MAGICA GEAR EDIT 作:ローランゲート・ぺろぺろ丸
日本でオリ主を生む。望んだ通りスネークの特徴をしっかり受け継いでいた。まずは言語の習得、後に暁美ほむらのループで精神と肉体を鍛えよう。グリーフシードの解析もうまく行っている。順調だ。
あぁ、早くスネークに会いたい。
4話
1986.10.21
埃の被った大きな部屋の中で、2人の少女がいた。1人は金髪の少女。可愛らしい白と青のロリータワンピースを着て、手には箒を持っている。もう1人は赤髪の少女。背中に猫の刺繍の入った黒のパーカーにジーンズ。手には缶詰とフォークを持っていた。
「ねぇ、ヨゾラは願いとかあるの?」
無言で缶をフォークで開けようと格闘する赤髪の少女に、金髪の少女が尋ねた。赤髪の少女ーヨゾラは手を止め、金髪の少女を見る。
「ある。私は、私の生きた証を残したい。」
「生きた、証?」
「そう。まずは生き残って、それで戸籍を得るの。軍人なら身体も鍛えられるし、一石二鳥ね。あとは」
「そ、そうじゃなくてっ!あの、キュウべぇにお願いすることよ。私、ヨゾラと魔法少女になりたいわ。」
ヨゾラの言葉を遮り、申し訳なさそうにもう1度尋ねる。ヨゾラは合点が入ったのか「あぁ。」と短く納得する。
ヨゾラは窓の方へと歩く。窓から見える月を眺め、間を置いて答えた。
「私は…結婚して子供がうまれたら、その子には幸せになって欲しいの。だから、いつかできる子供の為に願うわ。」
「それ、すっごく素敵ねっ。」
ヨゾラの願いの内容に、金髪の少女は柔らかく微笑んだ。我がことの様に喜ぶ彼女は、ヨゾラの後ろまで来て一緒に月を見る。
「魔法少女になったら、一緒に頑張りましょうねっ。」
「えぇ、その時はよろしくね。」
月を見上げたままヨゾラは答える。顔は見えないが、気持ちは繋がったと金髪の少女は喜んだ。
それは、金髪の少女にとって最も不幸な事だっただろう。
月を見上げるヨゾラの瞳は、光の射さない闇の様に暗かったのだから。
☆☆☆☆
2011.09.21
パイプ椅子の軋む音がする。気まずい空気の時、人の行動はそれぞれ違う。覆面男はそっぽを向き、眼鏡の優男ーーハルは誤魔化す様に笑っていた。
テーブルを挟んだ先で花火はソファーに浅く座り、膝の辺りに肘を置いて手を組んでいる。ファーストコンタクトからやらかした2人を見る眼は、何処となく冷たかった。
「い、いやぁ。ごめんよハナビ。日本だと玄関で靴を脱ぐのが当たり前だったんだよね。」
「アンタなら知ってると思ってたがな。後で掃除をしてもらうぞ。」
「で?」と花火は覆面男を睨む。視線を感じても動じず動かない所を見るに、覆面男からのアクションは期待できそうにない。
仕方ないので、花火はこちらから歩み寄る事にした。
「よし、とりあえず自己紹介だ。知ってるだろうけど、俺は祭 花火。祭がファミリーネームだ。それで…。」
「僕はハル・エメリッヒ。分かってるだろうけど、【足長おじさん】だよ。」
「会えて嬉しいよハル。」
「僕もだ。大きくなったねハナビ。そうだ。僕の事は、これからは【オタコン】とでも呼んでくれ。」
電話でのやりとりしかした事のない2人だが、言葉を交わした期間は長い。花火にとっては詢子、知久に続く頼れる大人になる。
2人の間には、確かな信頼関係があった。
「じゃあ、次はアンタだ。ジョン・ドゥじゃないんだから話せるだろ?」
「…スネークだ。」
低い声で一言。花火の皮肉にも返さない辺り、お喋りが好きな人種ではないらしい。
どうしてこんな奴を連れてきたのかとハルに目で訴えたが、ハルは抑えてとジェスチャーするだけだった。
沈黙が続く。それを破ったのは、無口な覆面男だった。
「…英語。」
「ん?英語がどうした?」
「流暢に喋ると思ってな。独学か?」
「いや、母さんが教えてくれた。英語、中国語は話せる。聞くだけならイタリア語、ロシア語も何とかなる。」
この3人、先ほどまで英語で話していた。電話の時は、ハルが日本語で話してくれていた為必要無かったが、直接話すのだから試しに揶揄ってやろうと考えた花火の悪戯心だ。実際、ハルは少し驚いてくれたので満足である。
「アイツ、子供に何を教えてるんだ…。」
「母さんは『必要だから』しか言わなかったな。でも、本場の奴にも通じてよかったよ。」
花火はしてやったりな顔でスネークに笑いかける。彼は精神の成熟を早くしなければならなかった為、基本的には落ち着いた対応を心がける。しかし、時折こういった子供らしい反抗心を見せる事もある。
そんな花火に、スネークは何も返さなかった。花火は訝しむ。どうにもこのスネークと名乗った男は、花火と話をするのを避けようとしている節がある。そのくせ、花火の事を知ろうとしてるのか話しかけてきたりもする。その相反する印象は、スネークの存在をよく分からないものにしていた。
「さて、自己紹介も終えた。そろそろ、本題に入っても良いかい、花火?」
「あぁ。なんでも聞いてくれ。」
ちょうどいい切り替え地点で、ハルが話を変えた。花火も佇まいを正し、それに対応する。
ハルはバッグからノートパソコンを取り出し、画面に複数枚の画像を表示した。それを花火へ見せる。
「以前話していたロボットの事だけど、それはこんな形だったかい?」
そこには、確かに花火が見たロボットに酷似したモノの画像だった。違いを探すとすれば、多少のフォルムと色くらいだろう。
「あぁ。色は黒だし若干形は違うけど、だいたいこんな感じだった。コレ、なんなんだよ?」
「これはメタルギアっていうんだけど、聞いた事ないかい?」
「メタル…あー。確か、昔騒がれた動く核弾頭だったか?学校でも教えられないからあまり詳しくない…ちょっと待て、コレがか?」
「正式には【核搭載二足歩行戦車】。言葉通り、移動しながら核弾頭の撃てる兵器だね。」
花火の喉から乾いた笑いが溢れる。いくらなんでもあり得ない。核を保有しないこの日本に一番必要の無いものが、何でこの街にあるのか。
「つまり花火が見たと言ってるのは、世界的にも無視できない案件になる。此処から何処へ核を撃つのか、何故この国なのか…。そんな事を調べる為に、他国の兵士が乗り込んできてもおかしく無いくらいにね。」
血の気が引くとはこの様な感覚だったのかと、花火は今身をもって体感している。
そのメタルギアがこの街に存在するとして、それを運用しているのが反社会組織とかその類なら、そいつらが他の国の兵士と撃ち合いする事もあるかも知れない。
そうなったら、この街は戦場に変わるだろう。名称は戦争の様なモノではなくテロ行為への対処かも知れないが、間違いなく被害は出る。
「僕とスネークはメタルギアの有無を確かめる為に来ている。少しの間、よろしくね。」
不安は拭えないが、花火にできることはなかった。ただ、目の前の2人の大人が穏便に事を運んでくれる事を願うだけだ。
こうして彼らは、この家に滞在する事になった。
といっても、ハルは情報収集の為か花火の母の使っていたパソコンのある資料室に入ったきり出てこない。リビングではスネークと花火の2人きり。何故か気まずい空気が流れ、互いに話しかけられないでいた。
花火としては、この流れを変えたかった。外の空気を吸いにでも行けば解放はされるだろう。しかし、パイプ椅子に座ったまま微動だにしないスネークを見て、何故自分が外に行かなければならないのか。外出プランは脳内で却下された。
色々と考えたが、良さそうな提案が思いつかない。だんだんと面倒になってきた辺りで、そういえばと聞きたい事を思い出した。
「…なぁ。アンタ、母さんとも知り合いなのか?」
「………昔の同僚だ。」
「あの人の仕事ってなんだったんだ?アンタの雰囲気から見ても、平和そうには見えない。」
花火は母の事を殆ど知らない。本を読むのが好きだったこと以外は、特殊な趣味趣向はなかった。仕事の話もした事がない。花火には、母の事を知る機会が殆どなかった。
「…初めて会ったのはCIAに勧誘された時だ。半年程一緒にいたが、個性的な印象の女だった。」
「CIA?いやいや、母さんは日本人だぞ?」
「そこの所はよく分からん。だが、本人は2世だと言っていた。アイツの母親がアメリカ人だったそうだ。」
母親の謎がまた増えた。男の風貌からして、普通の職業ではないとは思っていたが、実はアメリカ人でしたなんて聞いていない。
混乱する頭を振り、冷静になるよう努める。今度は、1番聞きたい事を聞いてみる事にした。
「じゃあ、アンタは母さんの旦那…俺の親父を知ってるのか?」
「………知ってるが、それを聞いてどうする?」
頭に血が上るのを感じた。目の前の男は自分の父親を知っている。
「まずブン殴る。それで、話を聞くんだ。何で母さんを1人にしたのか、何処にいたのかとかな。」
「…そうか。」
その後、スネークは黙ってしまった。
もしや、この男が自分の父親なのでは?
花火の脳内にそんな言葉がよぎるが、すぐに否定した。室内で堂々と覆面被る男に母が惚れるわけがない。母親の好みなど知りもしないがそう思いたかった。
「なぁ、いい加減覆面脱いだらどうだ?」
「………。」
「今度はダンマリかよ。あのな、日本は通報大国なんだ。そんな格好で外に出たらすぐに警察呼ばれるぞ?」
「…日本人は優しいと聞くが?」
「身内にが抜けてる。島国じゃあよそ者は嫌われるんだぜ?ついでに言うと、なんか怪しい奴を片っ端からオリにぶち込むから、平和の国なんだよ。」
「ひどい話だ。コレは個性だと認めないと?」
「目出し帽を被るのは空き巣かテロリストだよ。後はプロレスラーとか?」
覆面男のポリシーに別れを告げるよう説得する。なんだか妙にゴネてたが、とうとう諦めたのか目出し帽を脱いだ。
見た目の年齢は50〜60。髪は白髪で、所々茶色い髪が見える。顔のシワは深く、それが彼を更に老人に見せた。青灰色の眼は鋭く、男が荒事を制してきた事が伺える。
男はそのまま胸ポケットからタバコを取り出して火を…つける前に花火を見る。
「灰皿はないのか?」
「あるわけないだろ。俺は【足長おじさん】…オタコンに止められてたし、母さんも吸わなかった。」
「…ここで吸っても?」
許可を求めるスネークに対し、玄関を指差す花火。ため息の後、スネークは外へと出て行った。
外。
二階建てのそれなりに大きな家を見上げながら、スネークは咥えたタバコに火をつけた。吸った煙を吐き出し、花火の母親であるヨゾラとの過去を思い出す。
よく笑う女であり、弱みを見せない人物であった。愛し合っていた時期もあった。しかし、互いに違和感を感じていた。
彼女を言葉にするのは難しいが、猫のようなというのが一番近いかも知れない。
スネークがCIAを去ると決断した時、それを聞いたヨゾラは優しく微笑みながら「…そっか。」とだけ呟いた。
あの時、何故自分は彼女を連れて行かなかったのか。きっと、一緒に行こうといっても断られると思っていたのだろう。何故かはわからないが、あの時の彼女の顔を見た時にそう思った。
息子である花火の存在を知ったのは【シャドーモセス島事件】の後だ。
ヨゾラの占い通り、金髪の男【リキッド】が起こした事件。彼から伝えられる自らの出生の真実。自分たちが20世紀最強の兵士と謳われた【ビッグボス】のクローンである事をリキッドから聞いた時、ヨゾラの言う因縁の意味を理解した。そして、その因縁は今も続いている。
事件解決後、シャドーモセス島でメタルギアを作っていたハル・エメリッヒと共に、反メタルギア財団【フィランソロピー】を設立。それまで自分の意思で戦うことの無かったスネークが、初めて自分の意思で戦う事を決意した。ハルから息子の話を聞かされたのはその時だ。
「スネーク。ヨゾラ・マツリと言う人物を覚えているかい?」
懐かしい名前だった。しかし、ハルとヨゾラがどのようにして知り合いになったのかがわからなかった。
「昔の同僚だ。アイツがどうかしたのか?」
その時のハルのなんとも言えないといった顔が印象的だった。彼はパソコンを操作して、1通のメールを見せた。そこには音声データと写真が添付されている。ハルは、その音声データを再生した。
『ハァイ、スネーク。元気?そろそろエメリッヒ博士と仲良くなってると思って彼に連絡してみたの。色々話したいこともあるけど、身体があんまり持たないから結論だけ。
まず、ごめんなさい。貴方と別れてから、貴方との子供が出来たことがわかったの。息子の名前は花火…。ホントは黙っておくつもりだったんだけど、そうも言ってられなくて…。
ちょっとヘマやらかしちゃって……あ、コレヤバイかも。
息子は、日本の見滝原市に、いる…わ。あの子を、お願い。
別に、父親になれとは、言わないけど、ね。
…最後に、一つ。コレは本音よ…貴方が好きだった。』
音声が途切れ、沈黙が流れる。少しして話始めたハルの言葉を、スネークは黙って聞いていた。
「彼女の事を調べたけど、【ベルトライン】と呼ばれる民間軍事会社に所属していたみたいだ。要人警護から戦争地帯への武力の派遣、色々手広くやっていたみたいだね。このメール以降の彼女の消息は途絶えている。恐らくだけど…。」
そこでハルは言葉を途切らせた。しかし、その先の言葉がわからないわけでもない。彼女は、死んだのだろう。
「僕は確認の為に日本に向かった。そこで、彼女の息子にあったよ。君によく似ていた。」
「…この子は、どうなる?」
「今はとある夫婦が彼を引き取ってくれている。ヨゾラ・マツリの関係資料に息子の存在はなかったから、過度な接触をしなければ明るみに出る事はないと思う。」
もし、スネークがただの一般人ならこうも悩む事はなかっただろう。引き取るなり、施設に預けるなりできた。しかし、スネークの存在がそれを邪魔する。【ビッグボス】のクローンであるスネークの息子だ。彼の存在が明るみに出れば、間違いなく拐われるだろう。その後は、想像に難くない。
「すまない、スネーク。君に相談する時間は無いと考えた。」
「いや、その判断は間違っていない。」
ハルがいなければ、花火は何処かの施設へと入れられる。そこから引き抜く事は簡単だろう。少なくとも、一般家庭よりかは。
会う事は無いと思っていた自身の息子との初会合が、メタルギア関係だとは…。どうにも、この血は争いから逃れられないらしい。
短くなったタバコを携帯灰皿に押し込んだ。過去に、ポイ捨てをした事でハルに小言を言われたので常備するようにしたが、こんな形で役に立つとは思わなかった。
リビングに戻ると、花火は携帯電話を弄りながらコーヒーを飲んでいた。スネークの存在に気付くと、携帯電話を閉じる。
「お帰り、コーヒー飲むか?」
「…あぁ、頂こう。」
スネークがそう答えると、花火はキッチンに向かった。少しして、ティーカップをテーブルに置く。スネークは椅子に座りティーカップを手に取ると口へと持っていき、ゆっくり傾ける。豆の香りと苦味…。それを堪能して、一言。
「…美味い。」
「コーヒーは好きでね。自信があるんだ。」
そう言って笑う花火に釣られたのか、スネークも自然と笑みを見せていた。
まだ、彼に父親だと名乗れない。いつか、全ての因縁を終わらせることが出来れば。最後くらい、そんな時間があっても良いのかもしれない。そんな事を考え、否定する。
それでも、その時間は穏やかだった。
☆☆☆☆
2011.09.28
「そんなわけで、毎日むさ苦しい日々が続いてるよ。」
「賑やかそうではあるけどね。」
上条恭介の病室で、花火は最近の出来事の不満を溢していた。
彼らとの共同生活から1週間ほど経っただろうか。もっと長く感じる程には、花火は疲れていた。
まず、ハルとスネークの生活能力の無さが露見した。2人とも料理が出来ないので、常に乾麺か携帯食料などで食事を終わらせるのだ。皿の上に置かれたカロリーメイトを見て、コレは嫌がらせかと思ったくらいだ。
次に、洗濯や掃除である。コレに関しては花火も同罪だった。必要な物を買いに行くと言って出かけた2人と入れ違うかのようにやってきたまどかに、どうして数日でここまで汚く出来るのかと怒られてしまったのだ。
いや、決して花火が何もしていないわけではない。ただ、私生活においてズボラな面のある花火が、人が増えた事による洗い物の増加に面倒だと思ってしまったのが原因だ。後でやるつもりで適当に纏めたままにしてしまい、結果お叱りを受けることとなった。
どうしてこうなったかをまどかに説明する事が、一番大変だったかもしれない。
メタルギアに関することなんて言えるわけがないし、未来から過去へ戻ったなんて信じてもらえるわけもない。
まどかを危険には晒せない為、観光案内なんて言葉でお茶を濁す事にした。尚、それを聞いていたまどかの視線はとても懐疑的だったようである。
「左手が治ったなら早く戻ってきてくれ。鹿目は仕方ないが、鹿目から話を聞いたさやかが小煩くて仕方がない。」
「相変わらずさやかと仲が良いよね花火は。」
「嫌味か?」
「まさか。僕は2人の話を聞いてるだけで良いよ。」
「嫌味じゃないか。」
楽しそうに笑う恭介を見て、花火はため息をついた。左手が動くようになってから恭介は心から笑うようになったので、それは良い事だとは思う。しかし、心に余裕が出来たのなら少しくらいさやかの恋心に気づいてやってもいいのではないだろうか。本当に唐変木な男である。
「もうすぐ僕も学校に行くから、そんなに落ち込まないでよ。」
「よし、コレであの青団子を真っ赤にしてやれるな。楽しみだ。」
恭介は仕返しが出来ると喜ぶ幼馴染みを見て思う。花火は友人の数が少ない。他者との関わりを重要視しないのもあるが、見た目的に同年代から避けられるためだ。それが原因なのか定かではないが、彼にとっての友人とはとても特別なモノになる。特に、鹿目まどかを家族として見ているのがその証拠だろう。それと同じ、またはそれ以上に気を許しているのが、美樹さやかなのだ。
本人は気づいてはいないだろう。青髪の少女の話をする時、普段より表情が柔らかい事に。昔からそうだが、彼はさやかを目で追っている事が多いのだ。一直線な彼女の首根っこを掴むのも、彼女の事が心配故なのだろう。
本人は否定するだろうが、いい加減自分の本心に気づいてやってもいいのではないだろうか。本当に唐変木な男である。
☆☆☆☆
2011.09.30
「行方不明事件?」
夜。花火が調理した決して不味くはない夕食を平らげ、食後のコーヒーを飲んでいたハルからの質問に、花火はその意味を理解できず鸚鵡返しで聞き返してしまう。
そんな花火にハルは一度頷くと、立ち上がり作業部屋へ上がっていく。降りてきた時には、そこそこの厚さのある紙の束を手に持っていた。テーブルに置かれたそれを一枚手に取る。そこには男性の顔写真、年齢や職業に出身地等の個人情報が記載されている。
「どうにもこの見滝原市では、かなりの数の行方不明者がいるみたいなんだ。他の地域と比べると、それが特に目立った。」
「だとしても、メタルギアにそれは関係ないだろ?」
「ハナビ。君は体験したこともないだろうけど、無法者の世界ではあり得る事なんだよ。メタルギアを個人で所有するのは不可能だ。それなりの金と人員がいる。」
ハルの言葉に考え込む花火。だとすれば、行方不明者はただの神隠しではなく、意図的に行方不明にさせられている可能性がでてくる。
「…何らかの目的の為に攫われた?」
「もしくは、偶然知ってはならない事を知って口封じされたか。リストにまとめてみたけど、彼らには共通点が見当たらない。悪ぶってる粗暴な青年もいれば、まだ結婚して間もない主婦もいる。」
花火が手にしている資料に記載されているのは、30代後半の独身サラリーマンだった。なるほど、ここまでバラバラだとその理由も絞り込めない。
食後のタバコを吸い終えたスネークが、部屋に戻ってくる。ハルが行方不明者の件を伝えると、彼も話に加わるのか椅子に腰掛けた。
「他にも、事故や自殺未遂の件数も多く確認できた。僕には、意図的にその状況を作り出そうとしているように見える。」
「感情操作か…。」
「オイオイ、そんなSFみたいな話が本当にあるのか?」
「集団心理の法則を使えば、そこまで難しくないよ。集団でいると、個人の判断能力が低下する場合がある。1人だけなら自殺なんて選択肢を取らない人も、そういった願望を持つ人たちと共に行動すれば」
「自然と思考が自殺に追い込まれる。その頃には、自分の意思で決めた事だと誤解しているだろう。」
スネークがハルの言葉に続く。あまりに話が飛躍しすぎて追いつけていない花火は、困惑した表情で2人を見ていた。
「ま、待て待て。つまり、だ。メタルギアを持った集団が、この街の人間を使って実験をしてるってことか?何のためだよ?」
花火の疑問は最もだ。核を撃てる危険兵器を持った連中が、態々そんな目立つような事をするとは思えない。人が居なくなると言う事は、それだけで注目される。それが集団自殺だの連続誘拐事件だのとなれば、平穏な日常に対して波紋のように広がるだろう。悪い事をするならバレるリスクは減らすのが普通だ。
「これは予測でしかないけど。普通そんな噂が流れる街に住居を構えていたいとは思わない。自然と、別の街へ引っ越すべきと考える人が増えるだろう。」
「人が少なくなれば、目撃者も減る。日本でメタルギアを動かすには好条件だ。」
「うん。かなり前から潜伏しているみたいだし、多少人が離れるのに時間がかかっても良いんだろう。花火の言っていた台風は奴らにとって格好の外出日和だったみたいだね。」
「台風…?」
「まぁ、規模によるけどね。君が未来で体感した話だと、特定の避難場所に集められたらしいね。」
「……確かに。あの時、オフィス街辺りはもう人が居なかったはずだ。」
つまり、メタルギアの保管場所がその付近である可能性がある。
あの台風は偶然の産物ではあるが、そんな急な事態でもすぐに稼働が出来る。そんな危険な兵器がいつでも動かせる状態であるなら、事態は花火が思う以上に深刻だ。
「台風まで後16日。それまでには必ず詳細を調べあげられると思う。決行日は伝えるから、ハナビは家にいてくれ。」
「あ、あぁ。だが…。」
「お前に出来る事はない。」
ハルの言葉に頷けない花火を、スネークが突き放した。不満をもった花火がスネークに反論しようとスネークを睨み…出来なかった。
「力のないお前が行っても無駄死にするだけだ。ハナビ、これは遊びじゃない。後の事は、俺たちの仕事だ。」
その力強い瞳と言葉に、花火は言葉を返せなかった。思わず歯を食いしばり、俯く。
花火は子供で、スネーク達は大人だ。子供に出来る事は、もう無い。
今、花火ができる事は一つだけ。この騒動に友人達が巻き込まれない事を祈る事。まどかは最後の日に必ずいなくなったが、それまでに解決すれば良い。そうだ、大丈夫だ。花火はただ、自分にそう言い聞かせた。
しかし、運命はそんな希望すら打ち砕く。
まるで、それが当然だと言わんばかりに。
「さやかが、いない?」
2011.10.01
人気の掲示板形式やRTA。読むのはすごく面白いけど、自分では書けないなぁと悔しい思いをしております。
いつかこの小説も推薦とかに書かれたら嬉しい。書いた人は「参考にならなかった」をいっぱい貰って下さい(無能)