは、ハルやスネークにとっても、身近な話だった。
彼女の最後の任務。それは【FOXHOUND】の内部調査。
実戦部隊リーダーである【リキッド・スネーク】を中心とした数名の特殊部隊員の動きに不審な点があるとの情報があり、彼女はその調査に動いていた。
「遺体は発見できず。残されたのは腕だけでした。痕跡を探しましたが、それらしいものは何処にも…。」
「まさか、彼女がリキッドと対峙していたとは…。」
「彼女は私の目標でもありました。ユーモアな人でネ。そんな彼女の死を、ハナビに伝えたのも私です…。」
当時を思い出すかのようにヘンリーの目が細まる。その表情には、少しばかりの後悔が見えた。
「信じられないと呟く彼の顔は忘れられない。今更ですが、酷いことをしたと思います。」
「仕方ないさ。ハナビには、それを伝えてくれる親族はいなかった。」
「それでも、ですよ。彼を孤独にしてしまった。あの時、偶然彼に会った時…成長した姿に、思わず泣きそうになりました。」
公園での一幕。彼を食事に誘ったのは、ヘンリーにとって贖罪の意味もあったのかもしれない。
多少捻くれてはいたが、それでも歪まずに育っていた姿が嬉しかった。
「しかし、まさかこんな形で再会するとはネ…。」
「…そうだね。」
血の宿命か。
ヘンリーは知らぬ事だが、ハルにはその理由がなんとなく理解できる。
かつて、スネークがそうであったように。
花火もまた、その逃れられない世界の闇に立ち向かわなければならなくなった。
逃げても、逃げても…まるでその行動を嘲笑うかのように彼らの前に壁として立ち塞がる。乗り越える以外の選択肢はない。
「それに、あの英雄と会えたのもよかった。」
「英雄か…スネークが聞いたら、そんなんじゃないと否定するだろうね。」
「私にとっては不変のモノですよ。何より、ヨゾラの仇を討ってくれたのは彼だ。」
知らない事を感謝されても困るのだが、それでもヘンリーはやめないだろう。
彼の横顔から、ハルはそう考えた。
「…さて、僕たちは彼らが眠っている間に、この中からベルトラインを見つけようか。」
「はい。」
夜は白んでいくが、ハルとヘンリーが眠りにつくのはまだ先のようだ。
☆☆☆☆
「…これで全部よ。」
白にカラフルな椅子が置かれた不思議な空間。暁美ほむらの家で、まどかとさやかは彼女の物語を聞いた。
学校での一幕。それ程魔力を使ったつもりもないが、予想より穢れの溜まったさやかのソウルジェムを回復させる為にほむらは2人を家へと招いた。
まどかに自宅へ連絡させ、友人の家に泊まる旨を伝えさせる。ほむらとしては家に帰ってもらいたかったが、先程の事がある為にその選択肢が取れない。
ほむらの家でさやかのソウルジェムの穢れをグリーフシードへと移す。幸い、魔女狩りの成果もあってか数には困らない。
それよりも、この状況でさやかを失う事の方が不利益だと考えた。
ほむらにとって未知の敵がいる以上、今までのように一人でどうこう出来るとは考えられない。まどかを守る事が出来るなら誰であろうと切り捨てるつもりだが、自分1人で対応出来るかの確証が持てるまでは数は必要だ。
夜も遅い。2人には、早めに眠る事。明日、話をする事を伝え、10月1日は終わった。
次の日、身支度を整えテーブルを囲む。ほむらは、今後の事も考え自らの経緯の説明を始めた。
始まりの希望から、今の絶望まで。
意外だったのは、さやかが静かに聞いていた事だろうか。彼女の事だから、一つ一つ大きなリアクションがあるかと思っていた。
残酷な事であるが、魔法少女の末路も伝えた。魔女という存在の真実も、今は話すべきだと考えた。
話し終えた後、沈黙が続く。
少しして、誰かのすすり泣く声が聞こえた。
さやかは思わず隣に座っているまどかを見る。溢れる涙を何度も拭いながら、まどかは声を抑え泣いていた。
「…まどか?」
そんな光景に、思わずほむらの口から彼女の名が漏れる。
「ごめん…っ。ごめんねぇ…!私の…っ、私のせいで…っ!」
泣いている。
過去の鹿目まどかとの約束を果たす為、終わらない時間の中を歩き続けるほむらの事を想い、今の鹿目まどかは泣いていた。
彼女の中にあるのは、唯々ほむらを地獄のような苦しみを与えているであろう自分への懺悔だ。謝っても許されない事をしたと、まどかは考えている。
「…違う。違うわ!」
それが、ほむらには許せなかった。
「私は、貴女に救われたの!何にもできない、ひとりぼっちだった私を救ってくれたのは貴女なの!」
思わず立ち上がった。
今も、ほむらの為に泣いてくれている彼女の優しさが嬉しくて。
今も、自分の言葉がほむらを苦しめたと考える彼女の優しさが悲しくて。
「臆病で、卑怯な私を、それでも…っ。友達だと言ってくれた貴女だから、だか、ら…っ!」
まどかを抱きしめる。暖かい、彼女の温度がほむらに伝わる。
生きているのだ。今、まどかは。何度も、救い損ねた命が、何よりも守りたい友達がここにいる。
しばらく、そのまま時間が過ぎた。
まどかが落ち着いた頃、ほむらもゆっくりと彼女から離れる。
名残惜しいが、まだ話は終わっていない。
「…ごめんなさい、取り乱したわ。」
「いや、うん…。私は大丈夫。」
少し気まずそうにしていたさやかは、歯切れ悪そうに言葉を返した。
今の光景を見て暁美ほむらに敵意を抱けるほど、美樹さやかという人間は出来てはいない。
それよりも、今までよりも信頼できる人間だと思えるようにはなった。
隣にいるまどかも、何やら恥ずかしそうにしている。
その姿がとても保護欲をそそるというか…。空気を読まなくていいのであれば、写真を撮って残しておきたかった。
「…私の話は、これで終わり。次は貴女の話を聞かせてほしいわ…質問があるなら、それからでも構わないけど…。」
「…うん。まぁ…とりあえずは、魔女の事…何だけどさ。…ホント?」
切り替え、次の話に向かう。といっても、さやかが聞きたいのは一つだ。それは、魔法少女の真実について。
魔法少女は魔女になる存在である事。
「えぇ、本当よ。インキュベーターは、それを意図的に話さないまま契約を持ちかけるの。そして、ソウルジェムの穢れが溜まれば…魔法少女は魔女になるわ。」
インキュベーター、キュウべぇの目的。
それを聞いたさやかの胸に飛来するのは、抱えきれない程の後悔…ではなかった。
「…そっか。」
「さやか、ちゃん…。」
辛い事のはずなのに、苦しそうには見えないさやかをまどかは心配する。まどかの前だから強がっているのではと考えたが、さやかはそんなまどかに笑いかける。
「大丈夫だよ、まどか。私はさ、後悔なんてしていない。そりゃ、確かに驚いちゃったけどさ…後悔なんて、あるわけない。」
それは、さやかの本音だった。
大切な幼馴染みを助けたいが為に願ったのだ。
大切な幼馴染みを助けられる力を願ったのだ。
向かう先が絶望だと決められたとしても、さやかはそうは思わない。だって、それを乗り越えようとしている人間を知っているから。
祭花火がそうであるように。
暁美ほむらがそうであるように。
なら、美樹さやかは諦めたりしない。ハッピーエンドのチャンスは、まだ取りこぼしてない。
「…そう。なら、聞かせてくれる?」
「うん。まどかに話すのは花火に止められてたけど、あいつらが狙ってくるなら、もう他人事じゃないしね。」
そうして、さやかは話し始める。
祭花火が巻き込まれているであろう事件の事を。自分が聞いた限りの話ではあるが、その全てを話すことにした。
「まず、花火が巻き込まれている事件の大きさ…というか、そこから面倒なのよね。」
「…どういうこと?」
「いや、私も花火から聞いた話だけじゃうまく説明出来るかわかんないんだけどさ…。メタルギアってわかる?」
「…まぁ、少しくらいなら。」
「良かった。それが見滝原市にあって、核を撃つかもって話なのよね。」
「…は?」
「へ?」
教養程度ではあるが、まどかとほむらだって核兵器くらいわかる。特に、日本はその被害がどれほどのものだったかをしっかりと後世に伝えている為、多少勉強ができなくても耳にはいるのだ。
それがこの街で作られて、尚且つ撃つといったのか、彼女は…?
「それで、向こう側に魔法少女がいる事がわかったから、花火は私やマミさん。後1人に声をかけたの。その時に、花火がループしてるって話も聞いたんだけど。」
「…それ、態々相手を刺激する事なの?」
「花火がいうには、10月16日にメタルギアが街で暴れまわっていたって…。」
ほむらが過去の記憶を掘り起こす。そして、あの時の花火の行動が初めて理解できた。
彼は、目に見えないワルプルギスの夜よりも、直接的脅威であるメタルギアからまどかを守ろうとしたのだろう。
あの場に必死の表情で現れた理由がやっと理解できた。
「…続き、話してもいい?」
「…えぇ、お願いするわ。」
「メタルギアに関しては、専門家って事でスネークっていうお爺さんとオタコンさんって人が来てる。シャドーモセス…だったかな?」
「…もしかして、【シャドーモセスの真実】?」
「そう!その本に載ってた人が来てるみたいでさ。」
シャドーモセスの真実を読んだ事のあるほむらは、ここまでの法螺話のような展開が真実味を帯びてきた事を理解した。
あくまで本の知識でしかないが、彼の行った偉業は正に英雄と呼べるだろう。
そんな人物が、この街でメタルギアを探しているなんて、冗談だと思いたかった。
「私は、花火に言われてまどかと一緒にいたの。花火の経験したループじゃ、いつもまどかは危険な所にいるからって…。ごめんねまどか、黙ってて。」
「ううん。私の方こそ…。でも、どうして私を狙ったんだろう?」
まどかの疑問は最もだった。まどかは魔法少女ではない。メタルギアとの関係も全く無いはずなのだ。そんな彼女が狙われる理由が、思いつくわけもない。
「…恐らく、祭花火と親しい仲だからじゃないかしら?」
「わかんないけど、それはあるかも。まどか、あの時何で花火の家にいたの?」
「えっと…、キュウべぇに、花火君が魔法少女との戦いで怪我をしたって聞いて…。」
その言葉に、ほむらは怒りを飲み込んだ。インキュベーターは、どうしても彼女を魔法少女にしたいらしい。
「魔法少女にする為に、敢えて危険な場所へ送り込んだって事ね…。」
「じゃあ、あの兵士みたいな奴らって…。」
「インキュベーターの仲間の可能性が高いわね。さっきのメタルギアを持った敵の魔法少女達は、まどかを狙ってる。」
まどかの脳裏に、あの時の恐怖が思い出される。無機質な印象を受ける大きな人と、異様な少女。
そのなにも映さないような瞳が、怖くて仕方がない。
震える彼女の手を、さやかが優しく握る。
「大丈夫だって!なんかあったら、私がまどかを守るからさっ。」
「…うん。ありがとう。」
申し訳なく思うが、その言葉に救われたのは事実だろう。さやかの笑顔が、まどかから恐怖を奪い去っていく。
「問題は、どうやって花火と合流するかよねー。」
「電話は繋がらなかったよね…。」
「彼は、マメに連絡を返すタイプなの?」
「いや、いつも平気で無視してくるわよ。」
「うん、いつも早めに帰ってくるかな。」
さやかとまどかの意見が分かれ、沈黙が訪れた。ほむらは思わず頭を抱え、ため息が漏れる。
「え、マジ?私の時は帰ってこない事の方が多いわよ?」
「えっと…。あんまりそんなことはない、かな?花火君。意外と几帳面だし。」
「あいつ…っ。」
さやかの怒る姿に、ほむらは久々に同情した。そういえば、まだ学校にもちゃんと通っていた頃は、花火とさやかの言葉て殴り合う光景を何度も見たのを思い出した。側から見ていればちょっとした娯楽にもなるのだろうが、当の本人からすればたまったものではないだろう。
「…それで、どうするの?」
「正直、何処かにはいると思うんだけどね。昨日は、東京の病院に行くって言ってたから。」
「…東京の病院?」
「そう。矢崎ってお医者さん…元お医者さんだっけ?その人に、花火の手術の件で話をするみたい。」
「矢崎…。もしかして、矢崎茂雄先生のこと?」
「え、知ってんの?」
「彼は私の主治医よ。といっても、途中で病院を辞めてしまったけど。辞めてからも、定期的に顔を出してくれていたわ。」
祭花火と暁美ほむらに思わぬ繋がりがあった。ほむらもあの病院には長いこといたが、あのような目つきの悪い少年に会った記憶はない。一体、いつ頃の話なのだろうか。
「連絡が途絶えたのは、その後?」
「多分。後で何かしらの連絡があると思ってたから、私からは連絡してなかったし…。」
「…花火君。あの人たちの仲間に襲われた、とか?」
「だ、大丈夫だって!マミさんがついてるし、ムカつくけどマミさんレベルの奴ももう1人いるしさっ!」
「もう1人って、もしかして佐倉杏子?」
「そっちも知ってるんだ。」
ほむらの中の疑問が増える。
ほむらの知る佐倉杏子は、自分に利益が無ければ動かない人物だ。今回の話、確かに見滝原どころか日本という国自体が危うくなる可能性もあるが、彼女が態々それを阻止しようと動くタイプとは思えない。
「佐倉杏子は、いつからそっちにいるの?」
「…多分、最初からいるんじゃないかな?私が花火君の家に行った時にもいたし…。」
「…え?まどか会ったの?」
「う、うん。本当かどうか分からないけど、花火君の彼女だって…。」
「はぁっ!?」
今度こそさやかは大声をあげた。
ほむらとしても、かなり驚愕の事実である。
まさか花火も杏子も、あの時の嘘がここまで長引いてさやか達に伝わるとは思っていなかっただろう。
「か、彼女!?冗談でしょ!?」
「え、えっと…。多分、嘘だとは思うんだけど。今回の話を隠したかったみたいだから…。でも、仲は良さそうだったよ?」
「…佐倉杏子の事は一応知ってはいるけど、彼女の性格上考えにくいわね。」
「つーか、まどかがいながらなんで浮気してんのよあいつ!」
「さ、さやかちゃん!?私と花火は、まだそんな関係じゃ…!」
「う、浮気!?どういう事よ美樹さやか。答えなさい。」
2人に凄まれ、まどかは顔を赤らめて慌て出す。ちゃっかり「まだ」と言っている辺り、淡く可愛らしい願望が見えてしまっているが、2人にとってはそれどころではない。
美樹さやかは、まどかと花火の仲の良さからして既に付き合っているものだと思っていた。それもそうだ。普通、異性の男の子の家のスペアキーなんて持ってる事の方が少ない。漫画やアニメではないのだ。
暁美ほむらは、過去のまどかから良く花火の話を聞かされていたので、まさか浮気するような男だとは考えてもいなかった。これは、ほむらに対する酷い裏切りだとも取れるだろう。決して、許されるものでもない。
「彼には、しっかりと話をする必要があるわね。」
「ほむら、私も協力する。あのバカは一回懲らしめないといけないって分かったから。」
「ち、違うのっ。花火君と私はまだ付き合ってないの!」
こんな所で、協力関係が結ばれるとは思わなかった。しかし、女の敵を躾けるには数は多い方がいい。まどかは必死に止めているが気にしない。
「…でも真面目な話、あんた一人で花火に会うのは拙いかも…。」
「…どういうこと、かしら?」
「花火の奴、今回の事件にループさせてる魔法少女が絡んでるって思ってるから、私がいないと襲ってくるかも知れない。」
「…なる程。」
「まどかの事もあるし、花火を探すならとりあえずは一緒に行動した方がいいと思う。」
祭花火は、時間を操る魔法少女を敵として定めている。何度も時間を巻き戻し、その中で動く花火を嘲笑っている…。花火は、そう考えているのだ。
もし、ほむらが一人で現れたとしたら、彼は冷静さを失って向かってくるだろう。
「…わかったわ。向かう場所はどうするの?」
「正直、私は花火とマミさん以外の連絡先を知らないし、昨日の夜にマミさんにメールしたけど返信もなかった。今のところ、歩いて探す以外に思いつかないのよね…。」
「…もしかしたら、私知ってるかも。」
まどかの思わぬ発言に、2人の視線がまどかへ注がれる。
どういう事なのかはさっぱりだが、ほむらはまずその訳を聞こうと思った。
「どういうこと?」
「オタコンさん…さっきさやかちゃんが言ってた人なんだけど、昔花火君が家に来ることになった時に家に来たことがあるの。もしかしたら、ママかパパが連絡先を知ってるかも…。」
「なるほど…。でも、どうやって聞き出す?真面目に答えても取り合ってくれないと思うし…。」
「…わかったわ。なら、私にいい考えがある。」
ほむらは立ち上がり、髪をかきあげる。その様になっている行動に2人がポカンとした目で見つめているが、彼女の中では既に入手までの手順は完成されていた。
「私なら、誰にも気づかれずに手に入れられるわ。」
自衛隊を絶望に落とした強奪犯が、今新たな標的を見定めた。
ワルプルギスの夜「出番まだ?」
ロンゲ「後1ヶ月待って」
ワルプルギスの夜「!?」
てな訳で、今回はほむらサイドの話でした。もっと仲良くさせたいですね(ワイン)
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後、誤字報告いただきました。名前とか載せていいかわかりませんので伏せさせていただきますが、本当にありがとうございます。