世界の崩壊 -内なる声に目覚めよー   作:葱三昧

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初投稿です。勢いだけで押し切りたい(震え声)


第1話  サタンへの手紙~発端~

「パパ、またあの手紙届いてるわよ」

 自宅でトレーニングを終えたビーデルは、汗を拭きながら父である世界の救世主に声をかけた。

「ああ? またか? いくらこの英雄・サタン様に憧れていても、さすがにしつこいだろぉ」

 今はミスターブウと名乗るかつての魔人とともに、リビングでくつろいでいたサタンは迷惑そうにビーデルの差し出す手紙を受け取った。

 

 

  『ミスターサタン様へ

   お願いします。私たちの村を助けてください。

   森に棲む獣の被害がひどくて、このままではトウモロコシ畑は全滅です。

   ハンターや警察も森に入ってやられてしまったのです。

   もう救世主であるサタン様しか頼れないのです』

 

 

 毎日のように届く山積みのファンレターの中に混じっていたのが最初。それ以来、三日にあげず同じような文面、しかし差出人の異なるこの手紙が届くようになっていた。今回に至っては子供の字のようである。

「ねえ、助けに行ってあげたら? 何なら私と悟飯くんで見てこようか?」

「ム! そ、それはイカン!」

 愛娘と最近急接近している孫悟飯という青年。セルゲームや天下一武道会、その後のブウとの戦いの中で、彼が只者ではないことはサタンにもわかっている。しかし、そうかといって娘をおいそれとやるわけにはいかない。

「そ、そうだ! ブウさん、どうですか? ちょっと旅行がてら行ってみませんか? トウモロコシっていう美味しい食べ物がありますよ!」

「トウモロコシ? お菓子か、それ?」

「お菓子ではないですが……」

「サタンが行くなら行く」

 サタンは胸を撫でおろした。これで少なくともビーデルと孫悟飯が二人きりで遠くに出かける、などという破廉恥な行為はする必要はなくなった。

「じゃあ、明日にでも出発しましょう」

 私もついて行っていいか、というビーデルの求めにも快く応じる。ブウがいれば二人であっても抱えて飛んでいけばあっという間だろう。

 

 

 

「着いたぞ、多分ここ」

 サタンが閉じていた眼を開けると、地図でブウに教えたであろう辺りに着いていたようだ。空を飛びながら教えた後は、かなりの速度をブウが出したので、はっきりとはわからないが、目印である大きな湖を通過したのはうっすらと見えたので間違いはないだろう。

 自分も飛べる、というビーデルだったが、ブウに抱えられた後はあまりの速度に目を瞑っていたようだ。サタンと同じく、空気の流れに寒さと痛さを感じていたのだろう。だらしなく地面に座り込んでいる。

 それでも空からの異様なこの来訪を覗きに来た村人の姿を認めると、サタンはさっと居住まいを正し、大声を上げる

「がはははは! 村のみんな! このスーパーヒーロー・ミスターサタン様が助けに来たぞ!」

 おお、とどよめきと歓声が上がり、近くの家々から村人がサタンの元へ駆け寄ってきた。お決まりの「サ―ターン!」の声に囲まれながら村人の話を聞く。

「最近、急にあの森に畑を荒らす獣が棲むようになってしまったのです」

 以前は森にそんな動物は棲んでいなかったという。ここしばらくの間に移り住んできたのだろう。しかし話を聞けば聞くほど、わざわざ自分が出張ってくる案件ともサタンには思えなかった。

「問題は、森に退治しに入った者が皆やられてしまったのです」

 確かに集まった村人たちの中に若い男性の姿はない。老人や女子供ばかりだ。

「ハハハ、獣退治は専門ではないが、このサタン様にかかればどんな狂暴なやつでも一捻りだぁーっ」

 

 

 村人に残り少ないというトウモロコシをわけてもらい、ブウはご機嫌で食べている。その代わり、というわけでもないだろうが、村の窮状を察していたビーデルがゼニーやら食料を入れたカプセルを村長らしき人物に渡していた。

「おい、これ美味しい。もっとないのか?」

 おかわりを求めるブウに、そのトウモロコシを荒らす獣が森にいる、退治しようと話を持っていった。

「村のみんな、もう安心だ! このサタンの一番弟子、ミスターブウがまずは森に入る! なあに、ミスターブウなら虎や熊でも相手にならんさ!」

 再び起こる歓声の中、ブウは森へ向かっていった。ビーデルも行きたがっていたが、サタンはそれを許さなかった。修行と称して鍛えるのは良いが、わざわざ娘を危険な場所へやる必要はない。それにかつての魔人ブウがいるのだ。

「しかし、遅いな……」

 村人に借りた森に一番近い農家で、酒を飲みながら待っていたサタンとビーデルであったが、ブウは一向に帰ってこなかった。陽は既に沈み、周囲は闇に包まれている。サタンもビーデルもブウの心配はしていないが、さすがに相手がわからない、ただの動物となると、ブウであっても見つけられないことは想像に難くない。

「えっ……! な、なにこれっ!」

 不意にそう叫ぶとビーデルは建物を飛び出した。ぽかんとしたサタンだったが、やや遅れて娘の後を追う。

 ビーデルは建物のすぐ外で、森を見つめ微かに震えている。

「どうしたんだ?」

「わ、私は悟飯くん達みたいに気をそんなに感じ取れないけど……こ、これは」

 その時、大地が震えた。いや、大地だけではない。空気までもが震えていた。

「わわわ、じ、地震だっ」

「違う!」

 慌てるサタンにビーデルはそう言い切ると、森を見つめ続ける。

「消えた……」

 そう呟くとビーデルは腰を抜かすようにその場に崩れ落ちた。

「な、なにが消えたって?」

 訳も分からないまま、サタンは娘を担いで家の中に戻った。まだビーデルは放心している。

「パパ……、悟飯くんや悟飯くんのお父さんに連絡を……」

 何とかそれだけ言い切るとビーデルは疲れ果てたように眠りに落ちた。

 夜が明けても、ミスターサタンの一番弟子、ミスターブウはとうとう帰ってこなかった……。

 




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