MAGICA GEAR EDIT 作:ローランゲート・ぺろぺろ丸
彼はグリーフシード・メイクの判明している適合者の1人である。周囲の薄い要素だけでは不完全だが、ソウルジェムの穢れを取り込むほどに、本来の機能を発揮してくれるだろう。
22話
2004.08.21
「花火ってすごいよね。」
上条恭介が呟いた言葉に、祭花火は首を傾げた。
夏休みも終わりに差し掛かる時期。いつものように外をぶらついていた3人。美樹さやかがお花を摘みに席を外し、その間2人きりになった時の事だ。
公園のベンチで座る恭介が、サッカーボールを器用に操る花火にそういった。
「何がだよ?」
「いや…。僕はそこまで運動が得意じゃないからかもだけど…。花火がサッカー始めたのって少し前だったよね?」
「んー…。多分、2か月くらいだな。」
恭介とお喋りしながらも、ボールは地面に落ちる事なく花火の足の上で跳ね続ける。ボールが視界に入らなくても、感覚で操れてしまう才能が花火にはあった。
「わからないけど、そんな簡単なモノじゃないと思うんだよね。」
「そうか?でも俺、お前みたいにバイオリン出来ないぞ?」
「そんな簡単に出来たら、僕自信なくしちゃうよ。それに、花火は音楽全般がダメだもんね。」
「前より上手くなったと思うんだけどな…。」
音楽の授業中、リコーダー1本でクラスに悲鳴を上げさせたのは花火くらいだろう。それほどまでに、彼は音楽との相性が悪かった。
決してリズム感が無いわけではない。しかし、事奏でる事に関しては努力ではどうしようも無いレベルで壊滅的だった。
その反動なのか、音楽の才能以外には恵まれていた。唐突に始めたサッカーも、初めてすぐにボールを操れるようになり、所属したチームではレギュラーが決まったそうだ。まるで、アニメのような急展開である。
「大体、なんでサッカーなんて始めたの?そんなに興味無さそうだったけど…。」
「母さんがサッカーする人が好きだって言ったから。」
「花火ってホントにおばさんの事好きだよね。」
花火の即答に、恭介の顔に苦笑いが浮かぶ。
祭花火は初めて会った時からそうだが、本当に母親が大好きな少年だった。
もちろん恭介だって両親が大好きだが、男の子としてそういうのは少し恥ずかしく感じる事もある。
それなのに、花火はそれを恥ずかしがる事は一切ない。
「変か?」
「ううん。花火らしいよ。」
不思議そうな彼に、恭介は思う。
花火の世界の殆どは、母親しかしない。
友人である恭介やさやかだって、花火の大事なモノの中にいる自信はあるが、母親は違う。
なんというべきか、核なのだ。
祭花火は、母親が中心だ。
母親がこれが好みだと言えば、それが花火の好みになる。
母親が面白いモノだというモノが面白いモノになる。
今回のサッカーも、母親が好きだと言ったから始めたのだ。
まだ幼い恭介だが、音楽の道を歩む過程で他の子たちよりか早熟な面があったりする。
花火も、どちらかといえば落ち着いた性格をしているが、それは彼の母の好みのイメージだからそうしているだけだ。彼自身は、負けず嫌いの強い子どもだ。
その違和感が、どうにも花火を気味の悪い存在に見せてしまう。それが、まるで自分が花火を嫌っているようで、恭介は何となく嫌になった。
☆☆☆☆
2011.10.04
バイクのエンジンを止める。ヘルメットを取り、ハンドルに引っ掛ける。
ここまでの道筋。誰にも怪しまれず来れたのは運が良かった。検問があった事で、それを見つける度に別の道を使った為多少時間は掛かったが…。
それでも、目的地に辿り着けたのは幸運だろう。
それが、良い事なのは別として。
黒く煤けた表札が、入り口に入る前に目に入った。KEEP OUTの黄色いテープを潜り、既に半壊した玄関へ侵入する。
リビングで最初に目がついたのは、皆で食卓を囲んだテーブルだ。タツヤ専用の椅子の足が、一部燃えて無くなってしまったのだろう。三脚になってバランスが保てないのか、背もたれがテーブルに引っかかり、何とか倒れずに済んでいた。
カウンターキッチンに目を向ける。知久やまどかと共に、詢子の為に美味しい料理を作ろうと奮闘したことを思い出す。まどかと花火2人で協力したが、やはり主夫には敵わないものだ。その後に2人同時に頭を撫でられ、恥ずかしくて顔を逸らした事は今も忘れられない。
ここだけでも、沢山の思い出があった。燃えて崩れた家具の一つ一つが、過去の幸せを思い出させる。
でも、それも終点にたどり着いてしまう。
ソファーと、小さなテーブル。
黒い人型が、寄り添いあって座るソファー。それが誰なのか、解りたくなくても理解させられる。
テーブルに乗った人型が何なのか、考えたくもないのに思考が答えを出してしまう。
どうにも、自分はおかしくなってしまったらしい。花火は、今の己の状態をそう判断した。
涙がでない。目を逸らしているわけでもない。現実逃避もしていない。悲しみも、怒りも、湧かない。
狂ってしまっていないなら、それはそれで最悪だ。祭花火という人間は、ここまで冷たい人間だったのか…。そんな皮肉に、笑みが浮かぶ事すら無かった。
ここに来るまでは震えていた指も、テーブルの炭に触れようとした時には止まっていた。
壊れないように、壊さないように…ゆっくりと顔らしい部分に指をなぞらせる。
他人事なわけが無い。この小さな口で、嬉しそうに自分の名を呼ぶ幼児を覚えている。その無邪気な笑顔が、記憶に張り付いている。
その場に座り込み、原型の残った小さな手に触れた。中途半端に地面から離れた手を、両手で崩さないように包む。
「………ごめん、なさい。」
それは、なんの謝罪なのか…。花火自身、答えはでない。本当は、そんな事を言う為に来たのでは無い気がするのに、それしか言葉が出なかった。
立ち上がり、家族から背を向ける。ここで花火が出来る事は、もうないから。
テープの外へと出て、もう一度家の方に振り返る。この光景を忘れてはならない。そう、誰かに言われた気がした。
「……祭さん?」
聞き覚えのある声に、花火は首を戻す。そこにいたのは、まどかやさやかと仲の良かったクラスメイトだ。
「…志筑…?」
私服姿の志筑仁美は、何か驚いた様な目で花火を見ている。花火の感覚では、かなり久しぶりに顔を合わせた気はしているが、仁美の感覚ではそれほどでもない筈だ。
「…お、お久しぶりです、ね…。」
「あぁ、元気だったか…?」
「は、はい…。いえ、そうではありませんっ。貴方、今まで何処に行っておりましたの?」
仁美は、少し怒った様な…いや、実際に怒気を含めた態度で花火に詰め寄る。その怒りの理由が、花火には理解できていなかった。
「何処、と言われてもな…。」
「貴方が居なくなって、まどかさんはずっと悲しそうでしたし、さやかさんも学校に来なくなって!こんな事に…っ。」
花火はここで初めて、仁美が何を持っているのかを確認した。色とりどりの綺麗な花束。表札の下にも、そう言ったものがチラホラと見える。
悲しみに表情を歪める彼女に返せる言葉を、花火は持ち合わせていなかった。
彼女の進路を開けば、仁美は花束を表札の下に置いた。手を合わせ頭を下げる。
「…今日は、1人で来たのか?」
仁美の背中から花火の声が聞こえた。一度深呼吸をして、気持ちを落ち着かせてから振り返る。
仁美と目があった途端、花火は目を逸らした。
「…はい。ここ最近の事件で、外出は控える様言われていましたが…。」
「抜け出してきたのか、危ないぞ。」
「貴方こそ、ずっと何処にいたんですの?」
「…。」
「答えられない、ですか。まさか、まどかさんも一緒に…?」
「いや、鹿目達と一緒にはいない…。」
花火の歯切れの悪い受け答えに、仁美は何かを察した。今回の事件の事や友人達の事について、何らかの情報を持っていると言う事に感づいた。
それに気づいた上で危険だからと身を引けるほど、志筑仁美は臆病でも大人でもなかったのだ。
「…何があったのか、ご存知なのですね。」
「知らない。」
即答だった。だからこそ、疑問は確信に変わる。
「教えてください。何があったのか…。」
「…もう帰れ。最近は物騒だろ?」
「ニュースでまどかさんの家が火事になった事が報道された時、貴方の家で騒動があった事も聞いています。貴方は何処へ帰るおつもりですか?」
「俺の事は気にしなくていい。早く帰れ。」
「お断りします。私、貴方の事も心配ですから。」
「いい加減にしろよ…?」
威嚇する様に、花火が仁美を見下ろした。普段よりも眉間にシワを寄せて、心底機嫌が悪いといった表情で花火が睨みつける。そんな彼に一度身体を震わせる仁美だが、臆さない様になのか彼女も同じように花火の顔を睨みつけた。
「お前には関係ない。家に帰ってジッとしてろ。」
「関係ない事ありません。彼女達は、私の親友です。」
「だからなんだ?ただの中学生のお前に何ができるってんだよ?」
「それなら貴方も同じではないですか?」
「っ…俺は…違う、違うんだよ…。」
ただの中学生。
つまらない授業を欠伸を噛みしめながら受け、その後学友との雑談に花を咲かせる。放課後や休日には、皆で何処かへ遊びに行く。
そんな世界で生きてきたはずだった。はずだったのだ。
確かに、退屈ではあった。平穏な日々に飽きが来ていたのは事実だった。
しかし、こんな展開など望んでいるわけがない。
いつの間にか、非日常に慣れている自分がいる。銃を持ち、殺し合いに巻き込まれ、命のやり取りを経験した。
今では、襲ってきた相手とはいえバイクの強盗だ。最早、世間一般の普通とはかけ離れてしまっている。
「…とにかく、早く帰れ。放火魔ってのはもう一度現場に現れたりするらしいからな。」
「…何故、放火された事を知っているんですか?」
仁美を早く帰そうと思ったのか、花火は会話を打ち切ろうとした。しかし、此処でミスを犯してしまう。
仁美の問いかけに、花火の足が止まった。確かに、ここ数日ニュースなんて見れる環境ではなかった。だが杏子の話を聞いた限り、放火としか思えなかった。
それは、この家を襲った犯人を知っているからだ。
仁美はもちろん、この事件に関わりの無い人間は誰も知らない。ニュースを通しての警察の発表も、此処一連の事件からその可能性があるだけで、まだ確定はしていない筈なのだ。
だが、花火の口調はまるでそう確信しているかのようだった。
実際、花火はそうだと確信している。自然発火や火の不始末なんてあり得ないと考えている。だが、仁美や他の人たちはそんな情報分かるわけがない。
世間で公開されている情報には、火事になった事、家族3人が亡くなった事だけが報道されている。つまり、明確に『放火』だと報道はされていないのだ。
余計なことを言ったのだと気付いた花火は顔を顰めた。こういった時、志筑仁美という人間がどんな対応をするのかを花火は知っている。それのおかげで、3度目の時は本当に救われた。
だからこそ、ここは遠ざけなければならない。
「…俺の勘違いだ。すまない。」
「あり得ません。まどかさん達の事で、貴方がそんな事をするとは思えません。」
「お前は…っ。全く…さやかも鹿目もそうだが、何でそんなに頑固なのか…。」
「言っておりませんでしたか?私、ただ蝶よ花よと愛でられただけの女ではありませんの。」
力強い意志の籠もった仁美の笑顔に、顔を背けたくなる。それは、彼女のその強さに甘えたくなってしまったからだ。
前回は、スネークがいてくれた。彼が駆けつけてくれなければ、仁美は酷い暴行を受けたに違いない。それを止める力は、花火には無かった。
今なら、あの程度のチンピラ程度ならどうにかなるかもしれない。しかし、花火が対峙する敵とはそんなちっぽけな連中では無いのだ。
花火は頭を悩ませる。本当なら、彼女には引いてもらいたい。しかし、この事がきっかけで勝手に動かれても困る。
どうするべきか、それを考える時間は
「…祭さん。後ろの方はお知り合いですか?」
花火に残されてはいなかった。
「…っ!?」
咄嗟に振り返り、仁美を庇うように立つ。後ろにいたのは、ドレッドヘアーの女。
病院から逃げた時に立ち塞がった、ベルトラインの兵士の1人。
「ブラインド…っ!」
「ハナビ・マツリ。いい成長をしたようだ…。」
【ブラインド】は、自らのコードネームを口にした花火に対して薄く笑った。
花火は、ジーンズの後ろ側に挟み込んでいたM9を引き抜き構える。
花火が手にしたそれに、仁美は驚きを隠せないでいた。
「ま、祭さんっ?どうしてそんな…っ!?」
「志筑、後で話してやるから少し黙っていろ…っ。」
「しかし、まだ反応が鈍いな。殺す事に躊躇しているのか?」
「テロリストとは違うんだよ。普通の人間は、平気で人を殺したりしない…っ。」
左手で銃を握り、右手で仁美を庇いながら後ろに下がっていく。仁美も、この異常事態に頭が混乱しているが、何とか冷静になろうと自分に言い聞かせながら花火の誘導通りに下がっていく。
目指すのは、止めているバイクだ。
「ふむ…。犠牲は大きいが、着実に前に進んでいるようだ。」
「お前の意味の分からん戯言にはうんざりだよ。」
「受け入れなければならない事もあるだろう。お前も気付いている筈だ。」
怒りの感情を、荒い息で花火は体外へと吐き出した。今、花火の目の前にいる女が健在であるという事。それはつまり
巴マミに何かがあったという事だ。
薄々気付いてはいた。ただ、考えたくなかっただけだ。連絡の取れない彼女が、探しても見つからない彼女がどうなっているのかなんて、少し考えればわかってしまう事だ。
「…嘘だ。」
「死んだ。私が首を切った。ソウルジェムも破壊した。」
「…クソ、野郎が…。」
「それでいい。怒りで我を見失っても、今度は後ろの少女が死ぬだけだからな。」
バイクの元までたどり着いた。ブラインドも、それをわかっているのだろう。しかし、動きはしない。
「鹿目まどかの為に、彼女には死んで貰わなければならない。置いて行け、そうすれば命は取らん。」
「どう、いう…っ?」
「志筑、聞かなくていいっ!」
「今、彼女は我々が追跡している。すぐに見つかるだろうさ。」
自分の命が狙われている事を知った仁美の身体が震える。聡明な彼女の頭脳は、目の前の外国人が鹿目まどかの家族を殺した一味の1人だと理解してしまった。
関わらせるつもりが無かったが、狙いが彼女だというなら話は別だ。花火は、銃を両手で強く握る。
「じっとしてろ。俺たちはお前の相手をする気はない。」
「なら仕方ない。お前を潰そう。」
真っ直ぐに迫ってきたブラインドに、9mm弾が3発飛んでいく。それを、まるで見えているかのように身体を捻り避けたブラインドは、捻った身体を回転させながら拳を握り、花火の頭部へと振るった。
それを腕を使って受け流し、ブラインドの顔目掛けて右拳を振り上げる。
しかし、それは簡単に片手で掴まれ、そのまま捻る。花火の身体は簡単に地面に叩きつけられた。背中から落ちたせいか、肺の空気が圧迫される。その痛みを無視して、左手の銃をブラインドの腹部に向けて撃ち込む。
2発の弾丸はブラインドの身体を貫き、彼女の身体が後退する。右手の拘束が解かれた花火は、すぐ様起き上がりバイクのキーを回した。
エンジンの重低音が響き、手で腹を押さえたブラインドが顔を上げた。そんな彼女に銃をつけながら、花火は仁美に叫ぶ。
「志筑、早く乗れ!!」
仁美は目の前で起きた異常事態に思考が止まってしまっていた。
自分のクラスメイトが、自分を殺す為にやってきた誰かを銃で撃った。更に、免許なんて持っているはずもないのにバイクに跨って自分を乗るように促している。
あまりにも情報過多な現状に、言葉が出てこない。
しかし、時間は待ってはくれない。
撃たれて身体を曲げていた女性が、ゆっくり身体を戻す。撃たれた場所が、あっという間に塞がっていく。そのあり得ない光景に、仁美の背筋に怖気が走った。
反射的に身体が動いたのは幸運だった。花火の後ろに跨り、彼の身体を掴む。
バイクのエンジンがけたゝましく音を鳴らし、鹿目家から離れる。
「な、なにっ!?なんですかあれは!?」
「説明は後でしてやる!黙って捕まってろ!!」
混乱気味の仁美の言葉を無視して、花火はギアを上げる。法定速度を無視して坂を下るバイクは、あっという間に大通りへと降り立った。
夜も遅い。しかし、それでもチラホラと見える車を避けながら、バイクは進んでいく。
目的地なんてモノは今はない。とにかく、彼女から逃げなければどうしようもないのだ。
道中、すれ違った原付が見えた。乗っているのは男性のようだが、ヘルメットを付けていない2人が目に付いたのだろう。すぐに追い抜いたが、未だに視線を向けられている感覚がある。
当然ではあるものの、どうにも言葉で言い表せれない不快感を花火が飲み込もうとした時、仁美の声が耳に入った。
「祭さん、後ろっ!」
「…冗談だろ…っ?」
サイドミラーに目を向けて、先ほどのバイクが目に入った。しかし、乗っているのはブラインドだ。ふと、上空へ視線を向ける。
この辺りは小さなビルが多い。まさか、あの距離を足で追いかけて、ビルから飛び降りたというのだろうか…?
いや、おそらくその通りなのだろう。今まで散々見てきたではないか。魔法少女という存在が、どれほど理不尽なのかなど…。
ブラインドが迫る。原付に紫電が走り、徐々にその形を変えていく。そのフォルムは、あっという間に攻撃的な大型バイクへと姿を変えた。後方を見ていた仁美はその光景に言葉を失う。既に、彼女の常識から外れた光景が当然のように起きている。
「志筑!今から無茶をするっ。目を閉じて捕まってろ!」
花火の言葉に、仁美は素直に従った。彼の身体に腕を回し、背中に顔を押しつけて目を閉じる。
花火は走りながら辺りを見回し、【止まれ】と警告の記載された棒を見つける。それに手を伸ばし、右目から与えられた異常な力でそれを掴み引きちぎった。
信号は赤。なんとか十字路を走る車をすり抜けて突き進む。ブラインドは手に剣を持ち、進行の邪魔になる車を一振りで弾き飛ばした。
「大丈夫、できる。俺なら大丈夫だっ。あぁっ!クソッ!」
自分へ言い聞かせ、手に持った棒を地面へと勢いよく突き刺した。
瞬間、浮遊。
片手でハンドルを持っていた為か、バイクと共に2人は宙へと投げ出される。衝撃により、仁美の身体が花火から離れる。
驚愕の表情で手を伸ばす仁美の手を花火が掴み、身体を回転させながら抱き寄せる。
その遠心力のまま、握っていたバイクをブラインド目掛けて振り下ろし、投げ捨てた。
「クタバレ化け物っ!」
直接し爆破。
ブラインドの乗った原付だったモノに、花火の投げたバイクが叩きつけられ、爆発する。
花火は仁美を守るように抱きしめ、アスファルトに落ちて何度も転がる。
身体が止まる。腕の中にいた仁美が、ゆっくりと目を開き、頭を上げる。
まるで映画のような世界が広がっている。車はそこらで玉突き事故を起こし、煙と悲鳴がそこらで確認できる。
視線を下へと戻せば、地面への衝撃を受け止めてくれた花火がいる。彼と接触している地面から、血が流れるのが見えた。花火は、その目を閉じてしまっている。まさか、まさか…
「ま、祭さん…?祭さんっ!?起きて、起きて下さい!!」
「……ぁ、あぁ?志筑、か…。アイツは…?」
「それより、貴方の方がっ。血が出て…っ!?」
「血…?あぁ…、大丈夫だ。傷は、もう塞がってる。とりあえず、ちょっとどいてくれ…。」
仁美を退かし、花火は上体をあげる。バイクの燃えている場所に目を向けて、睨みつけた。
燃えている箇所から、人影は見られない。それでも、警戒だけは途切れさせたりは出来ない。腰にさしたM9に触れる。いつでも、構えて撃てる様に…。
燃え盛るバイクの中、魔法により形を変えていた原付が元に戻った。その光景に、心に安堵が広がる。
その瞬間、サイレンの音と共にパトカーが集まってきた。中から出てきた警官たちは、皆一様に頑丈な装備を身にまとい、小銃を構えている。先日から続く騒動のせいか、通常装備では不足だと判断されたのだろうか。
花火達へと銃が向けられ、抵抗の素振りを見せるだけでも撃たれるだろうということが容易に想像できた。
花火は片手を上げながら、ゆっくりとした動作で身体を起こす。その際、警察の資格になる様な位置で、仁美の足元に携帯電話を落とした。
「…志筑、持っててくれ。」
「こ、れは…?」
「大事なモノだ。コレを誰にも渡さないでくれ。もし、誰かから連絡が来たら…俺は見滝原市警にいるって伝えてくれ。」
「祭さん…。」
「巻き込んですまない。当分、家からは出るなよ…?」
花火は両手を上げながら警察に近づき、あっという間に組み敷かれる。仁美の元にも警察が駆け寄り、怪我の有無を確認された。どうやら、事前に通報でもあったのだろう。身元の確認をされ、優しく抱き抱えられる。
10月4日の夜が、終わった。
☆☆☆☆
機械の欄列した空間。そこで、白衣を着た1人の男がモニターに目を向けている。年齢は30代程だろうか。丸メガネの男は、グラフの上下するそれから目を離す事がない。
彼の背後の壁に一本の線が入る。扉だったのか、何か空気の抜ける様な音と共に開く。
入ってきたのは、オレンジの髪の女だ。
背後を確認する事も無く、男が声をかけた。
「やぁ、リトライ。お帰り。」
「ただいまボス。まさか誰かまでわかるなんてね…。」
「それほどでもないさ。元々僕には向いていないし、この身体のおかげでもある。目的の為とはいえ、矜持を捨て去るのは悔しいモノだよ。」
男は自分の手のひらを見つめ、2、3度握ったり開いたりを繰り返した。まるで目覚めたばかりの硬くなった身体を確かめるかの様な動作に、妙な違和感を覚える。
そんな姿を見るリトライは、何故か嬉しそうに微笑む。
「新しい世界は悪いモノでもないよ。ボクとしては、ボスがこちらに来てくれる事は嬉しいものさ。」
「そう言ってもらえてなりよりだ。同じ男として…いや、僕よりか男らしい君にこんな事を言うのは野暮だったね。」
「アハハッ。そんなことはないよ。ボクは、ボスのおかげで目的を得られたんだ。ボクらの友情は、そんな小さな事で変わったりはしないさ。」
柔かなリトライは男にゆっくりと近づき、モニターに目を向けた。そのグラフを見ながら、今度は視線をその奥の空間へと向ける。
「彼女はどう?」
「修復済みだよ。万が一の為に、今は眠ってもらっているけどね。まさか、あのタイミングで襲撃を受けるとは思わなかった。ZEKEはどうだい?」
「部屋にいるよ。ベッドに座って動かないんだ。」
「まぁ、彼女が死なない限り彼に問題は無いよ。」
モニターの奥。そこには大きなガラス張りのポッドがある。筒状のそれは透明の液体に満たされており、中には緑の髪の少女が生まれたままの姿で目を閉じて沈黙していた。口元は酸素マスクの様なモノで覆われ、そこから空気を供給しているのだろう。
少女の姿を見ながら、男は微笑む。慈愛の印象のソレは、コレから先の未来を想っての事か、口を開く。
「もうすぐだ。今度は、僕が世界を変えよう。2度と、戦争なんて起きない世界を…。」
その目で様々なモノを見てきた。何度裏切られたかわからない。その度に男は打ちのめされ、苦しんだ。しかし、その度に男を支えてくれた者達がいた。彼らの為に、もう一度頑張ろうと思えた。
それでも、待っていたのは裏切りだった。
死の間際まで追い詰められた男は、暗闇の中で声を聞いた。その声がいうのだ。
今度は、お前がトップに立てば良い。
その通りだと思った。個人を仲介する事はやめよう。今度は自身が中心となり、世の中の苦しみを和らげよう。
世界を平和で繋ごう。核の手放せなくなってしまったこの悲しい世界を変えよう。
我々は、ベルトラインだ。
時間かかってこの程度の文章なのがほんとに申し訳ないです。
言い訳は致しません、麻雀してましたごめんなさい。
コレからも頑張りますので、見ていただけると嬉しいです。
それと、個人的にやる気になるので感想ください。評価、お気に入りもお待ちしております。