MAGICA GEAR EDIT 作:ローランゲート・ぺろぺろ丸
オリ主にとっての敵が必要だった。だから、魔法少女を用意して鍛える事とした。彼女と共に組織を作り、適当な理念をくれてやり、後釜として座らせる。その為に、改悪アイテムも作った。
オリ主はお腹の中で育っている
3話
2005.03.25
「カルテきました!患者は、集中治療室へ!」
医者や看護師が慌ただしく動く病院内。今日も消え入りそうになっている命を繋ぎ止めるため、文字通り必死になって戦っている。
1人の医者のもとに、患者のカルテが手渡される。子供が車に轢かれたらしい。その悲痛な内容に、医者は顔をしかめた。
「頬骨、上顎骨、第4から第9肋骨、橈骨に尺骨、大腿骨…。計10数箇所の骨折、右半身に集中しての打撲、内出血…おまけに右眼が潰れている…。酷いな、コレは…。」
「生きているのは奇跡です。彼の生命力がどれほど持つかわかりません。」
看護師が悲痛そうに顔を歪ませた。運ばれてきた少年は、まるで血袋を破いたような有様だった。しかし、それでも生きようと必死にもがいている。
「ご家族は?」
「そ、それが…彼には母親以外に親族がいないようで、その母親にも連絡が…。」
「そうか…。やるしかない、か。」
男は、携帯電話を取り出すと何処かへ連絡を始める。相手は、命を扱う人間としては極力連絡をしたくなかった者たちだ。
しかし目の前の命が助かるなら、最善の策として使うつもりだった。
『ありがとうございます、お医者先生。すぐに、そちらへ伺いましょう。』
「あぁ。なるべく早く頼む。彼の命はそう長くない。」
『ご安心を。こちらを使えば、その少年は必ず助かりますよ…。』
電話口の男の気楽に聞こえる声に、電話を持つ手が震えた。
しかし、自分の怒りを抑える事で彼が助かるなら、安いものだ。
☆☆☆☆
2011.09.16
頭は、冴えている。しかし、身体は動かない。見慣れた天井を唖然とした心境で見上げている。そして、動き出した脳が、少し前の光景を思い出す。
酷く長い夢、いつも通りの日常、親友との交流、誕生日、台風、そして…。
血に染まる瓦礫、美樹さやかの…腕。
ソファーから飛び起きる。携帯電話を手に取れば、2件の不在着信があった。迷わず【美樹さやか】へ連絡を試みる。
コール音が嫌に長く感じる。焦りで喉が渇くが、今はただ、彼女の声が聞きたかった。
「…はぁい、もしもしぃ…?」
「さやかか!?無事か、無事なんだなっ!?」
「へぁあっ!?え、なになんなのよ一体…っ!?」
声が聞こえた瞬間、花火は電話越しに叫ぶ。突然の声にさやかは戸惑いの声を上げる。未だ回らない頭で、自分が誰かからの電話に応えた事を理解した。そして、相手が自分の幼馴染みである事を確認し、こんな時間に連絡してきた阿呆に物申したくなった。
「アンタねぇ、今何時だと」
「怪我は!?どこも怪我してないよなっ、どうなんだ!?」
「はぁ?一体どうしたってのよ?」
しかし、電話相手の花火はさやかの文句を遮る。その切羽詰まった声に、さやかもやっとおかしい事を察した。
とにかく、文句は後で言うとして、だ。今はやけに焦燥した雰囲気の彼を落ち着かせなければならない。
「どこも怪我はないわよ?風邪もひいてないし。強いて言えば、アンタのせいで耳がキンキンするくらいね。」
「そ、うか…そう…か。ハァ…よかった。」
さやかの無事を聞いた花火は、深く息を吐き出した。それから、うわ言のように「よかった…よかったっ」と繰り返している。もしかして、私の幼馴染みはおかしくなってしまったのではないだろうか?さやかは、今度は逆に花火を心配し始める。
「ね、ねぇ花火。アンタ、本当に大丈夫なの?」
「…あ?あ、あぁ…俺は、大丈夫…じゃないな。」
絞り出すような声で、花火はさやかへと今の心境を答えた。今話している相手が、少し前に自分の目の前で死んだのだ。瓦礫に潰されて、腕だけを残して…。
落ち着いたと思っていたが、そうでも無いらしい。その時の光景を思い出したせいか、とてつもない吐き気がこみ上げる。
「悪い、今日は休む…っ。」
「花火?ねぇ花火ってば!」
電話を切り、急いでトイレへと駆け込む。胃の中のモノを吐き出し、洗い呼吸を繰り返す。何度かして胃の中が空っぽになれば、何とか吐き気はおさまった。
洗面所に立ち、口の中を濯ぐ。鏡に写る自分の顔は、今まで見たことがないほどやつれていた。
心なしか、右眼が黒ずんでいるように見える。ショックでおかしくなったかと、自虐的な笑いが溢れた。
顔を洗っても、気は一切紛れない。あれだけ吐いた後だと、何も口にしたくなかった。
ソファーまでたどり着き、深く腰を下ろす。目を閉じて考えるのは、あの時の光景だ。
何の冗談かわからないが、どうやら自分は1ヶ月を繰り返しているらしい。
終着点はあの台風の日だ。わかっているのはこれだけ。
何故こうなったのかすら、わからない。
「まるで、ウィリアム・ケイジだ。」
元凶に対して悪態をつく。人間がやっているのか、そうでないのか。とにかく、巫山戯るなと言ってやりたかった。あんな酷い悪夢を見せられる謂れはないはずだと。
だが、とにかく今は頭を使う事だ。
何が目的なのかもわからないが、自分はトム・クルーズではないのだ。映画とは違い、この繰り返しが後何度行われるかもわかっていない。
時間は、限られている。
花火はとにかく、この1ヶ月にあった普通ではない事をリストにしようと考えた。カバンからノートとペンを取り出す。
思い出せる限りの事を紙に書く。しかし、すぐにその手は止まる。
花火にとって、2度あった1ヶ月は平穏だった。特筆するべきことも無かったはずだ。なら、やはりあの最後の日の出来事か…。
「あの、ロボット…。」
思い出す。
黒い色の装甲と、鳥のような見た目。
ソイツが口から吐き出したビーム。それがビルに当たり、瓦礫がさやかを…っ。
怒りに支配されそうになる頭を、左右に振って冷ます。今は、その事を考えるべきではない。誰かは知らないが、お礼は後でたっぷり返してやる。
とにかく、だ。あの異常な台風と、そこに現れたロボットは普通じゃない。関連性があるとは思えないが、花火にとって思いつく手がかりなどそれくらいだった。
「後は、コレをどう調べたらいいのか…。」
花火は悩む。そもそも、武器の所有が許されていない日本で、ロボット兵器を作る等無理なはずだ。それにそんなものを持ってる奴が、銃火器を持っていないとは思えなかった。
日本で暮らしてきた少年にとって、そんな危険な状況の経験はないし、対処法などあるわけがない。花火1人では、どうすることも出来ない。
「……待て、【足長おじさん】はどうだ?」
花火は未だに母との繋がりを隠す男性を思い出す。謎の多い人物だが、会話の中で豊富な知識を持っている事は知っていた。
なら、あのロボットの事も知っているかもしれない。
すぐさま携帯電話を手に取り、【足長おじさん】へ電話をかける。
1コール、2コール…あの時のようにすぐにかけなかったからか、中々電話に出ない。いや、心境の違いが長いように感じさせているだけで、前回もこれくらいだったのかも。
諦めかけたその時、受話器から声が聞こえた。
『もしもし、ハナビかい?』
「っ…よかった。繋がらないかと思ったぞ。」
電話の声色から察すると、今回は寝起きではないようだ。思ったよりハッキリと聞こえる男性の声に、花火は迷子が親を見つけた時のような安堵が心に広がるのを感じた。
『すまない、色々と立て込んでいてね。』
「あぁ、わかってる。当分連絡して出来そうにないんだろ?だから今しかなかったんだ。」
『…なにか、あったんだね?』
花火の声から不穏な何かを感じ取ったのか、【足長おじさん】から真剣な声が聞こえる。
花火は、今までの事を話す事にした。きっと、信じてくれると信じて。
深く息を吸い、吐き出す。そして、花火は結論を話した。
「俺は、今から約1ヶ月後の未来から戻ってきてるみたいだ。」
☆☆☆☆
2011.09.16
『俺は、今から約1ヶ月後の未来から戻ってきてるみたいだ。』
少年の真剣な声から放たれた内容に、ハル・エメリッヒは困惑した。
少年とのやりとりは既に6年ほど行っているが、このような冗談を言うタイプではないのは分かっている。だからこそ、あまりにも現実離れした話をする彼に戸惑いを隠せないでいた。
「…わかった、とりあえず1度落ち着こう。」
『わかってるさ。どう考えても俺がおかしくなったとしか思えない。だろ?』
「あぁ。正直なところ、病院に行った方がいいと思ったのは事実だよ。」
ハルの視点から考えれば、精神を病んで妄想に取り憑かれていると考えるのは当然と言えるだろう。それ程までに突拍子のない話だ。
『だが、本当なんだ。だから、俺はアンタが電話してきた内容を知っている。』
少年の言葉は間違ってはいなかった。ハルは、とある事情のために少年と当分連絡出来ない可能性があり、その報告の為に彼に電話をかけていた。今まで、このような事を言った事はない。だからこそ、今回の内容を言い当てられた事には少し驚いてもいた。
『…今でも、俺自身狂ってるんじゃないかと思っている…。でも…今の俺に頼れるのはアンタだけなんだよ。』
少年の縋るような声がハルに届く。
幼い頃から孤独と戦い、心を折るまいと前を向いてきた彼を知っている。必要以上にハルに頼ろうとせず、可能な限り自分の力だけで生きてきた。そんな少年のはじめてのSOSを、ハルは振り払う事は出来なかった。
『…わかったよ。詳しく、話してくれるかい?』
ハルの言葉に花火は「ありがとう…」と返し、今置かれている状況の説明を始めた。
『まず、俺は9月16日から10月16日までの1ヶ月を2回繰り返している。今が、3回目だ。』
「なるほど、その期間の出来事は全く同じなのかい?」
『俺が行動を変えたら、その後の他の奴の行動に変化があった。例えば、今のアンタみたいに。』
「前回は僕に話さなかったんだね。」
『俺自身夢だと思ってたからな。』
少年の言葉に、それもそうだと納得する。未来から来たと言って信用できる事など無いのだ。ジョン・タイターがそうであるように。
『とにかく、個人の行動は多少の変化があったが、10月16日に台風が来るのは間違いなかった。』
「台風?」
『あぁ、とにかく風が強い。気を抜けば吹き飛ばされそうになる。1回目も2回目も、それは変わらなかった。だが、2回目に台風以外の変化があった。』
「それが、僕に聞きたかった事に繋がるんだね?」
『あぁ…。コレも夢みたいだが…鳥のようなロボットを見た。』
呼吸が止まった。少年から告げられた事実は、ハルを十分に動揺させたのだ。
その鳥のようなロボットの正体が、ハルの知る兵器と酷似する。
「そ、そのロボットは他にどんな事をしたかわかるかい…!?」
『え?あ、あぁ。ソイツは、動物みたいな雄叫びを上げて…口からビームの様な何かを撃ってた。1回目の時も、姿は見えなかったがミサイルが撃たれたような音が聞こえてたから、それもソイツが原因かもしれない。』
「…ハナビ。君は、兵器に興味を持ったりしているかい?」
『唐突だな。…いや、ドンパチは映画の中だけで十分だ。』
徐々に疑惑が核心に変わる。彼が見たものは、恐らくハルのよく知っている兵器だ。もし、それが日本の一都市に隠されているのなら…花火の言う10月16日にそれが起動して暴れまわっているなら、他人事ではいられない。
「ハナビ。」
『どうした?』
「数日後にそっちに行くよ。」
『あ、あぁ。わかった。ありがとう…。』
安心したのか、電話越しの花火の声に固さが抜ける。電話を切り、後ろに座っていた男に声をかけた。
「【スネーク】、今の話…どう思う?」
「酷い作り話だ…そう言えたら良かったんだがな。」
「やっぱり、【ウィッチ】の子供…って事だね。」
スネークと呼ばれた男はシワの深い額に手を置き、白髪の目立つ頭をかいた。そんな仕草に、ハルは目尻を下げて笑う。
かつてスネークと、ウィッチと呼ばれた女性は同僚として仕事をしていた時期がある。その時に、スネークは散々彼女のデタラメさを見せられていた。その時に、彼女から言われた言葉がある。
『あ、スネーク?占いしてあげよっか?え、信じないからいい?まーまーそう言わずにー。ほら、手を見せて。…あー、アレね。アナタ早死にするわ。多分50くらい。あ、後、金髪の男に注意して。なんか因縁強いみたいだから。後はー…』
それからも続く彼女の占いとやらは、見事に的中している。特に因縁に関しては今も続いているくらいだ。そんな彼女の息子の未来の話の内容は、与太話と切って捨てるには簡単なものではなかった。
「もしメタルギアの亜種が日本にあるとするなら、ハナビはそれを見た事になるね。未来予知でもタイムリープでも、危険な事に変わりない。」
メタルギア。
正式名称は【核搭載二足歩行戦車】。簡潔に言うならどんな地形でも核を射てるロボットだ。【歩兵と戦車をつなぐミッシングリンクとなる】ものとして【メタルギア】と呼称されたそれは、今や世界に知れ渡る危険兵器である。しかし、その実態と呼べるものは情報統制されてしまい、一般人…特に、長く戦争から離れた日本国内に住む者達には馴染みのないものであるだろう。
「だが、日本は紛争地帯とは違う。そんなもの運びこまれていたら目立つだろう?」
「ところが、この街に至ってはそうでもないかもしれない。」
ハルはパソコンを操作して、モニターに複数枚の写真を映す。どちらもカラー画像だが、片方は工業地帯の写真、もう片方は都市写真となっている。
「彼の住む日本の見滝原市は、十年程前までは廃れた工業地帯だった。それが今では国内でも最新機器を扱う近未来都市だなんて言われてる。」
「発展途中に運ばれるのが兵器だったとしても、上手く誤魔化せるって事か…。」
「うん。それに、日本は核を持たない国だから怪しまれる事もない。誰にも気づかれず、メタルギアは作れてしまう…。」
これは前代未聞の危機だ。もし日本にメタルギアが存在しており、それが露見する様なことがあれば…新たな戦争の火種となる可能性がある。そのメタルギアから核が撃たれる事があれば、【核を持たない国】は戦争から逃れられる事はないだろう。
「スネーク。今の僕たちには証拠がない。なら、僕たちがするべき事は1つだ。」
「日本に行き、メタルギアの所在を確認する…。」
「無駄足になるかも知れない…でも、ハナビからの初めてのSOSだ。君も、そろそろ決心もついただろう?」
「………。」
無言で準備を始めるスネークの背中を、ハルは黙って見ていた。今の彼の身体には異常が起きている。まだ40にもなっていないのに、肉体年齢は50近い。彼の生まれが原因なのか定かではないが、肉体が急激に老いているのは間違いない。本当の事をいえば、彼には療養して貰いたいとも思う。
しかし、彼は動いてくれた。ハルの為か、花火の為かはわからないが。それなら、ハルに出来ることは、彼のサポートだ。
2人の男が、スネークの【息子】の住む国へ向かう。
☆☆☆☆
2011.09.16
【足長おじさん】との通話を終え、安心したのか身体から力が抜けた。花火が見た物に心当たりがあるのなら、もしかしたら対処してくれるかもしれない。なら、あのロボットに関しては大丈夫だ。
しかし花火はそれでも、ソファーから動けなかった。幼馴染みが腕だけを残して潰れてしまった光景が、忘れられない。
何がきっかけなのかはわからない。もし、自分の行動のせいでそうなってしまったのなら…それだけで、彼女に会う事に恐怖を覚える。近しい者の死は、花火が自分自身ですら気付かないほどのトラウマとなっていた。
ソファーの上で身体を丸めて座る。
自分以外誰もいないこの家での生活で、初めて寂しいと感じた。今まで、そんなことはなかったのに。
ただただ、無駄に時間が過ぎるのを黙って見ている事しか出来なかったのだ。
目が覚めた。
その感覚で、今まで眠っていた事を思い出す。ゆったりとした動作で携帯電話を手に取り、時間と日付を確認した。
9月16日の20時40分。どうやら、あの後夜まで眠ってしまったらしい。無駄な1日にしてしまった事を悔やむより、この繰り返しがやはり夢ではない事に落胆した。
動く気は起きない。喉は渇いたがシンクまで歩く気にはなれない。普段なら多少整えていた髪も、酷い有様となっていた。
「はい、お水だよ。」
「…あ?」
後ろから現れた人影が、水の入ったコップを花火の前に差し出した。条件反射で受け取り、その違和感に気付く。一体誰がこれを…?
その人影に視線を向ければ、今や家族の様な関係の友人がいた。
「…鹿目…なのか?」
「おはよう、花火君。もしかして、まだ寝ぼけてるのかな?」
そういって独特な発音で笑う彼女を、花火は唖然と見つめていた。彼女はそのままキッチンへと向かい歩いていく。視線をずらし辺りを見回せば、テーブルの上も綺麗に片付けられていた。どうやら、寝ている間に掃除をしてくれていたようだ。
戻ってきた彼女は、トレイにお碗を置いて持ってくる。テーブルの前に置かれたお碗の中には、お粥が入っていた。
「はい、お粥だよ。花火君、今日は何も食べてないみたいだったから…。」
「あ、あぁ。悪い…。お前、なんで…?」
「さやかちゃんから聞いたよ。朝からなんかおかしかったって…。すっごく心配してた。」
まどかは花火の隣に座り、ソファーが少し沈む。花火の顔を真剣な目で見る彼女に何もいえなくなり、花火は顔を背けた。
「私も、すっごく心配したよ。花火君、いつも何も言わないから。」
「…すまん。」
「何があったのか、教えてくれないの?」
まどかの声に悲しみが滲む。答えてやれない事が、花火の胸を締め付けた。しかし、どういえばいいのだろうか。来月にはさやかが死ぬかもしれない?馬鹿馬鹿しい。そんなタチの悪い話を、彼女に聞かせられない。
「…そっか……。」
「鹿目、俺は…。」
「大丈夫、なんだよね?」
花火の言葉を遮り、まどかは尋ねる。花火の右手を握り、花火の顔を自分へと振り向かせる。その目には、涙が溜まっていた。
「花火君は大丈夫…なんだよね?」
もう一度、まどかは花火に問う。ただただ、自分の安否を心配する彼女を、花火は振り払えはしなかった。
安心させるように空いた手で彼女の頭に触れ、自分の肩へと抱き寄せた。そして、優しく言い聞かせるように彼女に答える。
「いつも心配かけてすまない…。ありがとうな、鹿目。俺は大丈夫だ。」
「……うん。」
まどかは安心したかのように花火に身を預けた。優しい重みに、花火の心も癒えていく。
また、彼女に助けられた。
再度、心の中でまどかへの感謝の言葉を送った。
時間にしては5分ほどだろう。無言だった2人はゆっくりと離れる。途中から我に返ったのか、まどかの顔はほんのりと赤みを帯びている。対し、花火のほうは気まずそうに頬を指でかいた。
「…あー。お粥、もらってもいいか?」
「う、うんっ。大丈夫だよっ。」
何とかこの空気を変えるために花火が呟く。まどかも慌ててそれに答えた。レンゲを手に取り、お粥を援う。そのまま口を開けそれを流し込んだ…。
「…冷えてるな。」
「うっ…ま、まぁ…時間経っちゃってるから…。」
飲み込み、一言。その言葉にまどかが落ち込んだ。そんな彼女の様子に、花火は言葉を続ける。
「だが、うまい。おかわりはあるか?」
「あ…。う、うんっ。まだあるよ!」
今度は嬉しそうにまどかが笑う。そんな何でもない光景を、花火は愛おしいと感じた。だからこそ、今自分に起きている現象にケリをつけなければならない。
このループに何の意味があるのかはわからない。なら、その全てを暴いてやろう。そして、彼女のいるこの平穏な日常に帰るのだ。
おかわりを運ぶまどかの笑顔に、花火は今一度決意した。
☆☆☆☆
2011.09.21
あの日から5日経った。あの日は夜も遅いのでまどかを家に泊め、次の日の土曜日に彼女を家に返した。やたらと慌てる彼女に夜道は危ないからと説明したが、何故彼女が慌てていたのかはよくわからなかった。
二階の寝室まで案内してやると、やたらと覚悟を決めた顔をしていたのも印象的だったし、俺が一階のソファーで寝るといえば体調悪いのにと怒りだす。仕方ないからと寝室の床で寝ようとすれば、ベッドに投げ飛ばされる事になった。一体、あの小柄な身体の何処にそんな力があったのだろう。
ベッドの中で、もしかしたら寂しいのかも知れないと声をかけると、素っ頓狂な声を上げたまどか。先程からの情緒の変化に、花火は心底彼女を心配した。
結局、その後は2人仲良く眠りについた。目が覚めたまどかが「なんか思ってたのと違う」と呟いた言葉の理由を、花火は理解することは無かった。
花火にとっての困惑は18日の月曜日にも続いた。教室に入った途端さやかにとてつもなく心配されたのだ。さやかは、花火が母を失ってからの荒れている時期を知っている為、花火がメンタル面で弱ると脆い事を知っている。あの時の電話での花火は、明らかにまともな状態では無かった。今日学校に来ない場合は、花火の家へ突撃する腹積もりだったらしい。
あまりにこちらの体調を気遣うさやかに、いつも通りに対応し切れない花火が困った顔をした。花火としては、最後にさやかを見たのは瓦礫の下敷きになった姿だったので、教室でさやかを見た途端に安心したものだが、当のさやかから罵詈雑言が飛んで来ないのがもどかしかった。
その日、一日中心配そうにこちらを見るさやかのせいで、欠伸をする事すら出来ない花火であった。
それでも日常は続き、さやかからいつも通りの反応が返ってくるようになった日の帰り道。
花火はダラけながらも自分の家に向かい歩いていた。
いつも通り鍵を開け、玄関で靴を脱ぐーーそして違和感を感じた。
この家に、誰かがいる。
家の鍵を持っているのは、花火かまどかだけだ。まどかは今日家に帰っているだろうし、そもそも彼女の靴は玄関にはない。
玄関の傘立てに刺してあった木刀を手に取る。小学校の修学旅行のお土産に冗談で買ったものだが、こんな所で役に立つとは…。
ゆっくりと玄関の廊下を抜ける。リビングのドアをゆっくりと開き中を見渡すーー誰もいない。
瞬間、後ろから首を絞められた。
「っ!?ぐぅ…っ!!」
何とか振り解こうと暴れるが、どうやら相手は花火よりも体格の大きい人物らしい。大木のようにビクともしない。
そのまま、うつ伏せに転がされのしかかられる。
腕を取られ関節を固定される。そこから少し回すだけで腕に痛みが走り、力の篭らない手から木刀が落ちた。
もう片方の腕で頭を押さえつけられているため、相手の顔を見る事もできない。
まさか…あのロボットの関係者……っ!?
最悪の事態に舌打ちする。自分1人では抵抗できないため、せめて何かを残せないかと考えた。そこに聞き覚えのある声が聞こえる。
「スネーク!?やり過ぎだよ!」
声の主が花火の上にいる男を止めた。男は花火の頭から手を離し、花火を開放する。
とにかく前へと這いずり、後ろを振り返り下手人を睨みつけた。
1人は眼鏡の優男。白衣を着ている以外の特徴的な所は見当たらない。恐らく、彼が【足長おじさん】なんだろう。
もう1人は、よくわからない。軍服みたいなモノを着ており、顔も目出し帽で殆ど分からない。ただ、その青灰色の瞳には覚えがあった。
「すまない、ハナビ。突然押しかけてしまって…。」
【足長おじさん】が何かを言っているが、正直ハナビはそれどころでは無かった。2人の足元を見ているとだんだんと怒りが込み上げる。
眉間にシワが寄る花火に【足長おじさん】はコレはヤバいと察した。
そして、花火の口から怒りが漏れ出した。
「とにかく靴を脱げ!アホども!!」
2人の男に、日本のニュートラルが突き刺さった。
ウェヒヒ、ウェヒヒヒヒ、ウェウェヒヒヒィィィィ!