そして、サブタイトルなんかミスしてたので修正しました。今回もミスしてて恥ずかしかった。
「暴虐の魔王アノス・ヴォルディゴードだ。言っておくが、貴様らの信じている魔王の名は真っ赤な偽物だぞ。魔王の眼の名もな」
考え事をしていると、気づけばアノス様の自己紹介の番だった。
その後班リーダーの元へ移動するということもあったが、それも終わり、私はアノス様のご両親がいるであろう方向に土下座をした。
「大変申し訳ありませんでした! アノス様の自己紹介、このカイル・アストライル、記録水晶に収められませんでした……!! どうかお許しを……!!」
イザベラ様、グスタ様、こんな私をお許しください……!
「なにをやっているのだ、お前は」
床に擦りつけていた頭を上げると、アノス様が辟易したような顔をして私を見ていた。
「カイルはアノスのことが好き」
「ええ! それはもちろん!」
「俺はお前のそういう食い気味のところが苦手だ」
「アノス様! そう言わずに!」
「そういうところだぞ」
椅子に座って、アノス様は脚を組んで頬杖を着く。
そうして三人で話していると、人混みをかき分けて金髪の少女がこちらに歩いてきた。
「ごきげんよう。アノス・ヴォルディゴードに、カイル・アストライルだったかしら」
「あぁ」
「ええ」
彼女は一瞬、ミーシャ嬢に目をやった。
「貴方たち三人しかいないのね。それも、その一人がそんな出来損ないのお人形さんだなんて」
「お人形さん、ですか。それはミーシャ嬢がそうだと?」
「それ以外になにがあるのかしら?」
ふふっ、とサーシャは笑う。その笑いの意味は嘲笑いだ。
「知ってる? その子ね、魔族じゃないのよ。でも人間でもない。命もない、魂もない、意志もない。ただ魔法で動くガラクタ人形よ」
ふむ。魔法人形の類、か。
魔法人形にもいくつか種類がある。しかし、
「それがどうした?」
「えっ?」
アノス様が意に返さず返答した。なんとも思っていない口ぶりにサーシャは動揺する。
続けて私が畳み掛ける。
「魔法人形に命も魂もないと考えるのは早計すぎますね。人形とて、感情や夢を抱けば、人と変わりはしない。もっと
アノス様の傍らに立ち、私はサーシャの眼を見る。驚いたような顔をしていたが、一変して彼女は不敵に笑う。
「そんな呪われたお人形さんと一緒にいたら、わるーいことが起きるんじゃないかしらって忠告してあげたのよ」
わかるでしょ? と彼女は再び笑う。
アノス様と私に脅しをかける、か。この程度、脅しにもなりえない。
「ふっ」
「くくく……くははは! なんだそれは、脅しか?」
二人して笑うと、その勝気な表情が鋭くなった。
「ねぇ。貴方たち、死にたいのかしら」
サーシャの碧眼に魔法陣が浮かぶ。それ見て、私は目を細めた。
「やはり」
「お前の言っていた通りだったな」
「ええ」
彼女が《破滅の魔眼》を見せると、こちらの様子を窺っていた生徒たちが慌てだす。次第に教室の壁や床がひび割れていく。
《破滅の魔眼》とは視界に映る全てのものの破滅因子を呼び起こし、自壊させる魔眼のことだ。この魔眼を持つ者は私とアノス様しかいない。サーシャの場合、特異体質と言ったところだろう。
「おい、やばいぞあいつら。サーシャ様とあんなに目を合わせたら……!」
《破滅の魔眼》の力を知っている者たちが慌てている。しかし、慌てる必要はない。魔力差が広がれば広がるほど《破滅の魔眼》によって自壊することはない。そもそも反魔法が他の者と違う。
じっ、とサーシャの目を見つめていると、ドンとアノス様が私の背中を押した。
「アノス様?」
「魔眼相手ならば、お前の専売特許だろう」
小声でそう話しているとサーシャがふん、と笑う。
「この眼を見て恐れたのかしら」
挑発するように笑みを浮かべ、彼女は手を腰に当てる。
私は溜息をつき、サーシャの目を再度見つめた。
「《破滅の魔眼》は、貴方だけのものではない」
「っ……!」
今度は《
「……そんな、その目……嘘でしょ……」
「どうしました。そんなものですか?」
彼女を《破滅の魔眼》で見下ろす。
サーシャの《破滅の魔眼》はまだ弱い。なかなかいいセンスをしているが、ただ無闇に破壊することしか考えていないのか、または制御ができていないのかはわからないが、弱すぎる。
私は呼び起こされる破滅因子を《破滅の魔眼》で消し飛ばし、彼女の深淵を覗いた。
「ひとつ助言です。《破滅の魔眼》はただ壊すための魔眼ではない」
「……あ……あ……」
教室の壁や床はサーシャの《破滅の魔眼》でひび割れているが、今回はなにも起こらない。サーシャの体も傷ひとつない。私が魔眼で壊したものは、彼女の小生意気な心の表層だ。
それにしても、彼女の魔眼は綺麗だ。通常なら醜く濁るものだが、サーシャの眼は澄んでいる。もちろん、アノス様の眼もまた美しい。あの滅紫の魔眼は暖かく、そして時に冷たい。
「魔王の眼って、本当のことなのか……?」
「だとしたらアノスが始祖ってことになるだろ! そんなわけねぇよ!」
あぁ、やかましい。信じられないというのならそれでいい。しかし、アノス様を侮辱することだけは許せん。どう調理してやろうか。
頬を少し引き攣らせるとアノス様が私の肩に手を置く。
「おい、いい加減こいつを起こせ。お前がやるとお前以外誰も起こせられないだろう」
「あぁ、すみません。考えごとを」
アノス様に言われ、私は茫然とするサーシャの顔の前に手を持っていき、指を弾いた。
入学試験でアノス様が見せたものではない。アレはアノス様だからできるものだ。私にあんな真似はできない。魔力がこもってもいないのに指を弾いただけで吹き飛ばすなど有り得ない。いや、その有り得ないを実現してしまうのが我が主なのだが。
「目が覚めましたか。壊したのは貴女の心の表層です。気を確かに」
ハッと意識を取り戻し、サーシャは私から少し後ずさった。
「貴方、何者なの」
「ちゃんとした自己紹介はまだでしたね。カイル・アストライル。アノス様の従者でございます」
私の名を知っていたのは、おおかた、噂で聞いたのだろう。新入生の間ではアノス様と私の名が広まっているはずだ。
「カイル、どうだ?」
「とても良い
ミーシャ嬢の
ところで、とアノス様がサーシャの方を向いた。
「カイルが魔眼を褒める奴はそうはいない。サーシャ。どうだ、俺の班に入らないか?」
「はっ?」
思ってもみない台詞だったのか、サーシャが目を見開き、絶句した。
***
あの後、もちろんサーシャには断られた。煽られたと思ったのか、瞳に《破滅の魔眼》を浮かべていた。
班リーダーになりたくて立候補をしたのだから断って当然だろう。個人的には同じ班になればあれこれと魔眼について教えられたのだが。
あれほど綺麗な魔眼は見たことがない。磨けばもっと輝くだろう。アノス様に匹敵しうるかもしれない。
授業が終わり、私たちはデルゾゲードの廊下を歩いていく。
「……授業、寝てて大丈夫なの?」
「あぁ、まったくつまらぬ話を聞かされた」
「《
「……ありがと……」
そもそも《
デルゾゲードの門が見え始めた時、その近くで待つ人物がいた。
「気が変わったか?」
アノス様がその人物に声をかける。
金色の髪をツインテールにした、ミーシャ嬢の姉、サーシャ・ネクロンだ。
「勝負をしましょう」
まさかの言葉が彼女の口から紡がれた。
ま、まさかアノス様に勝負を挑む者が現れるとは。二千年前にそんなことをする勇気ある者は、魔族にも人間にもいなかった。
「エミリア先生が言ってたでしょう? 一週間後に《
「ほう、それは面白そうだ」
「もしも貴方が勝ったら、班リーダーを辞めて貴方の班に入ってもいいわ」
「お前が勝ったら?」
そんなことを聞かずとも、どうせアノス様が勝つでしょうに。《破滅の魔眼》があるとはいえ、我が主が足をすくわれるなどありはしない。
アノス様が訊くと、サーシャは微笑して口を開く。
「カイル、わたしのものになりなさい」
「え、私ですか?」
え、嫌ですけど。この身はすでにアノス様に捧げていますが。アノス様がいらんと言っても私はなにがなんでもお傍にいますが。
「わたしの言うことは絶対服従。どんな些細な口答えも許さないわ」
高慢な表情を私に向けて、サーシャは言う。
いや、嫌ですけど。
「別にそれでいいぞ」
「え゛っ!? アノス様っ!?」
なんでそんな即決なんですか!! 少し悩みましょうよ! 従者を賭けるってそんな悪魔の所業ですよ!!
思わず《
「どうせ俺が勝つ」
そうでしょうけど! 勝つってわかってますけども! それでも私を賭けるのはやめていただきたい!!
「わたし、自分の所有物は大切にするタイプなの。貴方の従者のこと、可愛がってあげるわ」
そう言って立ち去る彼女の瞳には《破滅の魔眼》が浮かべられていた。
「あの女、無闇に《破滅の魔眼》が出ているな」
「……感情が昂ると制御できなくなる」
「やはり、制御ができてなかったのですね。《破滅の魔眼》の力がやけに分散していたのでそうだろうと思っていましたが」
勝敗はアノス様の勝ちだ。それは揺るがない。彼女が私たちの班に入った時には、魔眼のことを一から教えてあげよう。それが私の役目だ。
***
《
振り向いて顔を見ると、俺の従者はネクロン家の屋敷を見つめたまま口を開く。
「班別対抗試験の件ですが、最初はアノス様にお任せします」
ふむ。本当はカイルに全てを任せるつもりだったが、本人が言うのならそうしよう。
「最後、予想ですが彼女たちは決死の覚悟で、現状放てる最大の魔法をぶつけてくるかと思われます」
「《予知の魔眼》で視たか?」
「なに、ただの予想ですよ。……その時、私にお任せを。真の《破滅の魔眼》を教えなければ、ね」
「いいだろう」
こいつがここまで入れ込むとはな。厄介な奴に目をつけられたぞ、サーシャ。
俺もまた、魔王と呼ばれる少し前にこいつと出会った時、魔眼の使い方がなっていないと言われ、訓練されたものだ。今でも魔眼ではカイルには勝てぬ。
「本気を出しすぎて根源を消すなよ」
「その時は
そう言うカイルの瞳には、《破滅の魔眼》とは違った魔法陣が描かれていた。
十字架のようなその魔法陣を見て、俺は驚く。まさか、こいつがここまで入れ込んでいようとは。
「それを使う前提なのは、即決したことが原因か?」
「それもありますね。この悪魔め」
「仕方ないだろ。ミーシャとサーシャを仲良くさせるにはこれしかあるまい」
「わかっていても傷つくのですよ。この外道、もう一回死ね」
また面倒なスイッチを押してしまったな。こいつはこういう時が一番面倒だ。二千年前に何度か押してしまい、宥めるのに時間がかかったものだ。
あの時は勇者カノンの根源を何個か潰すまで直らなかったな。
「わかったわかった。俺の家に来い。母さんがお前が来るのを楽しみにしているんだ」
「む、イザベラ様がですか。それなら行かない理由はありませんね。行きましょう。すぐに」
俺もそうだが、こいつも俺の両親に弱いな。
「アノス様! 早く行きましょう!!」
「あぁ、わかったからそう急かすな」
従者に急かされ、俺は足元に魔法陣を描く。視界は真っ白に染まり、次には『太陽の風』の看板が見えていた。
魔王学院の不適合者、二次創作もっと増えて。みんな軽率に書いて。
感想、評価お待ちしております。